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第一章
イケメンを捧げよ3
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「逃すな!」
村人たちがキリアンを逃すまいと襲いかかってくる。
剣を持った相手に素手で襲いかかってくるとは中々狂っているなとテシアは思う。
ただテシアも容赦がない。
鞘に納めて殺傷力は落ちているとはいっても鞘付きの剣で殴られればバカにならないダメージがある。
テシアは剣で村人を殴り倒す。
ハニアスもメイスで攻撃をしていて2人とも殺さないように頭は狙っていない。
裸のキリアンも少しためらいはありながらも怖い目をして迫り来る村人と戦っている。
「くそッ!」
「武器を持ち出す意味を考えた方がいいよ」
何人か外に出たら村人が農具を武器代わりに持ってきた。
けれど相手が殺傷力のあるものを持ってくるというのならテシアも相応の対応をせねばならない。
テシアが再び剣を抜き放つと村人たちは怖気付いたような顔をした。
「何をしている! このままでは逃げられてしまうぞ!」
男性神官が大きな声で下がろうとした村人を怒鳴りつける。
「ふぅ、相手を選ぶんだな」
小さくため息をついたテシアは右手に持った剣を振り回して農具を切り裂く。
素人が持っている武器でもないただの農具など怖くもない。
そして左手に持った鞘で村人を殴りつける。
「お前が先導してるな?」
そのままテシアは村人の間を駆け抜ける。
向かった先は男性神官。
儀式でも前に立ってお祈りをしていたし、後ろから村人たちに声をかけてけしかけていたのも男性神官だった。
「ひっ!」
剣が迫って男性神官は目をつぶった。
「後で罪を告白してもらうぞ」
殺しはしない。
テシアは鞘を男性神官の頭に真っ直ぐ振り下ろした。
ひどく鈍い音はしたけれど死んでいない。
リーダー的な存在だった男性神官が倒されて村人たちが一気に鼻白む。
「悔い改めなさい」
しかし未だにテシアたちの方が人数的な不利にあることは間違いない。
テシアは手加減はしたがそのまま村人たちを全員倒してしまった。
「……ご容赦ありませんね」
「慈悲をかけて中途半端にすると痛い目を見ることがあるからな。やるなら最後やるんだ」
剣やメイスで殴られて呻き声を上げる村人たちを縄で縛っていく。
「一体何があったのですか……」
「とりあえずこれでも羽織るといい」
戦っている最中は忘れていたのだがキリアンは裸である。
恥ずかしそうにモジモジとしているキリアンにテシアは自分のマントを投げ渡してあげた。
そして村人を縛りながらなにがあったのか説明をする。
「なるほど……そんなことが。ではまた命を救って頂いたことになりますね」
「そうだね。今回はごまかしようもない」
この状況で助けのは自分じゃないというのは謙遜が過ぎて嫌味にもなる。
「あっ、メリノさん……」
村人たちが農具を持っていくのを見ていたメリノはどうしても心配になって洞窟の近くまで来ていた。
最初は3人で村人を倒していくテシアたちに見入っていたのだが、ふと洞窟の奥にある骨に気がついた。
そして骨の横にある、雑多に置かれた物の山に目が引かれたのである。
テシアたちには目もくれず物の山まで走ったメリノは山の上にあったペンダントを手に取った。
「あ……あぁ……」
ペンダントを手に取るメリノの手が震える。
そのペンダントはメリノの息子のものであった。
行商の無事を願い、渡していた物だった。
「殺してやる!」
呆然としていたようなメリノはゆっくりと立ち上がると近くにいた村人に掴みかかった。
「お前らがあの子を!」
普通に考えてたまたまメリノの子供の落とし物がここにあったとは考えにくい。
それならばメリノの子供は白骨死体の山の中ということになる。
「お待ちください!」
「放して! こいつらは悪魔よ!」
ハニアスとキリアンがメリノを止める。
そのままにしておけば噛み付いてでも村人を殺していただろう。
本気で人が暴れるとその力は凄い。
メリノを傷つけるわけにもいかない。
2人では押さえるのでいっぱいいっぱいになっている。
ハニアスは目でテシアに助けを求めるがテシアは止める気もないように動かない。
「メリノさん」
「止めないで! 私はあいつらを……」
「殺すのは後にしよう」
「……はっ?」
「まずは祈ろう」
ようやく動いたテシアは穏やかな声でメリノに話しかけた。
「何を祈るっていうの!」
ペンダントを強く握りしめすぎてメリノの手から血が垂れている。
「息子さんの旅立ちを」
「旅立ち? だってあの子はもう……」
「このようなところに放置されて息子さんの魂は彷徨っていたことでしょう。メリノさんに見つけてもらって、ようやく息子さんは神の御元に旅立つことができるのです」
「……神様のところに」
「彼の旅が穏やかで、そして無事に辿り着けるように祈りましょう。あいつらを殺すことは後でもできますから」
「う……うぅ……う……」
「僕も共に祈りましょう」
メリノの目から涙が流れ出した。
体から力が抜けて膝をつくとテシアも同じく膝をついて視線を合わせる。
メリノの手を取り、優しく開いてあげる。
爪が食い込んで血に濡れた手のひらにテシアがそっと手を重ねると柔らかな光に包まれる。
そしてハンカチを取り出して手を拭いてあげると傷は治っていた。
最後にペンダントも綺麗に拭いて戻してあげる。
「ありがとうございます……ありがとう…………」
母は息子の旅立ちを祈る。
どのような旅であれ、今度こそ穏やかなる旅路になるように。
テシアとハニアスも手を合わせて祈った。
