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入学編
001
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「どうしてこうなったんだろう…」
少し時期をはずれた桜が待つ通学路。
傍目からも育ちの良いお嬢様たちが桜並木を潜りながら登校する中、僕は誰に言うでもなく呟いた。
「それは、お姉さまがお母様の申し入れを断れなかったからではないのですか?」
横の童女は歩くたびに赤みがかった髪をゆらゆらと揺らす。
その表情は決して豊かとはいえないけど、慣れた人ならその奥に諦念と、そして不安を感じられるだろう。
かくいう僕も今までにない不安を抱える羽目になっている。
「まさか本当に入学させられるとは思わないだろう?」
だって、僕は『男』なんだもの。
言葉にこそ出さないけど何を言いたいのかわかったのか日向は少し目をふせる。
「僕が女子校に入学だなんて、お嬢様に知られたらどんな顔されるか」
「お姉さまにとって、歓迎できない事態になるのはまず間違い無いかと」
「はぁ…そうだよねぇ」
深いため息をつきつつも、学院への通学を続ける。ここで足を止めても余計に目立つだけなんだから。
「とにかく、まずは目立たないように過ごさないとね」
気を取り直してカバンの握り手を持ち直す。
家を出た時から覚悟は決めてたんだろ、しっかりするんだ「私」!
「お姉さま、ごきげんよう!」
「ごきげんよう、いい天気ですね」
下級生の挨拶に、にこやかな笑顔を浮かべて返事をする。
スマイル100点、いろんな細工込みで容姿も100点、それでも総合得点は赤点必至の0点なり。
だってここは女子校で、『私』は『僕』で『男』なんだから。
無駄なことを考えても仕方がない、そう思い直して前を向く。
「日向、お待たせ。いこう」
「お姉さま、辛くなったらいつでも日向がいますからね?」
日向が心配そうな表情を浮かべる。
でもそれは不要だと笑みを浮かべる。やろうと思えばきっとやれるんだから、と。
「大丈夫だよ…」
こうして僕の、私の学園生活は不穏な空気を纏いながらも軽快にスタートを切った。
「果てしなく不安だけどね」
1人呟いた言葉は今度こそ誰にも聞かれず、空に静かに溶け去った。
ーーー
「聖桜女学院…?」
手渡されたのはとある高校の入学パンフレット。
桜舞う校舎を背景に、デカデカと校名が綴られている。
どこかで聞いたことがある名前だと頭を捏ね繰り返す。
「ここ、美月(ミツキ)様が通ってる学校ではありませんでしたか?」
我が家の主家であるところの山城家。
山城美月様は、山城家唯一の一人娘でやれ花よ蝶よと育てられた生粋のお嬢様。
そんなお嬢様が通う学校だからそんじゃそこらの一般校とは格が違う。
旧家名家のお嬢様に大企業のご令嬢、果ては国の重鎮の一人娘、なんでもござれのハイパーお嬢様『専用』学校。そんな学校のパンフレットが『僕』の手元にある、その理由は、その理由は。
果てしなく嫌な予感がする…。
「あら、よく覚えてたわね。…それでね、ゆーちゃん」
お母様はさも重要なことを話そうと顔を顰めているけど、鼻の穴が広がっている。これはあれだ、絶対心の中で何かワクワクして抑えきれてないやつだ。
「ゆーちゃんにはね、美月様と一緒の学園に通ってほしいの」
「ゔっ」
嫌な予感はやっぱり正しかったみたいで思わず正気を疑うようなお願いが飛び出る。
「だからね、ゆーちゃん。女の子の格好をして、美月様と一緒の学校に通ってくれないかしら」
聞き間違いを許さない2度目の追撃。頭痛が痛いとはまさにこのことか。
「お母様、一体全体どういうわけでそんな…、突拍子もないお願いが出てくるんですか!?」
「だってね、これを見てほしいの」
そう言って、机の上に召し上げたるは、1組の「女性用制服」。
見るからにおろしたての制服は、シンプルなデザインで全体の黒色が高級感を引き立たせる。
美月様がきたらさぞお似合いだろうと思わせるようなデザインだ。
「これ、かわいーでしょ?ゆーちゃんによく似合うと思うの!」
「いや、それ理由になってないですよ!?」
頭が痛くなるような現実に、つい夢ではないかと疑ってしまう。残念ながら悲しいことに現実に変わりはないようだけど。
お母様の話は、頭を抱える僕をよそにどんどん進んでいく。
「ママね、本当はこの制服着て聖桜に通うのが夢だったの。でも、その時おじいちゃん…、お父さんと喧嘩して家出しちゃったから通えなくってねぇ」
お母様のお父様、つまりはお祖父様との関係、今でこそ仲違いも収まり孫息子である僕も随分と可愛がりしてもらってるけど、お父様と駆け落ちした当時はそれはもう烈火の如くお怒りになったのだとか。(お父様はいまだに何かと張り合ってるようだけど)
「そ、れ、で。お父さんに相談したらゆーちゃんを通わせちゃえばいいじゃないって話になったの!」
「さも名案、みたいな顔で言わないでください!」
思わず大声が出てしまう。
あーもうだめだ、胃までぐるぐるしてきた。
「これ、お父様はご存知なんですか?」
この家の、両親の良心であるところのお父様。
その存在に期待したんだけど。
「もちろん、パパも賛成してくれたわよ」
「なんでっ!」
ガッデム、ジーザス、お前もか!
