【思案中】物見の塔の小少女パテマ 〜魔道具師パティのギルド生活〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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【第3話】 マナとの出会い

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 冒険者というのは、一概に魔物を倒す者だけに贈られる称号ではない。
 依頼のある素材を採取したり、護衛を請け負ったり。
 当然魔物の討伐依頼があれば、それをこなしたりもするのだが、なんと言っても大事なのは稼ぐことである。

「じゃあ薬草3オンスで銅貨2枚だね」
「はい。いつもありがとうございます」
 シンはそう教わって以来、毎日必ず一定量の薬草を採取しにスライムの出る墓地へと出向いている。
 当然これだけのお金では満足な生活はできないのだが、今はパティから学びたいことが多く、薬草のために割ける時間は限られていたのだ。
 たかがスライムとはいえ、油断しては命に関わる魔物。
 慎重に退治しながら墓石のの影に隠れて薬草を採取する。
 稀に見つかる透明な小さなカケラは、パティからお宝だと言われたのだが買取不可である。
 一応は小さな袋にまとめておくが、出会う冒険者に話を聞いても、お宝などと聞いたことはないと返される。
「何に使うんだろう……?
 パティが言うんだから、やっぱり魔道具作りかなぁ?」
 マナというのは、誰しもが感じ取れるものではないらしい。
 故にこのカケラから発せられるピリッとしたような感覚がわかる者はそうはいない。
 そんなことを思い、小さなカケラを手にしながら、シンは少しづつマナに興味を抱いていく。

「この液体はなんだと思う?」
 ギルドに顔を出すようになって数日が過ぎ、シンは毎日パティから魔道具作りを学んでいた。
 素材もタダではない。
 ヴァルがアビルマに話を通してくれたらしく、簡単なものなら素材の費用は不要ということになった。
 その分、出来上がった魔道具は全てギルド管理ではあるが、シンは不満に思うわけもなく、むしろ感謝してもし足りないほどであった。
「水……みたいですけど、少しマナを感じます。
 マナの濃い場所で採れる湧水、とかですか?」
 パティから小瓶に入れられた液体を見せられて、シンは思い付いたことを言う。
 墓地のような場所には比較的多くのマナが存在する。
 それは亡くなった者達と共に、多くのアイテムが埋められているからとされている。
 長く使われた愛用の剣、思い入れのある人形、見た目の華やかな多くの花。
 そのいずれかが大気中のマナと呼応して、それが原因で魔物を生成するほどに濃度が濃くなるのだろうと。

 そんな場所に湧き出る水ならば、それ自体にマナを感じても不思議ではなさそうだった。
「惜しい、ということもないな。
 これは魔物の血だ」
 左手が腰にあてがわれ、ドヤ顔で答えを言うパティ。
「魔物にも血があるんですね」
「いや、血と言ってもただの水分だ。
 人間のように生きるのに必要なものではなく、発生時に周囲の水分を取り込んだ程度のもので量は少ない」
 魔物の体内には必ず核があり、その核を中心として魔物の形を成していく。
 形を成す部分は素材となり、核の中には魔物の形成に不要なものが詰まっているそうだ。
 いわゆる不純物というものが、核の中に存在しており、多くはただの水分を含んだ泥である。
 だから水色で透き通ったスライムの核もまた、薄茶色く濁った色をしているものである。

「でも、スライムを倒すときは核を壊してしまうんですけど。
 どうやって中身を取り出すんですか?」
「まぁ新米冒険者のアンタには難しいだろうね。
 外殻もまた傷がつけば、魔物は弱っていくものなのだよ。
 試してみたかったら試せばいいぞ。
 スライムがまるで化け物に感じてくるだろうけどな」
 ただでさえ魔物は化け物だ。とは言えない。
 パティにとってスライムは雑魚であり、ただの小さな障害物。いや、小石みたいなものなのだろう。
 そんなスライムでさえ、核を狙わずに倒すとなれば相当な時間と神経を使うことになるらしい。
 パティは自慢げに小瓶を振りかざして説明を続ける。
「濾過して取り出したこの血には、通常の水では不可能なマナを取り込む性質がある。
 そしてこれは飲める液体だ」
 そう言いながら小瓶の蓋を開けたパティは、その中身を口にするように言い、シンに手渡した。
「だ……大丈夫なんですよね?
 僕も魔物になっちゃったり……」
「するかアホっ!
 私がアンタを魔物に変えてどうしようってんのさ」
「あはは。外に出るのは怖いですし、意識を保ってたらここで匿ってもらいますかね?」
「ん……それいいな。魔物使いパティ様誕生ね」
 少し真剣な表情を見せるパティ。
 それが本気の顔に見えてシンは引いてしまう。
 やるにしても別の人で試してほしい。
 そう願うばかりのシンであった。
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