18 / 29
ルルモア大学進学~二年生編
6
しおりを挟む
アルベルトとメイ、そしてエイプリルの三人はルルモア魔法大学内では有名でした。注目を浴びる三人が集っている訳ですから、それも当然のことと言えるでしょう。
ですが、必ずしも向けられる視線のすべてが好意的なものであるとは限りません。メイと同じく、アルベルトを追ってこのルルモア魔法大学への留学を果たしたジュリー・ルベウス伯爵令嬢も、嫌悪の眼差しを向けているうちの一人でした。
ジュリーは赤毛の巻き髪と、真紅のドレス、赤い薔薇のコサージュに赤い靴と装いはすべて赤で揃えています。その上、化粧は厚く、唇も真っ赤なルージュを使っているのですが、派手な外見にも拘らず注目を浴びません。
(あの女! どこまでウチの邪魔したら気ぃ済むんじゃ!)
ジュリーが派手になったのは、アルベルトを振り向かせたいが為でした。最初はドレスと髪色が赤というだけで、これほど派手ではありませんでした。それが、初等学園に通い始めた七歳の頃、アルベルトに恋をしてからこのようになってしまったのです。
恋をした理由は、これまた勘違いでした。ジュリーが同級生の男子から、血塗れジュリーとからかわれて泣いていたとき、たまたま教室の前を通りがかったアルベルトが、からかっていた男子たちに怒鳴りつけたことがきっかけとなりました。
「お前たちは間違っている! 血塗れというのは、こんな綺麗な赤色じゃない! 女子を泣かせた上に馬鹿を晒して恥を掻くとは救いがないな!」
アルベルトは、ジュリーを庇った訳ではありませんでした。言い回しから分かる通り、メイの真似をして、男子たちの間違いを指摘しただけでした。
いえ、女子を泣かせるという行為は気に食わないと思ってはいたのですが、そこは意識していなかったと言った方が正しいでしょう。
なんにせよ、アルベルトの言い回しと、堂々とした態度がジュリーの胸をときめかせたのです。そして『綺麗な赤色』という言葉が、ジュリーを過激な赤崇拝に走らせた原因となったという訳です。
さて、このジュリーなのですが、アルベルトとは同い年で、初等学園から高等学園まで同じ学校で過ごしてきました。しかも、十二年中、六回も同じクラスになっています。なのに、アルベルトとは話したことがありません。思い切って話し掛けようとしたことは何度もあったのですが、アルベルトはクラスの人気者でしたので、その度に邪魔が入って果たせずにいました。
教室では駄目だと場所を変えると、今度はメイが先に動いてしまいます。一学年下ということで、ジュリーからすると、メイは生意気で鬱陶しい邪魔者という風に見えていました。ですが、どれだけ素っ気なくされようが、冷たくあしらわれようが諦めないメイの姿を見ているうちに、段々と心打たれて応援するようになっていきました。
そうなのです。ジュリーはメイを認めているのです。圧倒的大差がついているのですが、そんなことは関係ありません。ジュリーの中では、メイは恋のライバルでした。
では、何に対して嫌悪の眼差しを向けているのかというと……。
(あのドラム缶! メイちゃんとアルベルト様の尊いひとときの邪魔しくさって! お前のおるとこ、ウチのポジションやぞ! しれっと出てきて掻っ攫いよって!)
ジュリーは考えていました。どのようにして、エイプリルを追い落とそうかと。
容姿だけでいえば、間違いなく自分の方が上だとジュリーは思っています。背は高く、細身ですらりと手足が伸びています。メイとは違い凹凸は少ないですがそれも一つの個性としてジュリーは受け入れています。
対してエイプリルは丸太。くびれはなく寸胴体型で、ドレスは特注でなければ袖を通すことも叶いません。最近は顎まで割れてきています。
(何が『ぽっちゃり』や。んなもん四十キロ先に置き去りにしとろうが! ウチに言わせたら、とんでもないデブやぞ! そんで、オークしばき倒す淑女がどこにおる!)
正論です。にも拘わらず、国内では随一の人気を誇っています。このルルモア魔法大学でもその認識は浸透しており、ジュリーは余計に腹立たしく思っていた訳です。
(どうしてあんな怠惰の象徴みたいな女が、もてはやされるんじゃ⁉ 世も末ぞ⁉)
世も末なのは、ジュリーがルルモア魔法大学に入ってからの一年もの間、一度もメイとアルベルトに気づかれていないことを、当たり前のように思っていることです。
それどころか、ジュリーは教授以外の誰からも気づかれていませんでした。当人は気づいていませんが、愛用している薔薇のコサージュは呪われた装飾品だったのです。
それを身に着けている間、声を掛けない限り存在が認識できなくなるという、影薄の呪いが掛かっていたのでした。派手なのに影が薄いジュリーは、今日もまたこっそりとエイプリルへの嫌がらせの計画を始めるのでした。
ですが、必ずしも向けられる視線のすべてが好意的なものであるとは限りません。メイと同じく、アルベルトを追ってこのルルモア魔法大学への留学を果たしたジュリー・ルベウス伯爵令嬢も、嫌悪の眼差しを向けているうちの一人でした。
ジュリーは赤毛の巻き髪と、真紅のドレス、赤い薔薇のコサージュに赤い靴と装いはすべて赤で揃えています。その上、化粧は厚く、唇も真っ赤なルージュを使っているのですが、派手な外見にも拘らず注目を浴びません。
(あの女! どこまでウチの邪魔したら気ぃ済むんじゃ!)