まさかあの真面目一辺倒のお父様まで賛同しているというんですか!?
「ち、な、み、に。もう転入届は提出済みだったりしまーす」
憎たらしいこの笑顔。親の顔が見てみたい、と思ったけど親(お祖父様)も賛成してるのか!!
「いや、そもそも女子校に男って、学院が許可出さないでしょう!?」
「そこは大ジョーぶ!おじいちゃんと、山城様も協力してくれて通ってもいいって」
山城様までですか!?
なんで美月様のお家まで関わって…いや、たしか学園にかなりの金額を寄付してるから多少のわがままは通せるかもって聞いたことはあるけど。
「と、いうわけで逃げ道もないから諦めて☆」
「なんでですか!?」
お母様の輝かしいまでの笑顔と反対に、僕の顔は真っ黒間違いなしだった。
本当どうしてこうなったんだろう…。
ーーーー
深く息を吸うと、朝の柔らかな空気が肺を満たす。
まだ見ぬ乙女の花園は、すぐ目の前で何がどう捻くれてこんなことになったのか首をかしげずにはいられない。
「大丈夫ですか?ゆうき…いえ、夕陽様」
「日向…、君も付き合わせて悪いね」
固く閉ざされた門の手前、女の姿をした男の僕と、正真正銘女の子の日向が並び立つ。
今日は学生証をもらうのと、学院長に挨拶をするのが目的だ。
あとは、学院の中での注意事項やらなんやらしっかりと聞いておかないと。
どこからボロが出るのか全くわからないんだから…。
守衛の人に取り次いでもらおうと思ったが、先客がいるようだ。
「日向、ちょっと待ってようか」
別に急ぐ話でもないし。
余裕を持ってきてるから多少遅れたところで、と思っていたけど先客は日向を見つけるとこちらに話しかけてきた。
「あら、日向ちゃんじゃない。どうしたの、今日は活動もなにもなかったわよね」
「渚様…」
「日向知り合い?」
タイミングが悪い時に見つかってしまった時と同じ顔をしてる。
まぁ、隣に男がいる時点でタイミングがいい時なんてありえないんだけどね。
「こちら、当学園の生徒会長、天童寺渚様です」
「ご紹介に預かりまして。どうも渚です」
お辞儀ひとつとっても上品でまさしくお嬢様といった感じだ。
「小鳥遊夕陽です、はじめまして」
「今日はこちらの、夕陽様の入校手続きを行いにまいりました」
「あら、新入生…じゃなくて転入生かしら?」
時期は4月間際。新入生の手続きはもう既に終わっている頃合いだから、消去法的に残るのは、といった次第だろう。
「はい。4月からお世話になります」
「こちらこそ、よろしくね。紹介いただいた通り、憚りながらも生徒会長を務めてるから、何か困り事があればいつでも相談に乗るわ…。転入手続きってことは、2人はこれから学長室に向かうのよね?」
「えぇ、そうですが…」
「それなら、ちょうどいいし案内してあげるわ」
「いえそんなわけには」
わざわざお休みのところ、大変だろうに、と。
でも正直、男だてら女学院に入る前の、心の準備をさせてほしいっていうのが9割占めている。
「生徒会の仕事でね。これを学長に渡しに行かないといけないからついでよついで」
と封筒をひらひらさせる。
「それでしたら、甘えさせていただきます」
無理に固辞しても変に思われるだけ。それならもういっそ一緒に向かった方が良いかと思い直す。
日向もあまり学長室には関わりがなかったから、少し不安だと言っていたし。
でも休みの日まで生徒会の仕事だなんて、大変だなぁ…。
「じゃ、ついてきて」
手早く守衛室で仮入校手続きを済ませると、早速案内が始まった。
道中いろんなことを聞かれたけど正直あまり内容を覚えていない。
だって、心の中はそれどころじゃなかったから。
とうとう入り込んだ男子禁制の女の園、隣には学院トップの生徒会長。
一歩でも間違えば、入学以前に全てがオジャンになる。
そう思えば、むしろ当たり障りのないことしか言えなかったのは正解なんじゃないかと思う。
「さて、ここが学長室よ」
なんとかボロを出さずに学長室にたどり着く。
心構えも何も、渚さんはすぐにドアをノックする。
「天童寺です。入室してもよろしいでしょうか」
「どうぞ、入ってちょうだい」
「失礼します」
