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Episode2
Episode2−2
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《刻刀賢護side》
𝓐𝓡𝓣𝓔とは俺らの組織名であり、この住み家の名でもある。この建物は俺が設計して建てたものだが、𝓐𝓡𝓣𝓔と言う組織自体は古くからある。って言ってもいつからなのか俺達には分からない。このシステムが、伝承が、いつから行われているのか、またこの事にどのような人が何人関わっているのかも定かでは無いのだ。自分達でも良く分からない事に珮杜を巻き込むのは珮杜に申し訳無いが、『この事』を1番知っているのは何を隠そう珮杜だ。
俺は重たい脚を無理矢理動かしながら階段を登った。後ろから付いてきているはずの珮杜の足音が何故か聴こえず俺の足音だけが耳に響いた。不安に思い後ろを振り返るとそこにはちゃんと珮杜がいて
「どうしたんだい?気分でも悪いのか?」
と、少し心配そうな顔でこちらを見上げていた。
「ん?いや、何でも無い、気にしないでくれ」
そう言って俺はまた階段を上り始める。
「本当に君は変な人だ」
後ろから聴こえた珮杜の声は呆れながらにも少し笑っているようであった。完全な信用では無いとはいえ、俺達について来てくれた珮杜の選択を無駄にはしたく無い。俺が1つ決心をした時丁度階段を上りきり2階へとついた。
「此処が珮杜の部屋だ」
俺が珮杜を案内したのは2階の階段から1番遠い部屋。そこがこの家の中で1番広い部屋なのだ。組織のリーダーの部屋として相応しい部屋。中の設備だって我ながら立派だと思う。珮杜だってきっと喜ぶはずだ。俺は中を見た珮杜の喜ぶ顔を想像していたのだが
「別の部屋にして欲しい」
珮杜の口から出たその一言に俺は衝撃を受けた。
「な、なんか気に入らなかったか?」
「気に入るも何も私はこんな広い部屋だと落ち着かなくてね。もっと狭い方が自分にはしっくり来るんだよ。まさか、私が喜ぶとでも思っていたのかい?」
そう言った珮杜の目はどこか少し冷たかった様に思えた。思わず俺がその場に硬直してしまい黙っていると
「ま、この部屋でも良いかな。このソファがとても気に入ったよ」
と言って珮杜は部屋の隅に位置する3人掛けのソファに腰を掛けた。俺はその様子に少し安心した。別にソファを気に入って貰えたからでは無い。まぁ、それも少しあるが、普段は人に無関心で、何なら厳しめだが、本当は人の気持ちを誰よりも汲み取り行動するという姿が見られた事に安心したのだ。暫く会っていないうちに人が変わったかのように思えていたが、昔からの変わらないその様子が見る事が出来て俺は久しぶりに生きている実感が湧いたようであった。今だってきっと俺の『気に入っともらえたら』という期待していた様子を察知して、不自然にならないようソファを気に入ったように見せたのだろう。
「ん、それなら良かった。まぁ、仮の部屋だと思っといてくれ。また新しい部屋を用意すっから」
「いや、別に良いよ」
そう言いながら珮杜はソファから立ち上がり窓に近寄って外の景色を眺め始めた。
「いや、これからずっと過ごす部屋なんだし、気に入った所の方が良いだろ?あ~、今から晩飯作るんだけど何食いたい?」
「何でも良いよ。何なら私は自分の好みさえも覚えていないからね」
「あんたはミネストラが好きだったよ」
「ミネストラ?ミネストローネでは無く?」
「あぁ、具が少ない方が素材の味が楽しめて良いって言ってた。特にカーボロネロと豆のミネストラを好んでたな。あぁ~、でも豆がねぇな。買いに行かないと」
せっかく珮杜が帰って来るというのに何故俺は好物を準備していなかったのか。自分の愚かさを痛感したその時、珮杜が口を開いた。
「私が買いに行く」
「えっ、でも病み上がり(?)何だぞ?少しはゆっくり休んで」
「いや、いい。買いに行かせてくれ。私が君に作らせるんだ、私だって動かねばならない」
俺の言葉を遮るように珮杜は言った。真っ直ぐに俺を見つめるその銀色の瞳に思わず俺は吸い込まれそうになった。
「分かった分かった。だったらこれ持ってけ」
俺は珮杜に財布とスマホを手渡した。
「とりあえず、コレ渡しとくから困ったら連絡して欲しい。店の住所もスマホのメモ機能に書いてあるから。本当に一人で大丈夫か?」
俺がそう言うと珮杜は軽く笑ってから
「君は私の事を何歳だと思ってるんだい?大丈夫だよ。買い物くらいできるさ」
と言って財布とスマホを受け取った。
「じゃあ行ってくるよ」
そう言って玄関へと向かう珮杜の背中を見送りながら俺は夕食のメインはステーキなんかにしようと考えキッチンへと向かった。そして冷蔵庫の中の食品を確認していると椿姫が入ってきて
「邪魔」
と言いながら俺の後ろから手を伸ばしてきて冷蔵庫の中から缶ビールを1つ取り出した。
「おい!邪魔って何だよ!『退いて』とか『お願いとって』とか言えねぇのかよ!!」
「は?邪魔なものを邪魔って言って何が悪いんだよ」
それから椿姫はプルタブを盛大に開けた。今まで抑圧されていた炭酸が勢い良く吹き出す。それらを溢さないように急いで飲み干したあと、ふと思い出したかのように椿姫が口を開いた。
「あれ?そう言えば森羅は?」
「珮杜なら夕食の材料買いに行ったよ。しかも自分から買いに行くって言ったんだ。偉いよな~、夕食前からビールをダラダラと飲むどっかの誰かとは大違いだ」
いつも言われっ放しの俺は冷蔵庫の中の食品をチェックしながら、ここぞとばかりに嫌味ったらしく、後ろでビールを飲んでいる椿姫に言ってやった。いつもはすぐに言い返してくる椿姫だが今回は反論が無い。きっと言い返せないでいるんだろう。そう思って悔しそうな椿姫の顔を見てやろうと振り向くと、そこには缶ビールを持った右手が微かに震え、顔面蒼白状態の椿姫が居た。
「ど、どうしたんだ?腹でも痛いのか?」
見たことの無い椿姫の様子に焦った俺は椿姫に色々と声をかけまくった。あの強気な椿姫でも傷付いてしまったのだろうか?
