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第四章
分かってるよ2
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首都ならばその他の薬草についても物流が盛んなので問題はなく、留まる理由も作りやすい場所である。
だからベギーオの領地で行われる大人の試練を早く終わらせて次に行ってしまおうと考えていた。
早くしないとクゼナの石化が進んで手遅れになってしまうとラストの焦りも大きくなっている。
とは言ってもベギーオの治める領地は4つの中でも1番大きい。
広い分だけ移動にも時間がかかる。
さらにラストはどれだけ嫌であってもベギーオのところに挨拶に行かなければならない。
ベギーオがラストを嫌っていてこの先に何が待ち受けているのかを考えると不安になる。
顔も自然と険しくなるのも仕方ないのであるがもう1つラストの顔が険しくなる理由があった。
「いや、すまないな! しかしだ、大人数で旅をするというのも悪くはないものだろう?」
何の因果なのか赤獅子人族の王子レヴィアンもリュードたちに同行していた。
人数的にみるとレヴィアン一行にリュードたちが同行しているといった方が正しいかもしれない。
ラストの大人の試練を手伝いに来たのでも、ルフォンを追いかけてきたのでもない。
たまたま、偶然に出会ったのである。
「はっはっはっ、このような偶然もあるのだな!」
レヴィアンはレヴィアンで任された仕事をこなすためにティアローザ国内を回っていた。
幸か不幸か運命的にも一時的に道程が一緒になってしまったのである。
同じ道を同じ方向に向かっている。
同じく歩きでの移動だし、顔を知らない中ではないので変に距離を空けるのも何だかおかしい。
レヴィアンからの申し入れもあって一緒に行けるところまでは一緒に行くことになったのであった。
予想はしていたけどレヴィアンは物静かとは遠い獣人である。
比較的穏やかにしていた旅が一気に賑やかなものとなる。
「魔物が俺に任せておけばいい! 迷惑をかけたからな、魔物ぐらい倒してみせるさ!」
短い間だしこれはこれでいいとリュードは思う。
ラストはまだまだ旅慣れておらず獣人たちの勢いに押されて少し疲れていた。
あとはバラーとレヴィアンがリュードに近くてラストはそれも不満である。
時々ちょっと近づいたり、ふと話すことができなくてムッとしているところもあった。
「汗をおかきにはなられていませんか?」
「いや……かいてないよ」
特にバラーがリュードに近い。
ヴェルデガーの昔話なんかをリュードにするのでリュードも興味を持って聞いていて、ラストに入り込む余地なんてなかった。
面倒でも一緒にいることを承諾したのには理由もあった。
仮にもレヴィアンは一国の王子である。
ティアローザにとっては貴賓であり、国内で問題があっては困る相手でもある。
そんなレヴィアンと一緒にいればベギーオが何かをしたくても手を出すことができない。
ラスト憎さに国交問題に発展させるほどベギーオも馬鹿ではない。
そんな打算的な考えもないこともなかったのである。
多少ゲンナリする獣人たちの元気さを除けば悪くはない人たち。
リュードはレヴィアンがルフォンのことを諦めていないのではないかと警戒していた。
たとえ他国の王子であろうとルフォンに手を出そうとするなら殴り倒すつもりもあった。
そうレヴィアンに話すと困った顔をしてリュードに謝罪した。
ルフォンは非常に魅力的な女性である。
でもだからといっていきなり決闘を申し込んで奪おうとするなんて自分でも気が短すぎる話であるとレヴィアンは反省していた。
さらに決闘はならずともほとんど負けのようなものだった。
男らしくスッパリと諦める。
ちゃんと自分を省みて行動を改める。
それができるのもレヴィアンという男であった。
今は自分よりも年下なのに実力が上のリュードに興味があった。
バラーもやたらとリュードには下手に出ているし何なら可愛い子を落とす秘訣も知りたいとすら思っている。
ちなみにレヴィアンがルフォンに差し出していた女心を全く理解していないたくさんの串焼きは護衛が美味しくいただいたそうな。
「しかし、やはりヴェルデガーさんのご子息でいらっしゃるシューナリュードさんは違いますな!」
お前は一体誰の護衛なのだとレヴィアンですら聞きたくなるほどリュードを持ち上げる。
分かりやすい褒めてくれるのだけど言い方が巧みで持ち上げ方が上手いので段々と気分が良くなってくる。
「そういえば、君たちはどこに向かっているんだ?」
とりあえず次の町まで一緒であることは確認済みだ。
まだ心の距離まで近づいていないことを感じたレヴィアンはもうちょっと同行出来たらいいのにと思った。
「俺たちはこれから大領主であるサキュロベギーオ様にご挨拶して、それからチッパという町を目指していこうと思っているんだ。そこには獣人族も多く住んでいるらしいんだ」
「あー……そう」
勝手に話し始めてたら聞いちゃったけど聞かなきゃよかった。
「なんだ? まさか同じ行き先かな?」
「いやー、どうだろうな?」
「ウソが下手だな。そんなリアクションじゃ丸わかりじゃないか!」
大笑いするレヴィアン。
そんなに隠すつもりもないので白々しい返事になってしまった。
同じ道を歩むかは分からないが同じような道程を辿ることは分かった。
