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第一章
彼女の正体
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朝起きたハニアスはすぐにマリアベルのところに挨拶に向かった。
すでにトレーニングをしていたマリアベルはハニアスの様子を見てこの分なら大丈夫そうだと安心した。
「教会で出来ることは私に任せなさい。ビノシ商会の方は任せたよ」
「はい!」
ビノシ商会とマリアベルは関わりがない。
変に関わっていくよりもハニアスに任せた方がいいだろうと考えた。
急ぐように去っていくハニアスの背中を見送ってマリアベルはゆっくりと立ち上がった。
「大主教、こちらが資料です」
「ありがとう。ふむ……ヘゲレッタ大主教は?」
「今起きられたところです。お呼びしますか?」
「いや、私の方から赴こう」
「承知いたしました」
教会勢力がむやみやたらと犯罪組織の取り締まりをするわけにはいかない。
けれど教会には教会のできることがある。
マリアベルは汗を拭くと服装を整えてヘゲレッタ大主教のところに向かった。
目的は協力を要請するため。
マリアベルは大主教であるがこの辺りの担当ではなかった。
ある程度の融通は利かせられるがやはり動こうと思ったらこの地区の担当の大主教の協力や許可もいる。
「どうもヘゲレッタ大主教」
「ああ、マリアベル大主教、相変わらず朝から元気だな」
白髪白髭の穏やかそうな高齢の男性がヘゲレッタ大主教である。
「時間は大丈夫ですか?」
「もちろん、君のために割く時間ならいくらでも作るよ」
「ありがとうございます」
穏やかそうな笑みを浮かべてマリアベルをソファーに促す。
「それで、どうかしたのかな?」
穏やかな人柄と聡明さを持ち合わせたヘゲレッタは人気のある神官で、マリアベルも若い頃ヘゲレッタに教えを受けたことがある。
「問題が起きまして、助けてほしいのです」
「問題? 何があったんだい?」
薄い緑の瞳がマリアベルを見る。
「テシアという神官を知っておりますか?」
「ああ、教会で預かることになった皇女様だろう? その中でも君たち肉体派が面倒を見ると聞いているよ」
「そうです。そのテシアなのですがさらわれてしまったのです」
「なに? どうして……」
「まだそれはわかりません。ですがどうやらゲレンネルの犯罪組織が関わっていて、ゲレンネルのどこかに捕われているようなんです」
「ふぅーむ、なんと……」
ヘゲレッタは眉を寄せて困ったような表情を浮かべて深く椅子に腰掛けた。
「助けたいというのは分かる。しかし教会が容易く武力行使して犯罪者組織に関わることはできないぞ?」
捕われている場所が分かるなら一度の武力行使で済む。
なんとか理由をつけて騎士を動かすことができるが広く捜索するようなことは批判の声が出かねない。
「それは承知しております。今回お願いしたいのは完全な武力行使ではありません。それに教会が動かねばならない理由があるのです」
「動かねばならない理由から聞かせてもらおう」
「他言しないでいただきたいのです」
「もちろん。秘密にしよう」
「テシアは神の寵愛を受けし聖女なのです」
「なに?」
マリアベルから聞かされた衝撃の話にヘゲレッタが大きく目を見開いた。
「けれど当代の聖女はデルベラードにいる……」
「そうです。彼女は聖女ですがテシアも聖女なのです」
「それは本当なのか?」
「本当です。教皇様にもご確認頂いたのです」
「……おお……神よ。そのようなことが……」
少しめまいがするような思いがしてヘゲレッタは目を揉んだ。
聞いたことがない話。
1つの時代に2人の聖女が同時に存在しているなど長く生きてきたヘゲレッタも経験がない。
しかし教皇まで認めたというのなら本当の話なのだろうと思った。
それよりも大問題なのは聖女たるテシアがさらわれたということである。
「なぜそのようなことを秘密にしていた?」
「本人がそう望んだからです」
そもそもなぜ聖女であることをヘゲレッタにも知らされていなかったのか。
知っていたのなら騎士を同行させることだってできたはずだ。
けれどテシアは聖女として表に出ることを望まなかった。
あくまでもただのテシアとした生きたいと望み、教皇は時に教会のために力になってくれることを約束してそれを受け入れたのだ。
「まあ……今代の教皇様は柔軟な考えのお方であられるからな……」
言葉は柔らかく言っているが今の教皇は少し変わり者なのである。
良く言えば型にとらわれない思考の持ち主なのだがなかなか受け入れるのも大変な側面もある。
「……分かった。とりあえずテシア聖女は助けなければならない。マリアベル大主教が考える作戦はなんだ? 完全な武力行使ではないというのはどういうことだ?」
「それはですね……」
マリアベルはヘゲレッタに作戦を伝えた。
作戦というかマリアベルがやろうとしていたことはハニアスの手助けであった。
「なるほどね。それならばいいだろう。本当にテシア聖女を助けられるのか?」
「きっと大丈夫です。若い力を信じましょう」
「許可をする。神官騎士もマリアベル大主教が好きに指示を出してくれて構わない」
「ありがとうございます、ヘゲレッタ大主教」
「ふふふ、聖女がいるなら私も肉体派に派閥を移そうかな」
「いつでも歓迎しますよ」
ヘゲレッタの許可を得てマリアベルは動き出した。
「……もう1人の聖女……このことを他の者が知ったらきっと彼女を欲しがるだろうな。デルベラードを羨ましがっている連中も多い。一度会っておきたいものだ」
すでにトレーニングをしていたマリアベルはハニアスの様子を見てこの分なら大丈夫そうだと安心した。
「教会で出来ることは私に任せなさい。ビノシ商会の方は任せたよ」
「はい!」
ビノシ商会とマリアベルは関わりがない。
変に関わっていくよりもハニアスに任せた方がいいだろうと考えた。
急ぐように去っていくハニアスの背中を見送ってマリアベルはゆっくりと立ち上がった。
「大主教、こちらが資料です」
「ありがとう。ふむ……ヘゲレッタ大主教は?」
「今起きられたところです。お呼びしますか?」
「いや、私の方から赴こう」
「承知いたしました」
教会勢力がむやみやたらと犯罪組織の取り締まりをするわけにはいかない。
けれど教会には教会のできることがある。
マリアベルは汗を拭くと服装を整えてヘゲレッタ大主教のところに向かった。
目的は協力を要請するため。
マリアベルは大主教であるがこの辺りの担当ではなかった。
ある程度の融通は利かせられるがやはり動こうと思ったらこの地区の担当の大主教の協力や許可もいる。
「どうもヘゲレッタ大主教」
「ああ、マリアベル大主教、相変わらず朝から元気だな」
白髪白髭の穏やかそうな高齢の男性がヘゲレッタ大主教である。
「時間は大丈夫ですか?」
「もちろん、君のために割く時間ならいくらでも作るよ」
「ありがとうございます」
穏やかそうな笑みを浮かべてマリアベルをソファーに促す。
「それで、どうかしたのかな?」
穏やかな人柄と聡明さを持ち合わせたヘゲレッタは人気のある神官で、マリアベルも若い頃ヘゲレッタに教えを受けたことがある。
「問題が起きまして、助けてほしいのです」
「問題? 何があったんだい?」
薄い緑の瞳がマリアベルを見る。
「テシアという神官を知っておりますか?」
「ああ、教会で預かることになった皇女様だろう? その中でも君たち肉体派が面倒を見ると聞いているよ」
「そうです。そのテシアなのですがさらわれてしまったのです」
「なに? どうして……」
「まだそれはわかりません。ですがどうやらゲレンネルの犯罪組織が関わっていて、ゲレンネルのどこかに捕われているようなんです」
「ふぅーむ、なんと……」
ヘゲレッタは眉を寄せて困ったような表情を浮かべて深く椅子に腰掛けた。
「助けたいというのは分かる。しかし教会が容易く武力行使して犯罪者組織に関わることはできないぞ?」
捕われている場所が分かるなら一度の武力行使で済む。
なんとか理由をつけて騎士を動かすことができるが広く捜索するようなことは批判の声が出かねない。
「それは承知しております。今回お願いしたいのは完全な武力行使ではありません。それに教会が動かねばならない理由があるのです」
「動かねばならない理由から聞かせてもらおう」
「他言しないでいただきたいのです」
「もちろん。秘密にしよう」
「テシアは神の寵愛を受けし聖女なのです」
「なに?」
マリアベルから聞かされた衝撃の話にヘゲレッタが大きく目を見開いた。
「けれど当代の聖女はデルベラードにいる……」
「そうです。彼女は聖女ですがテシアも聖女なのです」
「それは本当なのか?」
「本当です。教皇様にもご確認頂いたのです」
「……おお……神よ。そのようなことが……」
少しめまいがするような思いがしてヘゲレッタは目を揉んだ。
聞いたことがない話。
1つの時代に2人の聖女が同時に存在しているなど長く生きてきたヘゲレッタも経験がない。
しかし教皇まで認めたというのなら本当の話なのだろうと思った。
それよりも大問題なのは聖女たるテシアがさらわれたということである。
「なぜそのようなことを秘密にしていた?」
「本人がそう望んだからです」
そもそもなぜ聖女であることをヘゲレッタにも知らされていなかったのか。
知っていたのなら騎士を同行させることだってできたはずだ。
けれどテシアは聖女として表に出ることを望まなかった。
あくまでもただのテシアとした生きたいと望み、教皇は時に教会のために力になってくれることを約束してそれを受け入れたのだ。
「まあ……今代の教皇様は柔軟な考えのお方であられるからな……」
言葉は柔らかく言っているが今の教皇は少し変わり者なのである。
良く言えば型にとらわれない思考の持ち主なのだがなかなか受け入れるのも大変な側面もある。
「……分かった。とりあえずテシア聖女は助けなければならない。マリアベル大主教が考える作戦はなんだ? 完全な武力行使ではないというのはどういうことだ?」
「それはですね……」
マリアベルはヘゲレッタに作戦を伝えた。
作戦というかマリアベルがやろうとしていたことはハニアスの手助けであった。
「なるほどね。それならばいいだろう。本当にテシア聖女を助けられるのか?」
「きっと大丈夫です。若い力を信じましょう」
「許可をする。神官騎士もマリアベル大主教が好きに指示を出してくれて構わない」
「ありがとうございます、ヘゲレッタ大主教」
「ふふふ、聖女がいるなら私も肉体派に派閥を移そうかな」
「いつでも歓迎しますよ」
ヘゲレッタの許可を得てマリアベルは動き出した。
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