【思案中】物見の塔の小少女パテマ 〜魔道具師パティのギルド生活〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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利益と交渉

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「100で銅貨18。
 それ以上は出せねぇぜ」
 一人の職人がフェルトにそう語る。
「銅貨18枚……って、それじゃ大赤字ですよ。
 せめて以前と同じ、35枚で買っていただかないと」
 ギルドの倉庫で、小さな毛皮を手に、フェルトは職人と交渉を行なっているのだ。

 ピアラビットという小型の魔物なのだが、1匹銭貨1枚でギルドは買取を行なっている。
 10匹集まれば、銭貨ではなく銅貨で1枚。
 用途は衣類や断熱のため、その他にも様々なものに使われる。
「そうは言ってもなぁ。
 手間ばかりかかって実入りが少ねぇんだよ。
 穴の空いたヤツや色の合わねぇヤツはほとんど使えねぇ、苦情が来ちまったらそれこそ大損だからな」
「ですが、私たちも魔物の解体にかかる費用や経費を差し引くと……」
「ダメだダメだ。
 とにかく今日のところは無理だ」
 小さい魔物ゆえに、手間も時間もかかってしまう。
 5匹買い取っては解体し、次の日に今度は3匹買い取る。
 それはまたその日に解体し、また別の日には10匹のピアラビットが持ち込まれる。
 穴を開けるなと言われても、いちいち慎重にやっていては時間がかかりすぎていけない。
 返答に困っていると、バタンと扉が閉められ、職人は裏口から出ていってしまった。

 以前から時々言われてはいたのだが、全体の金額からしてみればピアラビットの取引金額など非常に小さいものだ。
 正直、売れないのならそれでもいいんじゃないかとも思うようになっていたフェルト。
 そんなフェルトがギルドの営業と経理を任されるようになって数年。
 あまり上手くいっている気はしなかった。
 価格を下げ、謝り、解体作業を行う従業員には丁寧な作業を指示する。
 そんなことばかり繰り返していては、ギルドの運営がどうにかいっても作業員とのかんけいが悪くなる一方だ。
 現に、慣れた年配の作業員達からは『遊びでやってんじゃねーんだよ』などと言われたばかりのフェルトだった。

 こちらも遊びのつもりはない。
 しかし、これ自体は利益にならないのもまた事実。
 ではピアラビットの取引をやめたらいいのではないか?
 ……それができないことは、フェルト自身が誰よりもわかっていた。
 どんなに利益がなく細かな作業であっても、それだけが取引の全てでもないのだ。
 利益のあるものや高額な素材も同時に取引を行なっている。
 一人悩みながら、受付の方へと戻っていくフェルトであった。

 モヤモヤしてしまう。
 どう答えれば良かったのか?
 しばらくして今日もまた冒険者がピアラビットを持ってきた。
 いつもならこれほど集中できないことはない。
 夕暮れ時になり、シンが深くお辞儀をして出ていった。
 今日もまたパティ達はずいぶんと楽しそうである。

「どうしたんだい?
 今日は随分と元気がないじゃないかい」
 仕事が終わり、やはりいつもと違うフェルトを気にかけたのかアビルマは声をかけてくる。
「あ……はは。
 ごめんなさい、ちょっと悩んじゃいまして」
「そうかい……まぁ色々あるだろうさ。
 出かけてちょっとは気晴らしでもしてきたらいいさね」
 翌日はギルドも休みとなっていた。
 そういえばシンが来てからの最初の休みなのだろうか。
 月に何度かある休みなのだし、気分を変えるにはちょうどいい。
 そんな話をアビルマとフェルトはしており、ちょうど顔を出したパティにも出かけるようにとアビルマは言う。

 出不精なパティはあまり出たがらないのだが、このところ頑張っている報酬にとアビルマが自分の財布から銀貨を一枚手渡すと目を輝かせていた。
「どうせ言っても無駄だろうけど、あまり変なものを買うんじゃないよ」
「マジですかアビルマ様ぁ!
 ちょうど欲しいと思ってた素材があるんだよー」
 そんな嬉しそうに笑うパティが部屋へ戻るのを、フェルトは苦笑しながら見送った。
「明日はパティ達と一緒に買い物でも行ってくるといいよ。
 悩んでいるときは視点を変えることも大切さね。
 ついでにあの子達の面倒も見てくれると嬉しいんだがね」
 そう言ってアビルマは駄賃としてフェルトにもお金を渡す。
 そうお願いされてはフェルトも断れない。
「あ、有難うございます……」
 ここまでしてもらって、僕は本当にギルドに貢献できているのだろうか?
 そう悩んでしまうフェルトであった。
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