「悪ぃ、俺も言い過ぎたかも。ごめんな?」
「いや、そんな事じゃないんだ。お前の幼稚で文章にすらなっていない拙い言葉なんていくらでも言い返せるんだよ」
「………あぁ、そうですか………」
「問題はそこじゃない、森羅が外に出たと云うことだ。しかも一人で、」
「それがどうかしたか?」
別に珮杜だっていい大人だ。別に外出しても問題ないだろう。椿姫は何を気にかけているんだ?そんな事を考えて呑気にしていた俺だったが、椿姫の言葉を聞いた次の瞬間、椿姫等同様、いや、もしくはそれ以上に顔面が蒼白となった。
「忘れたのか?!森羅は天才となった事と引き換えにと言っても過言でも無い程の方向音痴なんだぞ!!前に近所の美術館まで行くはずが、南極まで行ってしまったのを覚えていないのか?!」
そうだったーーーっっっ!!何やってんだ俺ーーっっっ!!
と衝撃を受けている間にも珮杜は森を抜けて軽い足取りで街へと繰り出して行ったのだった。
《出逢いの夜》
夕食の材料を買う為に街へと出てきた珮杜であったがどうやら早速道に迷ってしまったらしい。賢護に電話をかけようとズボンのポケットからスマホを取り出したものの何を思ったのかかけずにまたポケットへとしまってしまった。そして珮杜は空を見上げる。現在の時刻は20:22。空には星が美しく輝いているはずなのだが、街を蹂躪する街灯の光によって見当たらなかった。
「哀しいな…」
そう呟きながら珮杜は空を見上げたままゆっくりと歩き出した。何だか夕食の材料を買うよりもこの場所で星を見つける方が大切なように思えたのだった。
視線を戻すと、忙しく動く人々の群れがあるだけで、誰一人として空を見上げる者は居なかった。
「勿体ない…」
もう一度空を見上げて珮杜は星を探し始める。今は電気なんてものがあるけれど、昔はそんなものは無かった。不便なようにも思われるけれど、だからこそ昔に生きた人々は星の真の美しさを知る事が出来たのだ。珮杜は今の時代に生きる人々に少しながら残念さをおぼえた。
そんな事を考えながら上を向き、ブラブラと歩いていると1人の男性とぶつかった。右肩が少しばかりぶつかっただけなのだが、なにせ上を見たまんま歩いてたものだからバランスなんてとれずに呆気なく珮杜は後ろに尻もちをつく形で倒れる事となる。
「すみません、大丈夫ですか?」
相手の男性は倒れなかったらしく、妙に落ち着いた様子で謝罪の言葉を述べながら珮杜に手を差し出した。
「えぇ、大丈夫です、わざわざすみませんね」
そう言って珮杜は男性の手をとった。
「お怪我は?」
珮杜が立ち上がると男性は直様聞いてきた。
「いや、無いですよ。不注意ですみませんでした」
「いえいえ、こちらこそ。でも、一体何故上を見て歩いてたんです?」
男性の質問に珮杜は左手で空を指しながら答えた。
「星、見たかったんです。ほら、今は6月だから春の星と夏の星を見られるいいタイミングなんです。特に今日は良く晴れて雲1つないから、アークトゥルス・スピカ・デネボラの春の大三角と、ベガ・アルタイル・デネブの夏の大三角が空を分断するかのように美しく輝いて見えるはずですからね。あぁ、すみませんこんな話をして。興味ないですよね」
「いえ、そんな事は。6月の夜空は我々人間が見るには贅沢過ぎる程美しいですよね。特に春の大三角、おとめ座のスピカなんてとても綺麗だ。まぁなんたって和名が」
「「真珠星だから」」
珮杜と男性の声が綺麗に揃った。
「おや、ご存知でしたか。今日は何だか良い事が有りそうな予感がします。帰ったら“家族”にこの事を話そうかな」
男性は嬉しそうに微笑んだ。それから腕時計を確かめると
「あぁ、もうこんな時間か。では私はこれで。スピカ、見られると良いですね」
そう言って珮杜に背を向けると西の方向へと歩き出した。
珮杜は男性の背に向かって一礼すると東の方向へと歩き出す。その時珮杜はふと呟いた。
「そう言えば6月22日ってガリレオの地動説が異端説とされた日だったよな」
《森羅珮杜side》
男性と別れたあと、私は本来の目的を思い出し店を探し始めた。どうやら賢護は美食家のようで、豆1つにもこだわりがあるらしい。メモを見ながら店を探し始めるも一向に辿り着かない。どうやら私は俗に言う方向音痴らしい。このまま彷徨い歩いても帰れる保証すら無い。仕方なく私は賢護に電話をかけた。(記憶喪失ながらにもスマホの使い方は都合良く覚えているようだ)
「あぁ、私だが。少し道にまよts」
「待ってろっっ!絶てぇそこから動くなよ!!」
私の言葉を遮るようにして、電話の向こうで息の切れた賢護の声が聴こえた。どうやら走ってこちらへと向かっているようだ。
「今何処にいる!周りに目印になるものは?!」
「何を焦っている。焦らずとも私はここに居るぞ」
「何をじゃ無いんだよ!珮杜、忘れたのか?!前に近所の美術館まで行く予定が南極まで行った事を!!お前はそんくらい方向音痴なんだよ!!」
電話口から聞こえてきたのは巫山戯ているとしか思えないレベルの方向音痴の私の過去だった。
「なるほど、私はそれ程までに方向音痴だったのか。よし、では待っていよう。近くには今にも潰れそうな団子屋と、その隣にはどう見てもその団子屋を潰しにかかっているとしか思えないオープンしたてのお洒落なカフェがある」
「潰れそうって…もっと他に良い伝え方無かったのか…」
電話の向こうで賢護の少しばかり呆れた声が聴こえた。
「まぁ良い、とりあえずそのカフェの中に入って待ってて!すぐに行くから!!」
そして電話は途切れた。他人に迷惑をかけてしまって申し訳無い気持ちと、カフェからもれ出しているコーヒーの良い香りを嗅ぎ、今すぐ飲みたいと云う気持ちが混ざり合う。私はその匂いに釣られるようにしてカフェへと入って行った。
《コーヒーとピアノと弾丸の協奏曲》
どうやらカフェの中はヘンゼルとグレーテルをモチーフにしているらしく、壁から床から照明までもがお菓子で出来ていた(ただの装飾だが)。店内の客の年齢層もそれに見合っていた。10代後半の学生から30代前半の仕事終わりの女性と言ったところだ。各々話にキャッキャと華を咲かせている。店の扉を開けると扉の上についていた小さなベルがカランと鳴って、客達は一斉にこちらを振り返る。多分私の髪色が珍しいのであろう。何人かの学生達はこちらを見ながらヒソヒソと話していたが興味が無くなったのかすぐに元の話題へと戻っていった。
