【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人

文字の大きさ
294 / 409
もう一人の渡り人編

閑話 ムラキ・チエの思い

しおりを挟む
 
 
 馬鹿ばっかり。優れてるって大変だわ。

 普通に学校を卒業して、普通に就職して、普通に恋愛をして、結婚して子供を産んで。そういう生活を夢見ている連中って、なんでこんなに多いのかしら。

 そんなの平凡で退屈な人生が待ってるだけじゃない。なのに同僚が結婚したとか妊娠したって話で盛り上がって、羨ましいーだなんて、馬鹿かよ。

 羨ましがってる暇があるなら、そうなるように行動すれば良いってだけなのに、なんでそれができないのかしら。簡単な話じゃない。婚活パーティーでも合コンでも出て、適当に好みの男見つけてホテルに行くだけのことでしょ。

 それであんたが羨ましがってる形は手に入るわよ。私には考えられないけどね。

 本当、なんでこの世界ってこんなに馬鹿が多いのかしら。綺麗事並べ立ててりゃ好感度上がるって仕組みもどうにかなんない訳? 誰よそんなクソみたいなシステム作ったの。皆嘘吐きになってるだけじゃない。ほら、これこれ。

 通勤路で信号待ちしてる間、頭の薄らハゲて太ったおっさんがハンカチで汗を拭いてる。それを近くにいるカップルがコソコソ話しながら指差して笑ってる。

 これ、おっさんの方が笑われたって仕方なくない? クタクタのスーツ姿でさ、フゥフゥ言いながらそんなことしてりゃ笑われもするでしょうよ。

 なのに、なんでカップルの方が周りから非難がましい目で見られてる訳? 

 絶対におかしいわよ。

 職場でも、もっとできるはずなのに、すっとろい馬鹿ばっかりいるから足を引っ張られてやりたいようにできないし、こうした方が良いって教えても、全っ然言うこと聞かないし。教えた通りにもできないんなら職場に来てんじゃねーよ。

「ムラキ君、君ね、査定の自己評価が全部最高点になってるけど、これは冗談ではないんだね? だとすれば、思い違いも甚だしい。その理由が分からないとしたら、悪いがうちには置いておけない。これまでも注意してきたが、今一度よく考えてみなさい」

 何言ってんの? 前々から使えねー上司だと思ってたけどさ、あんたより使えない馬鹿を教育したら、来なくなったってだけでしょう。二回も同じ失敗してんのよ? ちょっとキツく注意しただけで来なくなる方がおかしいのよ。

「カッター、投げたんだって? ペンとハサミも。君は注意って言ってるけどもね、安全会議にも話が上ってるんだよ。またあいつかって、いい加減切らんと駄目だって話にもなってる。悪いが、流石にもう庇い立てできん」

 誰も彼も、上辺を取り繕って、手を取り合いましょうなんて、嘘臭くて気持ち悪いのよ。この馬鹿だって、こんなこと言ってるけど、すぐに手の平返すわよ。会社にも、奥さんと子供にも知られたくないこと、私にしたんだもの。

 というか、させたんだけど。だってその方がやりやすいんだもの。

 なんでもかんでもさー、私が悪いみたいに話を持ってくけど、あいつら言うほどできてる? 私の方ができてるわよね? できてる方が偉いに決まってるでしょ?

 仕事ができても、周囲と上手くやれないならいらないとかいう訳わかんないシステムがあるから、あんたみたいな馬鹿に股開いてやったんじゃない。

 私は被害者。分かる? あんたは私を庇い続けないといけないの。

 ま、あんたが飛んでも他にもいるけどさ。陰で私のことブスだとかなんだとか言ってる割には喜んで誘いに乗る馬鹿ばっかりなのよね。後のことも考えられないのかしら。自分の方が上手くやれるとでも思ってんのかしらね? 本当、馬鹿ばっかり。

 あー、そうだ。明日バーベキューあるんだった。久し振りのリフレッシュ。言いなりになってくれる人ばっかりだから楽しみだわー。

 このクソみたいな世界を忘れられるひとときよねー。あー、そっか。この世界が私に合ってないのが悪いのよね。漫画みたいに勇者召喚とか聖女召喚とかされないかなー。

 気に食わなかったら殺しちゃったりできる世界とか超憧れるんだけどなー。
 
――――

 その後、チエはバーベキューをしに行った小高いキャンプ場の崖から、言いなりにしていた者達の手で突き落とされて異世界転移を果たす。

 転移先はウェズリー山、ラグナス領、魔の森。

 魔物はびこるその森で、チエは、とある二人組の男女に救われる。

 そして――。

『え、私死んでないってこと⁉ 異世界転移⁉ やっぱり選ばれし勇者じゃない!』

 この言葉が発端となり、工作員として雇われることになる。

 ただ勘違いを面白がられているだけとも知らずに。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...