お嬢様学校の、その学長室ともなればやはりそれなりの調度品が置かれている。どれも安くはなさそうだけどゴテゴテした感じではなく落ち着いた雰囲気だ。
そして、そんな部屋の奥机の向こう側。
シスター服を着た、年配の女性が座っている。
「あら、天童寺さんに、小鳥遊さん、赤岩さん」
少し目を広げるけど、大きく驚いたような雰囲気はない。驚いた中でも上品さが常に携わっている。
「守衛室でお会いしまして、行き先が同じようでしたのでご一緒に」
「そうでしたの」
にこやかに席を立つ学院長。
随分と背の高い方のようで、「男の僕」からみても頭半個分ぐらい高い。
背骨もずっと伸びていて姿勢が良い。
「あぁ、そうね。天童寺さんは入学式の?」
「はい。草案がまとまりましたので、提出に」
「ありがとう、しっかり読ませてもらいますね」
それだけで渚さんの用事は終わったようだ。
「それでは学長、私はこれで」
「あら、もういっちゃうの?」
少し寂しそうな表情を浮かべるが、渚さんもこの後用事があるようで。
「少し先を急ぎますので」
といって扉を後にしてしまった。
あとは残された僕と日向、そして学院長。
物静かな空間に、針子時計の音が鳴る。
スッと、学長の目が細くなる。
「あなたが、鳳山祐樹さん、ね」
「はい…」
そりゃあ、男だてら女学院に入ろうとしているのだ。よくない感情の一つや二つ、容易に浮かぶだろう。そう思ったが、ふいに学長の表情が柔らかくなる。
「ふふっ、随分とよく似てるわね」
「へ?」
「山城美月さん、あなたのはとこなんですって?」
「え、えぇ」
美月様は、母方の祖父の兄弟の孫娘にあたる。
正直そこまで離れると、本家でもなかなか顔を合わせないから実感もないけど。
「背は少しあなたの方が高いけど、顔つきなんかはよく似ています。化粧でそれらしくすれば見分けがつかなくなるほどに」
「…」
僕と日向はそれに何もいうことができなかった。
今回特別に入学が許されたのも、そのところが随分大きく関わっているから。
「ごめんなさいね、こちらの事情にあなたたちを巻き込んでしまって」
「いえ、どうしようもないことですから」
「そういってくれると、幾分か心も軽くなるわ。…あぁ、そうね、転入手続きをしないとね」
軽い談笑の後、そのまま机に案内されて転入手続きが始まった。
「まずは、これ。学生証になります」
手渡された学生証の名前欄には本名の鳳山裕樹とは異なる、【小鳥遊夕陽】の文字がある。
「流石にそのままの名前だと、山城さんに見咎められた時にすぐにバレちゃいますからね」
と、おかしそうに話す。
バレた時の心配、というよりもいかに隠そうかワクワクしてる雰囲気だ。
「で、これが寮の鍵になります」
チャリンと、軽い音を立てて机に置かれる鍵を僕は複雑な眼差しで見つめる。
「これがないと、自分の部屋に帰れなくなるから気をつけてね。…あら、どうしたの?」
「いえ、本当にここまできてしまったのだな、と」
目の前に偽名の学生証、鍵。制服に体操服その他諸々授業で使う教材なんかは寮に直接届けられるとのことだったから、これが学院関係の初めての持ち物となる。
だから、それだけに後戻りが出来ないのだ、と目の前に現実が押し付けられるている気がするのだ。
「心配に思うのはしょうがないわ。だって、前代未聞のことだもの」
あくまで微笑みを保ったまま学長が語り続ける。
「でも、私も出来るだけ気を配るようにしますし、赤岩さんもいます。そんなに心配しなくても大丈夫よ」
「そう、ですね」
いくらここで心配してても始まらない。
そう思い込むことにする。
ていうか、そうしないとやってられないよ、色んな意味で。
「祐樹様、私も微力ながらお支えいたします」
「ありがとう、日向」
日向にも何かと迷惑がかかる今回、どこかでお礼もしないと。
「それで、こちらが赤岩さんの鍵になります。出来るだけ近いところで部屋をとってるから、力になってあげてちょうだい」
「ご配慮、ありがとうございます」
寮は現在2名ほど滞在しているようで、僕らが入って4人、そこに今年の新入生とかがさらに入るらしい。