「何名様ですか?」
レジの奥から1人の女性が出て来て私にそう聞いた。年齢は20代前半と言ったところであろうか。初々しいなと思いながら胸に付けられたネームプレートを見てみると、
『アルバイト 奥山舞衣』 と書かれていた。
「今は1人ですが後からもう1人来ます」
私がそう言うと彼女は「かしこまりました」と返事すると笑顔で席へと案内してくれた。
「ご注文はどうされますか?」
「初めて来たんで、ここの店のオススメにしたいんだが」
「かしこまりました。ではオリジナルコーヒーをおもちしますね」
コーヒーを待っている間、店のBGMに耳を傾ける。美しいピアノの音色。確かこれはモーツァルトの『ピアノソナタK545ハ長調』だ。これは誰が弾いているのだろう。音粒の美しさと滑らかさが素晴らしい。そんな事を考えながら曲を聴いていると注文していたコーヒーが出来上がっていた。
「おまたせいたしました。熱いのでお気をつけてお飲みください」
先程の奥山さんがテーブルの上に小さなカップを静かに置いた。そんな彼女の手を見て私はすかさず彼女に質問をした。
「ピアノ、長い事弾かれてますか?」
すると彼女は驚いた顔でこちらを見た。
「小学生の頃から弾き続けてますけど、なんで分かったんですか?」
「指ですよ」
「指?」
「えぇ。ピアニストの指は親指の爪が上向き気味になっているのが特徴でして。後は手の甲の筋肉の発達具合ですね」
奥山さんは自分の手をまじまじと見ると柔らかに笑った。
「凄いですねお客様。そんな事で分かるだなんて。まぁ、ただピアノを弾いているだけで、ピアニストなんてそんな大それたものでは無いですけどね」
「今かかっている曲は?奥山さんが弾かれたんじゃ?」
「いえいえ!滅相もない!私がこんなに美しく弾ける訳無いですよ!これは世界的ピアニストの天童甜音さんの演奏です。凄いですよね、まだ15歳の高校生なのに。それに比べて私は音大に入ったものの全然伸びなくって。毎日先生に怒られてばっかりです」
先程とは打って変わって悲しそうに奥山さんは笑った。
「すみません、お客様にこんなお話をしてしまって。また店長に叱られちゃいますね。ではごゆっくりごくつろぎください」
彼女がそう言ってレジの奥へと去って行ったあと、私はテーブルの上にポツンと残されたカップを手に取りコーヒーを啜った。心臓の辺が熱くなって、良い香りに包まれて、まるでコーヒーの中に浸かっているかのようだった。
「ねぇねぇ、私甜音君のコンサートに行くの!!」
「えっ、良いなぁ!チケットとれたんだ!甜音君のコンサートってなかなかチケットとれないんだよなぁ」
隣のテーブルで2人の女子高生が話に華を咲かせている。どうやら先程の若きピアニストの話題らしい。
「まぁ、あの見た目だしね。そりゃ人気出るわ」
「男の子なのにあんな可愛いんだもん。ワンチャンうち等より可愛くない?」
「ホントそれ!!あっ、ちなみにチケット2枚とってあるから」
「えっ、それって」
「うん!一緒に行こ!!」
女子高生達の話を聞きながらコーヒーを飲み進めていく。賢護がなかなか来ない為先程の女性にコーヒーのおかわりを注文した次の瞬間、平和だったこの店に不似合いな『危険』が舞い込んで来た。覆面を被り、片手に拳銃を持った男が入って来たのだ。俗に言う強盗である。
「キャーッッ!!」
店内の客は強盗を見た瞬間に悲鳴をあげ席から立ち上り逃げようとする。その様子を見た強盗は、天井に向って2発弾を撃ち店内の客を威嚇した。
「うるせぇ、黙れ!全員席につけ!今度動いたらソイツから殺すぞ!!おい、店員、店のカーテン全部閉めろ!」
よく見る強盗である。リアルな世界でもこのような強盗がいるんだなと感心しながら見ていたもつかの間、奥山さんが店のカーテンを全て締め切った後に強盗に人質として捕らえられてしまった。
「いいか!奥に店長いるんだろ?!良く聞いておけ。今から1時間以内にこの店の金庫の中にある現金と、それから車を1台用意しておけ!良いな?!」
強盗は奥山さんの頭部に拳銃を突きつけたまま言った。
「どうしよ…、ママに連絡しないと…」
先程の女子高生のうちの1人が鞄からスマートフォンを取り出そうとしたその時、強盗が女子高生に向って弾を撃った。
「キャーッッ!!」
弾は女子高生には当たらなかったものの、直ぐ横のテーブルを撃ち抜いた。
「次変な真似をしたらお前らもあのテーブルみたいになるからな!!」
「落ち着いてくださいお客様!静かにしていればお命は助かります!ここは要求をのみましょう!」
頭部に拳銃を突きつけられこの中で1番恐怖を抱いているはずの奥山さんがそう言って店の中は静まり返った。それから暫く沈黙が流れる。強盗が店に入ってきてから15分程経ったであろう頃、1人の客が席から離れようとした。キャップを深く被っており、顔は良く見えないものの若い男性のようであった。すかさず強盗は男性に銃を向ける。
「おいテメェ!撃つぞ!!」
しかしそんな強盗の脅しを無視し男性はフラッと店の出口まで歩き出した。自ら命を捨てに行っているその行為に店内の客は言葉を失った。男性がドアの取手に手をかけ立ち止まる。その瞬間、私は男性と目が合った気がした。合った気がというよりも、彼は明らかに私を見ていたし、私も明らかに彼を見ていたから完全に合ったのだが、彼はまるで私に『さぁ、どうする?』とでもいうかのような目で見つめてきたのだった。その瞳に見つめられた反動で私の脚は私の意志と関係なく動き出す。私はそのまま強盗の方へと歩み寄った。
男性はドアの取手に体重をかけ、ドアをゆっくりと開こうとした。
「聞こえねぇのか!ブッ放すぞ!!」
今まではただの威嚇射撃をしていた強盗も完全に男性を撃とうと狙いを定め始めた。
「お客様!お戻りください!」
強盗の腕の中にいる奥山さんは涙目で男性に訴えた。しかし男性の耳には届いていない。強盗は銃口を男性に向け、引き金に指を添えた。
