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最寄り駅までの道中、新條はずっと黙ったままだった。俺は普段、自分から話しかける方でもないので話のきっかけを掴みかねていた。
サクサクと歩く新條の後ろについていく。学生服の襟から、少し俯き加減の新條のうなじがちらちら見える。
エロい。
気づけばそんな事ばかり考えている。これでは新條に気持ち悪がられるのもしょうがないか、と苦笑した。
そんな俺の雰囲気を感じ取ったのか、新條がぴた、と立ち止まって俺を見た。
「‥何、笑ってんの」
「あ、え、」
急に話しかけられて俺はどぎまぎした。こんな時にうまくごまかせるほどの話術を、俺は持ち合わせていなかった。
「‥俺、エロいこと考えちまうから、新條にキモがられても仕方ねえなって思ったら、なんか、莫迦みたいで、さ‥」
素直に思ったことをそのまま吐き出してしまった俺に、新條は「は?」と間抜けな声を出した。
「お、前、そういう、意味で俺のこと好き、なわけ‥?」
新條も珍しく、焦ったような声で俺に問いかけてきた。俺は、もう誤魔化しようがないなと観念してコクリと頷いた。
新條は一言
「そうか‥」
と言って、下を向いた。そのままじっとしているので、俺も何を言えばいいかわからずそのまま立ち尽くしていた。
‥期せずして、告白してしまった流れじゃないか?俺。
そう思い至って、急にドキドキしてきた。そっと新條の方を伺うが、俺の目線からは新條の顔は見えなかった。
新條はゆっくりと顔をあげた。そして俺の顔をまっすぐに見てくれた。
「笹井」
「‥うん?」
「‥俺、恋愛ってしたことないんだ」
「‥‥俺も、新條が、初めて好きになった人だ」
「そうか‥」
「うん」
新條は、また少し困った顔をして眉を下げた。
「別に、笹井が男だから嫌とか、そういうのは俺はない」
「へ、あ、そうなんだ‥」
「ただ、恋愛ってのがよくわからない。小説でも漫画でもよく出てくるけど、自分のこととして思うとちょっとまだわかんなくて」
「‥うん」
「だからなんて返事すればいいか、わからない」
「おう‥」
新條、今の俺もお前になんて返せばいいのかわかんねえよ。
新條は俺の頼りない返事を聞いて、また考えこみ、しばらくしてじっと俺の顔を見つめてきた。
「笹井は、俺でどんなエロいこと考えてんの?」
「へっ!?」
「キスしたいとか?」
いやもっとえげつないこと考えてます、とはさすがの俺も言えずに固まった。するとそんな俺の様子を見て何を考えたのか、新條は少し俺に近づいてきて俺の学生服の胸のあたりを握ってぐいと引き寄せた。
されるがままになった俺は少し前のめりになり、新條の顔の前に俺の顔が来てしまった。
そのまま新條は自分の唇をおれの唇に押しつけた。
すぐに離れてしまったが、俺の唇の上には薄くて柔い新條の唇の感触が生々しく残っている。俺は正直、生まれて初めてと言っていいくらい頭の中がパニックになっておろおろした。
「え?お、あ?に、新條、なん、え?」
「うーん、キスしてみたら何かわかるかと思ったけど‥」
新條は少し考える様子を見せてから俺の顔を見て、にっと笑った。
「すまん!わかんねえわ。でも、そんなに嫌じゃなかった」
そう言ってまた新條は駅に向かってすたすた歩きだした。
どんどん歩いていく新條の後ろ姿を見ながら俺はぼけっと立っていた。
え?
キス、されたな。
そんなに嫌じゃなかった、って言った。
いやいや、まず、何でキス?
‥‥少女漫画のヒーローでもあるまいしあの思い切りは何だ‥?
うわその前にここ通学路じゃん!
俺はやっとその事に思い至り、今になって辺りをきょろきょろ見回したが同じ学校のやつは前と後ろの離れたところにいるだけで見られてはいないようだった。
なんで新條はあんなに思い切りがいいんだ!?