「もしかしたら飛び入りで入寮する人もいるかも知れないけれど。それで、これが簡単な見取り図で、2人の部屋はここと、ここね」
見取り図で見れば、日向の部屋はすぐ隣。
確かにこれは困った時にすぐに頼れそうだ。
「ちなみに、天童寺さんの部屋はこちらになります」
「あの方も寮生だったのですね…」
「天童寺さんは知らなかったと思うけれど、一緒に入ってきた時は随分と驚いたのよ?まさかもう知り合いに、って」
その後は大きな括りでの学院、寮での過ごし方の説明を受ける。
例えば夜の8時以降は塾等を除いた外出は控えること、食堂や寮での食費の支払いは基本不要で学費に含まれることなどなど。
「あとは、生活の中での諸々は赤岩さんに聞いてくださいね」
「はい、何から何までありがとうございます」
学院長も流石に男が女の生活をすることへの知見はないようで、そこは覚悟を持って挑んでくれと頼まれた。
「それでは、失礼します」
もらった資料や鍵などを片手に学長室を後にする。
扉を閉めればひとまず今日の一大イベントが終了。
「夕陽様?」
「ん、どうしたの、日向」
「いえ、少し顔色がよろしくないように思えまして」
極度の緊張状態が続いたせいで、すこし疲れが出たのだろうか。
「…どこか寄ろうかと思ってたけどそのまま帰ろうか?」
せっかく遠出をしたのだ。
仮住まいのホテルに戻るにしても、どこかへ寄ってご飯を食べてから、と思っていたが日向は僕が倒れるのではないかと不安なようだ。ご飯なんかは別にコンビニでもいいんだし配達か何かを頼んでもいい。
「いいえ、食事はきちんと取らなければ力も戻りません。一度ホテルに戻って、普段着に戻してから食べに参りましょう。…タクシーを呼んで参りますので、そちらのベンチでしばらく休んでいてください」
そう言って、近くにあった広場の横に置かれた席に案内される。
これまた細やかな手入れの行き届いた花壇の中にあって少し気恥ずかしくすら思う。
「それでは」
かと言って日向はいち早くタクシーを呼ぶことで頭がいっぱいなのか、そのまま走り去ってしまった。
「別に、電話でもなんでも使って呼べばいいのに」
と思いつつも既に後の祭り。
水を差すのもどうかと思い、お言葉に甘えて休ませてもらうことにする。
「それにしても、随分と綺麗な花ですね」
ムスカリ…だろうか。
同じ種類の色違いが複数咲いている。
風はそよそよと心地よく、日陰にいるものだから少し肌寒さを感じる空気。
これで少し疲れているのだからあくびの一つや二つ、簡単に出てくる。
「ん…、日向遅いなぁ」
どこまで行ったのか。
タクシーが来るまで外で待ってるつもりなのか。
うとうとと落ちかけた頭で、溢れる思考がモヤに包まれていく。
「少しだけ…少しだけ…」
そういって、目を瞑る。
音は遠くなり、瞼を抜ける日も気にならなくなる。
ふと、風が強く吹いたのか寒さを感じたけど。
暖かな何かに包まれる心地がした。
少し時期をはずれた桜が待つ通学路。
傍目からも育ちの良いお嬢様たちが桜並木を潜りながら登校する中、僕は誰に言うでもなく呟いた。
「それは、お姉さまがお母様の申し入れを断れなかったからではないのですか?」
横の童女は歩くたびに赤みがかった髪をゆらゆらと揺らす。
その表情は決して豊かとはいえないけど、慣れた人ならその奥に諦念と、そして不安を感じられるだろう。
かくいう僕も今までにない不安を抱える羽目になっている。
「まさか本当に入学させられるとは思わないだろう?」
だって、僕は『男』なんだもの。
言葉にこそ出さないけど何を言いたいのかわかったのか日向は少し目をふせる。
「僕が女子校に入学だなんて、お嬢様に知られたらどんな顔されるか」
「お姉さまにとって、歓迎できない事態になるのはまず間違い無いかと」
「はぁ…そうだよねぇ」
深いため息をつきつつも、学院への通学を続ける。ここで足を止めても余計に目立つだけなんだから。
「とにかく、まずは目立たないように過ごさないとね」
気を取り直してカバンの握り手を持ち直す。
家を出た時から覚悟は決めてたんだろ、しっかりするんだ「私」!
