私の主人はワガママな神様

どろろ

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8.夜食(2)

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 土鍋に適当な量の水を入れ火にかける。冷蔵庫の野菜室からキャベツとネギを取り出し、一口で食べやすいように大きさに切り刻む。沸騰した湯の中に切った野菜を入れ、火が通ってきた頃にうどんを鍋に入れる。あとはダシと味噌とチューブの生姜をいい感じに入れ、うどんが茹で上がるまで煮込むだけ。
 あっというまに味噌煮込みうどんが出来上がった。これならすぐ作れて身体も温まるし、病人も食べやすい。

「はい、どうぞ」
「わっ、美味そう……いただきます!」

 ふうふうと息を吹きかけながらうどんを頬張る晴太郎を見て、七海は心が温かくなるのを感じた。ここ数日、彼の辛そうな顔ばかり見て居たので今のような元気な姿を見ることができて嬉しい。

「なんか、こんな時間に食べるなんて、悪い事してる気分になるなあ」
「いつもだったら許しませんが、今は特別ですね」

 いつの間にかもう日付けが変わりそうな時間になっている。普段なら夜食なんて健康に悪いと言って許さないが、今は違う。たくさん食べて、早く治してもらいたい。
 晴太郎はあっというまにうどんを平らげてしまった。2玉茹でたので多過ぎたかと思っていたが、成長期の食欲は恐ろしい。

「はあー、美味かった……生き返った……」
「よくあの量食べましたね。元気になったみたいで、よかったです」

 満足した様子の晴太郎は、ソファに戻りテレビを見始めた。七海は台所を片づけながら彼の様子を見守る。今までずっと寝ていたせいで睡魔がやって来ないのだろうか。
 特に何か見たいという訳では無いようで、リモコンで適当に色んなチャンネルに回して居たが、とあるアイドルの番組で彼の手が止まる。七海は首を傾げた。晴太郎の口から1度もアイドルの名前なんて聞いたことがない。

「行きたかったなあ……」

 ぽつり、と零した晴太郎の呟きで納得がいった。良く見てみると、今彼が見ているアイドル番組は『夢の国へ潜入』という内容である。彼の興味を引いたのは夢の国の方だった。

「せっかく姉さんにチケット貰ったのに、行けなかったなあ……」
「ああ、それでしたら……少しお待ちください」
「うん?」

 七海は一旦片付けをやめるとリビングを出て自室へ戻る。棚の引き出しに入れてあった白い小さな封筒を持ってすぐリビングに戻ると、急にどうしたんだと晴太郎が首を傾げて待っていた。
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