【思案中】物見の塔の小少女パテマ 〜魔道具師パティのギルド生活〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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裏通り

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「シンさんはパティとうまくやっているみたいで。
 実は僕たちもシンさんには感謝しているんですよ」
「そ、そんな……
 僕なんか、いつも教えてもらってばかりなのに……」
 翌日の早朝、朝早くからギルド前にはシンが立っていた。
 休みだからと、とことん魔道具作りを教えると言うパティに、付き合わされていたみたいだった。
 謙虚な性格で、悪い印象はない。
 ただ、冒険者には不向きじゃないのかと思うほど弱々しく感じているのは口にはしない。
 それでもパティが大人しくなるのは、ギルドの誰しもにとってメリットである。
「今日もパティのお買い物がメインだしね。
 何を買うのかは知らないけどさぁ」
 アビルマに言われて出かけることになったフェルトは、どこか心配そうにするシンにボヤいている。
「そ、そうみたいですね。
 たくさん素材が置いてあるけど、まだまだ必要な素材があるって……
 魔道具はやっぱり奥深いんですね」
 必要なのではなく、パティは我慢を知らないだけだ。
 奥深いのではなく、パティはセオリーを無視した魔道具作りばかり行なっているだけだ。
 売り物にもならない変わった魔道具。
 失敗してマナの暴走でも起きたら大変だというのに、アビルマは構わずパティの好きにさせている。
 そんなパティは『シルバーちゃーん』などと言いながら目を輝かせ、意気揚々と前を歩いている。
 まったく人の気も知らないで、ずいぶんと勝手な奴だ……と思うフェルトであった。

「どっちへ行くんだ?
 店があるのはあっちの大通りだろう?」
 後ろを歩くフェルトは、住宅街へと進んでいくパティを不思議に思う。
「お店はこっちの方」
 ……と言われつつしばらく歩いても、住宅が建ち並ぶ風景は変わることがない。
 途端に脇道に外れ、細道に置かれた木箱をヒョイと飛び越え、暗い裏通りへ向かっていくパティ。
「お、おいっパティ……」
 声をかけ追いかけるフェルトと、その後を訳も分からずついてゆくシン。
 いつもの気怠そうな感じなど微塵も感じさせないパティに若干の苛立ちを感じてしまう。
 普段からそれくらいシャキッと働けよと。
 寝ぼけ眼で朝食を口に運び、食べ終えたらさっさと部屋に帰ってしまう。
 そんなパティの姿を見てきたフェルトにとっては、あまり面白くない状況なのだ。

「おじさーん! この間のやつ残ってるー?」
 先に細道を通り抜けたパティの声だけが聞こえてくる。
「やぁパティか。大丈夫だよ、あんなもん欲しがるのはお前さんくらいなもんさ」
 細道から裏通りを覗くように、ゆっくりと様子を見る。
 住宅街にこのような場所があることも知らなかったフェルトだが、見れば簡素な骨組みと布を張っただけの屋根を持った店が数軒並んでいる。
 そこでパティが話しかけていたのが、スキンヘッドの痩せ型の男である。
 近寄り難い雰囲気を持っており、着ているものも見るからに年季が入っている。
「こんなお店で何を買う気なんですかっ?」
 つい口から出てしまった本音だった。
 店主と思しきそのスキンヘッドの男から『こんな店とはずいぶんな物言いだな』などと睨まれて、ハッと我に変えるフェルト。
「なんでぇ、アビルマんとこの若造じゃねぇか。
 今日は大勢でピクニックかぁ?」
「おじさんっ、そんなことよりカルファトの結晶!
 マナ結晶、まだ残ってるんでしょ?」
 店主の言葉にムッときたものの、立場的に言い返すなど言語道断。
 自らの行いはギルドの行い。
 素性が知られている以上は、我慢するしかないと悔しい気持ちになるフェルト。
 とは言っても、見ればここはどう考えても違法な店である。
「すごいや……見たことのない素材がいっぱい」
 気付けばシンもまた並んでいる商品が気になっている様子。
 どうせ国に税は納めてないのだろう。
 商品だってものの知らない新米冒険者から捨て値で買ったのかもしれない。
 それをちょいちょいと解体して、卸値よりもかなり高く値をつけている。
 たしかに一般には出回らないものも多いが、こんな商売でボロ儲けしているのかと思うと腹が立つ。
 言いたいことは山のように湧き出てくるが、それを呑み込み、フェルトもまた商品に目をやっていた。
「ははっ。
 買うなら客だ、買わないなら客じゃねぇ。
 どうやらお前さんらは上手に世を渡れそうじゃねぇか」
「べっ、別に買うと決めたわけじゃない!
 思いの外……いや、どれも上等な品だから気になってしまっただけだ……」
「へっ、そんなことを言ってるようじゃアビルマが可哀想だぜ、まったく」
 同じピアラビットの毛皮でも、同じサイズに揃えられている。
 なるべく見た目も揃えて、束にされているのだから驚いてしまう。
 これは非常に手間がかかるだろう。
「20で銅貨15枚⁈」
 価格を見てなお驚いた。
 ギルドで扱っているものが100で35枚だから倍の金額である。
 多くは揃わないから職人が買いつけに来ることはないだろう。
 だが、このように整った商品なら、あの職人も納得させられるのだろう……

「……ちょっと待てパティ!」
「ん? なによフェルト?」
「まさかアビルマさんから貰った銀貨を使い切るつもりじゃないだろうな?」
 パティに言われてアレコレと袋に詰めていく店主を見て再び驚いた。
 珍しい魔物の素材はともかく、ギルドの倉庫にもあるような薬草の一種や得体の知れない結晶体まで。
「私がもらったお金、どう使おうとフェルトには関係ないじゃん。
 出会いは一期一会、今を逃したら手に入らないかもしれないんだからぁ」
 目をキラキラと輝かせ、フェルトの言うことなど聞きやしない。
 パティの横で、シンもまた前屈みになりながら一本の短剣を手にしている。
「この剣……本当に銅貨30枚でいいんですか?」
 どう見てもただの短剣だ。
 そんなもの銅貨10枚くらいの価値しかない。
「あんちゃんも目が肥えてやがるぜ。
 これじゃ商売あがったりだ」
 店主も口が上手いもんだ。
 何が商売あがったりだよ、ボロ儲けのくせに……
 綺麗に並べられた商品を眺めながら、一人不満げなフェルトであった。
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