しかも、恋愛感情わかんねえって言ってんのに、急に、キ、キス‥。
俺は、そっと人差し指で自分の唇に触れた。
そこだけ、すごく熱くなってじんじんしているような気がした。
ふと顔をあげれば新條の姿は結構小さくなっていて、俺は慌てて後を追った。
駅についてどこで降りるか話を聞けば、何と利用している駅は同じだった。俺は結構早めに登校していたので、今まで新條と時間がかぶらなかったらしい。
「意外と近いのか?新條はどの辺りに住んでるんだ?」
俺はそう訊きながらも新條の顔を見ることはできなかった。今新條の顔を見れば唇をガン見してしまう自信があった。
新條は、先ほど俺にキスしたとも思えないようないつも通りの態度だった。
「俺は駅から五分くらいのとこだな。倉見町だから」
「そうか‥俺は、沢岸の方だ」
そう答えると、新條は「へえ、ぎりぎりで学区が違ってたんだなあ」と呟いた。そうか、もう少し近かったら中学も同じだったかもしれなかったのか。
何だかそれは惜しい気がした。
倉見駅から五分ほど歩いた雑居ビルが新條の家だった。五階建ての小さなビルだが、上の方が住居になっているらしい。
「じゃあな。もうここでいいだろ?」
新條はビルの階段入り口でそう言った。だが俺は次の約束が欲しかった。だからずっと電車の中で考えていたことを口にした。
「新條、今度の休み、一緒にガチャガチャ回ろう。お前の欲しい奴、一緒に探したい」
新條は、俺の顔を見上げて少し黙った。それから小さく頷いて言った。
「まあ、いいけど」
「‥連絡先教えてくれるか?」
何とか俺はその一言を絞り出し、いそいそと携帯を出した。新條はちょっとだけ眉をしかめてから自分の携帯を出した。
「いいけど俺、SNSとかあんまやってないから‥番号でいいか?」
「うん、ショートメッセージ送る」
新條の番号を聞いてから、その番号にメッセージを送る。新條がそれを確認してから携帯をしまった。
「じゃな」
そう言って新條はビルの階段を上がっていった。
携帯番号をゲットしてしまった‥!
俺は顔がへらつくのを押さえきれず、家につくまでずっと顔の下半分を片手で覆っていた。
この日の夜は、新條の唇の感触を思い出して、すっげえ抜いた。
死ぬかと思った。
サクサクと歩く新條の後ろについていく。学生服の襟から、少し俯き加減の新條のうなじがちらちら見える。
エロい。
気づけばそんな事ばかり考えている。これでは新條に気持ち悪がられるのもしょうがないか、と苦笑した。
そんな俺の雰囲気を感じ取ったのか、新條がぴた、と立ち止まって俺を見た。
「‥何、笑ってんの」
「あ、え、」
急に話しかけられて俺はどぎまぎした。こんな時にうまくごまかせるほどの話術を、俺は持ち合わせていなかった。
「‥俺、エロいこと考えちまうから、新條にキモがられても仕方ねえなって思ったら、なんか、莫迦みたいで、さ‥」
素直に思ったことをそのまま吐き出してしまった俺に、新條は「は?」と間抜けな声を出した。
「お、前、そういう、意味で俺のこと好き、なわけ‥?」
新條も珍しく、焦ったような声で俺に問いかけてきた。俺は、もう誤魔化しようがないなと観念してコクリと頷いた。
新條は一言
「そうか‥」
と言って、下を向いた。そのままじっとしているので、俺も何を言えばいいかわからずそのまま立ち尽くしていた。
‥期せずして、告白してしまった流れじゃないか?俺。
そう思い至って、急にドキドキしてきた。そっと新條の方を伺うが、俺の目線からは新條の顔は見えなかった。
新條はゆっくりと顔をあげた。そして俺の顔をまっすぐに見てくれた。
「笹井」
「‥うん?」
「‥俺、恋愛ってしたことないんだ」
「‥‥俺も、新條が、初めて好きになった人だ」
「そうか‥」
「うん」
新條は、また少し困った顔をして眉を下げた。
「別に、笹井が男だから嫌とか、そういうのは俺はない」
「へ、あ、そうなんだ‥」
「ただ、恋愛ってのがよくわからない。小説でも漫画でもよく出てくるけど、自分のこととして思うとちょっとまだわかんなくて」
「‥うん」
「だからなんて返事すればいいか、わからない」