「お姉さま、ごきげんよう!」
「ごきげんよう、いい天気ですね」
下級生の挨拶に、にこやかな笑顔を浮かべて返事をする。
スマイル100点、いろんな細工込みで容姿も100点、それでも総合得点は赤点必至の0点なり。
だってここは女子校で、『私』は『僕』で『男』なんだから。
無駄なことを考えても仕方がない、そう思い直して前を向く。
「日向、お待たせ。いこう」
「お姉さま、辛くなったらいつでも日向がいますからね?」
日向が心配そうな表情を浮かべる。
でもそれは不要だと笑みを浮かべる。やろうと思えばきっとやれるんだから、と。
「大丈夫だよ…」
こうして僕の、私の学園生活は不穏な空気を纏いながらも軽快にスタートを切った。
「果てしなく不安だけどね」
1人呟いた言葉は今度こそ誰にも聞かれず、空に静かに溶け去った。
ーーー
「聖桜女学院…?」
手渡されたのはとある高校の入学パンフレット。
桜舞う校舎を背景に、デカデカと校名が綴られている。
どこかで聞いたことがある名前だと頭を捏ね繰り返す。
「ここ、美月(ミツキ)様が通ってる学校ではありませんでしたか?」
我が家の主家であるところの山城家。
山城美月様は、山城家唯一の一人娘でやれ花よ蝶よと育てられた生粋のお嬢様。
そんなお嬢様が通う学校だからそんじゃそこらの一般校とは格が違う。
旧家名家のお嬢様に大企業のご令嬢、果ては国の重鎮の一人娘、なんでもござれのハイパーお嬢様『専用』学校。そんな学校のパンフレットが『僕』の手元にある、その理由は、その理由は。
果てしなく嫌な予感がする…。
「あら、よく覚えてたわね。…それでね、ゆーちゃん」
お母様はさも重要なことを話そうと顔を顰めているけど、鼻の穴が広がっている。これはあれだ、絶対心の中で何かワクワクして抑えきれてないやつだ。
「ゆーちゃんにはね、美月様と一緒の学園に通ってほしいの」
「ゔっ」
嫌な予感はやっぱり正しかったみたいで思わず正気を疑うようなお願いが飛び出る。
「だからね、ゆーちゃん。女の子の格好をして、美月様と一緒の学校に通ってくれないかしら」
聞き間違いを許さない2度目の追撃。頭痛が痛いとはまさにこのことか。
「お母様、一体全体どういうわけでそんな…、突拍子もないお願いが出てくるんですか!?」
「だってね、これを見てほしいの」
そう言って、机の上に召し上げたるは、1組の「女性用制服」。
見るからにおろしたての制服は、シンプルなデザインで全体の黒色が高級感を引き立たせる。
美月様がきたらさぞお似合いだろうと思わせるようなデザインだ。
「これ、かわいーでしょ?ゆーちゃんによく似合うと思うの!」
「いや、それ理由になってないですよ!?」
頭が痛くなるような現実に、つい夢ではないかと疑ってしまう。残念ながら悲しいことに現実に変わりはないようだけど。
お母様の話は、頭を抱える僕をよそにどんどん進んでいく。
「ママね、本当はこの制服着て聖桜に通うのが夢だったの。でも、その時おじいちゃん…、お父さんと喧嘩して家出しちゃったから通えなくってねぇ」
お母様のお父様、つまりはお祖父様との関係、今でこそ仲違いも収まり孫息子である僕も随分と可愛がりしてもらってるけど、お父様と駆け落ちした当時はそれはもう烈火の如くお怒りになったのだとか。(お父様はいまだに何かと張り合ってるようだけど)
「そ、れ、で。お父さんに相談したらゆーちゃんを通わせちゃえばいいじゃないって話になったの!」
「さも名案、みたいな顔で言わないでください!」
思わず大声が出てしまう。
あーもうだめだ、胃までぐるぐるしてきた。
「これ、お父様はご存知なんですか?」
この家の、両親の良心であるところのお父様。
その存在に期待したんだけど。
「もちろん、パパも賛成してくれたわよ」
「なんでっ!」
ガッデム、ジーザス、お前もか!
