怖がりで優しくて、とても恐ろしい人 〜ビビリヤクザに恋人になるよう攻められています〜

りりぃこ

文字の大きさ
33 / 68

浮かれていた

しおりを挟む
 チェックアウトの時間より少し延長して、ゆっくりと寝てから、ハナと弦人はまた市原の運転する車で帰っていった。



 昼過ぎにマンションに着き、弦人に優しくキスをされてから車を降りた。



 こんなに幸せなのは初めてだ。

 ハナは正直、浮かれていた。



「今お帰りですかぁ~」

 部屋に入ろうとしたとき、隣の部屋からカンナが顔を出してニヤニヤと笑っていた。

「あ、カンナさん。なんか昨日は途中で抜けちゃったみたいでごめんね」

「あーあー、そんな事はいいのいいの。それより、どう?いっぱいやってきた?」

「やってきた?」

「昨日、社長が抱いてくれないって駄々こねてたじゃん」

「!!や、やっぱり本当に私そんな事言ったの!?」

 ハナは真っ赤になった。

「やだもうー忘れてー」

「無理だよ。あの場にいた皆聞いてたもん。今日仕事行けば、キャスト全員に広まってるよ」

「最悪。もう絶対お酒飲まない」

 ハナは頭を抱えた。

「まぁまぁ、仕事の時間までこっちでゆっくり話聞かせてもらおうじゃない」

 そう言って、カンナはハナを部屋へ引きずり込んだ。



「てか、ハナの、金パクって逃げてる恋人どうした?この浮気者」

「うん。もういいの」

 ハナはスッキリした顔で答えた。

「もう関わらないようにする。まあ行方不明だから関わりよう無いけど」

「ふーん。まあ私も初めからハナの彼氏やべえ奴だと思ってたから、スッパリ切っちゃうのは賛成だわ」

 そう言って、カンナはハナの顔をまじまじと見た。

「だって、ハナ今明るい顔してるもんね。始めて会った時とか死にそうな顔をしてたもん」

「そんなに?」

 ハナは自分の顔を触った。そんなに変わっただろうか。


「で?どこ行ってきたの?もしかして高級ホテルとかで抱かれてきた?」

 カンナなニヤニヤと言うので、ハナは少し恥ずかしそうに答えた。

「いや、そんなんじゃなくて。

 まずは山奥に行って」

「山奥?」

「そこで枝垂れ桜を見て」

「桜?冬に?」

「て、ラブホ行った」

「結局普通にラブホかよ!」

 カンナは突っ込んだ。

「大体なんだ山奥で冬に桜って!いやまあハナが楽しいならいんだけどさ」

「楽しかった。きれいだったよ」

「くっそー、惚気けた顔しやがって」

 カンナはハナの頬を軽くつねった。

「痛いよー」

「でも良かったよ。まあ、社長もヤクザだから超優良物件ってわけでもないけどさ。優しいもんね」

 カンナはそう笑ってみせた。

「ま、じゃあそろそろ仕事行く準備しよっか。あ、そうだ聞いてる?今日ちょっと多めの団体客入るからヘルプ来るって」

「そうなんだ」

「ハナが知ってる子だと、セイラとか来るよ」

「セイラさん?」

 ハナはドキリとした。

 別に悪い事をしている訳では無いが、どう考えても気まずい。

「忙しそうだよねー。ハナも厨房大変なんじゃない?」

 ハナの心内を知らず、のんきにカンナは言った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

お客様はヤの付くご職業・裏

古亜
恋愛
お客様はヤの付くご職業のIf小説です。 もしヒロイン、山野楓が途中でヤンデレに屈していたら、という短編。 今後次第ではビターエンドなエンドと誰得エンドです。気が向いたらまた追加します。 分岐は 若頭の助けが間に合わなかった場合(1章34話周辺) 美香による救出が失敗した場合 ヒーロー?はただのヤンデレ。 作者による2次創作的なものです。短いです。閲覧はお好みで。

ヤクザは喋れない彼女に愛される

九竜ツバサ
恋愛
ヤクザが喋れない女と出会い、胃袋を掴まれ、恋に落ちる。

愛し愛され愛を知る。【完】

夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。 住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。 悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。 特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。 そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。 これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。 ※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

堅物上司の不埒な激愛

結城由真《ガジュマル》
恋愛
望月かなめは、皆からオカンと呼ばれ慕われている人当たりが良い会社員。 恋愛は奥手で興味もなかったが、同じ部署の上司、鎌田課長のさり気ない優しさに一目ぼれ。 次第に鎌田課長に熱中するようになったかなめは、自分でも知らぬうちに小悪魔女子へと変貌していく。 しかし鎌田課長は堅物で、アプローチに全く動じなくて……

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

処理中です...