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学園祭①
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いつもならば割と静かな校内も、この時だけは随分と賑やかしい。
実技を中心に学んできた上級生たちは、それぞれ思い思いの特技を発表して卒業を迎えることとなる。
以前よりスカウトされている者もいれば、学園側からの推薦で将来が約束されている者もいる。
「まるで出荷されるみたいだ」
なんてソーマが冗談めいたことを言うが、逆にここで出荷されなければ学園に来た意味の半分は失ったようなものであった。
王宮魔法使いの見習いはじめ、大手の商会や騎士団からの斡旋もあり、条件の良いものが軒並み揃っているのだ。
そんなのんびりと学園祭を漫遊する傍らで、フランはソーマの服の裾を掴んでいた。
「うぅ、緊張してきたよ……」
「まぁなんとかなるっスよ。
メインは俺たちじゃなくて上級生たちっスもんね」
オルトはいつも通りで、特に何かを気にする素振りもない。
下級生にはお遊び程度のお祭りなのだし、よほど優れていなければスカウトされることなど、まぁあり得ない。
そのくらい下級生と上級生ではレベルが違うものなのだ。
会場に近づくと、早速ソーマたちの姿を見つけたタリアとポーラが手を振って出迎える。
「フランー! こっちー!!」
試合会場には身長ほどもあるフラッグが30本。
また、障害物として地魔法で拵えた壁が幾つも設置されている。
「本当だ、練習で使ったのよりも大きいね」
「そりゃあ、これは下級生用のフラッグだもん。
練習だと妨害もされないけど、フランだって本番じゃどれだけ当てれることか」
あれから何日も練習をしてきたフランたちだが、周りからは優勝候補の一角だとさえ言われるほどだった。
ただ、それほどずば抜けて凄い魔法を見せていたわけではなく、魔法の命中精度が高いという程度。
中でもフランは百発百中に近いレベルで的に当てることができている。
まぁ実際は詠唱破棄によって精度の落ちた魔法なわけで、周囲と同じく完全詠唱ならば確実に的を射抜くのだろうけども。
そんなフランに対してタリアもここぞとばかりに強がりを言っているようだった。
大会の準備は整い、選手たちが紹介されていく。
フランたち下級生は、上級生たちが戦う前座といった感じ。
各クラスから希望者が集まり、雰囲気だけでも感じてもらおうといった趣旨らしい。
攻撃側が次々と魔法を放ち、防御側はありとあらゆる手段でフラッグを死守する。
魔法が直接選手に当たることもあるが、割とダメージは無いように見える。
「魔法攻撃ありとはいえ、結構危なっかしいけど……
あの指輪が炎耐性の魔道具?」
魔法よりも転んだダメージの方が大きいらしいが、とてもそのようには見えずにソーマはヒヤヒヤとしながら観戦していた。
「そうっスね。
あと、燃えないローブを必ず着用するんで、やばいくらい暑いらしいっス。
去年も暑さと魔法の熱にやられて、試合中に医務室送りになった生徒がいたらしいっスね」
マナによる影響と暑さは関係がないのだろう。
意外なところに罠が潜んでいるものだと思ってしまうソーマであった。
そして下級生たちの前座、第3試合。
フランたちの初めての試合は、攻撃側として始まったのだった。
実技を中心に学んできた上級生たちは、それぞれ思い思いの特技を発表して卒業を迎えることとなる。
以前よりスカウトされている者もいれば、学園側からの推薦で将来が約束されている者もいる。
「まるで出荷されるみたいだ」
なんてソーマが冗談めいたことを言うが、逆にここで出荷されなければ学園に来た意味の半分は失ったようなものであった。
王宮魔法使いの見習いはじめ、大手の商会や騎士団からの斡旋もあり、条件の良いものが軒並み揃っているのだ。
そんなのんびりと学園祭を漫遊する傍らで、フランはソーマの服の裾を掴んでいた。
「うぅ、緊張してきたよ……」
「まぁなんとかなるっスよ。
メインは俺たちじゃなくて上級生たちっスもんね」
オルトはいつも通りで、特に何かを気にする素振りもない。
下級生にはお遊び程度のお祭りなのだし、よほど優れていなければスカウトされることなど、まぁあり得ない。
そのくらい下級生と上級生ではレベルが違うものなのだ。
会場に近づくと、早速ソーマたちの姿を見つけたタリアとポーラが手を振って出迎える。
「フランー! こっちー!!」
試合会場には身長ほどもあるフラッグが30本。
また、障害物として地魔法で拵えた壁が幾つも設置されている。
「本当だ、練習で使ったのよりも大きいね」
「そりゃあ、これは下級生用のフラッグだもん。
練習だと妨害もされないけど、フランだって本番じゃどれだけ当てれることか」
あれから何日も練習をしてきたフランたちだが、周りからは優勝候補の一角だとさえ言われるほどだった。
ただ、それほどずば抜けて凄い魔法を見せていたわけではなく、魔法の命中精度が高いという程度。
中でもフランは百発百中に近いレベルで的に当てることができている。
まぁ実際は詠唱破棄によって精度の落ちた魔法なわけで、周囲と同じく完全詠唱ならば確実に的を射抜くのだろうけども。
そんなフランに対してタリアもここぞとばかりに強がりを言っているようだった。
大会の準備は整い、選手たちが紹介されていく。
フランたち下級生は、上級生たちが戦う前座といった感じ。
各クラスから希望者が集まり、雰囲気だけでも感じてもらおうといった趣旨らしい。
攻撃側が次々と魔法を放ち、防御側はありとあらゆる手段でフラッグを死守する。
魔法が直接選手に当たることもあるが、割とダメージは無いように見える。
「魔法攻撃ありとはいえ、結構危なっかしいけど……
あの指輪が炎耐性の魔道具?」
魔法よりも転んだダメージの方が大きいらしいが、とてもそのようには見えずにソーマはヒヤヒヤとしながら観戦していた。
「そうっスね。
あと、燃えないローブを必ず着用するんで、やばいくらい暑いらしいっス。
去年も暑さと魔法の熱にやられて、試合中に医務室送りになった生徒がいたらしいっスね」
マナによる影響と暑さは関係がないのだろう。
意外なところに罠が潜んでいるものだと思ってしまうソーマであった。
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フランたちの初めての試合は、攻撃側として始まったのだった。
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