「言う事聞いてりゃ良かったのによぉ!!死にやがr、?!」
強盗が引き金を引くよりも先に私は強盗の肩に左手を添えた。
「なんだテメェ?お前も一緒になって撃ち殺されてぇのか?」
強盗は銃口を男性から私に向けた。
《店から出ようとした男性side》
俺が店から出ようとしたその時、森羅珮杜は動いた。やはり狙い通り。しかしここから森羅がどうでるのかまでは予想がつかない。俺はあえてゆっくりと戸を開こうとし時間を稼いだ。
たった今、俺に向いていたはずの銃口が森羅に向けられている。さぁ、森羅はどうするのか。お手並み拝見とでもいたしましょうか。俺はドアの前に突っ立ったまま森羅を観察し始めた。
「撃つのは辞めたまえ」
森羅は強盗に向って諭し始めた。しかし強盗にそんな事が通ずる筈がない。いよいよ強盗は森羅に向って発砲しようとした。
神に1番近いレオナルド・ダ・ウィンチの器の森羅珮杜でもopusを使えなければただの人だったのだ。少し残念な想いで俺は森羅の最期を見届ける事にした。
しかしその時、俺の予想が的中した。森羅はまず右手で銃口を包むようにして拳銃の先を握った。思いもよらぬ行動に強盗を含め、店の中にいた者みな、呆気にとられてその光景を眺めていた。
「て、テメェ、舐めやがって!!」
我に返った強盗は森羅から拳銃を奪い返そうともがくものの、森羅の手から拳銃は離れることなく、それから森羅は空いている左手で強盗の首を前から掴んだ。
「な、なんの真似だ?!」
動揺する強盗にはお構いなしに森羅は強盗の顔をまじまじと見はじめた。その瞬間、森羅の銀色の美しい瞳が右眼だけ紅く色を変え、ほのかに光り出したのだった。
「?!」
驚いて声を出せなくなった強盗であったが、森羅のその紅い瞳を見ているうちにゆっくりと瞼を降ろし始め、ついには脚に力が入らなくなり腕の中で捉えていた店員を離すと。クタッと床に倒れ込んだ。
やはり、森羅珮杜はまだレオナルド・ダ・ウィンチの器として、レオナルド・ダ・ウィンチのopus『hypnosis-催眠-』が使える。多分このopusを用いて強盗を眠らせたのであろう。
そんな森羅の様子を観察し満足した俺はゆっくりと店を出た。その時背後で倒れる森羅には気が付かなかったが。
店を出ると6月のくせに何だか肌寒くて、俺は来ていたパーカーのポケットに手を突っ込んだ。早く家に帰って暖まろう。早く帰んなきゃ。『母さん』が待ってるんだから。俺は早足で家へと急いだ。早く帰りたい。そんな俺の意志とはウラハラに途中3人の若い女性に声をかけられ俺は立ち止まらずにはいられなくなってしまった。
「ねぇ!もしかして君、天童甜音君じゃない?」
「ホントだぁ!キャー!やっぱりホンモノだー!!」
「この前のコンサート良かったよぉ!!」
先程大事に巻き込まれてそれどころの心境ではなかったが俺はいつも通り、ピアニスト天童甜音として笑顔を作って答えるのだった。
「ありがとぉー!来月もあるからぜひぜひ見に来てね~☆」
《刻刀賢護side》
森羅の指定していたカフェをやっと見つけ店の中に入るなり、床に倒れ込んでいる珮杜と覆面を被った1人の男、それから椅子に座り震え上がった客達がいた。俺は慌てて珮杜の元へと駆け寄った。息は普通にある。周りの客達に事情を聞き、そこから考えるに珮杜はopusを使ったのであろう。久しぶりに使ったもんだから多分今は疲れて寝ているだけ。俺は店員の奥山さんに全ての事を任せ、珮杜を連れて家に帰ることにした。
「警察に言う時、必ず飴市って人を指名して。じゃないとちょっと面倒臭い事になるから」
俺はそう言い残して店を出た。
今日は6月なのに何故か肌寒く、おぶっている珮杜のおかげで背中は少し暖かかった。
「これじゃあ帰っても飯、食えねぇな」
俺は背中で寝ている珮杜にそう声をかけると家へと向って歩き出した。
《研究施設Cipherにて》
その頃星宮冥美は森羅珮杜が眠っていた検査室N―174の掃除を行っていた。仁科所長に言われた事を頭の中で何度もループさせているうちにじっとしてはいられなくなったのだ。掃除をしたからといって何かになる訳ではなかったが、もしかすると森羅の行き先の手掛かりが見つかるかもしれないと思ったからだ。1人でそそくさと掃除をしていると、検査室の中に1人の男性が入って来た。
「ただいま、冥美」
「遅かったじゃん、今まで何処ほっつき歩いてたんだよ…」
入って来たのは森羅と街ですれ違った星座に詳しいあの男性であった。
「だからごめんって。まぁ今日は良いお土産があるから」
男性は星宮冥美に向って微笑みながら冥美の横へとやってきた。
「えっ、もしかして頼んでおいた最新の望遠鏡でも買って来てくれたの?」
「残念。望遠鏡では無いんだな~。まぁそう気を落とさないで。もっと良いお土産なんだから。すっごく良い情報をあげよう」
「なんだ、期待して損した」
冥美は肩を落とすと止めていた手をまた動かし始め掃除を再開した。そんな様子を見た男性は少しもったいぶってあえて大きな声でこう言ったのだ。
「そっかぁ、せっかく森羅珮杜に会ってきたから教えてあげようと思ったのになぁ」
それを聞くなり冥美は顔色を変えた。
「どこで?!いつ?!」
「まぁまぁ落ち着いて。とりあえず彼は、あっ、彼女か?……どっちでも良いか。とりあえず彼は𝓐𝓡𝓣𝓔に保護されたと考えて間違いないね。おそらく此処へ森羅珮杜を取り返しに来たのは彼の右腕でもあるミケランジェロの器の保有者、刻刀賢護だろう。ま、僕等が今出来る事は𝓐𝓡𝓣𝓔の潜伏場所を探る事くらいかな」
そう言って男性は冥美に向って何かをめぐむかのように両手を差し出した。
「えっ、何?」
「何って報酬だよ。大切な情報をあげたんだからね」
「あぁはい。いつものね」
冥美は軽く溜息をつくと白衣のポケットから真っ赤に熟れた林檎を1つとり男性へと向って投げた。男性は両手でそれを受け取るとズボンのポケットからハンカチを取り出し林檎を拭き始めた。
「あぁ、やはり林檎は紅くて綺麗だなぁ」
「ホント、林檎には目がないんだね。流石、アイザック・ニュートンの器の現在保持者、兼、Cipherのリーダー」