メリノの息子だけではなく、ここで犠牲になった人たちのためにも。
村人たちがキリアンを逃すまいと襲いかかってくる。
剣を持った相手に素手で襲いかかってくるとは中々狂っているなとテシアは思う。
ただテシアも容赦がない。
鞘に納めて殺傷力は落ちているとはいっても鞘付きの剣で殴られればバカにならないダメージがある。
テシアは剣で村人を殴り倒す。
ハニアスもメイスで攻撃をしていて2人とも殺さないように頭は狙っていない。
裸のキリアンも少しためらいはありながらも怖い目をして迫り来る村人と戦っている。
「くそッ!」
「武器を持ち出す意味を考えた方がいいよ」
何人か外に出たら村人が農具を武器代わりに持ってきた。
けれど相手が殺傷力のあるものを持ってくるというのならテシアも相応の対応をせねばならない。
テシアが再び剣を抜き放つと村人たちは怖気付いたような顔をした。
「何をしている! このままでは逃げられてしまうぞ!」
男性神官が大きな声で下がろうとした村人を怒鳴りつける。
「ふぅ、相手を選ぶんだな」
小さくため息をついたテシアは右手に持った剣を振り回して農具を切り裂く。
素人が持っている武器でもないただの農具など怖くもない。
そして左手に持った鞘で村人を殴りつける。
「お前が先導してるな?」
そのままテシアは村人の間を駆け抜ける。
向かった先は男性神官。
儀式でも前に立ってお祈りをしていたし、後ろから村人たちに声をかけてけしかけていたのも男性神官だった。
「ひっ!」
剣が迫って男性神官は目をつぶった。
「後で罪を告白してもらうぞ」
殺しはしない。
テシアは鞘を男性神官の頭に真っ直ぐ振り下ろした。
ひどく鈍い音はしたけれど死んでいない。
リーダー的な存在だった男性神官が倒されて村人たちが一気に鼻白む。
「悔い改めなさい」
しかし未だにテシアたちの方が人数的な不利にあることは間違いない。
テシアは手加減はしたがそのまま村人たちを全員倒してしまった。
「……ご容赦ありませんね」
「慈悲をかけて中途半端にすると痛い目を見ることがあるからな。やるなら最後やるんだ」
剣やメイスで殴られて呻き声を上げる村人たちを縄で縛っていく。
「一体何があったのですか……」
「とりあえずこれでも羽織るといい」
戦っている最中は忘れていたのだがキリアンは裸である。
恥ずかしそうにモジモジとしているキリアンにテシアは自分のマントを投げ渡してあげた。
そして村人を縛りながらなにがあったのか説明をする。
「なるほど……そんなことが。ではまた命を救って頂いたことになりますね」
「そうだね。今回はごまかしようもない」
この状況で助けのは自分じゃないというのは謙遜が過ぎて嫌味にもなる。
「あっ、メリノさん……」
村人たちが農具を持っていくのを見ていたメリノはどうしても心配になって洞窟の近くまで来ていた。
最初は3人で村人を倒していくテシアたちに見入っていたのだが、ふと洞窟の奥にある骨に気がついた。
そして骨の横にある、雑多に置かれた物の山に目が引かれたのである。
テシアたちには目もくれず物の山まで走ったメリノは山の上にあったペンダントを手に取った。
「あ……あぁ……」
ペンダントを手に取るメリノの手が震える。
そのペンダントはメリノの息子のものであった。
行商の無事を願い、渡していた物だった。
「殺してやる!」
呆然としていたようなメリノはゆっくりと立ち上がると近くにいた村人に掴みかかった。
「お前らがあの子を!」
普通に考えてたまたまメリノの子供の落とし物がここにあったとは考えにくい。
それならばメリノの子供は白骨死体の山の中ということになる。
「お待ちください!」
「放して! こいつらは悪魔よ!」
ハニアスとキリアンがメリノを止める。
そのままにしておけば噛み付いてでも村人を殺していただろう。
本気で人が暴れるとその力は凄い。
メリノを傷つけるわけにもいかない。
2人では押さえるのでいっぱいいっぱいになっている。
ハニアスは目でテシアに助けを求めるがテシアは止める気もないように動かない。
「メリノさん」
「止めないで! 私はあいつらを……」
「殺すのは後にしよう」
「……はっ?」
「まずは祈ろう」
ようやく動いたテシアは穏やかな声でメリノに話しかけた。
「何を祈るっていうの!」
ペンダントを強く握りしめすぎてメリノの手から血が垂れている。
「息子さんの旅立ちを」
「旅立ち? だってあの子はもう……」
「このようなところに放置されて息子さんの魂は彷徨っていたことでしょう。メリノさんに見つけてもらって、ようやく息子さんは神の御元に旅立つことができるのです」
「……神様のところに」
「彼の旅が穏やかで、そして無事に辿り着けるように祈りましょう。あいつらを殺すことは後でもできますから」
「う……うぅ……う……」
「僕も共に祈りましょう」
メリノの目から涙が流れ出した。
体から力が抜けて膝をつくとテシアも同じく膝をついて視線を合わせる。
メリノの手を取り、優しく開いてあげる。
爪が食い込んで血に濡れた手のひらにテシアがそっと手を重ねると柔らかな光に包まれる。
そしてハンカチを取り出して手を拭いてあげると傷は治っていた。
最後にペンダントも綺麗に拭いて戻してあげる。
「ありがとうございます……ありがとう…………」
母は息子の旅立ちを祈る。
どのような旅であれ、今度こそ穏やかなる旅路になるように。
テシアとハニアスも手を合わせて祈った。
メリノの息子だけではなく、ここで犠牲になった人たちのためにも。
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