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素材と相場
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パティではなく、見知らぬ少女が立っていた。
……などと思うフェルトだったが、その髪をヴァルが整えたものだと知ると、自分の毛もやってもらいたいと考えてしまう。
尾がツヤツヤになれば……と考える反面、付け根あたりを見られるのは恥ずかしい。
そもそも尾も触られるのは好きではない。他の部位よりも敏感なのだ。
フェルトは、勝手にそんな自問自答をしながら集計を行っていたものだから、全く数があっていない。
どう見ても一桁多く、これでは一月分の予算になってしまうではないか。
慌てて再計算しながら、変な妄想をしてしまった自分を恥じるフェルトであった。
それから時間も過ぎ、どうやらヴァル含め3人はずっと上の階にいるようだ。
「こいつの引き取りを頼む」
無精髭を生やし、鎧の上から破れた野良着を身につけた冒険者が素材になる魔物を持ち込んでくる。
解体作業が苦手なゲイルのご来客だ。
「オクタートル3体ですね。
金額を調べるので少々お待ちください」
鉄の鎧も凹ませる、強い顎の力で噛みついてくる八角形の甲羅が特徴の魔物。
鎧の上から布を当てることで、幾分かは力を逃すことができるそうだ。
「未解体のままですと銅貨12枚ですね」
「それで良い」
相変わらず口数は少ないが、フェルトは彼が酒場ではよく喋るのを知っている。
受け取った銅貨を手に、これから一杯飲みに行くのだろう。
今ある在庫と照らし合わせ、金額はその場で付けている。
状態が良ければ価格は上がるし、解体後であればなお良い。
今回は査定額としては低めだが、銅貨12枚もあれば普通なら2日は暮らせるだろう。
それほどに冒険者は実入りがよく、即収入につながる職業ではある。
だが同時に危険とも隣り合わせ。
毎日同じ魔物を狩っても、高く売るのは難しい。
素材の買取価格は日によって変動するし、だからといって同じ装備で全ての魔物を同様に狩ることができるわけでもない。
目安となる金額の主な一覧は、黒板に
手書きで更新していく。
あくまでも目安であり、その日に書き換えることもしばしば。
それがフェルトの仕事でもあった。
オクタートルと書かれた横の数字を消し、『35』と改めて記していく。
銅貨3枚に銭貨5枚。
解体がされており、状態が良くてこの金額だ。
「お、おい……マジかよ……」
その直後に、同じ魔物を持ち込んできた冒険者のガッカリした様子もまた、フェルトにとっては日常的なよく見る光景なのだった。
翌日もまた、パティとシンは物見部屋で魔道具作りをするらしい。
「なんだか朝から嬉しそうでしたね」
「あぁ、おかげでアタシも少しは怒鳴らなくてすむかしらね」
朝食を終えたフェルトは、さっそく受付に腰掛けてアビルマに話しかける。
機嫌が悪い時、なにか企んでいる時、そうでない時も、何かしら問題を起こすのがパティだった。
トラブルがなければいたって平和なギルド内。
フェルトは今日もまた、素材の買取と卸しの手続きに勤しむのであった。
……などと思うフェルトだったが、その髪をヴァルが整えたものだと知ると、自分の毛もやってもらいたいと考えてしまう。
尾がツヤツヤになれば……と考える反面、付け根あたりを見られるのは恥ずかしい。
そもそも尾も触られるのは好きではない。他の部位よりも敏感なのだ。
フェルトは、勝手にそんな自問自答をしながら集計を行っていたものだから、全く数があっていない。
どう見ても一桁多く、これでは一月分の予算になってしまうではないか。
慌てて再計算しながら、変な妄想をしてしまった自分を恥じるフェルトであった。
それから時間も過ぎ、どうやらヴァル含め3人はずっと上の階にいるようだ。
「こいつの引き取りを頼む」
無精髭を生やし、鎧の上から破れた野良着を身につけた冒険者が素材になる魔物を持ち込んでくる。
解体作業が苦手なゲイルのご来客だ。
「オクタートル3体ですね。
金額を調べるので少々お待ちください」
鉄の鎧も凹ませる、強い顎の力で噛みついてくる八角形の甲羅が特徴の魔物。
鎧の上から布を当てることで、幾分かは力を逃すことができるそうだ。
「未解体のままですと銅貨12枚ですね」
「それで良い」
相変わらず口数は少ないが、フェルトは彼が酒場ではよく喋るのを知っている。
受け取った銅貨を手に、これから一杯飲みに行くのだろう。
今ある在庫と照らし合わせ、金額はその場で付けている。
状態が良ければ価格は上がるし、解体後であればなお良い。
今回は査定額としては低めだが、銅貨12枚もあれば普通なら2日は暮らせるだろう。
それほどに冒険者は実入りがよく、即収入につながる職業ではある。
だが同時に危険とも隣り合わせ。
毎日同じ魔物を狩っても、高く売るのは難しい。
素材の買取価格は日によって変動するし、だからといって同じ装備で全ての魔物を同様に狩ることができるわけでもない。
目安となる金額の主な一覧は、黒板に
手書きで更新していく。
あくまでも目安であり、その日に書き換えることもしばしば。
それがフェルトの仕事でもあった。
オクタートルと書かれた横の数字を消し、『35』と改めて記していく。
銅貨3枚に銭貨5枚。
解体がされており、状態が良くてこの金額だ。
「お、おい……マジかよ……」
その直後に、同じ魔物を持ち込んできた冒険者のガッカリした様子もまた、フェルトにとっては日常的なよく見る光景なのだった。
翌日もまた、パティとシンは物見部屋で魔道具作りをするらしい。
「なんだか朝から嬉しそうでしたね」
「あぁ、おかげでアタシも少しは怒鳴らなくてすむかしらね」
朝食を終えたフェルトは、さっそく受付に腰掛けてアビルマに話しかける。
機嫌が悪い時、なにか企んでいる時、そうでない時も、何かしら問題を起こすのがパティだった。
トラブルがなければいたって平和なギルド内。
フェルトは今日もまた、素材の買取と卸しの手続きに勤しむのであった。
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