冥美が林檎に見惚れている男性に呆れながらに言うと男性は微笑みながら言った。
「その呼び方はあんまり好きじゃないなぁ。確かに僕は今Cipherのリーダーをやってるけどただの臨時のリーダーだよ。本当のリーダーはアインシュタインの器の保持者って決まっているんだから。僕はただの臨時さ。ちゃんと万象博人って名前で呼んでほしいな」
𝓐𝓡𝓣𝓔とは俺らの組織名であり、この住み家の名でもある。この建物は俺が設計して建てたものだが、𝓐𝓡𝓣𝓔と言う組織自体は古くからある。って言ってもいつからなのか俺達には分からない。このシステムが、伝承が、いつから行われているのか、またこの事にどのような人が何人関わっているのかも定かでは無いのだ。自分達でも良く分からない事に珮杜を巻き込むのは珮杜に申し訳無いが、『この事』を1番知っているのは何を隠そう珮杜だ。
俺は重たい脚を無理矢理動かしながら階段を登った。後ろから付いてきているはずの珮杜の足音が何故か聴こえず俺の足音だけが耳に響いた。不安に思い後ろを振り返るとそこにはちゃんと珮杜がいて
「どうしたんだい?気分でも悪いのか?」
と、少し心配そうな顔でこちらを見上げていた。
「ん?いや、何でも無い、気にしないでくれ」
そう言って俺はまた階段を上り始める。
「本当に君は変な人だ」
後ろから聴こえた珮杜の声は呆れながらにも少し笑っているようであった。完全な信用では無いとはいえ、俺達について来てくれた珮杜の選択を無駄にはしたく無い。俺が1つ決心をした時丁度階段を上りきり2階へとついた。
「此処が珮杜の部屋だ」
俺が珮杜を案内したのは2階の階段から1番遠い部屋。そこがこの家の中で1番広い部屋なのだ。組織のリーダーの部屋として相応しい部屋。中の設備だって我ながら立派だと思う。珮杜だってきっと喜ぶはずだ。俺は中を見た珮杜の喜ぶ顔を想像していたのだが
「別の部屋にして欲しい」
珮杜の口から出たその一言に俺は衝撃を受けた。
「な、なんか気に入らなかったか?」
「気に入るも何も私はこんな広い部屋だと落ち着かなくてね。もっと狭い方が自分にはしっくり来るんだよ。まさか、私が喜ぶとでも思っていたのかい?」
そう言った珮杜の目はどこか少し冷たかった様に思えた。思わず俺がその場に硬直してしまい黙っていると
「ま、この部屋でも良いかな。このソファがとても気に入ったよ」
と言って珮杜は部屋の隅に位置する3人掛けのソファに腰を掛けた。俺はその様子に少し安心した。別にソファを気に入って貰えたからでは無い。まぁ、それも少しあるが、普段は人に無関心で、何なら厳しめだが、本当は人の気持ちを誰よりも汲み取り行動するという姿が見られた事に安心したのだ。暫く会っていないうちに人が変わったかのように思えていたが、昔からの変わらないその様子が見る事が出来て俺は久しぶりに生きている実感が湧いたようであった。今だってきっと俺の『気に入っともらえたら』という期待していた様子を察知して、不自然にならないようソファを気に入ったように見せたのだろう。
「ん、それなら良かった。まぁ、仮の部屋だと思っといてくれ。また新しい部屋を用意すっから」
「いや、別に良いよ」
そう言いながら珮杜はソファから立ち上がり窓に近寄って外の景色を眺め始めた。
「いや、これからずっと過ごす部屋なんだし、気に入った所の方が良いだろ?あ~、今から晩飯作るんだけど何食いたい?」
「何でも良いよ。何なら私は自分の好みさえも覚えていないからね」
「あんたはミネストラが好きだったよ」
「ミネストラ?ミネストローネでは無く?」
「あぁ、具が少ない方が素材の味が楽しめて良いって言ってた。特にカーボロネロと豆のミネストラを好んでたな。あぁ~、でも豆がねぇな。買いに行かないと」
せっかく珮杜が帰って来るというのに何故俺は好物を準備していなかったのか。自分の愚かさを痛感したその時、珮杜が口を開いた。
「私が買いに行く」
「えっ、でも病み上がり(?)何だぞ?少しはゆっくり休んで」
「いや、いい。買いに行かせてくれ。私が君に作らせるんだ、私だって動かねばならない」
俺の言葉を遮るように珮杜は言った。真っ直ぐに俺を見つめるその銀色の瞳に思わず俺は吸い込まれそうになった。
「分かった分かった。だったらこれ持ってけ」
俺は珮杜に財布とスマホを手渡した。
「とりあえず、コレ渡しとくから困ったら連絡して欲しい。店の住所もスマホのメモ機能に書いてあるから。本当に一人で大丈夫か?」
俺がそう言うと珮杜は軽く笑ってから
「君は私の事を何歳だと思ってるんだい?大丈夫だよ。買い物くらいできるさ」
と言って財布とスマホを受け取った。
「じゃあ行ってくるよ」
そう言って玄関へと向かう珮杜の背中を見送りながら俺は夕食のメインはステーキなんかにしようと考えキッチンへと向かった。そして冷蔵庫の中の食品を確認していると椿姫が入ってきて
「邪魔」
と言いながら俺の後ろから手を伸ばしてきて冷蔵庫の中から缶ビールを1つ取り出した。
「おい!邪魔って何だよ!『退いて』とか『お願いとって』とか言えねぇのかよ!!」
「は?邪魔なものを邪魔って言って何が悪いんだよ」
それから椿姫はプルタブを盛大に開けた。今まで抑圧されていた炭酸が勢い良く吹き出す。それらを溢さないように急いで飲み干したあと、ふと思い出したかのように椿姫が口を開いた。
「あれ?そう言えば森羅は?」
「珮杜なら夕食の材料買いに行ったよ。しかも自分から買いに行くって言ったんだ。偉いよな~、夕食前からビールをダラダラと飲むどっかの誰かとは大違いだ」
いつも言われっ放しの俺は冷蔵庫の中の食品をチェックしながら、ここぞとばかりに嫌味ったらしく、後ろでビールを飲んでいる椿姫に言ってやった。いつもはすぐに言い返してくる椿姫だが今回は反論が無い。きっと言い返せないでいるんだろう。そう思って悔しそうな椿姫の顔を見てやろうと振り向くと、そこには缶ビールを持った右手が微かに震え、顔面蒼白状態の椿姫が居た。
「ど、どうしたんだ?腹でも痛いのか?」
見たことの無い椿姫の様子に焦った俺は椿姫に色々と声をかけまくった。あの強気な椿姫でも傷付いてしまったのだろうか?
