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指輪
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「お母さん、大丈夫っ?」
ごく平凡な一件の民家。
薄緑の髪の少女には1人の家族がいた。
ベッドに横たわり、額にタオルを置いて息苦しそうにしている母が1人。
「だ、大丈夫よ。少し横になっていればすぐに治るから……
それよりもお友達?
ごめんなさいね、お構いできなくて」
辛そうにしている人の家に、わざわざやってきたのは失礼なのかもしれなかった。
しかし、キュアグラスという草が自分の力で毒消しにできるのではないかという想いから、ついそのようなことを言ってしまった。
「そ、そうだ。
とにかく体力も落ちてるだろうから、これ飲ませてあげてよ」
ソーマは腰袋に常備していた小瓶を一つ取り出す。
容量100ミリリットル程度の、いたって普通のポーションだ。
経口補水液代わりにでもなればと思い、少女に渡してやった。
しかし、それ以上にソーマにできることはない。
毒消しの作り方も学んでおけば良かったとは思うが、そもそも毒消しが存在することも知りはしなかった。
「そうだ、原因を調べたら何かわかるかもっ」
ソーマはふと思い出す。
脂汗に苦しそうな表情、そして発熱や吐き気。
なんてことはない、ただの食中毒の可能性が考えられるのだ。
ここはゲームの世界ではないし、毒にかかったからと言ってHPが少しずつ減少するようなシステムも無い。
「今日の朝は焼いたお魚……」
ソーマは少女から二人の食べたものを聞き出していく。
母だけが食中毒になったとしたら、原因は意外とすぐにわかるかもしれないのだ。
「一昨日……?
うーんと……たまごを食べたよ」
サルモネラ菌か?
いや、地球と同じ菌だと断定するのは軽率だが、可能性として考えてもいいだろう。
「それは生で食べたの?」
「ううん、茹でて固くなったやつだよ」
だったら可能性は無いだろう。
少なくとも普段から卵は食卓に出てくるもののようだし。
「君が苦手で食べなかったものとか無いかな?
ほら、お野菜とか」
「あっ、うん。トルタお野菜は食べなかった!
新鮮なお野菜だってお母さん言ってたけど、苦いのトルタ嫌いだもん……」
新鮮、野菜。
それを母は生で食べた可能性は大いにあり得る。
「わかったよトルタ。
それなら君のお母さんは多分大丈夫」
「ほ……本当?」
「あぁ、安心してそばにいてあげなよ」
少女の家に置いてあった飲料用の水に残り一本のポーションを混ぜ入れて少女に伝える。
飲むのが辛くても、時々水分を摂ること。
もし吐いたとしても吐瀉物などには触れないこと。
ソーマにわかる対処法はわずかしかなかった。
だからではあったが、すぐにソーマは金策に走る。
少女の母も毒消しを買うほどの余裕は無いと言っており、学園に行ってもケノンに会えるかどうかも怪しい。
「おかげでだいぶ楽になったみたいだわ……
本当にありがとう」
もし食中毒でなかったら、最初から毒消しを手に入れる方法を探した方が良かっただろう。
とりあえず小屋にあった杖の中から良さそうなものを一本売ってしまったが、怒られることは覚悟しておこう……
お礼にと言って、少女の母は二つの指輪をソーマに渡す。
冒険者であった父が使っていたもので、よく机に木の実押しつけ、割って食べていたのだそうだ。
「これも魔道具だって聞いたことがあるし、ソーマくんになら役立つでしょ?」
そう言いながら母はソーマの腰にぶら下がる短剣を見る。
屈託のない笑顔を見せる少女と母に『魔道具は使えないから要らないよ』とは言えず、素直にそれらを受け取ることにしたのであった。
ごく平凡な一件の民家。
薄緑の髪の少女には1人の家族がいた。
ベッドに横たわり、額にタオルを置いて息苦しそうにしている母が1人。
「だ、大丈夫よ。少し横になっていればすぐに治るから……
それよりもお友達?
ごめんなさいね、お構いできなくて」
辛そうにしている人の家に、わざわざやってきたのは失礼なのかもしれなかった。
しかし、キュアグラスという草が自分の力で毒消しにできるのではないかという想いから、ついそのようなことを言ってしまった。
「そ、そうだ。
とにかく体力も落ちてるだろうから、これ飲ませてあげてよ」
ソーマは腰袋に常備していた小瓶を一つ取り出す。
容量100ミリリットル程度の、いたって普通のポーションだ。
経口補水液代わりにでもなればと思い、少女に渡してやった。
しかし、それ以上にソーマにできることはない。
毒消しの作り方も学んでおけば良かったとは思うが、そもそも毒消しが存在することも知りはしなかった。
「そうだ、原因を調べたら何かわかるかもっ」
ソーマはふと思い出す。
脂汗に苦しそうな表情、そして発熱や吐き気。
なんてことはない、ただの食中毒の可能性が考えられるのだ。
ここはゲームの世界ではないし、毒にかかったからと言ってHPが少しずつ減少するようなシステムも無い。
「今日の朝は焼いたお魚……」
ソーマは少女から二人の食べたものを聞き出していく。
母だけが食中毒になったとしたら、原因は意外とすぐにわかるかもしれないのだ。
「一昨日……?
うーんと……たまごを食べたよ」
サルモネラ菌か?
いや、地球と同じ菌だと断定するのは軽率だが、可能性として考えてもいいだろう。
「それは生で食べたの?」
「ううん、茹でて固くなったやつだよ」
だったら可能性は無いだろう。
少なくとも普段から卵は食卓に出てくるもののようだし。
「君が苦手で食べなかったものとか無いかな?
ほら、お野菜とか」
「あっ、うん。トルタお野菜は食べなかった!
新鮮なお野菜だってお母さん言ってたけど、苦いのトルタ嫌いだもん……」
新鮮、野菜。
それを母は生で食べた可能性は大いにあり得る。
「わかったよトルタ。
それなら君のお母さんは多分大丈夫」
「ほ……本当?」
「あぁ、安心してそばにいてあげなよ」
少女の家に置いてあった飲料用の水に残り一本のポーションを混ぜ入れて少女に伝える。
飲むのが辛くても、時々水分を摂ること。
もし吐いたとしても吐瀉物などには触れないこと。
ソーマにわかる対処法はわずかしかなかった。
だからではあったが、すぐにソーマは金策に走る。
少女の母も毒消しを買うほどの余裕は無いと言っており、学園に行ってもケノンに会えるかどうかも怪しい。
「おかげでだいぶ楽になったみたいだわ……
本当にありがとう」
もし食中毒でなかったら、最初から毒消しを手に入れる方法を探した方が良かっただろう。
とりあえず小屋にあった杖の中から良さそうなものを一本売ってしまったが、怒られることは覚悟しておこう……
お礼にと言って、少女の母は二つの指輪をソーマに渡す。
冒険者であった父が使っていたもので、よく机に木の実押しつけ、割って食べていたのだそうだ。
「これも魔道具だって聞いたことがあるし、ソーマくんになら役立つでしょ?」
そう言いながら母はソーマの腰にぶら下がる短剣を見る。
屈託のない笑顔を見せる少女と母に『魔道具は使えないから要らないよ』とは言えず、素直にそれらを受け取ることにしたのであった。
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