【完結済】小柄で陰キャ、オタクなあいつは、実は‥‥

天知 カナイ

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翌日、登校して新條が来るのを待った。二十分ほどで新條も登校してきた。
「おはよ」
「おはよう」
新條はいつものように短くそう返すと、何事もなかったかのように椅子に座って荷物を置き本を取り出した。
そのまま読もうとしたので俺は声をかけた。
「新條」
「何?」
新條は本から顔もあげずに返事をした。俺はずいと新條の方の身体を寄せ、本を取り上げた。そんなことをされた新條は最初驚いたのか止まっていたが、その後すぐにぐいっと本を奪い返された。
「何すんだよ」
「昨日ありがとう」
新條は俺がそう言うと、がたっと椅子から立ち上がって口を塞ぎ、またそのまま椅子に座った。そして一度机に突っ伏してから顔をあげ、俺の方を見た。
「‥そんなの別にいいからその話はするな」
「なんで」
「なんででも!するな」
新條は低い声でそう言うとまた本を読み始めた。だがその横顔はまだ赤くなっている。
赤くなった頬がかわいくて、俺はそっとその頬に手を伸ばして指の背ですり、と触れた。
「おわ!?」
新條は面白いほどに驚いて、ガタン!と椅子からずり落ちた。びっくりした顔が少しだけ見える。ああ、あの前髪切りてえな。新條の顔が、はっきり見たい。
「な、何すんだよ」
「大丈夫か?」
俺はそう言って新條の腕を掴んで立ち上がらせようとした。ついでにそっと背を撫でてみた。やはりあまり肉はついていないが、しなやかな筋肉の感じはした。
「うわ」
背を撫でられた新條は俺の手を振り払い、完全におれの事を警戒した目で見てきた。眼鏡の奥の目がきらきらしているのが見えた。
「ごめん」
俺はそう言って新條の顔を眺めた。そして言った。
「俺、新條の事もっと知りたい」

そう言った俺の事を、新條は心底気持ち悪そうに眺めて返事をしなかった。

昼休みに隣のクラスのやつが新條のところに来た。新條の漫画仲間だ。いつもそいつと昼飯を食べているのをおれは知っていた。
「アキ、今日弁当?俺弁当なんだけど」
「あ、俺も弁当。どこで食べる?」
二人がそう話しているのを俺は横で聞いていた。というか二人の事をガン見していた。隣のクラスのやつが新條の事を「アキ」と呼んでいるのは知っていたが、それが前から気にいらなかった。
「ここで食うか。‥前の奴いないみたいだからその椅子座れば」
新條がそう言って自分の席の前を指し、弁当を取り出した。隣のクラスのやつは言われるままにその椅子に腰掛け、新條の方を向いてその机に弁当をのせた。
俺は完全に身体を新條たちの方に向けて、机の上に出していたパンを食い始めた。新條は気にせず弁当を食い始めたが、隣のクラスのやつは自分たちの方に身体を向けて飯を食っているおれの事が気になるのかちらちらと俺の方を見ている。
「なあ」
急に話しかけた俺に新條は反応しなかったが、隣のクラスのやつはビクッとしてこっちを見た。
「お前、名前なんて言うの?」
「‥音原‥」
「おとはら?どんな字?」
「音楽の音に原っぱの原‥」
「そうか。俺は笹井。笹の葉の笹に井戸の井」
「‥おう‥」
音原は短くそう言うとまた弁当の方に目を向けてもそもそ食べ始めた。ちらちらと新條の方を見て何か言いたそうにしているが、俺があまりに近い距離にいるので何も言えないようだ。
そんな音原の様子を見て、はあ~っと長いため息をついた新條が俺の方を見た。
「何?お前何がしたいの?」
「ん?」
「なんで急に俺や音ちゃんに構うんだよ」
俺はどう言おうかと少し考えたが、他にいい言葉も思いつかなかったので思ったことをそのまま言った。
「新條の事もっと知りたいから音原とも仲良くなりたいなと思って」

音原はびっくりしてこっちを見ている。新條は少し目を大きくしたが、そのまま俺をじっと見つめた。
「‥なんで俺のこと知りたいわけ?」
「好きだから」

思わずするりとその言葉が出てしまって、おれ自身驚いた。だからその後すぐに「あ」と言ってしまった。
音原と新條が俺以上に驚いた顔をしてこっちを凝視している。音原が小さい声で「リ、リアルBL‥?」とよくわからないことを言っていた。
新條がしばらく沈黙した後、ぼそりと言った。
「‥で?何してほしいの俺に」
「とりあえず友達になってくれ」
「‥高校生にもなってそんなこと言うやつ初めて聞いたわ」
新條が小さい声でぶつぶつ言っている。横で音原も何だか挙動不審なのでついでに声をかけた。
「だから音原も俺と友達になってくれよ。‥いいかな?」
「ふへっ?!あ、や、うん」
「いいのかダメなのかどっちだよ」
びくん!と跳ねて俺を見た音原の意味不明な返しに思わず笑った。


夜の街をうろつくのをやめた。別に理由はない。
戸倉が「あいつらも怖くて思わず逃げただけだからさ~」とか言って俺をまた連れ出そうとしてきたが、別に逃げた二人の事を恨んでいるわけでも何でもなかったので、そう伝えるにとどめた。
その代わり、というわけでもないが、俺は新條と音原の二人にくっついて回るようになった。と言っても、そもそも俺は高校で誰かとしょっちゅう一緒にいるタイプではなく、たまに戸倉がちょっかいかけてくるくらいで基本一人でぼんやりしていることが多かったので、クラスのやつから不審がられることもなかった、と思う。

ただ、新條と音原にはだいぶん不審がられた。特に新條。

「なんでお前俺たちと一緒にいんの?」
「新條が好きだから」
「俺はおまけなんだな‥」
「いや、音原も話すとなんか面白いから好きだぞ」
「笹井が魔性‥!」

二人は今まで話したことがないタイプで、俺の知らないことばかり話すのでなんか面白かった。
新條は相変わらずちゃんと話すのは音原くらいで、クラスではほとんど話すこともなく静かだった。俺は新條と話したい気持ちはめちゃめちゃあったが、もともとあまり人と話す方ではなかったから何を話していいかわからず、音原がいる時に二人が話すのを聞いて、たまに相槌を打つ毎日だった。
音原はやはりおれの事が少し怖かったらしく最初はかなり挙動不審だったが、一週間もすると慣れてきて俺にもよく話しかけてくれるようになった。

新條は、あまり今までと変わらない。

新條の中で、俺はどういう存在なんだろうか。友達のカテゴリの中にはまだ入れてもらえてないんだろうか。

俺は、特別顔がいいわけでも成績がいいわけでも運動ができるわけでもない、普通の男だ。

そんな俺が、新條に恋愛的な意味で好きになってもらえる確率はひょっとしたら宝くじより低いかもしれない。
わかっていても新條を見つめて、新條の傍にいることを、俺はやめられなかった。

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