人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

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第一章

優勝と小さな嫉妬4

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 魔法という手段ももちろんあるけれどこれぐらいなら身体能力の強化で十分だ。
 それにリュードはまだ父のように魔法を無詠唱で瞬間的に扱うことは出来ず、一応今も軽く集中して魔法名を唱えて使っている。
 
 竜人族は魔力が強く魔法に対する抵抗力も強いのでバンバン魔法を使うことができるのだけど剣などに比べてまだまだ浅いのだ。
 さらにこの世界に転生してみて分かったのは魔法は今かなり衰退していることだった。

 世界的な事情があるのでしょうがないが竜人族はそうした世界の流れの中でまだ魔法というものに関して力を保っている方である。
 ヴェルデガーのように様々属性の魔法、多くの魔法を修めているのは珍しく、今では得意属性の得意魔法をいくつか扱えるぐらいなんて人も世界に入るぐらいなのだ。

 なのでもっと魔法が飛び交う世界の方がよかったのにとそこらへんは少し残念だと思うリュードだった。
 木の途中にあるコブを蹴ってさらに高く上り、落ちないように気をつけながら太い枝に着地する。
 
 太い枝の上に腰を据えて地面を見下ろしてみると恐ろしく高く見える。
 会場を見てみると木の上からならよく見える。

 ただし少し遠いことはどうしても仕方ない。

「遠視!」

 ここで役に立つのが魔法である。
 実際目に魔力を集中させると動体視力を補助してくれたり若干視力も上がるのだけどそれだけでは少し足りない。

 魔法で視力に限定して強化する。
 望遠鏡を覗き込んでいるかのように遠くがクローズアップされて見える魔法をリュードは使った。
 
 ただ見るだけならいいが倍率の調整が意外と難しく、近くが見えにくくなって注意が散漫になってしまうのが欠点だが遠くを見るだけなら優れた魔法である。
 少しずつ目に込める魔力を増やして倍率を上げていく。

 木の上で落ちないようにしながら使うのはやや気を使うが枝は太くて安定はしているのでよほど熱中でもしない限りは大丈夫だろうと細かく倍率を調整する。

 ちょうどよいところになったので魔力を込めるのをやめる。
 目の前で見ているかのように戦いが見えて、ようやく落ち着いて観戦できるようになった。

 ちょうど切りあっているところで、やはり大人が本気でやりあう光景は激しいなと感心してしまう。
 大人の場合判定も多少の傷も許容する。

 少し緩いと言ったらいいのか、子供たちの戦いよりもはっきりと相手を倒さなきゃいけないから厳しいと言ったらいいのか微妙なところ。
 子供の時ならば判定されていただろう際どいものでも中々札を上げない。

 柵を越えるほど力任せにぶっ飛ばされるやつがいたり激しすぎて武器が壊れちゃったりしている戦いもある。
 因縁がある相手なのか最初から武器を捨て足を止めて殴り合いなんてのもある。
 
 いい大人の全力の殴り合いは意外と面白い。
 前世では格闘技に興味のなかったリュードでも目の前で繰り広げられる様々な戦いは見ていて面白いと思う。

 竜人族や人狼族は人の姿でもかなり丈夫に出来ている上に死ぬまでの怪我じゃなければ医療班が回復してくれるから戦う方も遠慮がなく観る方も安心して観ていられる。
 1回戦、2回戦が終わり、リュードに勝った師匠のウォーケックはもちろん打倒村長を期待されている他の3人と村長も当然のように勝ち上がっている。

 人数が多いので2回戦までは残った人のクジをもう一度引いてで戦いを決める方式でさらに数を絞った。
 3回戦目からはやっとトーナメント方式に戻り、対戦相手が事前に分かるようになる。

 ちょっと魔力を強めてトーナメント表を確認するとウォーケックは順当に行けば村長と決勝で当たることになっていた。
 村で1番強いのが師匠となればリュードも鼻高々、とはいかないけどちょっとはいい気分だから是非とも優勝していただいて、いつかは越えたいものであった。

 少し休憩を挟んで力比べの再開というところで、先ほどリュードを採寸していた女性の1人が何やらキョロキョロしながら人を探しているのが見えた。
 多分だけどリュードを探していると察した。

 良いところだから行きたくはない。
 力比べでは片方が武器を弾き飛ばされて素手で応戦している。

 素手で戦う超接近戦に持ち込んで諦めずに戦っている。
 展開が読めすなかなかに固唾をのむ場面。

 でも木の上にいるリュードは一生見つけられることもないだろうから自ら姿を現してやるしかない。
 リュードは再び足を強化して木から跳び下りる。
 
 着地の衝撃を柔らかく着地することでやり過ごしてリュードを探していると思わしき女性に声をかけると間違いじゃなかった。
 また控室に連れて行かれ、今度はちゃんと目隠し用の仕切りのある中リュードは物言わぬ人形のように女性たちに身を任せる。

 1つ仕切りの向こう側にはテユノもいるようであの息の荒い危ない雰囲気の女性はそちら側にいる。
 いや、いた。
 
 チラチラと仕切り隙間から覗いていたところ目が合ってしまった。
 採寸して何をしていたかというと優勝者用の服を作っているのである。
 
 基本的な形は作ってあるのだが誰が優勝するのかは分からない。
 先ほどの採寸を元に作った服を調整し、今はリュードがそれを着てみてさらに細かく調整している。

 もはや邪念と形容できる視線を無視して言われた通りにして、聞かれたことにちゃんと答えているとそろそろ完成というところで一際大きな歓声が上がった。
 惜しみない賞賛は止まず、歓声は他の試合のものよりも長く続いている。

 力比べの優勝が決まったらしい。
 観たかったなとリュードは小さくため息をつく。

「さて、完成よ!」

 最終調整のために再び脱がせられてバスローブみたいなものを肩にかけられて待っているリュードの服もようやく準備が整った。
 されるがまま、半ば着せられるようにして服を着る。

「おぉ……」

 鏡に写った自分を見て思わず声が漏れる。
 リュードは真人族正装風なタキシードみたいな服を着させられている。

 髪もしっかりとセットされやや幼さが残るけど少し男らしくらしくなってきた顔立ちにまだ似合うとは言い切れないタキシードが逆に良い雰囲気を醸し出している。
 リュードは自分で見ても結構イケてると思う。

 元々15歳程度の体つきを想定していたはずなのに、この短時間でリュードの体に合わせてタキシードを作り上げた女性たちはその姿を見て満足そうにしている。

「こっちも完成しました!」
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