「悪ぃ、俺も言い過ぎたかも。ごめんな?」
「いや、そんな事じゃないんだ。お前の幼稚で文章にすらなっていない拙い言葉なんていくらでも言い返せるんだよ」
「………あぁ、そうですか………」
「問題はそこじゃない、森羅が外に出たと云うことだ。しかも一人で、」
「それがどうかしたか?」
別に珮杜だっていい大人だ。別に外出しても問題ないだろう。椿姫は何を気にかけているんだ?そんな事を考えて呑気にしていた俺だったが、椿姫の言葉を聞いた次の瞬間、椿姫等同様、いや、もしくはそれ以上に顔面が蒼白となった。
「忘れたのか?!森羅は天才となった事と引き換えにと言っても過言でも無い程の方向音痴なんだぞ!!前に近所の美術館まで行くはずが、南極まで行ってしまったのを覚えていないのか?!」
そうだったーーーっっっ!!何やってんだ俺ーーっっっ!!
と衝撃を受けている間にも珮杜は森を抜けて軽い足取りで街へと繰り出して行ったのだった。
《出逢いの夜》
夕食の材料を買う為に街へと出てきた珮杜であったがどうやら早速道に迷ってしまったらしい。賢護に電話をかけようとズボンのポケットからスマホを取り出したものの何を思ったのかかけずにまたポケットへとしまってしまった。そして珮杜は空を見上げる。現在の時刻は20:22。空には星が美しく輝いているはずなのだが、街を蹂躪する街灯の光によって見当たらなかった。
「哀しいな…」
そう呟きながら珮杜は空を見上げたままゆっくりと歩き出した。何だか夕食の材料を買うよりもこの場所で星を見つける方が大切なように思えたのだった。
視線を戻すと、忙しく動く人々の群れがあるだけで、誰一人として空を見上げる者は居なかった。
「勿体ない…」
もう一度空を見上げて珮杜は星を探し始める。今は電気なんてものがあるけれど、昔はそんなものは無かった。不便なようにも思われるけれど、だからこそ昔に生きた人々は星の真の美しさを知る事が出来たのだ。珮杜は今の時代に生きる人々に少しながら残念さをおぼえた。
そんな事を考えながら上を向き、ブラブラと歩いていると1人の男性とぶつかった。右肩が少しばかりぶつかっただけなのだが、なにせ上を見たまんま歩いてたものだからバランスなんてとれずに呆気なく珮杜は後ろに尻もちをつく形で倒れる事となる。
「すみません、大丈夫ですか?」
相手の男性は倒れなかったらしく、妙に落ち着いた様子で謝罪の言葉を述べながら珮杜に手を差し出した。
「えぇ、大丈夫です、わざわざすみませんね」
そう言って珮杜は男性の手をとった。
「お怪我は?」
珮杜が立ち上がると男性は直様聞いてきた。
「いや、無いですよ。不注意ですみませんでした」
「いえいえ、こちらこそ。でも、一体何故上を見て歩いてたんです?」
男性の質問に珮杜は左手で空を指しながら答えた。
「星、見たかったんです。ほら、今は6月だから春の星と夏の星を見られるいいタイミングなんです。特に今日は良く晴れて雲1つないから、アークトゥルス・スピカ・デネボラの春の大三角と、ベガ・アルタイル・デネブの夏の大三角が空を分断するかのように美しく輝いて見えるはずですからね。あぁ、すみませんこんな話をして。興味ないですよね」
「いえ、そんな事は。6月の夜空は我々人間が見るには贅沢過ぎる程美しいですよね。特に春の大三角、おとめ座のスピカなんてとても綺麗だ。まぁなんたって和名が」
「「真珠星だから」」
珮杜と男性の声が綺麗に揃った。
「おや、ご存知でしたか。今日は何だか良い事が有りそうな予感がします。帰ったら“家族”にこの事を話そうかな」
男性は嬉しそうに微笑んだ。それから腕時計を確かめると
「あぁ、もうこんな時間か。では私はこれで。スピカ、見られると良いですね」
そう言って珮杜に背を向けると西の方向へと歩き出した。
珮杜は男性の背に向かって一礼すると東の方向へと歩き出す。その時珮杜はふと呟いた。
「そう言えば6月22日ってガリレオの地動説が異端説とされた日だったよな」
《森羅珮杜side》
男性と別れたあと、私は本来の目的を思い出し店を探し始めた。どうやら賢護は美食家のようで、豆1つにもこだわりがあるらしい。メモを見ながら店を探し始めるも一向に辿り着かない。どうやら私は俗に言う方向音痴らしい。このまま彷徨い歩いても帰れる保証すら無い。仕方なく私は賢護に電話をかけた。(記憶喪失ながらにもスマホの使い方は都合良く覚えているようだ)
「あぁ、私だが。少し道にまよts」
「待ってろっっ!絶てぇそこから動くなよ!!」
私の言葉を遮るようにして、電話の向こうで息の切れた賢護の声が聴こえた。どうやら走ってこちらへと向かっているようだ。
「今何処にいる!周りに目印になるものは?!」
「何を焦っている。焦らずとも私はここに居るぞ」
「何をじゃ無いんだよ!珮杜、忘れたのか?!前に近所の美術館まで行く予定が南極まで行った事を!!お前はそんくらい方向音痴なんだよ!!」
電話口から聞こえてきたのは巫山戯ているとしか思えないレベルの方向音痴の私の過去だった。
「なるほど、私はそれ程までに方向音痴だったのか。よし、では待っていよう。近くには今にも潰れそうな団子屋と、その隣にはどう見てもその団子屋を潰しにかかっているとしか思えないオープンしたてのお洒落なカフェがある」
「潰れそうって…もっと他に良い伝え方無かったのか…」
電話の向こうで賢護の少しばかり呆れた声が聴こえた。
「まぁ良い、とりあえずそのカフェの中に入って待ってて!すぐに行くから!!」
そして電話は途切れた。他人に迷惑をかけてしまって申し訳無い気持ちと、カフェからもれ出しているコーヒーの良い香りを嗅ぎ、今すぐ飲みたいと云う気持ちが混ざり合う。私はその匂いに釣られるようにしてカフェへと入って行った。
《コーヒーとピアノと弾丸の協奏曲》
どうやらカフェの中はヘンゼルとグレーテルをモチーフにしているらしく、壁から床から照明までもがお菓子で出来ていた(ただの装飾だが)。店内の客の年齢層もそれに見合っていた。10代後半の学生から30代前半の仕事終わりの女性と言ったところだ。各々話にキャッキャと華を咲かせている。店の扉を開けると扉の上についていた小さなベルがカランと鳴って、客達は一斉にこちらを振り返る。多分私の髪色が珍しいのであろう。何人かの学生達はこちらを見ながらヒソヒソと話していたが興味が無くなったのかすぐに元の話題へと戻っていった。
