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魔道具とマナ講座①
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「いつまで見てんのよっ!」
階段を登りながら、パティが小さく振り向き横目で下を見ると、そこにはシンが自身の方をジッと見ているのが感じられてしまう。
何度かチラチラと気にしながら物見部屋へと向かっていたが、たまらず声をかけたのだ。
「あっ、ご……ごめんなさい」
ふいっと視線を落とすシン。
歳は自分より上だという少女。
冒険者たちの反応や雑談からも、少女が長くギルドにいることは明白だった。
なぜこのような見た目をしているのか?
そして、彼女はいったいどれほどの実力があるのだろうか?
あとは、どうして金に困っているのだろうかと……
そんな疑問がシンの頭を駆け巡る。
「私も久しぶりに魔道具作りを見学しようかしら?
今日はどなたも指導の予定は入っておりませんし」
「作るのはヴァルのハサミなんだ。
勝手にしろよ!」
ぶっきらぼうに答えるパティ。
二階の作業場、三階の倉庫を通り過ぎ、4階のそれぞれの個室があるその内の一つにヴァルが駆けていく。
一旦自室に戻り、着替えをするそうだ。
マナの影響を受けにくい、それこそパティが着ているような簡素な麻の服に。
イライラしているパティの横に立ち、着替えて出てくるのを待つシン。
「お待たせしましたー」
カチャっとドアが開くと、そこには三つ編みに髪を束ねたヴァルの姿がある。
「全く! 待たせてるって自覚してるなら髪なんて触ってんじゃねーよ。
私みたいにバッサリ切っちまえばいいんだよ」
「あ、ははは……」
怒るパティの隣では笑うしかないシン。
ちょっぴり田舎娘っぽくて、これはこれで可愛らしいわけだが、そんなことは口が裂けても言えないシンであった。
4階から上へは螺旋階段になっていた。
5階より上は吹き抜けのある大きな部屋。
隅に釜が設置されており、書物やペンチなどの工具、何に使うのかわからない大量の水が入った甕、散らかった食器などが見える。
6階もまた乱雑に生活用品が置かれていた。
7階が最上階で、こちらはうって変わって整頓された素材置き場になっているそうだ。
身を乗り出せるほどの窓からは、遠くの景色がよく見える。
4方にある窓から見る景色は、まず間違いなく気持ちの良いものだろう。
一目見ただけのシンでさえそう思うのだった。
ひとまず最上階まで上がったシンたちは、パティが必要な素材を集めるのを待ちながら周囲を見回していた。
「またアビルマさんに内緒で闇市に行ったでしょパティ」
近くにあった石のようなものを手に、ヴァルは問いかける。
長年一緒にいるヴァルだからこそ、普通では手に入らない珍しい素材だと見抜いているわけだが、シンにはそれらが何なのかはさっぱりわからない。
「なんだかフワッとした感じの石ですね……」
だからこそシンは純粋な気持ちで聞いてしまう。
石のようなものを持ちながら、そのシンの発言に驚くヴァル。
そのヴァルを見て、パティはニンマリと笑みを浮かべていた。
「なるほど……パティが気にいるのも頷けますわ」
「だ、だからお気に入りじゃねーって!」
素材がなんなのかは結局シンには教えられていない。
価値のあるものかどうかも聞けず、抱えるほどの木箱に適当に放り込まれた素材を抱えたパティは階段を降りていく。
5階が作業場。
アクセサリー類含む過度な装飾は厳禁。
そう言われ、シンは携えていた武器を外して部屋の隅に立てかけた。
どうやらマナというものは、不安定な状態では近くの触媒に影響を与えるものらしい。
簡単な説明でそう納得したシンは緊張してしまうのだった。
階段を登りながら、パティが小さく振り向き横目で下を見ると、そこにはシンが自身の方をジッと見ているのが感じられてしまう。
何度かチラチラと気にしながら物見部屋へと向かっていたが、たまらず声をかけたのだ。
「あっ、ご……ごめんなさい」
ふいっと視線を落とすシン。
歳は自分より上だという少女。
冒険者たちの反応や雑談からも、少女が長くギルドにいることは明白だった。
なぜこのような見た目をしているのか?
そして、彼女はいったいどれほどの実力があるのだろうか?
あとは、どうして金に困っているのだろうかと……
そんな疑問がシンの頭を駆け巡る。
「私も久しぶりに魔道具作りを見学しようかしら?
今日はどなたも指導の予定は入っておりませんし」
「作るのはヴァルのハサミなんだ。
勝手にしろよ!」
ぶっきらぼうに答えるパティ。
二階の作業場、三階の倉庫を通り過ぎ、4階のそれぞれの個室があるその内の一つにヴァルが駆けていく。
一旦自室に戻り、着替えをするそうだ。
マナの影響を受けにくい、それこそパティが着ているような簡素な麻の服に。
イライラしているパティの横に立ち、着替えて出てくるのを待つシン。
「お待たせしましたー」
カチャっとドアが開くと、そこには三つ編みに髪を束ねたヴァルの姿がある。
「全く! 待たせてるって自覚してるなら髪なんて触ってんじゃねーよ。
私みたいにバッサリ切っちまえばいいんだよ」
「あ、ははは……」
怒るパティの隣では笑うしかないシン。
ちょっぴり田舎娘っぽくて、これはこれで可愛らしいわけだが、そんなことは口が裂けても言えないシンであった。
4階から上へは螺旋階段になっていた。
5階より上は吹き抜けのある大きな部屋。
隅に釜が設置されており、書物やペンチなどの工具、何に使うのかわからない大量の水が入った甕、散らかった食器などが見える。
6階もまた乱雑に生活用品が置かれていた。
7階が最上階で、こちらはうって変わって整頓された素材置き場になっているそうだ。
身を乗り出せるほどの窓からは、遠くの景色がよく見える。
4方にある窓から見る景色は、まず間違いなく気持ちの良いものだろう。
一目見ただけのシンでさえそう思うのだった。
ひとまず最上階まで上がったシンたちは、パティが必要な素材を集めるのを待ちながら周囲を見回していた。
「またアビルマさんに内緒で闇市に行ったでしょパティ」
近くにあった石のようなものを手に、ヴァルは問いかける。
長年一緒にいるヴァルだからこそ、普通では手に入らない珍しい素材だと見抜いているわけだが、シンにはそれらが何なのかはさっぱりわからない。
「なんだかフワッとした感じの石ですね……」
だからこそシンは純粋な気持ちで聞いてしまう。
石のようなものを持ちながら、そのシンの発言に驚くヴァル。
そのヴァルを見て、パティはニンマリと笑みを浮かべていた。
「なるほど……パティが気にいるのも頷けますわ」
「だ、だからお気に入りじゃねーって!」
素材がなんなのかは結局シンには教えられていない。
価値のあるものかどうかも聞けず、抱えるほどの木箱に適当に放り込まれた素材を抱えたパティは階段を降りていく。
5階が作業場。
アクセサリー類含む過度な装飾は厳禁。
そう言われ、シンは携えていた武器を外して部屋の隅に立てかけた。
どうやらマナというものは、不安定な状態では近くの触媒に影響を与えるものらしい。
簡単な説明でそう納得したシンは緊張してしまうのだった。
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