リュードたちもベギーオに挨拶をして、チッパに向かうつもりであった。
次の大人の試練となっているダンジョンの最寄り町がチッパなのである。
だからベギーオの領地で行われる大人の試練を早く終わらせて次に行ってしまおうと考えていた。
早くしないとクゼナの石化が進んで手遅れになってしまうとラストの焦りも大きくなっている。
とは言ってもベギーオの治める領地は4つの中でも1番大きい。
広い分だけ移動にも時間がかかる。
さらにラストはどれだけ嫌であってもベギーオのところに挨拶に行かなければならない。
ベギーオがラストを嫌っていてこの先に何が待ち受けているのかを考えると不安になる。
顔も自然と険しくなるのも仕方ないのであるがもう1つラストの顔が険しくなる理由があった。
「いや、すまないな! しかしだ、大人数で旅をするというのも悪くはないものだろう?」
何の因果なのか赤獅子人族の王子レヴィアンもリュードたちに同行していた。
人数的にみるとレヴィアン一行にリュードたちが同行しているといった方が正しいかもしれない。
ラストの大人の試練を手伝いに来たのでも、ルフォンを追いかけてきたのでもない。
たまたま、偶然に出会ったのである。
「はっはっはっ、このような偶然もあるのだな!」
レヴィアンはレヴィアンで任された仕事をこなすためにティアローザ国内を回っていた。
幸か不幸か運命的にも一時的に道程が一緒になってしまったのである。
同じ道を同じ方向に向かっている。
同じく歩きでの移動だし、顔を知らない中ではないので変に距離を空けるのも何だかおかしい。
レヴィアンからの申し入れもあって一緒に行けるところまでは一緒に行くことになったのであった。
予想はしていたけどレヴィアンは物静かとは遠い獣人である。
比較的穏やかにしていた旅が一気に賑やかなものとなる。
「魔物が俺に任せておけばいい! 迷惑をかけたからな、魔物ぐらい倒してみせるさ!」
短い間だしこれはこれでいいとリュードは思う。
ラストはまだまだ旅慣れておらず獣人たちの勢いに押されて少し疲れていた。
あとはバラーとレヴィアンがリュードに近くてラストはそれも不満である。
時々ちょっと近づいたり、ふと話すことができなくてムッとしているところもあった。
「汗をおかきにはなられていませんか?」
「いや……かいてないよ」
特にバラーがリュードに近い。
ヴェルデガーの昔話なんかをリュードにするのでリュードも興味を持って聞いていて、ラストに入り込む余地なんてなかった。
面倒でも一緒にいることを承諾したのには理由もあった。
仮にもレヴィアンは一国の王子である。
ティアローザにとっては貴賓であり、国内で問題があっては困る相手でもある。
そんなレヴィアンと一緒にいればベギーオが何かをしたくても手を出すことができない。
ラスト憎さに国交問題に発展させるほどベギーオも馬鹿ではない。
そんな打算的な考えもないこともなかったのである。
多少ゲンナリする獣人たちの元気さを除けば悪くはない人たち。
リュードはレヴィアンがルフォンのことを諦めていないのではないかと警戒していた。
たとえ他国の王子であろうとルフォンに手を出そうとするなら殴り倒すつもりもあった。
そうレヴィアンに話すと困った顔をしてリュードに謝罪した。
ルフォンは非常に魅力的な女性である。
でもだからといっていきなり決闘を申し込んで奪おうとするなんて自分でも気が短すぎる話であるとレヴィアンは反省していた。
さらに決闘はならずともほとんど負けのようなものだった。
男らしくスッパリと諦める。
ちゃんと自分を省みて行動を改める。
それができるのもレヴィアンという男であった。
今は自分よりも年下なのに実力が上のリュードに興味があった。
バラーもやたらとリュードには下手に出ているし何なら可愛い子を落とす秘訣も知りたいとすら思っている。
ちなみにレヴィアンがルフォンに差し出していた女心を全く理解していないたくさんの串焼きは護衛が美味しくいただいたそうな。
「しかし、やはりヴェルデガーさんのご子息でいらっしゃるシューナリュードさんは違いますな!」
お前は一体誰の護衛なのだとレヴィアンですら聞きたくなるほどリュードを持ち上げる。
分かりやすい褒めてくれるのだけど言い方が巧みで持ち上げ方が上手いので段々と気分が良くなってくる。
「そういえば、君たちはどこに向かっているんだ?」
とりあえず次の町まで一緒であることは確認済みだ。
まだ心の距離まで近づいていないことを感じたレヴィアンはもうちょっと同行出来たらいいのにと思った。
「俺たちはこれから大領主であるサキュロベギーオ様にご挨拶して、それからチッパという町を目指していこうと思っているんだ。そこには獣人族も多く住んでいるらしいんだ」
「あー……そう」
勝手に話し始めてたら聞いちゃったけど聞かなきゃよかった。
「なんだ? まさか同じ行き先かな?」
「いやー、どうだろうな?」
「ウソが下手だな。そんなリアクションじゃ丸わかりじゃないか!」
大笑いするレヴィアン。
そんなに隠すつもりもないので白々しい返事になってしまった。
同じ道を歩むかは分からないが同じような道程を辿ることは分かった。
リュードたちもベギーオに挨拶をして、チッパに向かうつもりであった。
次の大人の試練となっているダンジョンの最寄り町がチッパなのである。
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