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学園祭②
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「いくよっ、ポーラ! フラン!」
いつになく張り切っているタリアは、一気に前へと駆けていく。
「じゃあ例の作戦でいくね、フラン」
「うん、気をつけてねポーラ」
続いてポーラも前線へとゆっくり進む。
使って良い魔法はファイアーバレットのみという、極めて単純な撃ち合い。
フラッグに近付かれれば、魔法が命中する可能性は高くなる。
もちろん、近付いた者も的にされる可能性は高くなるが、逆に近付かなければフラッグも落としづらい。
「炎の精霊よ、我が魔力をもって仇なす敵を撃ち倒さん!
ファイアーバレット!」
防御側のブルーチームは、一気に前に出たタリアを狙い打つ。
当然それを読んでいたタリアも物陰に隠れてやり過ごすわけだ。
あまり聞かない詠唱だが、この大会では詠唱の中でも比較的早く撃てる代償詠唱が主流となる。
マナを多く消費する代わりに、簡略化した詠唱とわずかに強化された威力が特徴的である。
おかげで見ていて飽きないと思われがちではあるが、実際はそれほどでもない。
「ペースが早いよっ!」
と、相手チームが叫んだ時にはすでに手遅れである。
「ファイアーバレット!
……あ、しまった……」
下級生程度のレベルでは、代償詠唱によって簡単にマナは枯渇してしまうのだ。
どれだけ自身のマナがあるのかを把握できていないという、もっとも初歩的なミスだった。
3対3で始まった試合は、時間を半分残して3対1となってしまう。
「フラン、立ってるだけだし暇そうだね」
「そうっスね。
まぁ次の試合までマナはなるべく温存しておきたいっスから」
そして時間いっぱい、泥沼の攻防戦が行われて、最終的には7本のフラッグを取ることに成功した。
なお、続く防衛戦では、支給された薬でわずかに回復したマナでの泥沼化。
タリアもポーラも、ギリギリでマナを使い切って、最後に立っていたのはフランだけであった。
さて、運が良いのか悪いのか、カーナ先生率いるイエローチームと戦うこともなく、第5試合まで全てが終わってしまった。
こんな試合のために練習していたのか……というわけではなく、本番はこの後である。
司会担当を務める上級生の一人が大きな声で観客に語りかける。
「さぁ、今年入ったばかりの新入生たちも、時は早いもので一年が過ぎようとしています!
だがしかし、実際にこうして公式ルールでの戦いとなると、自らの能力不足を身に沁みて感じることでしょう!」
続いては上級生たちの試合を行い、それでもなお高みを目指す者達にエキシビジョン戦を設けるのだと説明し始めた。
簡単に言えば参加希望チーム全てで攻防交えた火魔法ならば何でもありの時短ルール。
マナを全て出し切って、最後まで生き残ったチームが勝者というわけだ。
なお将来のために、ここで誰よりも目立つことがタリアとポーラの目的でもある。
上級生達の試合運びは、やはり違っていた。
妨害には地形をうまく利用し、遅延詠唱をうまく組み込んでタイミングをずらしたり、詠唱を中断させたり。
時には魔法だけでなく、砂埃が舞うことも。
もちろん攻撃側の非常に正確で、詠唱破棄は当然のことながら、こちらも遅延詠唱の1つである設置詠唱が使われて、発動のタイミングを読めなくしたりと、戦略は様々だった。
「俺馬鹿だから、何が起きてるか全然わかんないっス……」
「いや、多分オルトだけじゃないと思うけど……」
時には詠唱後も発動せず、時には極端に破棄した詠唱でフラッグではない何かを狙っていたりと。
マナが見えているせいか、意図しない魔法の動きまで見えてしまうソーマは、余計に混乱しているのだった。
いつになく張り切っているタリアは、一気に前へと駆けていく。
「じゃあ例の作戦でいくね、フラン」
「うん、気をつけてねポーラ」
続いてポーラも前線へとゆっくり進む。
使って良い魔法はファイアーバレットのみという、極めて単純な撃ち合い。
フラッグに近付かれれば、魔法が命中する可能性は高くなる。
もちろん、近付いた者も的にされる可能性は高くなるが、逆に近付かなければフラッグも落としづらい。
「炎の精霊よ、我が魔力をもって仇なす敵を撃ち倒さん!
ファイアーバレット!」
防御側のブルーチームは、一気に前に出たタリアを狙い打つ。
当然それを読んでいたタリアも物陰に隠れてやり過ごすわけだ。
あまり聞かない詠唱だが、この大会では詠唱の中でも比較的早く撃てる代償詠唱が主流となる。
マナを多く消費する代わりに、簡略化した詠唱とわずかに強化された威力が特徴的である。
おかげで見ていて飽きないと思われがちではあるが、実際はそれほどでもない。
「ペースが早いよっ!」
と、相手チームが叫んだ時にはすでに手遅れである。
「ファイアーバレット!
……あ、しまった……」
下級生程度のレベルでは、代償詠唱によって簡単にマナは枯渇してしまうのだ。
どれだけ自身のマナがあるのかを把握できていないという、もっとも初歩的なミスだった。
3対3で始まった試合は、時間を半分残して3対1となってしまう。
「フラン、立ってるだけだし暇そうだね」
「そうっスね。
まぁ次の試合までマナはなるべく温存しておきたいっスから」
そして時間いっぱい、泥沼の攻防戦が行われて、最終的には7本のフラッグを取ることに成功した。
なお、続く防衛戦では、支給された薬でわずかに回復したマナでの泥沼化。
タリアもポーラも、ギリギリでマナを使い切って、最後に立っていたのはフランだけであった。
さて、運が良いのか悪いのか、カーナ先生率いるイエローチームと戦うこともなく、第5試合まで全てが終わってしまった。
こんな試合のために練習していたのか……というわけではなく、本番はこの後である。
司会担当を務める上級生の一人が大きな声で観客に語りかける。
「さぁ、今年入ったばかりの新入生たちも、時は早いもので一年が過ぎようとしています!
だがしかし、実際にこうして公式ルールでの戦いとなると、自らの能力不足を身に沁みて感じることでしょう!」
続いては上級生たちの試合を行い、それでもなお高みを目指す者達にエキシビジョン戦を設けるのだと説明し始めた。
簡単に言えば参加希望チーム全てで攻防交えた火魔法ならば何でもありの時短ルール。
マナを全て出し切って、最後まで生き残ったチームが勝者というわけだ。
なお将来のために、ここで誰よりも目立つことがタリアとポーラの目的でもある。
上級生達の試合運びは、やはり違っていた。
妨害には地形をうまく利用し、遅延詠唱をうまく組み込んでタイミングをずらしたり、詠唱を中断させたり。
時には魔法だけでなく、砂埃が舞うことも。
もちろん攻撃側の非常に正確で、詠唱破棄は当然のことながら、こちらも遅延詠唱の1つである設置詠唱が使われて、発動のタイミングを読めなくしたりと、戦略は様々だった。
「俺馬鹿だから、何が起きてるか全然わかんないっス……」
「いや、多分オルトだけじゃないと思うけど……」
時には詠唱後も発動せず、時には極端に破棄した詠唱でフラッグではない何かを狙っていたりと。
マナが見えているせいか、意図しない魔法の動きまで見えてしまうソーマは、余計に混乱しているのだった。
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