20 / 51
毒
しおりを挟む
「入学式と遠征の準備もあるのでね。
今日から2、3日、私は街を出ると思う。
そういえば毎日どこかへ出かけているようだけど、ソーマくんはもう街に慣れたのかい?」
ビシッときめた髪型に、整った身だしなみ。
ケノンは学園モードに切り替わっており、ソーマはその相変わらずの切り替えの速さに呆れていた。
「ま、まぁ……知り合いも増えた、かな?」
「そうか。それは安心したよ。
来週には君も生徒になるのだし、エーテルの期待に応えられるようにな」
ソーマの力のことは、エーテルの手紙にも書いてはなかった。
後でそれを読ませてもらったソーマは、そこに『妙にませているから放っておいても大丈夫』などと書かれているのを知って複雑な気分であった。
道理でケノンからも放っておかれて、
毎日自分で食事の用意をしなくてはならないのだと知る。
さすがに少しばかりエーテルを恨んでしまう。
「服は揃えたし、杖はエーテルがくれたし、食事は学園で出されるし……」
ソーマは小屋に戻って入学の準備を進める。
必要なものはそれほど多くなく、後は教科書などを入れるカバンが欲しいだけである。
「いらっしゃい。
……棚のものにあまり触れちゃダメだよ」
雑貨屋ならば、そういったカバンもあるかと思いソーマは入ってみた。
第一声にそのようなことを言われては気分のいいものではないが、だからといって腹を立てるほどでもない。
「ポーション……銀貨3枚、かぁ……」
エーテルからは無計画に作るなとは言われていたが、いざとなれば稼ぐ手段があることは強みであった。
他には布や木材、金属や肥料も置いてある。
まな板とか毛布だけではなく、本当になんでも置いてある雑貨屋といった感じだ。
だがカバンは無い。
しかも、こういった店に限って一度入ると、何か買わなくては出づらくて仕方ない。
どうしようかと考えていると、店に別の客が入ってくる。
これまた小さな少女で、店主はそれを見て大きくため息をついていた。
お金も持っていなさそうな冷やかしばかりがやってきては、そりゃあ店主も面白くはないだろう。
しかも、その少女がカウンターに駆け寄って泣きながら突然『毒消しをくださいっ!』と言って銅貨を数枚出していたのだ。
ソーマは棚あるポーションの横に並んだ、その毒消しというものを見た。
その額は銀貨5枚と、ポーションよりも高額なのを知る。
こちらもやはりマナの溶け込んだ液体のようだが、その名の通り毒を治療するものなのだろう。
ゲーム脳で考えるなら、確かにこれを飲めばありとあらゆる毒が治りそうではあるが、それはもはや万能薬と言って良いのではないだろうか?
「お母さんが……お母さんがぁ……」
「そうは言われても、お金がないんじゃ売ってあげられないよ。
気休めにしかならないかもしれないが、こっちのキュアグラスなら……」
店の商売なのだから、情に任せて譲ってしまえば経営は続かないだろう。
あの子にはあげたのに、俺にはくれないのか?
そんなことを言い出す客も出てくるかもしれない。
まぁそんな奴を客と呼んでいいのかは甚だ疑問ではあるが。
「僕にそのキュアグラスを売ってもらえますか?」
ソーマは横から割り込み、店主の持つ一束の乾燥した草を買おうとする。
「あ、あぁ構わないが、これは一週間はエキスを煮出さないと効果がないよ。
それに毒消しではなく病気になりにくくなるためのもんだ……」
名前からして毒消しの原料かと思ったが、そうではないらしい。
しかし、今からすぐに銀貨5枚は用意ができない。
可能性があるのなら試してみても良いだろう。
少女に案内してもらい、毒になったという母親の元へと向かうソーマであった。
今日から2、3日、私は街を出ると思う。
そういえば毎日どこかへ出かけているようだけど、ソーマくんはもう街に慣れたのかい?」
ビシッときめた髪型に、整った身だしなみ。
ケノンは学園モードに切り替わっており、ソーマはその相変わらずの切り替えの速さに呆れていた。
「ま、まぁ……知り合いも増えた、かな?」
「そうか。それは安心したよ。
来週には君も生徒になるのだし、エーテルの期待に応えられるようにな」
ソーマの力のことは、エーテルの手紙にも書いてはなかった。
後でそれを読ませてもらったソーマは、そこに『妙にませているから放っておいても大丈夫』などと書かれているのを知って複雑な気分であった。
道理でケノンからも放っておかれて、
毎日自分で食事の用意をしなくてはならないのだと知る。
さすがに少しばかりエーテルを恨んでしまう。
「服は揃えたし、杖はエーテルがくれたし、食事は学園で出されるし……」
ソーマは小屋に戻って入学の準備を進める。
必要なものはそれほど多くなく、後は教科書などを入れるカバンが欲しいだけである。
「いらっしゃい。
……棚のものにあまり触れちゃダメだよ」
雑貨屋ならば、そういったカバンもあるかと思いソーマは入ってみた。
第一声にそのようなことを言われては気分のいいものではないが、だからといって腹を立てるほどでもない。
「ポーション……銀貨3枚、かぁ……」
エーテルからは無計画に作るなとは言われていたが、いざとなれば稼ぐ手段があることは強みであった。
他には布や木材、金属や肥料も置いてある。
まな板とか毛布だけではなく、本当になんでも置いてある雑貨屋といった感じだ。
だがカバンは無い。
しかも、こういった店に限って一度入ると、何か買わなくては出づらくて仕方ない。
どうしようかと考えていると、店に別の客が入ってくる。
これまた小さな少女で、店主はそれを見て大きくため息をついていた。
お金も持っていなさそうな冷やかしばかりがやってきては、そりゃあ店主も面白くはないだろう。
しかも、その少女がカウンターに駆け寄って泣きながら突然『毒消しをくださいっ!』と言って銅貨を数枚出していたのだ。
ソーマは棚あるポーションの横に並んだ、その毒消しというものを見た。
その額は銀貨5枚と、ポーションよりも高額なのを知る。
こちらもやはりマナの溶け込んだ液体のようだが、その名の通り毒を治療するものなのだろう。
ゲーム脳で考えるなら、確かにこれを飲めばありとあらゆる毒が治りそうではあるが、それはもはや万能薬と言って良いのではないだろうか?
「お母さんが……お母さんがぁ……」
「そうは言われても、お金がないんじゃ売ってあげられないよ。
気休めにしかならないかもしれないが、こっちのキュアグラスなら……」
店の商売なのだから、情に任せて譲ってしまえば経営は続かないだろう。
あの子にはあげたのに、俺にはくれないのか?
そんなことを言い出す客も出てくるかもしれない。
まぁそんな奴を客と呼んでいいのかは甚だ疑問ではあるが。
「僕にそのキュアグラスを売ってもらえますか?」
ソーマは横から割り込み、店主の持つ一束の乾燥した草を買おうとする。
「あ、あぁ構わないが、これは一週間はエキスを煮出さないと効果がないよ。
それに毒消しではなく病気になりにくくなるためのもんだ……」
名前からして毒消しの原料かと思ったが、そうではないらしい。
しかし、今からすぐに銀貨5枚は用意ができない。
可能性があるのなら試してみても良いだろう。
少女に案内してもらい、毒になったという母親の元へと向かうソーマであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる