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22.七海の決断(3)
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年が明け長期休暇が終わり、また忙しない日々が始まった。
「あ、七海さーん。明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとうございます、山田くん」
「今年もよろしくお願いしますー」
長期休暇明けの仕事は大変だ。忙しい、というよりすっかり休みに慣れてしまった体に鞭を入れなければならない。また仕事モードに切り替えられていない部分もあるので、メンタル部分がひどく疲れてしまう。
本当なら、今日は仕事に慣れるだけにしようと言いたいところだが、そうもいかないのが現実だ。年末に捌ききれなかった仕事や、新しく舞い込んだ仕事もある。
「あれ? 七海さん、なんか変わりましたね」
「え、そうですか?」
「うーん、年末はマジで表情死んでましたけど、なんか……いい感じですね。いいこと、ありました?」
「いいこと、ですか……」
いいことは、もちろんあった。心当たりがありすぎる。
そんなに顔に出てしまっていたのだろうか、と少し反省した。いくらいいことがあっても、仕事の時も緩んでいてはいけない。部下の山田は人の感情に聡いので、すぐに見破られてしまったようだ。
「楽しい休みで良かったじゃないですかー。俺なんて実家でだらだらしてただけですもん」
「ゆっくり出来たなら、いいじゃないですか」
「まあそうですけど……本当は遊びに行きたかったなあ。東京とか」
東京、と聞いて晴太郎のことを思い出す。東京にいる彼は、今頃学校だろうか。元気にしているだろうか。
「ボーナス使って行こうかなって思ったんですけど、貰ってすぐ使うのもちょっとなあって思って」
「まあ、確かに。すぐに使い込むのは良くないですね」
「ですよねー。ちゃんと貯金に回しましたよ。次の長い休みは、絶対東京旅行してやる……!」
年末にも話した気がするが、山田は東京に強い憧れがあるらしい。仙台に来る前は東京にいた七海の話を、羨ましそうに聞いていたことを思い出した。転勤を望んでいるが、東京支店の総務部に空きがないらしく、話が回ってこないようだ。
雑談も交えつつ、山田とどの仕事を捌くか割り振りをしていく。ある程度決まったところで、ヴーヴー、と七海のマナーモード中のスマートフォンが鳴り出した。電話の着信だ。
「あ、どうぞ出てきてください」
気を利かせた山田がそう言ってくれたので、彼に断りを入れてフロアを出た。
鳴ったのは仕事で使う社用携帯ではなく、七海のプライベートのスマートフォンだ。だったら、休憩中にでもかけ直せばいい。普段であれば間違いなくそうするのだが、今回はそうするのは少し気が引けた。
ディスプレイに表示された発信者の名前が、『中条風太郎』だったからだ。
年が明け長期休暇が終わり、また忙しない日々が始まった。
「あ、七海さーん。明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとうございます、山田くん」
「今年もよろしくお願いしますー」
長期休暇明けの仕事は大変だ。忙しい、というよりすっかり休みに慣れてしまった体に鞭を入れなければならない。また仕事モードに切り替えられていない部分もあるので、メンタル部分がひどく疲れてしまう。
本当なら、今日は仕事に慣れるだけにしようと言いたいところだが、そうもいかないのが現実だ。年末に捌ききれなかった仕事や、新しく舞い込んだ仕事もある。
「あれ? 七海さん、なんか変わりましたね」
「え、そうですか?」
「うーん、年末はマジで表情死んでましたけど、なんか……いい感じですね。いいこと、ありました?」
「いいこと、ですか……」
いいことは、もちろんあった。心当たりがありすぎる。
そんなに顔に出てしまっていたのだろうか、と少し反省した。いくらいいことがあっても、仕事の時も緩んでいてはいけない。部下の山田は人の感情に聡いので、すぐに見破られてしまったようだ。
「楽しい休みで良かったじゃないですかー。俺なんて実家でだらだらしてただけですもん」
「ゆっくり出来たなら、いいじゃないですか」
「まあそうですけど……本当は遊びに行きたかったなあ。東京とか」
東京、と聞いて晴太郎のことを思い出す。東京にいる彼は、今頃学校だろうか。元気にしているだろうか。
「ボーナス使って行こうかなって思ったんですけど、貰ってすぐ使うのもちょっとなあって思って」
「まあ、確かに。すぐに使い込むのは良くないですね」
「ですよねー。ちゃんと貯金に回しましたよ。次の長い休みは、絶対東京旅行してやる……!」
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雑談も交えつつ、山田とどの仕事を捌くか割り振りをしていく。ある程度決まったところで、ヴーヴー、と七海のマナーモード中のスマートフォンが鳴り出した。電話の着信だ。
「あ、どうぞ出てきてください」
気を利かせた山田がそう言ってくれたので、彼に断りを入れてフロアを出た。
鳴ったのは仕事で使う社用携帯ではなく、七海のプライベートのスマートフォンだ。だったら、休憩中にでもかけ直せばいい。普段であれば間違いなくそうするのだが、今回はそうするのは少し気が引けた。
ディスプレイに表示された発信者の名前が、『中条風太郎』だったからだ。
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