「おう‥」
新條、今の俺もお前になんて返せばいいのかわかんねえよ。
新條は俺の頼りない返事を聞いて、また考えこみ、しばらくしてじっと俺の顔を見つめてきた。
「笹井は、俺でどんなエロいこと考えてんの?」
「へっ!?」
「キスしたいとか?」
いやもっとえげつないこと考えてます、とはさすがの俺も言えずに固まった。するとそんな俺の様子を見て何を考えたのか、新條は少し俺に近づいてきて俺の学生服の胸のあたりを握ってぐいと引き寄せた。
されるがままになった俺は少し前のめりになり、新條の顔の前に俺の顔が来てしまった。
そのまま新條は自分の唇をおれの唇に押しつけた。
すぐに離れてしまったが、俺の唇の上には薄くて柔い新條の唇の感触が生々しく残っている。俺は正直、生まれて初めてと言っていいくらい頭の中がパニックになっておろおろした。
「え?お、あ?に、新條、なん、え?」
「うーん、キスしてみたら何かわかるかと思ったけど‥」
新條は少し考える様子を見せてから俺の顔を見て、にっと笑った。
「すまん!わかんねえわ。でも、そんなに嫌じゃなかった」
そう言ってまた新條は駅に向かってすたすた歩きだした。
どんどん歩いていく新條の後ろ姿を見ながら俺はぼけっと立っていた。
え?
キス、されたな。
そんなに嫌じゃなかった、って言った。
いやいや、まず、何でキス?
‥‥少女漫画のヒーローでもあるまいしあの思い切りは何だ‥?
うわその前にここ通学路じゃん!
俺はやっとその事に思い至り、今になって辺りをきょろきょろ見回したが同じ学校のやつは前と後ろの離れたところにいるだけで見られてはいないようだった。
なんで新條はあんなに思い切りがいいんだ!?
しかも、恋愛感情わかんねえって言ってんのに、急に、キ、キス‥。
俺は、そっと人差し指で自分の唇に触れた。
そこだけ、すごく熱くなってじんじんしているような気がした。
ふと顔をあげれば新條の姿は結構小さくなっていて、俺は慌てて後を追った。
駅についてどこで降りるか話を聞けば、何と利用している駅は同じだった。俺は結構早めに登校していたので、今まで新條と時間がかぶらなかったらしい。
「意外と近いのか?新條はどの辺りに住んでるんだ?」
俺はそう訊きながらも新條の顔を見ることはできなかった。今新條の顔を見れば唇をガン見してしまう自信があった。
新條は、先ほど俺にキスしたとも思えないようないつも通りの態度だった。
「俺は駅から五分くらいのとこだな。倉見町だから」
「そうか‥俺は、沢岸の方だ」
そう答えると、新條は「へえ、ぎりぎりで学区が違ってたんだなあ」と呟いた。そうか、もう少し近かったら中学も同じだったかもしれなかったのか。
何だかそれは惜しい気がした。
倉見駅から五分ほど歩いた雑居ビルが新條の家だった。五階建ての小さなビルだが、上の方が住居になっているらしい。
「じゃあな。もうここでいいだろ?」
新條はビルの階段入り口でそう言った。だが俺は次の約束が欲しかった。だからずっと電車の中で考えていたことを口にした。
「新條、今度の休み、一緒にガチャガチャ回ろう。お前の欲しい奴、一緒に探したい」
新條は、俺の顔を見上げて少し黙った。それから小さく頷いて言った。
「まあ、いいけど」
「‥連絡先教えてくれるか?」
何とか俺はその一言を絞り出し、いそいそと携帯を出した。新條はちょっとだけ眉をしかめてから自分の携帯を出した。
「いいけど俺、SNSとかあんまやってないから‥番号でいいか?」
「うん、ショートメッセージ送る」
新條の番号を聞いてから、その番号にメッセージを送る。新條がそれを確認してから携帯をしまった。
「じゃな」
そう言って新條はビルの階段を上がっていった。
携帯番号をゲットしてしまった‥!
俺は顔がへらつくのを押さえきれず、家につくまでずっと顔の下半分を片手で覆っていた。
この日の夜は、新條の唇の感触を思い出して、すっげえ抜いた。
死ぬかと思った。
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