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のぼせちゃう
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「俺、こんな性格だからね。どうしても舐められちゃうでしょ。せめて入れ墨は思いっきり怖くしてやろうと思ってこうしたんだ。別に特別な想い入れも無いし、格好いい覚悟とかも無い。ただヤクザとして舐められないために仕方なくいれてるだけ。だから、やっぱり似合わないよね」
「ううん」
ハナはすぐさま否定した。
「とっても似合ってる。この入れ墨は弦人さんに似てる」
心からそう言うと、弦人は嬉しそうに照れた。そして真っ直ぐにハナを見つめて真剣に言った。
「俺は背中に鬼をいれてるヤクザだから、普通のハナちゃんの暮らしていた世界の普通の人ではないんだ。そしてこれからも普通の人にはなれない。
だから、ハナちゃんがこちらに堕ちて来てほしい」
「堕ちて……」
ハナは意味を噛みしめるように呟いた。弦人は笑いながらハナの背中をポンポンと叩いて安心させるように言った。
「今すぐじゃなくていい。ただ、覚えておいてほしいだけ」
一緒に風呂に入って、ハナは弦人の身体を洗う。思った以上に筋肉質だ。
「入れ墨より、この筋肉が似合わない……」
「どういう事?」
弦人は苦笑した。
「ほら、ハナちゃんも洗ってあげる」
「え、いいですよ」
「何恥ずかしがってるのさ。ほらほらぁ」
「やっぱり変態ヤクザだ!」
弦人は楽しそうに笑った。
広い湯船に一緒に向かい合って浸かりながら、ハナは弦人に言った。
「正直、思った以上の衝撃的で。我に返った気がするけど一周して元に戻ったと言うか」
「逃げない?」
「今のところは、逃げるつもりは無いです」
「今のところっていうのが正直だなあ」
弦人はハナの身体をくるりと半回転させると、ハナを背中から抱きしめた。
「良かった。見せるのが怖かった」
ハナは、弦人の真っ青な腕に抱かれながら言った。
「幸せだな。この肌のまま、ハナちゃんを抱きしめられるんだ」
弦人は嬉しそうに、ハナの頭に顔をうずめてきた。
「私も今、何だか幸せです」
ハナがポツリとこぼした言葉に、弦人は目を丸くした。
「幸せ?幸せ?幸せって」
「逃げるつもりは無いって言ったけど、どちらかと言うと、私のほうがもう逃げれないのかもしれない」
ハナはそう言うと、弦人の方を振り向いた。
「私、弦人さんの事好きみたい」
あの入れ墨を見ても、逃げたいとは思わなかった。
あの鬼。むしろあの鬼こそ弦人の本質だと思っているハナだが、それを薄々感じながらも弦人の優しさに抗えなくなってきている自覚があった。
「池田隼の事はもういいの?」
弦人が恐る恐るたずねると、ハナは小さくため息をついた。
「弦人さん、わかってて話させましたよね?」
ハナの言葉に、現在はニヤリと笑った。
「まあ、ヤクザの店の金盗むようなやつ、どう考えてもロクなやつではないだろうとは思ってたしね。
昔、彼氏に売られた女のコの話とかよく聞けば、大体はじめはいい思い出しか話さないけど、よくよく喋らせて行けば、そんなでもない、美化してたわ、みたいになるんだよね」
弦人の言葉に、ハナは寂しそうに言った。
「初めての恋人だったんです。のめり込んじゃって。全部言いなりだった気がする」
「初めての恋なら、そりゃのめり込んで当然だよ」
弦人は優しくハナを抱きしめながらそう肯定してくれる。ハナは弦人の腕を強く掴んだ。
「初めて隼とセックスしようとした日、私が痛がって中断しちゃった日、その日から隼はなんだか冷たくなって、キスも、布団温めてくれることもしなくなったんです。怒ったんだと思う。私が上手くできなかったから」
「セックスはうまくできる出来ないで怒るようなもんじゃないよ。うまくできなかったら二人でまたしてみればいいだけだし」
弦人は慰めるように言った。
ハナが、『怒ってるからあの日以来抱いてくれない』などと言い出したのは、この事がトラウマだったのかもしれない。
「今度は弦人さんにのめり込んじゃってるのかもしれない。だって弦人さんの事、怖いのに怖くないんだもん。堕ちてほしいって言われたけど、怖くない」
「いいよ。いっぱいのめり込んで」
弦人はそう優しく言ってハナを顔をしっかりと掴んで深くキスをする。
「のぼせちゃう」
ハナが真っ赤な顔でうったえるがやめてあげられそうもなかった。
