230 / 550
第四章
分かってるよ3
しおりを挟む
「そうか! なら一緒にいかないか?」
「馴れ馴れしすぎない?」
「まあ昨日の敵は今日の友だ! そして今日の友は明日の親友だ!」
レヴィアンはリュードの肩に手を回す。
「勝者が敗者にかける言葉はなくても敗者が勝者に敬意を払って友達になるのは構わないだろう?」
「どっちもいい言葉だけど俺の意思ってもんもあるだろ」
「そうだな。じゃあ友になろうじゃないか!」
「嫌だ」
「なんでだ!」
再び大笑いするレヴィアン。
悪い奴ではないとは思う。
獣人族がそういう性格なのか、それとも赤獅子人族の性格か、レヴィアン個人の性格か。
自己肯定力が高く距離の詰め方がエグい。
「もう俺たちは友達だ! だから明日には親友だ!」
1人だけ少年マンガみたいなノリのレヴィアンにリュードも多少は悪くないかと思ってしまう部分もあるのであった。
ーーーーー
やや面倒な奴だと思っていたレヴィアンも役に立つことがあった。
「ようこそいらっしゃいました」
薄い笑みを貼り付けてベギーオはレヴィアンとラストを出迎えた。
ラストだけだったなら形式上の挨拶すらもなく冷たくあしらわれるのがいつものことなのであるが今日はそんなわけにいかない。
なぜならレヴィアンがいるからである。
ニコニコと人の良い笑顔を浮かべたレヴィアンはベギーオと握手を交わして挨拶する。
ちゃんとした礼儀を弁えるならレヴィアンとラストの挨拶のタイミングは分けるべきなのだけれど、一緒の方が早く済んで楽だろうとお誘いいただいたのでさらっと乗っかった。
いつも不快な思いをして帰るだけのベギーオへの挨拶もレヴィアンの前ではそんな態度を取ることができない。
腹の内がどうであっても言葉の上ではラストを歓迎し、大人の試練を応援する。
レヴィアンを不愉快にさせないためにニコニコと笑ってみせて仲の良い兄妹であるかのように見せかける。
ラストはラストでレヴィアンの半歩後ろに下がってさらっと挨拶する。
立場のある相手を役に立つなんて思ったのはこれが初めてであった。
泊まるようにも提案されたけどラストが受け入れるはずもない。
レヴィアンは泊まってもよかったけどラストが断ったのでレヴィアンも断った。
一泊泊まってもてなしを受けるのも礼儀として考えられるのだが、レヴィアンもベギーオよりもリュードたちの方がよかった。
泊まってみればよかったのにというとレヴィアンは少し困った顔をして首を振っていた。
「サキュルラスト様のお兄様にこのようなことを言っていいのか分からないけど何というか……あのサキュロベギーオ様からは少し、嫌な感じがした。俺に向けられたものじゃなさそうだけど不快なことに変わりはない」
どうしても滲み出る殺意を持つほど強い負の感情は抑えても抑えきれずにラストに向かっていた。
それをレヴィアンは敏感に感じっていた。
空気は読めなくてもレヴィアンは人をよく見ている。
むしろレヴィアンは人に対してめざとい方であった。
リュードに対する馴れ馴れしい態度も大丈夫だと思った上でやっていた。
本気で嫌がっているならレヴィアンもやめている。
決闘の時もリュードが本気で怒っていることが分かっていた。
だから決闘を止めようとしたのである。
「何が原因かは知らないけれど……君たちほど付き合いを持ちたいとは思えなかった」
一見するとにこやかなベギーオの殺気をレヴィアンは感じていたので宿泊を断ったのであった。
たった一度でもそのように感じ取れてしまったら関わらない方が良い。
ラストが先にキッパリと断ったのでレヴィアンもそれに乗る形で断ったのであった。
「それにこの国に来てから十分なもてなしは受けている」
ーーーーー
レヴィアンはリュードたちと同じ宿を取り、次の日にリュードたちに合わせて出発した。
「どうですか?」
「何も感じませんね。いないと思います」
リュードたちと一緒にいるのは国の貴賓である。