「何名様ですか?」
レジの奥から1人の女性が出て来て私にそう聞いた。年齢は20代前半と言ったところであろうか。初々しいなと思いながら胸に付けられたネームプレートを見てみると、
『アルバイト 奥山舞衣』 と書かれていた。
「今は1人ですが後からもう1人来ます」
私がそう言うと彼女は「かしこまりました」と返事すると笑顔で席へと案内してくれた。
「ご注文はどうされますか?」
「初めて来たんで、ここの店のオススメにしたいんだが」
「かしこまりました。ではオリジナルコーヒーをおもちしますね」
コーヒーを待っている間、店のBGMに耳を傾ける。美しいピアノの音色。確かこれはモーツァルトの『ピアノソナタK545ハ長調』だ。これは誰が弾いているのだろう。音粒の美しさと滑らかさが素晴らしい。そんな事を考えながら曲を聴いていると注文していたコーヒーが出来上がっていた。
「おまたせいたしました。熱いのでお気をつけてお飲みください」
先程の奥山さんがテーブルの上に小さなカップを静かに置いた。そんな彼女の手を見て私はすかさず彼女に質問をした。
「ピアノ、長い事弾かれてますか?」
すると彼女は驚いた顔でこちらを見た。
「小学生の頃から弾き続けてますけど、なんで分かったんですか?」
「指ですよ」
「指?」
「えぇ。ピアニストの指は親指の爪が上向き気味になっているのが特徴でして。後は手の甲の筋肉の発達具合ですね」
奥山さんは自分の手をまじまじと見ると柔らかに笑った。
「凄いですねお客様。そんな事で分かるだなんて。まぁ、ただピアノを弾いているだけで、ピアニストなんてそんな大それたものでは無いですけどね」
「今かかっている曲は?奥山さんが弾かれたんじゃ?」
「いえいえ!滅相もない!私がこんなに美しく弾ける訳無いですよ!これは世界的ピアニストの天童甜音さんの演奏です。凄いですよね、まだ15歳の高校生なのに。それに比べて私は音大に入ったものの全然伸びなくって。毎日先生に怒られてばっかりです」
先程とは打って変わって悲しそうに奥山さんは笑った。
「すみません、お客様にこんなお話をしてしまって。また店長に叱られちゃいますね。ではごゆっくりごくつろぎください」
彼女がそう言ってレジの奥へと去って行ったあと、私はテーブルの上にポツンと残されたカップを手に取りコーヒーを啜った。心臓の辺が熱くなって、良い香りに包まれて、まるでコーヒーの中に浸かっているかのようだった。
「ねぇねぇ、私甜音君のコンサートに行くの!!」
「えっ、良いなぁ!チケットとれたんだ!甜音君のコンサートってなかなかチケットとれないんだよなぁ」
隣のテーブルで2人の女子高生が話に華を咲かせている。どうやら先程の若きピアニストの話題らしい。
「まぁ、あの見た目だしね。そりゃ人気出るわ」
「男の子なのにあんな可愛いんだもん。ワンチャンうち等より可愛くない?」
「ホントそれ!!あっ、ちなみにチケット2枚とってあるから」
「えっ、それって」
「うん!一緒に行こ!!」
女子高生達の話を聞きながらコーヒーを飲み進めていく。賢護がなかなか来ない為先程の女性にコーヒーのおかわりを注文した次の瞬間、平和だったこの店に不似合いな『危険』が舞い込んで来た。覆面を被り、片手に拳銃を持った男が入って来たのだ。俗に言う強盗である。
「キャーッッ!!」
店内の客は強盗を見た瞬間に悲鳴をあげ席から立ち上り逃げようとする。その様子を見た強盗は、天井に向って2発弾を撃ち店内の客を威嚇した。
「うるせぇ、黙れ!全員席につけ!今度動いたらソイツから殺すぞ!!おい、店員、店のカーテン全部閉めろ!」
よく見る強盗である。リアルな世界でもこのような強盗がいるんだなと感心しながら見ていたもつかの間、奥山さんが店のカーテンを全て締め切った後に強盗に人質として捕らえられてしまった。
「いいか!奥に店長いるんだろ?!良く聞いておけ。今から1時間以内にこの店の金庫の中にある現金と、それから車を1台用意しておけ!良いな?!」
強盗は奥山さんの頭部に拳銃を突きつけたまま言った。
「どうしよ…、ママに連絡しないと…」
先程の女子高生のうちの1人が鞄からスマートフォンを取り出そうとしたその時、強盗が女子高生に向って弾を撃った。
「キャーッッ!!」
弾は女子高生には当たらなかったものの、直ぐ横のテーブルを撃ち抜いた。
「次変な真似をしたらお前らもあのテーブルみたいになるからな!!」
「落ち着いてくださいお客様!静かにしていればお命は助かります!ここは要求をのみましょう!」
頭部に拳銃を突きつけられこの中で1番恐怖を抱いているはずの奥山さんがそう言って店の中は静まり返った。それから暫く沈黙が流れる。強盗が店に入ってきてから15分程経ったであろう頃、1人の客が席から離れようとした。キャップを深く被っており、顔は良く見えないものの若い男性のようであった。すかさず強盗は男性に銃を向ける。
「おいテメェ!撃つぞ!!」
しかしそんな強盗の脅しを無視し男性はフラッと店の出口まで歩き出した。自ら命を捨てに行っているその行為に店内の客は言葉を失った。男性がドアの取手に手をかけ立ち止まる。その瞬間、私は男性と目が合った気がした。合った気がというよりも、彼は明らかに私を見ていたし、私も明らかに彼を見ていたから完全に合ったのだが、彼はまるで私に『さぁ、どうする?』とでもいうかのような目で見つめてきたのだった。その瞳に見つめられた反動で私の脚は私の意志と関係なく動き出す。私はそのまま強盗の方へと歩み寄った。
男性はドアの取手に体重をかけ、ドアをゆっくりと開こうとした。
「聞こえねぇのか!ブッ放すぞ!!」
今まではただの威嚇射撃をしていた強盗も完全に男性を撃とうと狙いを定め始めた。
「お客様!お戻りください!」
強盗の腕の中にいる奥山さんは涙目で男性に訴えた。しかし男性の耳には届いていない。強盗は銃口を男性に向け、引き金に指を添えた。
「言う事聞いてりゃ良かったのによぉ!!死にやがr、?!」
強盗が引き金を引くよりも先に私は強盗の肩に左手を添えた。
「なんだテメェ?お前も一緒になって撃ち殺されてぇのか?」
強盗は銃口を男性から私に向けた。
《店から出ようとした男性side》
