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失われた少女
1 少女を捜して
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少女を捜して、細部に気を配りながら隅から隅、さらに奥の方まで潜り込む。 実習生は普通こんな深淵まで探らないものだが、彼はもう何度も彼女の記憶のなかに入っているので、慣れたものだ。
彼女の思い出は、とても短い。
なにしろ、発症したのは彼女がまだ七歳の頃だったから。
これがもう何度目の捜索なのか、彼は覚えていない。
彼は巻き戻した記憶を初めから再生し直す。ビデオテープを早送りするように、彼女の短い人生が高速で流れていく。赤ちゃんから小学生へと変貌を遂げる彼女の成長を見守りながら、そのどこかに潜んでいるはずの彼女を見つけ出そうと注意深く観察している。
失踪人の発見には、細心の注意が必要だ。
失踪人は、記憶内の「自分」のなかに隠れていることが多い。元より本人である。外見からは、中に失踪人が潜伏しているのか否か、判断が難しい。
そこで、失踪前、病気になる前の失踪人に関する情報収集が重要となる。これには、家族や恋人、失踪人をよく知る人物から聞き取りを行う。彼女の場合は、彼女の兄だ。五歳上で、完全失踪当時は十三歳だった彼が、仕事で家を開けがちだった両親よりも妹にとっては近しい人間で、父親代わりの存在だったという。
だから、兄のチトセは、妹ハナの短い生涯の記憶に最も頻繁に登場する人物だ。いや、二人はべったり寄り添っていると言っていい。ほほえましいというよりは、痛々しい感じがするのは、チトセもまだ十三歳という若さで、全力で父親役を務めようとしているところだろうか。
だがその関係が、ハナの突然の「失踪」によって一変する。
ハナの記憶は失踪が完了した時点で途絶える。
もう一度、彼は記憶を超高速で巻き戻す。
今日の彼女は、よっぽど用心深く隠れているらしい。
焦ってはだめだ、と彼は自分に言い聞かせる。もう一度、はじめから。彼女を見つけるまで、何度でも。
彼女の思い出は、とても短い。
なにしろ、発症したのは彼女がまだ七歳の頃だったから。
これがもう何度目の捜索なのか、彼は覚えていない。
彼は巻き戻した記憶を初めから再生し直す。ビデオテープを早送りするように、彼女の短い人生が高速で流れていく。赤ちゃんから小学生へと変貌を遂げる彼女の成長を見守りながら、そのどこかに潜んでいるはずの彼女を見つけ出そうと注意深く観察している。
失踪人の発見には、細心の注意が必要だ。
失踪人は、記憶内の「自分」のなかに隠れていることが多い。元より本人である。外見からは、中に失踪人が潜伏しているのか否か、判断が難しい。
そこで、失踪前、病気になる前の失踪人に関する情報収集が重要となる。これには、家族や恋人、失踪人をよく知る人物から聞き取りを行う。彼女の場合は、彼女の兄だ。五歳上で、完全失踪当時は十三歳だった彼が、仕事で家を開けがちだった両親よりも妹にとっては近しい人間で、父親代わりの存在だったという。
だから、兄のチトセは、妹ハナの短い生涯の記憶に最も頻繁に登場する人物だ。いや、二人はべったり寄り添っていると言っていい。ほほえましいというよりは、痛々しい感じがするのは、チトセもまだ十三歳という若さで、全力で父親役を務めようとしているところだろうか。
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もう一度、彼は記憶を超高速で巻き戻す。
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焦ってはだめだ、と彼は自分に言い聞かせる。もう一度、はじめから。彼女を見つけるまで、何度でも。
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