~~~
「本当のぼせちゃったね」
弦人はベッドの上で冷たいタオルを頭に乗せて水分補給をしているハナを扇ぎながら、平謝りしていた。
「いえ、こちらこそなんだか申し訳ない」
ハナはボンヤリしながら言った。
「ごめんね。大丈夫?ラムネ食べる?」
「ラムネは万能薬じゃないですよ」
そう言いながらもハナは一粒もらう。
「あー、でもだいぶ良くなってきました」
「そう?でもまだ寝てなよ。寝不足もあったのかも。時間が来たら起こすから」
そう言って弦人はハナにベッドを譲るように立ち上がった。
「弦人さんには何をかえせばいいんですか」
ハナが、弦人の背に問いかけた。
「優しくしてもらってばっかり。私にしてもらいたいことはないですか?」
それを聞いた弦人は、ハナの方を振り向くと、真面目な顔で答えた。
「二つだけ、ある」
弦人は緊張した面持ちで、ハナのスマホをハナに差し出した。
「池田隼の、連絡先とメッセージを消してほしい。女々しくて申し訳無いけど、やっぱりあの」
「分かりました。すぐに消します」
ハナは弦人が言っている途中でスマホを受け取ると、サッサと隼の連絡先を消した。
「はい、どうぞご確認を」
あっさりと消したハナに、弦人はポカンとした。
「えっ。あー、ありがとう」
「いえ、なんだかんだスッキリしました」
「女のコって、吹っ切れると結構ドライだよね……」
弦人は苦笑しながらスマホを確認した。
「あともう1つ、前のアパートを解約してきてほしい。池田隼の帰ってくる場所として残しておいたあのアパートを無くしてほしいんだ」
弦人が言うと、ハナはニッコリと笑った。
「そうですね。もう必要ないですね。引っ越しの準備したらすぐにでも……」
「引っ越しの手伝いならうちの若い衆使っていいから。なるべく早くしてほしい」
「はぁ。分かりました」
戸惑うハナに、弦人は申し訳なさそうに言った。
「一秒でも早く、ハナちゃんから池田隼を追い出したい。もし池田隼がハナちゃんの所に戻ってきたら……」
「戻ってきても、もう何もありません」
ハナははっきりと言った。
「ちゃんと追い返します。だから、心配しないで」
「本当?」
「はい。あ、でも確かに賃料勿体ないから早めに解約するのは大賛成ですね。お手伝い、お願いできますか」
「手配しておく」
弦人はそう言って嬉しそうにハナを撫でた。
「ううん」
ハナはすぐさま否定した。
「とっても似合ってる。この入れ墨は弦人さんに似てる」
心からそう言うと、弦人は嬉しそうに照れた。そして真っ直ぐにハナを見つめて真剣に言った。
「俺は背中に鬼をいれてるヤクザだから、普通のハナちゃんの暮らしていた世界の普通の人ではないんだ。そしてこれからも普通の人にはなれない。
だから、ハナちゃんがこちらに堕ちて来てほしい」
「堕ちて……」
ハナは意味を噛みしめるように呟いた。弦人は笑いながらハナの背中をポンポンと叩いて安心させるように言った。
「今すぐじゃなくていい。ただ、覚えておいてほしいだけ」
一緒に風呂に入って、ハナは弦人の身体を洗う。思った以上に筋肉質だ。
「入れ墨より、この筋肉が似合わない……」
「どういう事?」
弦人は苦笑した。
「ほら、ハナちゃんも洗ってあげる」
「え、いいですよ」
「何恥ずかしがってるのさ。ほらほらぁ」
「やっぱり変態ヤクザだ!」
弦人は楽しそうに笑った。
広い湯船に一緒に向かい合って浸かりながら、ハナは弦人に言った。
「正直、思った以上の衝撃的で。我に返った気がするけど一周して元に戻ったと言うか」
「逃げない?」
「今のところは、逃げるつもりは無いです」
「今のところっていうのが正直だなあ」
弦人はハナの身体をくるりと半回転させると、ハナを背中から抱きしめた。
「良かった。見せるのが怖かった」
ハナは、弦人の真っ青な腕に抱かれながら言った。
「幸せだな。この肌のまま、ハナちゃんを抱きしめられるんだ」
弦人は嬉しそうに、ハナの頭に顔をうずめてきた。
「私も今、何だか幸せです」
ハナがポツリとこぼした言葉に、弦人は目を丸くした。
「幸せ?幸せ?幸せって」
「逃げるつもりは無いって言ったけど、どちらかと言うと、私のほうがもう逃げれないのかもしれない」
ハナはそう言うと、弦人の方を振り向いた。
「私、弦人さんの事好きみたい」
あの入れ墨を見ても、逃げたいとは思わなかった。
あの鬼。むしろあの鬼こそ弦人の本質だと思っているハナだが、それを薄々感じながらも弦人の優しさに抗えなくなってきている自覚があった。