ジュリーが派手になったのは、アルベルトを振り向かせたいが為でした。最初はドレスと髪色が赤というだけで、これほど派手ではありませんでした。それが、初等学園に通い始めた七歳の頃、アルベルトに恋をしてからこのようになってしまったのです。
恋をした理由は、これまた勘違いでした。ジュリーが同級生の男子から、血塗れジュリーとからかわれて泣いていたとき、たまたま教室の前を通りがかったアルベルトが、からかっていた男子たちに怒鳴りつけたことがきっかけとなりました。
「お前たちは間違っている! 血塗れというのは、こんな綺麗な赤色じゃない! 女子を泣かせた上に馬鹿を晒して恥を掻くとは救いがないな!」
アルベルトは、ジュリーを庇った訳ではありませんでした。言い回しから分かる通り、メイの真似をして、男子たちの間違いを指摘しただけでした。
いえ、女子を泣かせるという行為は気に食わないと思ってはいたのですが、そこは意識していなかったと言った方が正しいでしょう。
なんにせよ、アルベルトの言い回しと、堂々とした態度がジュリーの胸をときめかせたのです。そして『綺麗な赤色』という言葉が、ジュリーを過激な赤崇拝に走らせた原因となったという訳です。
さて、このジュリーなのですが、アルベルトとは同い年で、初等学園から高等学園まで同じ学校で過ごしてきました。しかも、十二年中、六回も同じクラスになっています。なのに、アルベルトとは話したことがありません。思い切って話し掛けようとしたことは何度もあったのですが、アルベルトはクラスの人気者でしたので、その度に邪魔が入って果たせずにいました。
教室では駄目だと場所を変えると、今度はメイが先に動いてしまいます。一学年下ということで、ジュリーからすると、メイは生意気で鬱陶しい邪魔者という風に見えていました。ですが、どれだけ素っ気なくされようが、冷たくあしらわれようが諦めないメイの姿を見ているうちに、段々と心打たれて応援するようになっていきました。
そうなのです。ジュリーはメイを認めているのです。圧倒的大差がついているのですが、そんなことは関係ありません。ジュリーの中では、メイは恋のライバルでした。
では、何に対して嫌悪の眼差しを向けているのかというと……。
(あのドラム缶! メイちゃんとアルベルト様の尊いひとときの邪魔しくさって! お前のおるとこ、ウチのポジションやぞ! しれっと出てきて掻っ攫いよって!)
ジュリーは考えていました。どのようにして、エイプリルを追い落とそうかと。
容姿だけでいえば、間違いなく自分の方が上だとジュリーは思っています。背は高く、細身ですらりと手足が伸びています。メイとは違い凹凸は少ないですがそれも一つの個性としてジュリーは受け入れています。
対してエイプリルは丸太。くびれはなく寸胴体型で、ドレスは特注でなければ袖を通すことも叶いません。最近は顎まで割れてきています。
(何が『ぽっちゃり』や。んなもん四十キロ先に置き去りにしとろうが! ウチに言わせたら、とんでもないデブやぞ! そんで、オークしばき倒す淑女がどこにおる!)
正論です。にも拘わらず、国内では随一の人気を誇っています。このルルモア魔法大学でもその認識は浸透しており、ジュリーは余計に腹立たしく思っていた訳です。
(どうしてあんな怠惰の象徴みたいな女が、もてはやされるんじゃ⁉ 世も末ぞ⁉)
世も末なのは、ジュリーがルルモア魔法大学に入ってからの一年もの間、一度もメイとアルベルトに気づかれていないことを、当たり前のように思っていることです。
それどころか、ジュリーは教授以外の誰からも気づかれていませんでした。当人は気づいていませんが、愛用している薔薇のコサージュは呪われた装飾品だったのです。
それを身に着けている間、声を掛けない限り存在が認識できなくなるという、影薄の呪いが掛かっていたのでした。派手なのに影が薄いジュリーは、今日もまたこっそりとエイプリルへの嫌がらせの計画を始めるのでした。
0
あなたにおすすめの小説
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。
水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。
王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。
しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。
ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。
今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。
ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。
焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。
それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。
※小説になろうでも投稿しています。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる