王都の魔法学園のいんちき魔法使い 〜魔法なんて使えなくても世界最強〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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エメラルド

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1クラスの人数は大体20人前後だ。
 学園に通わなくても魔法は使うことができるし、入学金から仕送りや着るものまで考えると結構な額がかかってしまう。

 魔法を習得するのに年齢は関係なく、人によってその習得の早さも異なってくる。
 ゆえに誰でもいつでも入学が可能となっている。

 さすがに上は15歳くらいまでらしいのだが……

「えー、君たちには早速だが簡単なテストを受けてもらう。
 なぁに、これから授業をするにあたって、今現状どこまでできるのかを知りたいだけだ。緊張する必要は無いからな」
 緑のクラスエメラルド。
 1年の教師はクラス分けの時にいた若い男であった。
 名前をペストリーといい、黒髪で爽やかな印象で、女子たちは『カッコいい先生でよかった』などと言っている。

 エメラルドは魔法の理論について学び研究するクラスで、ケノンの話によればエーテルもここを卒業したとのことだった。

 そしてフランもまた、王宮魔法使いとなるために理論を学ぶべきだと言われたらしい。
 主な役割は前線に出て戦うことではなく、全ての者が戦力となる術を見出して広めること。
 どれだけ1人が優れていようとも、万の軍勢には敵いっこないということだろう。

「最初は校庭に出て体力測定だって。
 私、身体を動かすのはあまり得意じゃないよぉ」
 フランはソーマの肩を掴みながら後ろを歩く。
 テストの内容は至ってシンプルで、10分間走り続けるだけであった。

「じゃあ行くぞー」
 ペストリー先生の掛け声で、一斉に走り出す生徒たち。
 他のクラスも合同で、先に走り始めていたルビー組が特に張り切っているのが感じられる。

「よっしゃあ、俺は6周だぜ」
「みんな早すぎるよぉ……」
 1周目を走り終えた時に、そんな言葉があちらこちらから聞こえてくる。
 エメラルドにも体力に自信のある男子がいて、2週目はペースが上がっていた。
 ソーマはというと、特に目立つ必要もないので適当な順位でのんびりと走っていたのだ。

「あと5分だー」
 さすがに全体のペースがどんどん落ちていく。
 小学生のマラソンなら、とっくにゴールだが、持久力もみているので終わるのは10分経ってからなのだ。
「そ、ソーマくん……はぁ……は、早すぎるよ……」
「いや……あまり適当すぎても怒られるかなって……」

 フランはソーマに体力があることは知っていた。
 大人びた性格で、日々走り込みや短剣の素振りをしていたのも見ていたからだ。
 それにしても既に2周の差がついていた。しかもバテて歩き出す子が多い中、マイペースで黙々と5周目を走り終えてしまうのだから驚きが隠せない。

 ソーマもやってしまったと思っている。
 今のペースでは、あと2周は走れそうだったのだ。
 辛い表情をしながら歩き出すべきか、それともつまづいたふりをして転んでみるか。
 などと考えている内に、時間である10分は過ぎてしまった。

「すごいなソーマくんは。
 まだ5歳だろう? 他の子と比べてもかなり優秀だよ」
 ペストリー先生が手放しに誉めるものだから、別のクラスの生徒までざわついているのを感じてしまう。

 そして次は魔力測定だった。
 いつぞやに見たような水晶に触れさせられて、ソーマは再び注目を浴びる。
「やっぱり5歳だな。
 魔法の練習なんてしたこと無いんだろうぜ」
 あまりにも平凡な5歳らしい結果だった。
 だからこそ、気に入らないと思った生徒もいたのだろう。
 ちょっとばかり体力があるだけで、クラスの女子からチヤホヤされてしまっていたのだ。
 そしてその中には、これまた注目を浴びたフランも含まれていたのだから。
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