王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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「ティアラビットも狩れたし、今日は大収穫ね。
 久しぶりに酒場で飲んじゃおうかしら」
 エーテルは、いつも以上に上機嫌だった。

 請け負っていたフランへの授業も無事終わり、金銭的にも余裕がある上にゴブリンの魔石は5つにウサギの肉。
 それだけを日が昇るまでに済ませてしまえば、早めに帰りたくのもまた然り。

 まだ草むしりをしている時間だろうと、エーテルは街の入り口を過ぎてなお歩く。
「やぁやぁ少年!
 精が出てるねぇ……って感じでもないかな。
 多分、剣の練習でもしてるだろうし」

 エーテルが壁を見てみると、意外にも草の多くが根ごと地面に落ちている。
 流石に背の届かない場所はそのままのようだが、割と真剣に仕事をしているものだと安心したエーテルであった。

 ……が、事はその瞬間起きたのだ。

 『ズン……』という低く大きな衝撃音。
 そして立ち上る土煙。

 エーテルの頭には一つの答えがあった。
 ソーマへの説明は多少端折っていたが、魔石に含まれるマナは強大で外に漏れれば当然外への影響はある。
 それが、今回のような衝撃波だ。

「だ、大丈夫だとは思うけど……」
 エーテルは急いでソーマの元へいく。
 衝撃波が発生するといっても、魔法とは違ってちょっとばかり強風が吹き荒れる程度。
 しかし腕の中で爆発したなら、皮膚が剥がれるくらいの衝撃はあるはずだ。

 そう思うと、急がずにはいられない。
 まだ5歳の少年が魔石の暴発など経験したら、無事でいられないどころか、今後の生活に影響を与えてしまう。

 遠くに人影らしきものが見え、砂煙に隠れて見えないが伏せているようだ。
 怪我をしてうずくまっているのか、それとも気絶でもしたのか……

「だっ……大丈夫?!」
 息を切らしながらエーテルは近付いた。
「ケホッ……」
 ソーマは咳き込んでいた。
 巻き上がった土埃を吸い込んで、咳き込んだと同時に辛過ぎて涙まで出てきたのだ。
「あ……ケホッ……ど、どうしたの……? こんなに早く、ケホッ……」
「どうしたのじゃないわよ……」
 ソーマは無事だった。
 それも全くといっていいほど怪我は無い。

 魔石というのは、意外と頑丈で軽く叩きつけた程度では割れたりはしない。
 しかも割れれば大人でも怪我をする衝撃。
 加えて、そこには倒したばかりのゴブリンが一体となれば、疑問も生じよう。

 すぐに衛兵もやってきて、エーテルは実験中だったと説明。
 どうしても魔石が割れた時の衝撃を見てみたいと頼まれて、たまたまゴブリンがいたから衝撃で怯ませてナイフで倒したのだと、10分以上長々と説明をする羽目になった。

「そうでしたか。
 いや、それでしたらまぁ構いませんが。
 できれば街の近くで実験は控えてくださいね」
「えぇ、今回はゴブリンの脅威もあって慌てちゃったのよ。
 本当にごめんなさいね」

 さて、状況から察するにこの説明は大きくは間違っていないはずではある。
 ソーマが一体どうやってそれをしたのか……というのが甚だ疑問なのだが。

「よし、今から飲みにいくわよ。
 肉も取ってきたんだから久しぶりに付き合いなさい」
「ま、まぁいいですけど、ケホッ……」
 絶対に質問攻めに合うだろうと、ソーマは覚悟していた。
 さて、どう説明するべきか……ゴブリンよりもずっとずっと問題であった……
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