俺が店から出ようとしたその時、森羅珮杜は動いた。やはり狙い通り。しかしここから森羅がどうでるのかまでは予想がつかない。俺はあえてゆっくりと戸を開こうとし時間を稼いだ。
たった今、俺に向いていたはずの銃口が森羅に向けられている。さぁ、森羅はどうするのか。お手並み拝見とでもいたしましょうか。俺はドアの前に突っ立ったまま森羅を観察し始めた。
「撃つのは辞めたまえ」
森羅は強盗に向って諭し始めた。しかし強盗にそんな事が通ずる筈がない。いよいよ強盗は森羅に向って発砲しようとした。
神に1番近いレオナルド・ダ・ウィンチの器の森羅珮杜でもopusを使えなければただの人だったのだ。少し残念な想いで俺は森羅の最期を見届ける事にした。
しかしその時、俺の予想が的中した。森羅はまず右手で銃口を包むようにして拳銃の先を握った。思いもよらぬ行動に強盗を含め、店の中にいた者みな、呆気にとられてその光景を眺めていた。
「て、テメェ、舐めやがって!!」
我に返った強盗は森羅から拳銃を奪い返そうともがくものの、森羅の手から拳銃は離れることなく、それから森羅は空いている左手で強盗の首を前から掴んだ。
「な、なんの真似だ?!」
動揺する強盗にはお構いなしに森羅は強盗の顔をまじまじと見はじめた。その瞬間、森羅の銀色の美しい瞳が右眼だけ紅く色を変え、ほのかに光り出したのだった。
「?!」
驚いて声を出せなくなった強盗であったが、森羅のその紅い瞳を見ているうちにゆっくりと瞼を降ろし始め、ついには脚に力が入らなくなり腕の中で捉えていた店員を離すと。クタッと床に倒れ込んだ。
やはり、森羅珮杜はまだレオナルド・ダ・ウィンチの器として、レオナルド・ダ・ウィンチのopus『hypnosis-催眠-』が使える。多分このopusを用いて強盗を眠らせたのであろう。
そんな森羅の様子を観察し満足した俺はゆっくりと店を出た。その時背後で倒れる森羅には気が付かなかったが。
店を出ると6月のくせに何だか肌寒くて、俺は来ていたパーカーのポケットに手を突っ込んだ。早く家に帰って暖まろう。早く帰んなきゃ。『母さん』が待ってるんだから。俺は早足で家へと急いだ。早く帰りたい。そんな俺の意志とはウラハラに途中3人の若い女性に声をかけられ俺は立ち止まらずにはいられなくなってしまった。
「ねぇ!もしかして君、天童甜音君じゃない?」
「ホントだぁ!キャー!やっぱりホンモノだー!!」
「この前のコンサート良かったよぉ!!」
先程大事に巻き込まれてそれどころの心境ではなかったが俺はいつも通り、ピアニスト天童甜音として笑顔を作って答えるのだった。
「ありがとぉー!来月もあるからぜひぜひ見に来てね~☆」
《刻刀賢護side》
森羅の指定していたカフェをやっと見つけ店の中に入るなり、床に倒れ込んでいる珮杜と覆面を被った1人の男、それから椅子に座り震え上がった客達がいた。俺は慌てて珮杜の元へと駆け寄った。息は普通にある。周りの客達に事情を聞き、そこから考えるに珮杜はopusを使ったのであろう。久しぶりに使ったもんだから多分今は疲れて寝ているだけ。俺は店員の奥山さんに全ての事を任せ、珮杜を連れて家に帰ることにした。
「警察に言う時、必ず飴市って人を指名して。じゃないとちょっと面倒臭い事になるから」
俺はそう言い残して店を出た。
今日は6月なのに何故か肌寒く、おぶっている珮杜のおかげで背中は少し暖かかった。
「これじゃあ帰っても飯、食えねぇな」
俺は背中で寝ている珮杜にそう声をかけると家へと向って歩き出した。
《研究施設Cipherにて》
その頃星宮冥美は森羅珮杜が眠っていた検査室N―174の掃除を行っていた。仁科所長に言われた事を頭の中で何度もループさせているうちにじっとしてはいられなくなったのだ。掃除をしたからといって何かになる訳ではなかったが、もしかすると森羅の行き先の手掛かりが見つかるかもしれないと思ったからだ。1人でそそくさと掃除をしていると、検査室の中に1人の男性が入って来た。
「ただいま、冥美」
「遅かったじゃん、今まで何処ほっつき歩いてたんだよ…」
入って来たのは森羅と街ですれ違った星座に詳しいあの男性であった。
「だからごめんって。まぁ今日は良いお土産があるから」
男性は星宮冥美に向って微笑みながら冥美の横へとやってきた。
「えっ、もしかして頼んでおいた最新の望遠鏡でも買って来てくれたの?」
「残念。望遠鏡では無いんだな~。まぁそう気を落とさないで。もっと良いお土産なんだから。すっごく良い情報をあげよう」
「なんだ、期待して損した」
冥美は肩を落とすと止めていた手をまた動かし始め掃除を再開した。そんな様子を見た男性は少しもったいぶってあえて大きな声でこう言ったのだ。
「そっかぁ、せっかく森羅珮杜に会ってきたから教えてあげようと思ったのになぁ」
それを聞くなり冥美は顔色を変えた。
「どこで?!いつ?!」
「まぁまぁ落ち着いて。とりあえず彼は、あっ、彼女か?……どっちでも良いか。とりあえず彼は𝓐𝓡𝓣𝓔に保護されたと考えて間違いないね。おそらく此処へ森羅珮杜を取り返しに来たのは彼の右腕でもあるミケランジェロの器の保有者、刻刀賢護だろう。ま、僕等が今出来る事は𝓐𝓡𝓣𝓔の潜伏場所を探る事くらいかな」
そう言って男性は冥美に向って何かをめぐむかのように両手を差し出した。
「えっ、何?」
「何って報酬だよ。大切な情報をあげたんだからね」
「あぁはい。いつものね」
冥美は軽く溜息をつくと白衣のポケットから真っ赤に熟れた林檎を1つとり男性へと向って投げた。男性は両手でそれを受け取るとズボンのポケットからハンカチを取り出し林檎を拭き始めた。
「あぁ、やはり林檎は紅くて綺麗だなぁ」
「ホント、林檎には目がないんだね。流石、アイザック・ニュートンの器の現在保持者、兼、Cipherのリーダー」
冥美が林檎に見惚れている男性に呆れながらに言うと男性は微笑みながら言った。
「その呼び方はあんまり好きじゃないなぁ。確かに僕は今Cipherのリーダーをやってるけどただの臨時のリーダーだよ。本当のリーダーはアインシュタインの器の保持者って決まっているんだから。僕はただの臨時さ。ちゃんと万象博人って名前で呼んでほしいな」
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