「池田隼の事はもういいの?」
弦人が恐る恐るたずねると、ハナは小さくため息をついた。
「弦人さん、わかってて話させましたよね?」
ハナの言葉に、現在はニヤリと笑った。
「まあ、ヤクザの店の金盗むようなやつ、どう考えてもロクなやつではないだろうとは思ってたしね。
昔、彼氏に売られた女のコの話とかよく聞けば、大体はじめはいい思い出しか話さないけど、よくよく喋らせて行けば、そんなでもない、美化してたわ、みたいになるんだよね」
弦人の言葉に、ハナは寂しそうに言った。
「初めての恋人だったんです。のめり込んじゃって。全部言いなりだった気がする」
「初めての恋なら、そりゃのめり込んで当然だよ」
弦人は優しくハナを抱きしめながらそう肯定してくれる。ハナは弦人の腕を強く掴んだ。
「初めて隼とセックスしようとした日、私が痛がって中断しちゃった日、その日から隼はなんだか冷たくなって、キスも、布団温めてくれることもしなくなったんです。怒ったんだと思う。私が上手くできなかったから」
「セックスはうまくできる出来ないで怒るようなもんじゃないよ。うまくできなかったら二人でまたしてみればいいだけだし」
弦人は慰めるように言った。
ハナが、『怒ってるからあの日以来抱いてくれない』などと言い出したのは、この事がトラウマだったのかもしれない。
「今度は弦人さんにのめり込んじゃってるのかもしれない。だって弦人さんの事、怖いのに怖くないんだもん。堕ちてほしいって言われたけど、怖くない」
「いいよ。いっぱいのめり込んで」
弦人はそう優しく言ってハナを顔をしっかりと掴んで深くキスをする。
「のぼせちゃう」
ハナが真っ赤な顔でうったえるがやめてあげられそうもなかった。
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「本当のぼせちゃったね」
弦人はベッドの上で冷たいタオルを頭に乗せて水分補給をしているハナを扇ぎながら、平謝りしていた。
「いえ、こちらこそなんだか申し訳ない」
ハナはボンヤリしながら言った。
「ごめんね。大丈夫?ラムネ食べる?」
「ラムネは万能薬じゃないですよ」
そう言いながらもハナは一粒もらう。
「あー、でもだいぶ良くなってきました」
「そう?でもまだ寝てなよ。寝不足もあったのかも。時間が来たら起こすから」
そう言って弦人はハナにベッドを譲るように立ち上がった。
「弦人さんには何をかえせばいいんですか」
ハナが、弦人の背に問いかけた。
「優しくしてもらってばっかり。私にしてもらいたいことはないですか?」
それを聞いた弦人は、ハナの方を振り向くと、真面目な顔で答えた。
「二つだけ、ある」
弦人は緊張した面持ちで、ハナのスマホをハナに差し出した。
「池田隼の、連絡先とメッセージを消してほしい。女々しくて申し訳無いけど、やっぱりあの」
「分かりました。すぐに消します」
ハナは弦人が言っている途中でスマホを受け取ると、サッサと隼の連絡先を消した。
「はい、どうぞご確認を」
あっさりと消したハナに、弦人はポカンとした。
「えっ。あー、ありがとう」
「いえ、なんだかんだスッキリしました」
「女のコって、吹っ切れると結構ドライだよね……」
弦人は苦笑しながらスマホを確認した。
「あともう1つ、前のアパートを解約してきてほしい。池田隼の帰ってくる場所として残しておいたあのアパートを無くしてほしいんだ」
弦人が言うと、ハナはニッコリと笑った。
「そうですね。もう必要ないですね。引っ越しの準備したらすぐにでも……」
「引っ越しの手伝いならうちの若い衆使っていいから。なるべく早くしてほしい」
「はぁ。分かりました」
戸惑うハナに、弦人は申し訳なさそうに言った。
「一秒でも早く、ハナちゃんから池田隼を追い出したい。もし池田隼がハナちゃんの所に戻ってきたら……」
「戻ってきても、もう何もありません」
ハナははっきりと言った。
「ちゃんと追い返します。だから、心配しないで」
「本当?」
「はい。あ、でも確かに賃料勿体ないから早めに解約するのは大賛成ですね。お手伝い、お願いできますか」
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弦人はそう言って嬉しそうにハナを撫でた。
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