まさかあの真面目一辺倒のお父様まで賛同しているというんですか!?
「ち、な、み、に。もう転入届は提出済みだったりしまーす」
憎たらしいこの笑顔。親の顔が見てみたい、と思ったけど親(お祖父様)も賛成してるのか!!
「いや、そもそも女子校に男って、学院が許可出さないでしょう!?」
「そこは大ジョーぶ!おじいちゃんと、山城様も協力してくれて通ってもいいって」
山城様までですか!?
なんで美月様のお家まで関わって…いや、たしか学園にかなりの金額を寄付してるから多少のわがままは通せるかもって聞いたことはあるけど。
「と、いうわけで逃げ道もないから諦めて☆」
「なんでですか!?」
お母様の輝かしいまでの笑顔と反対に、僕の顔は真っ黒間違いなしだった。
本当どうしてこうなったんだろう…。
ーーーー
深く息を吸うと、朝の柔らかな空気が肺を満たす。
まだ見ぬ乙女の花園は、すぐ目の前で何がどう捻くれてこんなことになったのか首をかしげずにはいられない。
「大丈夫ですか?ゆうき…いえ、夕陽様」
「日向…、君も付き合わせて悪いね」
固く閉ざされた門の手前、女の姿をした男の僕と、正真正銘女の子の日向が並び立つ。
今日は学生証をもらうのと、学院長に挨拶をするのが目的だ。
あとは、学院の中での注意事項やらなんやらしっかりと聞いておかないと。
どこからボロが出るのか全くわからないんだから…。
守衛の人に取り次いでもらおうと思ったが、先客がいるようだ。
「日向、ちょっと待ってようか」
別に急ぐ話でもないし。
余裕を持ってきてるから多少遅れたところで、と思っていたけど先客は日向を見つけるとこちらに話しかけてきた。
「あら、日向ちゃんじゃない。どうしたの、今日は活動もなにもなかったわよね」
「渚様…」
「日向知り合い?」
タイミングが悪い時に見つかってしまった時と同じ顔をしてる。
まぁ、隣に男がいる時点でタイミングがいい時なんてありえないんだけどね。
「こちら、当学園の生徒会長、天童寺渚様です」
「ご紹介に預かりまして。どうも渚です」
お辞儀ひとつとっても上品でまさしくお嬢様といった感じだ。
「小鳥遊夕陽です、はじめまして」
「今日はこちらの、夕陽様の入校手続きを行いにまいりました」
「あら、新入生…じゃなくて転入生かしら?」
時期は4月間際。新入生の手続きはもう既に終わっている頃合いだから、消去法的に残るのは、といった次第だろう。
「はい。4月からお世話になります」
「こちらこそ、よろしくね。紹介いただいた通り、憚りながらも生徒会長を務めてるから、何か困り事があればいつでも相談に乗るわ…。転入手続きってことは、2人はこれから学長室に向かうのよね?」
「えぇ、そうですが…」
「それなら、ちょうどいいし案内してあげるわ」
「いえそんなわけには」
わざわざお休みのところ、大変だろうに、と。
でも正直、男だてら女学院に入る前の、心の準備をさせてほしいっていうのが9割占めている。
「生徒会の仕事でね。これを学長に渡しに行かないといけないからついでよついで」
と封筒をひらひらさせる。
「それでしたら、甘えさせていただきます」
無理に固辞しても変に思われるだけ。それならもういっそ一緒に向かった方が良いかと思い直す。
日向もあまり学長室には関わりがなかったから、少し不安だと言っていたし。
でも休みの日まで生徒会の仕事だなんて、大変だなぁ…。
「じゃ、ついてきて」
手早く守衛室で仮入校手続きを済ませると、早速案内が始まった。
道中いろんなことを聞かれたけど正直あまり内容を覚えていない。
だって、心の中はそれどころじゃなかったから。
とうとう入り込んだ男子禁制の女の園、隣には学院トップの生徒会長。
一歩でも間違えば、入学以前に全てがオジャンになる。