バレると国際問題になる可能性もあるからかベギーオが人をつけて監視することはなかった。
相手が一枚上手でリュードにも全く気配を掴ませないほどのやり手なこともあり得ないことではない。
ただ念のためルフォンやヴィッツにも尋ねてみたけれど、監視の気配を2人とも感じていないのでひとまずはいないだろう。
「どうだ! それなりに俺もやるだろ!」
「ああ、強いな」
「はっはっ、そうだろう!」
リュードたちとレヴィアンたちを合わせるとそれなりの人数になる。
人が多くなるとそれだけ魔物の方からも手を出しては来なくなる。
襲ってくるアホな魔物もいたけれど護衛たちやレヴィアン自身も素早く動いて魔物は一瞬で片付いてしまった。
大剣を振り回すレヴィアンはいかにもパワータイプだった。
戦っている時も易々と魔物を両断していたので力が強いことは確かである。
なのでパワーにばかり注目が行きがちであるが戦い方も悪くない。
速さもあるし周りもよく見えている。
それでも負けないけどとリュードは思う。
「町が見えてきたな」
「あれがチッパですな」
警戒心が薄れるほどなにもなくチッパにたどり着くことができた。
「それじゃあな」
「そっちも頑張ってくれ」
ここからはリュードたちは大人の試練に向かい、レヴィアンたちは獣人族たちに広報活動をする。
すぐにでもダンジョンに向かいところではあるが、まず大事なのはそのための下準備をしっかりとすることである。
リュードたちはレヴィアンと別れて安全に攻略をするためにもダンジョンについての情報を集める。
チッパは中程度の町でそれなりの規模がある。
町が大きくなれば必要な施設もあるわけで、冒険者ギルドもその中の一つとなる。
チッパにも当然冒険者ギルドがあるのでそこに行く。
ミノタウロスの時は村も小さかったので一人一人に話を聞いていたが大きな町でそんなことをしている時間も労力もない。
情報が集まる冒険者ギルドで聞くのが早い。
「馴れ馴れしすぎない?」
「まあ昨日の敵は今日の友だ! そして今日の友は明日の親友だ!」
レヴィアンはリュードの肩に手を回す。
「勝者が敗者にかける言葉はなくても敗者が勝者に敬意を払って友達になるのは構わないだろう?」
「どっちもいい言葉だけど俺の意思ってもんもあるだろ」
「そうだな。じゃあ友になろうじゃないか!」
「嫌だ」
「なんでだ!」
再び大笑いするレヴィアン。
悪い奴ではないとは思う。
獣人族がそういう性格なのか、それとも赤獅子人族の性格か、レヴィアン個人の性格か。
自己肯定力が高く距離の詰め方がエグい。
「もう俺たちは友達だ! だから明日には親友だ!」
1人だけ少年マンガみたいなノリのレヴィアンにリュードも多少は悪くないかと思ってしまう部分もあるのであった。
ーーーーー
やや面倒な奴だと思っていたレヴィアンも役に立つことがあった。
「ようこそいらっしゃいました」
薄い笑みを貼り付けてベギーオはレヴィアンとラストを出迎えた。
ラストだけだったなら形式上の挨拶すらもなく冷たくあしらわれるのがいつものことなのであるが今日はそんなわけにいかない。
なぜならレヴィアンがいるからである。
ニコニコと人の良い笑顔を浮かべたレヴィアンはベギーオと握手を交わして挨拶する。
ちゃんとした礼儀を弁えるならレヴィアンとラストの挨拶のタイミングは分けるべきなのだけれど、一緒の方が早く済んで楽だろうとお誘いいただいたのでさらっと乗っかった。
いつも不快な思いをして帰るだけのベギーオへの挨拶もレヴィアンの前ではそんな態度を取ることができない。
腹の内がどうであっても言葉の上ではラストを歓迎し、大人の試練を応援する。
レヴィアンを不愉快にさせないためにニコニコと笑ってみせて仲の良い兄妹であるかのように見せかける。
ラストはラストでレヴィアンの半歩後ろに下がってさらっと挨拶する。
立場のある相手を役に立つなんて思ったのはこれが初めてであった。
