王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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覚醒

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 強力なマナに触れながら、自身にもマナが芽生えないかと特訓を繰り返したソーマ。
 だがフランと共に授業を受けるようになって一週間、全く成果は見られない。

「だから、この精霊言語は風属性。
 もしもこの場合に使う言語は火属性の『赫灼』が正しいわ。
 あとはそうね……全体的に難しい精霊言語を多用しようとする傾向にあるから、最初のうちは背伸びをせずになるべく簡単な言語で構成すること。
 焦らずに基礎を固めなさい」

「……風よ吹け、で良いんじゃ?」
 ソーマは一人魔石を握りしめながら呟いた。
 普通に厨二病の会話に聞こえるが、いたって真面目な授業なのだ。
 ただ言葉にしただけで魔法が使えるのだから、とても便利だとは思う。

「無明の中にびょうたる光を……トーチ!」
 と、フランが唱える。
 もちろんマナを感じなくては魔法は発動しないし、マナを感じていてもその量が足りなくては発動しない。

 要するに『これだけマナをあげるからお願いします』というのが詠唱なのだ。
 じゃあ魔石のマナをあげてはいけないのか?
 やはりそれは違うものなのだろうか?

「オッケーオッケー、今の感じで繰り返して覚えてね。
 マナが感じれるようになったら、きっと魔法が使えるからね」
「う、うん……」

 実はフランだが、測定師に見てもらったところ人よりもマナは少ないそうであった。
 しかも、主な属性はわかりやすい四大属性ではなく白い魔石と同じもの。
 エーテルにとって、一番面倒……いや、手強い相手なのだそうだ。

 マナが少ないから、余計に感じるまでに時間がかかる。
 そうして毎日瞑想と魔法理論漬けの毎日だった。
 ソーマもまた瞑想を繰り返す毎日。
 何も進展もなく、エーテルは一つため息をついていた。
「んー……ちょっと買い出しに行ってくるわ。
 フランちゃん、悪いけどソーマが悪さしないか見ててちょうだい」
「えっ、は……はい」

 誰が悪さをするものか。
 少しばかりエーテルのカバンを覗き見て使えそうな魔道具がないかと考えてみたり、魔石を飲み込んだらマナが生まれたりしないかと考えただけじゃないか。

 まぁ、色々試したけど結局意味は無かったのだし、そちらはもうどうでもいい。
「それより、フランは本当にマナを感じないの?
 こんなにわかりやすいってのに」
「あ……う、うん……」

 なぜわからないのかがソーマにはわからない。
 そう思うと、普段瞑想をしながら一体何を考えているのかとフランに聞いていた。
「あったかいものって何だろう……とか、どこにあるんだろう?
 私マナも弱いみたいだし、こんなんじゃ、パパ、ガッカリするかなぁって……」

 いやいや、生徒の平均は10歳くらいだとエーテルは言っていたぞ。
 マナも成長するって話だから、心配の必要もないだろう。

「なんだ、マナの場所もわかってなかったのか」
 ソーマはフランの肩に手を当てる。
「あっあの……」
「目を閉じて集中して。
 僕が見てるから何か感じたらそれを動かすように力を入れて」
 フランの持つマナのおおよその場所はわかっている。
 ヘソの裏側。やや下に位置しており、その場所というのは人によって異なっている。

 俺はその小さなマナの場所を言葉で伝えながら、マナが動く瞬間を見逃さまいと意識する。
 おおよその場所はわかっても、それはほんの小さな点のようなもの。
 5分経って少しだけ動いた気がするが、気のせいだったようだ。
 10分、そろそろ集中が切れるだろうと一休みを入れる。

 30分経ち、エーテルが戻ってきてしまいそうだと思いながらも動きに変化はない。
 そして35分。

「あっ、それそれ。
 今動かしたやつがマナだよ」
「えっと……違うかなと思って意識を外しちゃった……」
「そっか、もう一回」
「う、うん……」

 一度できたことは何度でもできるだろう。
 心配する間も無く、再びマナの移動は感じられた。
「しばらくそのまま続けてれば、感覚も覚えられるんじゃないかな?」
「う……うん」
 これできっと大丈夫だろう。
 ソーマは一安心して、フランの肩から手を離す。

 そしてその瞬間……

「戻ったよー。
 さぁさぁ調子はどうかな?」

 ソーマが直後にみたフランの表情は、今にも泣き出しそうなものだったのだった……
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