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第152話 魔獣討伐隊 ⑦
しおりを挟む俺達は、ウォーロックとの距離を取りつつ相手の出方を窺う。
その時だった、アドンが突然前へと躍り出て、筋肉をこれでもかとアピールしだした。
「むうううううううんんん!!」
なにやってんの? この人。
流石にガーネットが声を荒げる。
「ちょっと! なにやってんのよアドンさん! そういうのはもういいから!」
「いや、そうはいかんぞい! ここはわしに任せい!」
ちょっとちょっと! この人大丈夫なのか? もうラストバトルなんだって。状況見えてんのか?
筋肉をアピールして相手を改心させるとか、もうそういう次元の話じゃないんだって。
しかし、アドンの体にはワセリンが塗りたくっているおかげか、掴もうとしてもツルツルとすり抜ける。
駄目だ、止めようがない。アドンの奴………ここへ来てなんとかなると思ってやがる。
「では、いくぞい!! てええええん!」
何だ? アドンの奴、気合の入ったポージングを決めだしたぞ?
「ないいいいいいん! えええええいと!」
なんかよくわからんが、嫌な予感しかしない。
「せぶうううううん! しいいいいいくす! ふぁあああいぶ!」
こ、これは、カウントダウンだ! アドンの奴カウントダウンをしながらポージングを次々と繰り出している。
い、一体何が起こるってんだ? 不気味だ。そして嫌な予感しかしない。
「ふぉおおおおおお! すりいいいいいい! つうううううう!」
流石のウォーロックもただ事ではないと思ったのか、警戒している。しかし、その場を動かないのは大変有難い。
そのままでいてくれよ、アドンが何をしたいのかよく解らんが、期待半分、諦め半分ってところだ。
「ううわんんんんんん! ぜえええええろおおおおおおおおおおおおー----!!!」
遂に、遂にカウントダウンが終わってしまった。どうする気だ?
すると、アドンはゆっくりと前のめりに倒れこみ、うつ伏せで地面に突っ伏した。
そして、片手を伸ばし、藁《わら》をも掴むような体勢になり、その手の先にはウォーロックを見据えていた。
ウォーロックは警戒し、後ずさる。だが、特に何かが起こりそうとは思っていないのか、アドンを凝視している。
そこで、アドンは呻くような声で、唸った。
「………駄目かぁ………」
その後、大声で、まるで縋る様な姿勢でウォーロックに向かい、絶叫した。
「駄・目・な・の・かあああああああああああああー------!!!!!」
その直後だった。
ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
大爆発。
そう、大爆発が起こった。
ウォーロックを中心に、大規模爆発が発生。不気味な祭壇ごと吹き飛ばした。
「うをおおおおおおおお、ば、ばかなああああああああー------………………」
ウォーロックは断末魔を上げ、跡形もなく消え去った。
爆風と衝撃が、俺達をも包み、立っていられなくなり、その場で座り込む。
衝撃が止み、しばらく放心状態だった俺達は、辺りを見る。
辺りが落ち着きを取り戻し、様子を窺う。
「………。」
いない、ウォーロックも、あの不気味な祭壇も、なにもかも吹き飛ばしたようだ。
………一体、何が起こったのか? 解らん。解らんのだよ。訳が解らん。
解らんが、ラスボスっぽい奴は、多分倒したって事になるのか?
よう解らん、ついていけん。
だが、辺りには静寂が支配し、清浄とも言える空気が漂っていた。
と、ここでガーネットが我を取り戻し、俺に声を掛けてきた。
「ね、ねえ、ジャズ。私訳が解らないんだけど、何が起こったの?」
まあ無理も無い、俺にも解らん。
え? いいの? ほんとにいいの? こんな終わり方でいいの? だって、どう見てもラストバトルっぽかったよ。いいの、こんなんで?
{シナリオをクリアしました}
{経験点5000点獲得しました}
おや? いつもの女性の声だ。え? いいの? こんなんで。ほんとに終わり?
どうやら、本当に終わりらしい。どうなってんだか?
「ねえ、ジャズったら。」
「ああ、心配するなガーネット。俺にもよく解らん、どれ位解らんかというと、スクールアイドルとかの声が皆同じに聞こえるぐらいに解らん、区別がつかないんだ。誰が誰やらさっぱりなんだ。名前も覚えらんねーし。歳取るとそういう耳になんだよ、若いモンの声は皆同じに聞こえんだよ。ギリ聞き分けられて765プロまでだよ。」
「………ごめん、ジャズが何言ってるかわかんない。」
「気にするな、それ位訳が解らない事が起こったと言いたいだけだ。」
そして、アドンは何食わぬ顔で立ち上がり、埃を払いつつ、またポージングを決めだした。
「むうううううううんんん。わしの事は、愛・超兄貴と呼んでくれ。」
もういいよ、そういうのは。訳が解らん。
兎に角、この場の戦闘は無事解決した。
なんか、どっと疲れたな。今まで何だったんだ状態だな。
俺達のやる気を返せ。
………まあ、終わったからいいか。後の祭り感は否めないが。
一応警戒し、復活でもされたら厄介なので、暫くは様子見をした。
だが、何事も無かったので、終わったと思う。
ほんと、どうなってんだかな。まあ、皆が無事でなによりだな。そこだけは感謝だ。
その後は入って来た扉から出て、ボム爺さんと合流し、洞窟を脱出した。
外はもうすっかり夜だった。早いとこ仮設基地に戻ろう。
俺はアドンにツッコまんぞ、ろくな答えが返って来るとは思えないからな。
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