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学~後編~
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しおりを挟むさて、次は何をして暇を潰そうかな。と、大あくびをしていると、アランが軽い足取りで俺の側に来た。
遊んで欲しいように見えたので、ひっくり返してお腹を軽く掻いてやった。アランは身を捩りながら鳴く。目が笑っているように見える。
それからは姉ちゃんのバッグから取り出した玩具で遊んでやった。猫じゃらしとボール。
アランは落ち着きがあるが、実は活発なので、遊ぶときはがむしゃらになる。跳んだり、噛んだり、鳴いたり、転げたりとうるさかった。
俺は少しその音を気にしたが、両親が気にしていないようだったので気兼ねなしに遊んでやった。
飽きたのか、それとも疲れたのかは不明だが、しばらくすると、お前誰だよ、と言いたげな顔で俺を見て、アランは寝床に帰っていった。
夕食は、レトルトカレーだった。静かな食卓だった。警察から、姉ちゃんには食事をさせないよう指示があったので、姉ちゃん以外の家族で食べた。
それまで猫用ベッドで気持ちよさそうに寝ていたアランが飛び起きて餌を催促した。また俺が用意してやった。
これ、普段は姉ちゃんがやってる作業なんだよな。
アランに餌をやる姉ちゃんの姿が思い出されて少し寂しくなった。あんな性悪で大嫌いな姉ちゃんでも、やっぱり心の底では大事に思っているんだと初めて分かった。
もし、俺が姉ちゃんと逆の立場だったとしたら、どうだったろうか?
やっぱり、皆がこんな風に心配してくれただろうか?
当然だよな。家族だもんな。
と、疲れた両親の姿を見て思った。接し方が下手くそなだけで、愛情がない訳じゃない。
分かっていることだったが、こういう状況に置かれると、そこには一切の嘘がないんだと実感して、微妙にだが、優しい気持ちになった。
それにしても、父さんは寝すぎだ。
夕食前に起きて、夕食を食べて、それでもまた居眠りしている。
そこまで疲れてるなら、寝室で寝りゃあいいのに。しょうがねぇな、もう。
俺は席を立ち、父さんに声を掛けて体を軽く揺すった。父さんは驚いたように目を覚ました。寝室で寝るようにと伝えると、父さんは「そうだな」と言って二階に向かった。
母さんも、片づけが済むと二階に上がった。俺もその後に続いて、部屋の前で、
「おやすみ」
と、挨拶を交わして部屋に入った。
寝室は三部屋あって、一番広い部屋は両親が使っている。
当然、俺と姉ちゃんの部屋は別だ。扉を開けると正面に窓、両脇の壁際にシングルベッドが二つ。小さなサイドテーブルがそれぞれについている。
俺はスマホをサイドテーブルに置いて、着替えもせずにベッドに倒れこむ。
本当に寝る為だけにあるような部屋だと思う。
横になるとすぐに眠気が強くなった。
アランも連れてこればよかった。
あいつは寂しがりだからな。
そんなことを考えて。
いつのまにか。
暗闇に――。
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