王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

文字の大きさ
14 / 51

超能力

しおりを挟む
 フランもマナを扱えるようになった。
 それだけではなく、大人が使うような下級魔法も一通り習得し終えていたのだ。

 季節は寒い冬となり、乾燥した冷たい空気が吹いていた。

「結局ソーマには魔法は教えれなかったけど、ソーマがいてくれたおかげでフランの授業も無事終わったわ」
 三ヶ月という期間、他の者よりも短い期間でフランの授業は終えることとなった。
 春からは王都の魔法学園に入学し、将来は王宮魔法使いとして暮らしてもらいたいというのが親の考えだそうだ。

 前線に出るよりも危険は少なく、給料も高い。
 不自由ない生活が約束されているとして人気の高い職業らしい。

「エーテル先生、これまで本当にありがとうございます」
 深々と頭を下げるフランと、見送られるエーテルとソーマ。

 しばらくは魔物を狩る生活に戻るのだが、時期的にはもう一件くらい依頼があってもおかしくはないとエーテルは言う。
「じゃあ僕はまた剣の練習ですかねぇ」
 将来、エーテルと別れても生活はしなくてはならない。
 ソーマは気持ちを切り替えて短剣を使った特訓をしていたのだ。
「本当にお前ってやつは呆れるほど前向きだよな。
 魔法が使えないと知った時の絶望の顔は今でも目に浮かぶよ」

 あはは、と笑いながらギルドに向かう。
 そんじゃそこらの5歳児とはやる気も体力も違うし、世話になっているエーテルのためにも少しは稼ぎたいとも思っていた。

「僕は草むしりをお願いします」
 ギルドの受付に内容を伝えて、仕事にかかる。
「はい、エーテルさんはゴブリン退治で、ソーマくんは街の外壁の草むしりね。
 一応街の外になるから、何かあったらすぐに大声で叫ぶのよ」

 万が一魔物に襲われても、叫ぶことで近くにいる見回り職員が駆けつけて助けてくれるそうだ。
 小さな街でも、常に10人近くの職員が警戒しているおかげで、街の中に魔物は入ってこないのだと教えてももらった。

 ちなみに草むしりの報酬は銅貨2枚。
 半日働いても、質素な食事1回分にしかならない。
 まぁ、街の周辺がわりと安全であり、誰でもできるような簡単な仕事だから仕方のないことではあるが。

 ソーマは街の入り口から左手へと向かい、誰もいない場所へと移動した。
 割と以前から気付いてはいたのだが、前世で持っていた力の影響だと思われるものが今の自分にあったのだ。

 それに気付いたのが、マナを感じる授業を受けていた時。
 以前にもやっていたという明確な記憶があり、試しにやってみたが目の前のコップが動くことはなかった。
 
 サイコキネシスも前世のものであり、生まれ変わった自分には関係ないと思っていた。
 しかし、考えてもみればこの力は魔法の力を似たような点がいくつも感じられたのだ。

「うん。自分のじゃなくてもマナなら動かせるっぽいな」
 前世では、ありとあらゆるものが動かせそうに感じていた。
 大きいものはさすがに無理だったが、最大で机を浮かせるくらいにはどうにかできた。
 最初は消しゴムを動かすことさえ難しかったのに、いつの間にか自然とそれができるようになっていったのだ。

 片手間に壁の間から草をむしりとり、ソーマは握った魔石のマナを感じ続けていた。
 動かせるものはマナのみで、それを物体の外に出すことはできない。
 その小さな結晶の中で思い切り動かしたところで、魔石の外へマナが漏れ出すようなことはなかったのだ。

 そして半日が経つ頃に、ソーマは失敗に気付いたのだった。
 街の近くは比較的安全ではあるが、安全というわけではない。
 魔石のマナに気を取られていて、近づいてくる別のマナに気がついていなかった。

 そして、気付いた頃にはその距離わずか5メートル。
 目の前のゴブリンは下卑た笑いを浮かべながら飛び掛かってきたのであった……


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...