そう思えば、むしろ当たり障りのないことしか言えなかったのは正解なんじゃないかと思う。
「さて、ここが学長室よ」
なんとかボロを出さずに学長室にたどり着く。
心構えも何も、渚さんはすぐにドアをノックする。
「天童寺です。入室してもよろしいでしょうか」
「どうぞ、入ってちょうだい」
「失礼します」
お嬢様学校の、その学長室ともなればやはりそれなりの調度品が置かれている。どれも安くはなさそうだけどゴテゴテした感じではなく落ち着いた雰囲気だ。
そして、そんな部屋の奥机の向こう側。
シスター服を着た、年配の女性が座っている。
「あら、天童寺さんに、小鳥遊さん、赤岩さん」
少し目を広げるけど、大きく驚いたような雰囲気はない。驚いた中でも上品さが常に携わっている。
「守衛室でお会いしまして、行き先が同じようでしたのでご一緒に」
「そうでしたの」
にこやかに席を立つ学院長。
随分と背の高い方のようで、「男の僕」からみても頭半個分ぐらい高い。
背骨もずっと伸びていて姿勢が良い。
「あぁ、そうね。天童寺さんは入学式の?」
「はい。草案がまとまりましたので、提出に」
「ありがとう、しっかり読ませてもらいますね」
それだけで渚さんの用事は終わったようだ。
「それでは学長、私はこれで」
「あら、もういっちゃうの?」
少し寂しそうな表情を浮かべるが、渚さんもこの後用事があるようで。
「少し先を急ぎますので」
といって扉を後にしてしまった。
あとは残された僕と日向、そして学院長。
物静かな空間に、針子時計の音が鳴る。
スッと、学長の目が細くなる。
「あなたが、鳳山祐樹さん、ね」
「はい…」
そりゃあ、男だてら女学院に入ろうとしているのだ。よくない感情の一つや二つ、容易に浮かぶだろう。そう思ったが、ふいに学長の表情が柔らかくなる。
「ふふっ、随分とよく似てるわね」
「へ?」
「山城美月さん、あなたのはとこなんですって?」
「え、えぇ」
美月様は、母方の祖父の兄弟の孫娘にあたる。
正直そこまで離れると、本家でもなかなか顔を合わせないから実感もないけど。
「背は少しあなたの方が高いけど、顔つきなんかはよく似ています。化粧でそれらしくすれば見分けがつかなくなるほどに」
「…」
僕と日向はそれに何もいうことができなかった。
今回特別に入学が許されたのも、そのところが随分大きく関わっているから。
「ごめんなさいね、こちらの事情にあなたたちを巻き込んでしまって」
「いえ、どうしようもないことですから」
「そういってくれると、幾分か心も軽くなるわ。…あぁ、そうね、転入手続きをしないとね」
軽い談笑の後、そのまま机に案内されて転入手続きが始まった。
「まずは、これ。学生証になります」
手渡された学生証の名前欄には本名の鳳山裕樹とは異なる、【小鳥遊夕陽】の文字がある。
「流石にそのままの名前だと、山城さんに見咎められた時にすぐにバレちゃいますからね」
と、おかしそうに話す。
バレた時の心配、というよりもいかに隠そうかワクワクしてる雰囲気だ。
「で、これが寮の鍵になります」
チャリンと、軽い音を立てて机に置かれる鍵を僕は複雑な眼差しで見つめる。
「これがないと、自分の部屋に帰れなくなるから気をつけてね。…あら、どうしたの?」
「いえ、本当にここまできてしまったのだな、と」
目の前に偽名の学生証、鍵。制服に体操服その他諸々授業で使う教材なんかは寮に直接届けられるとのことだったから、これが学院関係の初めての持ち物となる。
だから、それだけに後戻りが出来ないのだ、と目の前に現実が押し付けられるている気がするのだ。
「心配に思うのはしょうがないわ。だって、前代未聞のことだもの」
あくまで微笑みを保ったまま学長が語り続ける。