泊まるようにも提案されたけどラストが受け入れるはずもない。
レヴィアンは泊まってもよかったけどラストが断ったのでレヴィアンも断った。
一泊泊まってもてなしを受けるのも礼儀として考えられるのだが、レヴィアンもベギーオよりもリュードたちの方がよかった。
泊まってみればよかったのにというとレヴィアンは少し困った顔をして首を振っていた。
「サキュルラスト様のお兄様にこのようなことを言っていいのか分からないけど何というか……あのサキュロベギーオ様からは少し、嫌な感じがした。俺に向けられたものじゃなさそうだけど不快なことに変わりはない」
どうしても滲み出る殺意を持つほど強い負の感情は抑えても抑えきれずにラストに向かっていた。
それをレヴィアンは敏感に感じっていた。
空気は読めなくてもレヴィアンは人をよく見ている。
むしろレヴィアンは人に対してめざとい方であった。
リュードに対する馴れ馴れしい態度も大丈夫だと思った上でやっていた。
本気で嫌がっているならレヴィアンもやめている。
決闘の時もリュードが本気で怒っていることが分かっていた。
だから決闘を止めようとしたのである。
「何が原因かは知らないけれど……君たちほど付き合いを持ちたいとは思えなかった」
一見するとにこやかなベギーオの殺気をレヴィアンは感じていたので宿泊を断ったのであった。
たった一度でもそのように感じ取れてしまったら関わらない方が良い。
ラストが先にキッパリと断ったのでレヴィアンもそれに乗る形で断ったのであった。
「それにこの国に来てから十分なもてなしは受けている」
ーーーーー
レヴィアンはリュードたちと同じ宿を取り、次の日にリュードたちに合わせて出発した。
「どうですか?」
「何も感じませんね。いないと思います」
リュードたちと一緒にいるのは国の貴賓である。
バレると国際問題になる可能性もあるからかベギーオが人をつけて監視することはなかった。
相手が一枚上手でリュードにも全く気配を掴ませないほどのやり手なこともあり得ないことではない。
ただ念のためルフォンやヴィッツにも尋ねてみたけれど、監視の気配を2人とも感じていないのでひとまずはいないだろう。
「どうだ! それなりに俺もやるだろ!」
「ああ、強いな」
「はっはっ、そうだろう!」
リュードたちとレヴィアンたちを合わせるとそれなりの人数になる。
人が多くなるとそれだけ魔物の方からも手を出しては来なくなる。
襲ってくるアホな魔物もいたけれど護衛たちやレヴィアン自身も素早く動いて魔物は一瞬で片付いてしまった。
大剣を振り回すレヴィアンはいかにもパワータイプだった。
戦っている時も易々と魔物を両断していたので力が強いことは確かである。
なのでパワーにばかり注目が行きがちであるが戦い方も悪くない。
速さもあるし周りもよく見えている。
それでも負けないけどとリュードは思う。
「町が見えてきたな」
「あれがチッパですな」
警戒心が薄れるほどなにもなくチッパにたどり着くことができた。
「それじゃあな」
「そっちも頑張ってくれ」
ここからはリュードたちは大人の試練に向かい、レヴィアンたちは獣人族たちに広報活動をする。
すぐにでもダンジョンに向かいところではあるが、まず大事なのはそのための下準備をしっかりとすることである。
リュードたちはレヴィアンと別れて安全に攻略をするためにもダンジョンについての情報を集める。
チッパは中程度の町でそれなりの規模がある。
町が大きくなれば必要な施設もあるわけで、冒険者ギルドもその中の一つとなる。
チッパにも当然冒険者ギルドがあるのでそこに行く。
ミノタウロスの時は村も小さかったので一人一人に話を聞いていたが大きな町でそんなことをしている時間も労力もない。
情報が集まる冒険者ギルドで聞くのが早い。
22
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる