怖がりで優しくて、とても恐ろしい人 〜ビビリヤクザに恋人になるよう攻められています〜

りりぃこ

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怒ってない

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 着替えた弦人とハナを乗せて、車はまた走り出した。

 そしてすぐ近くの小綺麗なラブホテルに着くと、市原は降りずに弦人とハナだけ降ろさせた。



「この時間からチェックインできるホテルがなくてね、ラブホになっちゃって申し訳ない」

「あー……いえ……」

 以前にラブホテルに来たときによりは平和的ではある。

 しかし、ここに来たと言うとこは。


「ほら、ハナちゃんもシャワー浴びておいで。結構さっき歩いたから汗かいてるでしょ」

 ホテルに入り、すぐに弦人はシャワーを浴びた。

 ハナも素直にシャワーを浴びる。

 シャワーから上がるとすぐに弦人はハナの髪をドライヤーで乾かしはじめた。

「あの、自分でできる」

 ハナはそう抵抗したが、無視して弦人は鼻歌を歌いながらドライヤーを続ける。


 ドライヤーを終えると、弦人はハナをベッドに座らせて、自分も隣に座った。

 ドキドキしているハナに、弦人は自分のスマホを差し出した。

「これ……!!」

 スマホの中にはたくさんのさっきの枝垂れ桜の写真かあった。

「うわぁキレイ。弦人さん写真取るの上手いですね!」

 雪の輝きと空の星の耀きが合わさり熔けて、幻想的な写真になっていた。

「ロマンチックな場所でしたね」

「次は春に行こう。枝垂れ桜なんだから、桜が咲けばもっときれいだよ」

「見たい!」

 弦人の言葉に、ハナは嬉しそうに頷いた。


「本当の計画では、あの場所で、ハナちゃんをいっぱいぎゅってしてあげてキスでもする予定だったんだ」

「ふぇ?」

「でも全然ロマンチックにならなくて」

 弦人は恥ずかしそうに笑った。

「私、確かになんかロマンチックに振る舞ってなかったかも」

「あはは。まあうまくいかないもんだよね」

 弦人はそう言って、ハナの手を握った。

「だから、今からいっぱいぎゅってしてあげようと思うんだ。ハナちゃんのリクエスト通りに」

「私のリクエスト?」

 ハナは首を傾げた。

「私、そんな事言いました?」

「酔っ払いながら言ったよ。優しくされると池田隼の事を思い出しちゃうけど優しくぎゅってされたいって」

「な、そ、そんな私身勝手な事を……!?」

 ハナはギョッとして、そして真っ赤になった。

「ぎゅってしてほしいなんて、そんな私……」

「でも、あの初めての日以来俺がハナちゃんを抱かないから、怒ってると思って拗ねてたじゃない」

「そんな事まで私言ったんですか!?」

「マーメイドのみんなの前でね」

「嘘、私恥ずかしくて仕事行けない……」

 ハナは真っ赤になって顔を手で覆った。

「あと、今度は俺も裸になってほしいって」

「そんな図々しい事まで……」

 真っ赤になったままベッドに倒れ込んでゴロゴロするハナが、弦人は面白くなってきてしまった。


「ねえハナちゃん」

 弦人は、ベッドで転がっているハナに覆いかぶさるようにして言った。

「酔っ払ってる最中も言ったんだけど、俺は怒ってないよ。あの日以来抱かなかったのは、どうすればいいかわからなかっただけなんだ」

「どうすれば?」

「だって今度は俺の肌にも触れさせてあげるって約束したから、どうしようかなって」

 弦人はそう言って、ハナの手をとって自分の首筋を触れさせた。

 ハナはもう片方の手で、首筋のシャツのボタンに触れようとした。するとその手はすぐに捕まってシャツから剥がされた。


「でも、あんなふうに可愛くおねだりされちゃったら、何が何でも抱いてあげるしかないよね?いくらハナちゃんが池田隼の事を思い出すとしても……。ううん、思い出せなくなるくらい」

 弦人はそう言って、ハナの口に軽くキスをした。


「ぎゅってしてほしいんだよね?」

「……うん。図々しいかもしれないけど」

「そんなことないよ。それじゃあ」


 弦人は、ポケットから何やら大きめの黒いスカーフを取り出した。

「これ、使ってないきれいなやつだから」

 そう言うと、弦人はハナの顔の近くに細長く折ったスカーフを持ってきた。



 気づくとハナは目の前が真っ暗になった。
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