「でも、私も出来るだけ気を配るようにしますし、赤岩さんもいます。そんなに心配しなくても大丈夫よ」
「そう、ですね」
いくらここで心配してても始まらない。
そう思い込むことにする。
ていうか、そうしないとやってられないよ、色んな意味で。
「祐樹様、私も微力ながらお支えいたします」
「ありがとう、日向」
日向にも何かと迷惑がかかる今回、どこかでお礼もしないと。
「それで、こちらが赤岩さんの鍵になります。出来るだけ近いところで部屋をとってるから、力になってあげてちょうだい」
「ご配慮、ありがとうございます」
寮は現在2名ほど滞在しているようで、僕らが入って4人、そこに今年の新入生とかがさらに入るらしい。
「もしかしたら飛び入りで入寮する人もいるかも知れないけれど。それで、これが簡単な見取り図で、2人の部屋はここと、ここね」
見取り図で見れば、日向の部屋はすぐ隣。
確かにこれは困った時にすぐに頼れそうだ。
「ちなみに、天童寺さんの部屋はこちらになります」
「あの方も寮生だったのですね…」
「天童寺さんは知らなかったと思うけれど、一緒に入ってきた時は随分と驚いたのよ?まさかもう知り合いに、って」
その後は大きな括りでの学院、寮での過ごし方の説明を受ける。
例えば夜の8時以降は塾等を除いた外出は控えること、食堂や寮での食費の支払いは基本不要で学費に含まれることなどなど。
「あとは、生活の中での諸々は赤岩さんに聞いてくださいね」
「はい、何から何までありがとうございます」
学院長も流石に男が女の生活をすることへの知見はないようで、そこは覚悟を持って挑んでくれと頼まれた。
「それでは、失礼します」
もらった資料や鍵などを片手に学長室を後にする。
扉を閉めればひとまず今日の一大イベントが終了。
「夕陽様?」
「ん、どうしたの、日向」
「いえ、少し顔色がよろしくないように思えまして」
極度の緊張状態が続いたせいで、すこし疲れが出たのだろうか。
「…どこか寄ろうかと思ってたけどそのまま帰ろうか?」
せっかく遠出をしたのだ。
仮住まいのホテルに戻るにしても、どこかへ寄ってご飯を食べてから、と思っていたが日向は僕が倒れるのではないかと不安なようだ。ご飯なんかは別にコンビニでもいいんだし配達か何かを頼んでもいい。
「いいえ、食事はきちんと取らなければ力も戻りません。一度ホテルに戻って、普段着に戻してから食べに参りましょう。…タクシーを呼んで参りますので、そちらのベンチでしばらく休んでいてください」
そう言って、近くにあった広場の横に置かれた席に案内される。
これまた細やかな手入れの行き届いた花壇の中にあって少し気恥ずかしくすら思う。
「それでは」
かと言って日向はいち早くタクシーを呼ぶことで頭がいっぱいなのか、そのまま走り去ってしまった。
「別に、電話でもなんでも使って呼べばいいのに」
と思いつつも既に後の祭り。
水を差すのもどうかと思い、お言葉に甘えて休ませてもらうことにする。
「それにしても、随分と綺麗な花ですね」
ムスカリ…だろうか。
同じ種類の色違いが複数咲いている。
風はそよそよと心地よく、日陰にいるものだから少し肌寒さを感じる空気。
これで少し疲れているのだからあくびの一つや二つ、簡単に出てくる。
「ん…、日向遅いなぁ」
どこまで行ったのか。
タクシーが来るまで外で待ってるつもりなのか。
うとうとと落ちかけた頭で、溢れる思考がモヤに包まれていく。
「少しだけ…少しだけ…」
そういって、目を瞑る。
音は遠くなり、瞼を抜ける日も気にならなくなる。
ふと、風が強く吹いたのか寒さを感じたけど。
暖かな何かに包まれる心地がした。
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