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フェルトの挑戦
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一つの兆しは見えた。
単純な話だが、品質をよりよくすればいいわけだ。
口では簡単に言えるのだが、日々多くの魔物や素材が持ち込まれるギルドでは非常に難しい。
解体作業に従するのは、同じく獣人である若い男ベルクラウス。
フェルトが白狼であるならこちらは黒狼だろうか?
非常に真面目なのだが、気性はどちらかというと荒く、こと納得いかない時には誰彼構わずくってかかる男である。
今日もまた、フェルトはベルクラウス含めた従業員と今後について話し合っている。
「つまり、お前さんは俺たちが適当に解体作業を行なっている……と言いたいわけだな?」
品質を上げる方法を考えられないか。
大きさを揃える工夫などはできないか。
毛皮を手にし協力を求めた途端に、それが気に入らないというベルクラウスが空気を張り詰めたものにする。
「そんなことは言ってないじゃないですかっ!
「言ってるも同然なんだよ!
お前、今までに何度俺たちに改善を求めてきたかわかっているのか?
その都度、俺たちはピアラビットの解体に神経を使っている。
それをなんだ、販売価格は下げ止まらず、最近じゃ買取も以前の半分だ。
おかげで冒険者からも不満の声が聞こえてくる」
カッとなったベルクラウスは、たまらずフェルトに不満をぶちまける。
歯を剥き出して、今にも本気で噛みつきそうな勢いだ。
こうなると他の作業員は一歩引いて傍観する他なく、いつものように『聞き流しておけばいいものを……』などと思うばかりであった。
「お前自身は何の努力をしているんだ?
何か少しくらいは結果を出してから言えって言ってんだよ!
俺たちは常に真剣だ、それがわかってんなら減らず口叩いてねぇでとっとと営業に行ってこいや!」
「っ……!」
ベルクラウスめ……この男はいつもこうだ。
この男が真剣で真面目なのはわかっている……それはわかるが、自分もまた必死なのだ。
だがフェルトはそれ以上は何も言えず、踵を返して作業場を後にする。
何もかもがうまくいかない。
アビルマから気分を変えるよう言われていたが、結局のところ何も変わってはいない。
「あぁっもうっ!」
毛皮を握っていた右手に力が入る。
苛立ちでそのまま近くの壁に投げつけてしまいそうになるが、間違ってもこれは商品の一部であり、雑に扱って良いものではない。
力なくダラリと下がった右腕を見て、深くため息をつくフェルト。
とにかくピアラビットに固着しすぎるのも良くはない。
それだけが仕事でもないのだ。
いつものように受付に立ち、ざわつく気持ちを抑え込みながら、今日もまたいつもの日常が始まるのだった。
【第2話 終】
単純な話だが、品質をよりよくすればいいわけだ。
口では簡単に言えるのだが、日々多くの魔物や素材が持ち込まれるギルドでは非常に難しい。
解体作業に従するのは、同じく獣人である若い男ベルクラウス。
フェルトが白狼であるならこちらは黒狼だろうか?
非常に真面目なのだが、気性はどちらかというと荒く、こと納得いかない時には誰彼構わずくってかかる男である。
今日もまた、フェルトはベルクラウス含めた従業員と今後について話し合っている。
「つまり、お前さんは俺たちが適当に解体作業を行なっている……と言いたいわけだな?」
品質を上げる方法を考えられないか。
大きさを揃える工夫などはできないか。
毛皮を手にし協力を求めた途端に、それが気に入らないというベルクラウスが空気を張り詰めたものにする。
「そんなことは言ってないじゃないですかっ!
「言ってるも同然なんだよ!
お前、今までに何度俺たちに改善を求めてきたかわかっているのか?
その都度、俺たちはピアラビットの解体に神経を使っている。
それをなんだ、販売価格は下げ止まらず、最近じゃ買取も以前の半分だ。
おかげで冒険者からも不満の声が聞こえてくる」
カッとなったベルクラウスは、たまらずフェルトに不満をぶちまける。
歯を剥き出して、今にも本気で噛みつきそうな勢いだ。
こうなると他の作業員は一歩引いて傍観する他なく、いつものように『聞き流しておけばいいものを……』などと思うばかりであった。
「お前自身は何の努力をしているんだ?
何か少しくらいは結果を出してから言えって言ってんだよ!
俺たちは常に真剣だ、それがわかってんなら減らず口叩いてねぇでとっとと営業に行ってこいや!」
「っ……!」
ベルクラウスめ……この男はいつもこうだ。
この男が真剣で真面目なのはわかっている……それはわかるが、自分もまた必死なのだ。
だがフェルトはそれ以上は何も言えず、踵を返して作業場を後にする。
何もかもがうまくいかない。
アビルマから気分を変えるよう言われていたが、結局のところ何も変わってはいない。
「あぁっもうっ!」
毛皮を握っていた右手に力が入る。
苛立ちでそのまま近くの壁に投げつけてしまいそうになるが、間違ってもこれは商品の一部であり、雑に扱って良いものではない。
力なくダラリと下がった右腕を見て、深くため息をつくフェルト。
とにかくピアラビットに固着しすぎるのも良くはない。
それだけが仕事でもないのだ。
いつものように受付に立ち、ざわつく気持ちを抑え込みながら、今日もまたいつもの日常が始まるのだった。
【第2話 終】
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