人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
527 / 550
第八章

呪いの容疑者を調査せよ!4

しおりを挟む
「コユキ、丁寧に……て、ていね……!」

 やる気を見せるコユキは勢いよくカバンを肩にかけた。
 もうすでにカバンの中は阿鼻叫喚の状態。

 中の人のことを忘れてしまってカバンを肩にかけたので、カバンの中でもみくちゃになった。
 カバンの中に布を突っ込んでおいてよかった。

「……パパ、ママ?」

「だ、大丈夫だよ……」

 遊園地のアトラクションも可愛く思える激しさだった。

「思っていたよりも激しかったな……よいしょ」

 サンジェルはカバンをよじのぼってカバンから顔を出す。

「そうだな……ここから近いしまずは肉屋のコーディーのところに行ってみようか」

 先ほど名前が挙がったうちので一人あるコーディーは、祖父の代から肉屋を営んでいる。
 父親の代までは真面目な人だったが、コーディーはあまり評判が良くない。
 
 家業で長くやっているので食うには困らないが、休みはなく贅沢できるほどの稼ぎはない。
 普段から文句も言いながら働いているコーディーは小人化した人々の中にはいなかった。
 
 それどころか町中を調べた限り、コーディーは相変わらず文句を言いながら働いている。
 特に周りのことを疑問にも思わないのか、それとも何か知っているのか。

「怪しい感じはあるな」

「一つ一つ調べていくしかない」

「それじゃあコユキ頼むぞ」

「むん!」
 
 なんの証拠も無ければとっかかりもない。
 ひとまず怪しいと思う人から調べてみるしかない。
 
「今の時間帯なら肉屋の店舗の方で文句を言いながら働いているはずだ。家の方は別にあるから空いているはずだ」
 
 サンジェルのナビで人目避けて人通りのない路地を進んで移動する。
 コユキはちょっと気をつけて歩いてくれたけど揺れ具合はそんなに変わらず快適とはいかない。

「こ、ここがコーディーの……ウプッ!」

 リュードは何とか大丈夫だったけど、サンジェルは揺れに完全に酔っていた。

「つ、ついた……?」

「大丈夫かルフォン?」

 ルフォンも死にかけていた。
 何とか戻すところまでは耐えたけれど、口を押さえて顔が青くなっている。

「よしよし~」

「ラストあんがとう……」

 ラストがルフォンの背中をさする。
 リュードですら若干酔っているのにラストは全く平気だった。

 意外な強さである。

「ふむ……ダメか」

 コユキが表の玄関をガチャガチャしてみるが開かない。
 こんな状況でも鍵はしっかりかけていっている。

「どうしようか……」

 コユキに出来るかは別として、ドアを破壊なんてすればバレバレになってしまう。
 古い家なので鍵もそんなにいいものでもなさそうなので多少の技術があればピッキングも出来そうだけど、これもコユキじゃ厳しい。

「窓でも開いてないか見てみましょう。コユキ頼むぞ」

「うん」

 コユキは玄関を諦めて家の横に回り込む。
 家そのものが安い作りで、窓もガラス窓ではなく木製の格子窓だった。

「んー!」

 コユキが背伸びして手を伸ばして窓を掴んで揺する。
 開かない。

「次はどうだ?」

「おっ、当たり!」

 家の裏手にある窓を引っ張ってみるとスッと開いた。
 ここは鍵をかけ忘れていたみたいだ。

「ただコユキが入るには窓の位置はちょっと高いな」

「何かないかな?」

「あれどう?」
 
 ちょっと周りを見渡してみると庭道具を入れておく箱が置いてあった。
 それを引きずってきて窓の横に置く。
 
 コユキが箱に乗って窓枠に手をかけて中に入る。

「ほっ!」

「おわっ!」

 上手く着地したコユキだが、衝撃でカバンの中がまた大きく揺れる。

「ルフォン、休んでろ」

「うぅ……ごめんね」

 限界だったルフォンはフラフラとカバンから降りてグッタリと床に寝転ぶ。

「ラスト、頼んだぞ」

「そだね」

 ラストがルフォンに膝枕して面倒を見てくれることになったので、その間にみんなで家の中を探索する。
 散らかっていて、いかにもな一人暮らしの男の家。

 ただの一人暮らしだけでなく生臭い肉の臭いが家に染み付いている。

「今のコンディションにこれはキツイな……」

 コーディーの寝室。
 中年の男の臭いと肉の臭いがしていて、酔っているみんなにとってはかなり辛い。

「あっ、おい! これ見てみろよ!」

 コユキに持ち上げてもらってテーブルの上に乗る。
 ベッド横のテーブルの上に大きめの袋が置いてあった。
 
 何かと開けてみてみたら何とびっくり中身はぎっしりと詰まったお金だった。
 金貨のような高額貨幣はないが、日頃から稼ぎが少ないと文句が言っている男が持っているような金額ではない。
 
 ちょっと前までずっと文句を言っていたのにどこからこんなお金が出てきたのか。

「節約したってこんな金貯めらんないぜ」

「それにあいつよく飲みにも行ってんのにどこでこんなの貯めんだよ?」

「……怪しい金だな」

 毎日飲み屋で愚痴っている安給料の肉屋がこんなお金を貯められるはずが無い。
 節約しているようにも見えないし、どう見ても出所不明なお金である。

 だが出所不明ということが、イコールそれが悪いお金であることも証明はできない。
 
「怪しいお金以外に怪しいものはないな」

 呪いに使いそうなものや関連書物もない。
 お金しかないというのも変な話だけど、探してみても呪いに関わっているような証拠は出てこなかった。

 そんなに広い家じゃない。
 何かが隠されているようなところもない。

「うーん……次は木こりのデルのところに行ってみようか」

 これ以上探しても何も出ないと判断した。
 コーディーの家を出る。

 玄関の鍵を開けて出て行く。
 鍵は閉められないけど、金に手をつけなきゃ侵入者がいたというより鍵のかけ忘れを疑うだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

僻地に追放されたうつけ領主、鑑定スキルで最強の配下たちと共に超大国を創る

瀬戸夏樹
ファンタジー
時は乱世。 ユーベル大公国領主フリードには4人の息子がいた。 長男アルベルトは武勇に優れ、次男イアンは学識豊か、3男ルドルフは才覚持ち。 4男ノアのみ何の取り柄もなく奇矯な行動ばかり起こす「うつけ」として名が通っていた。 3人の優秀な息子達はそれぞれその評判に見合う当たりギフトを授かるが、ノアはギフト判定においてもハズレギフト【鑑定士】を授かってしまう。 「このうつけが!」 そう言ってノアに失望した大公は、ノアを僻地へと追放する。 しかし、人々は知らない。 ノアがうつけではなく王の器であることを。 ノアには自身の戦闘能力は無くとも、鑑定スキルによって他者の才を見出し活かす力があったのである。 ノアは女騎士オフィーリアをはじめ、大公領で埋もれていた才や僻地に眠る才を掘り起こし富国強兵の道を歩む。 有能な武将達を率いる彼は、やがて大陸を席巻する超大国を創り出す。 旧タイトル「僻地に追放されたうつけ領主、鑑定スキルで最強武将と共に超大国を創る」 なろう、カクヨムにも掲載中。

処理中です...