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021:ミミックVSクラーケン〝触手プレイ〟

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 私はクラーケンの8本の触手による攻撃を必死にかわし続けた。

「ルォオオオオオオオーンッ!!!」

 って、危なっ!!!
 うねうね動いて全然動きが予測できない。
 それにさっきから私の死角を狙ってきてやがる。
 くっそ。
 8本も触手があるだなんてずるい。
 それにあのカニとエビを一回の攻撃で倒すほどの威力。
 捕まったら一発アウトだと思った方がいいよね……。
 そうか。
 これが触手プレイってやつなのね。 (多分違う)

 ――あ、しまった!!
 ぐぁあああッ!!!
 触手プレイとか言ってたら捕まってしまった。

「ギィギイイイイ (ぐ、苦しいぐるじい)」

 なんて力なの…….。
 つ、潰される。壊される。
 やばいやばいやばいやばいやばい――!!
 早く抜け出さないと、ガチでやばいッ!!

 必殺――回転攻撃スピンアタックッ!!!

 なっ!?
 回転して逃げようとしたけど全く体が動かない。
 そりゃそうか。この締め付けは……簡単に動けるはずもないよね。
 なら、これならどうだ!?

 必殺――噛み付き攻撃ボックスファングッ!!!

 おらぁあああー!!
 離せや、コラァアアア!!!!

 私は全力を振り絞ってクラーケンの触手に噛み付いた。
 もうこれしか手段はない。
 お願い。お願いだから通じて!!

「ルォオオオオオオオーンッ!!!」

 ――ドガゴンッ!!!

「ギィイイッ (ぐはぁッ)」

 クラーケンは私を地面に叩きつけた。
 触手からは解放されたけど、この一撃は効いたぞ。
 左半分の感覚が全くない。かなり破損してる。
 辛うじて宝箱としての形を保っていられているのは、私がミミックだからだろう。
 普通の宝箱だったら木っ端微塵だったぞ。

 宝箱としての形を保っているからと言っても、この状況どうすることもできないぞ。
 今にもクラーケンは8本の触手をくねらせて私を襲おうとしている。
 動きが遅く見えるのは多分私が死にかけてるからだろう。
 このスローモーションに見える現象って何ていうんだっけ?
 あぁ、せっかくスローモーションなのに変なことばかり考えちゃうな。
 もしかしたら無意識に死を悟って諦めてるのかもしれない。
 そりゃそうだよ。
 あんなに強そうだったカニとエビを絞め殺して食べちゃったんだから。
 私なんかが敵う相手なんかじゃない。

 それにキングラットの時とは違って状況が不利だ。
 ここはクラーケンの縄張りであってホームグラウンド。
 圧倒的不利だよ。

「ルォオオオオオオオーンッ!!!」

 ああ……時間が来たようだ。
 クラーケンの触手がどんどん近付いてきてる。
 私なんか1本で倒せるのに、6本で攻撃か……。
 慎重なのか、容赦がないのか。
 どちらにせよ、私はここで終わり――

 ――終わってたまるもんかー!!!!

 途切れかけた意識の中、クラーケンの触手攻撃をかわした。
 その勢いのまま岩陰に身を潜めた。

 はぁはぁ……ギリギリだ。危なかった。
 本当に死ぬかと思った。

 なんとか隠れられたけど、見つかるのも時間の問題よね。
 それまでに打開策を考えないと。

 う~ん。

 キングラットの時みたいにレベルアップを……いや、ダメだ。
 レベルが上がった分、レベルアップし辛くなってる。
 それにこの場所、見た感じどこにも魔石と宝石がない。
 あるのは私の体に埋め込まれてるお洒落兼非常食の宝石だけ。
 だからレベルアップしながらの戦いは無理だ。

 それじゃ、ガンガン攻めていくのは……って、それも無理だよね。
 力の差は歴然。誰がどう見ても私があの怪物に力で勝てるなんて思えない。
 それに満身創痍のこの体だ。
 体当たり攻撃ボックスアタック尻落とし攻撃ボックスドロップも効かないだろうな。
 まあ、満身創痍じゃなくても効かなそうだけど。
 でも、噛み付き攻撃ボックスファングは効いてくれたみたいだったよね。
 この顎と牙が攻略の鍵になるかもしれんぞ。

 あと他には……。

 ――つんつんッ。

 ん? 何?
 今考え事してるんだから話しかけないでよ。
 他に打開策は……。

 ――つんつんッ。

 だから、考え事してるんだから話しかけないでよ。

 ――つんつんッ。

 って、ちょっと待てよ。
 ここに私のことをつんつんしてるの誰?
 ここには私とクラーケンしかいないはずだよね。
 いたとしてもこの状況でつんつんするのおかしいよね。
 ということは……もしかして……。

 触手だー!!!!
 触手プレイ再開だー!!!

 ぬぐぁああッー!!
 速攻で捕まってしまったー。
 せっかく身を潜めてたのにー!

「ギィイイッ (ぐはぁッ)」

 こ、これはやばい。
 体が絞め潰される未来が一瞬見えた。
 早く脱出しないと……死ぬ!!

 早速だが、顎と牙に頼るしかない。
 頼むから通じてくれよ。

 必殺――噛み付き攻撃ボックスファングッ!!!

 うらぁあああああ!!
 さっき以上に全力を振り絞れー!!

「ルォオオオーンッ!!!」

 よしっ! 効いてる!
 触手とか攻撃が効かなかったり、斬られても平気だったり、そもそもタコには痛覚が存在しないって勝手なイメージがあったけど、ちゃんと効いてる!

 このまま離してくれー。
 離さなかったら噛み続けて食べちゃうからな。
 でもさっきみたいに地面に叩きつけるのだけは絶対にしないでね。

「ルォオオオオオオーンッ!!!」

 って、やっぱり地面に叩きつける気だー!!
 左半身を失うほどの威力だったけど、わかってるなら対処できる。
 叩きつけられる直前に回転スピンしてダメージを逃すぞ。

 ――ボジャジャバーンッ!!!

 ぐがはぁッ!!!

 やばい……ちょっと待ってくれ……水の中に……。

「ギィイギィギィ (ボゴボゴガボァ)」

 地面じゃなくて湖に叩きつけられた。
 くっそ。私は泳げないってのに……。
 ミミックの体も全く浮く気配がない。
 それどころか体が言うことを聞いてくれない。
 水面に叩きつけられたときにダメージを逃せなかったからか。
 って、今はそんなことどうでもいい。
 このままだと……このままだと私、窒息死する。
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