公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧

文字の大きさ
6 / 36
本編

5、いざ王宮へ

しおりを挟む
「王宮からですか?」
 私は驚き、目を丸くしてお父様とお母様に聞き直した。

 二人は同時に頷きながら、そわそわとした様子で落ち着きがない。

 そんな、応接間で向かい合う私たちのテーブルには、王宮からの立派な紋章がついた手紙が置かれている。

 宛名は私だ。


「先ほど届いたんだ。は、早く開けてみよう、レイラ」
 お父様は興奮した様子で私に言う。

 こんなしがない子爵家の娘に王宮から手紙が届くなんて何事だろう。
 お父様とお母様が慌てふためくのも無理はない。

 私はドキドキしながら、手紙を開封して読んだ。

 こ、これは……!


「どんな内容なの?」
 お母様は緊張した面持ちで私に尋ねた。

「私に隣国のメアリー・フラートン王女様の話し相手になってほしいって」
 私は放心状態で手紙の内容を簡潔に伝えた。

「まあ! なんて光栄な」
 お母様は驚きながらも嬉しそうに叫んだ。

「王女様の?! なんでレイラが?」
 お父様は少し混乱している。

 そういえば、夜会の日の出来事を話していなかったことを思い出し、私は二人に王女様との出会いについて話した。


「そうだったのか、それで話し相手にと。それはとても名誉なことだ」
 お父様はとても嬉しそうに頷いている。

「そうね! それに王宮に出入りしていれば、きっと素敵な出会いもありますわ」
 あ、そっちね。お母様のちゃっかりとした意見に舌を巻く。

「それもそうだな! レイラ、すぐにお返事を書こう」

 そうして返事を書いてからあれよあれよという間に準備が整い、私は今日、王宮へと向かう。

 私としては、たまに王宮に行って王女様のお茶のお相手をするだけだと思っていたのだが、なぜか私も王宮に上がりしばらくの間、滞在する手筈が整ってしまったのだ。

 これはお父様とお母様の計略だろう。

 でも、なんてラッキーなのかしら!これで小説の平和なエンディングへ向けて、思う存分動けそう。

 ありがとう、お父様、お母様!

 王宮からお迎えの馬車が到着して、私はお父様とお母様に送り出された。

「頑張るんだぞ」
 お父様はなぜか私よりもやる気満々な様子だ。

「素敵な出会いを見つけてきなさいね」
 お母様は片目を瞑って私に笑顔で言った。

「はい! いってきます」
 私は元気に返事をして馬車へ乗り込む。

 窓から手を振り、二人の姿が見えなくなって私はやっと窓を閉めた。
 私よりも張り切っていた二人を思い出し、思わず笑いがこみ上げる。


「わあ、さすが王族の馬車は乗り心地がいいですねえ、お嬢様」
 ミラは感激した様子で馬車の中をきょろきょろと眺めている。

 王宮に上がるにあたり、ミラに付き添いをお願いしたのだ。
 お父様もお母様もそれは安心だと言って賛成してくれた。

 彼女はこの世界に転移してから一番初めに出会った人物で、私のことを大切にしてくれるとても頼りになる存在だから。

 何よりミラの屈託のない天真爛漫な性格はとても話しやすく、私にとっても癒しとなっていた。
 そして、ミラ自身がこの機会を一番面白がってくれているような気がする。

「王宮はどんな所なんでしょうね。素敵な恋のきっかけに発展するといいですね、お嬢様」
 ミラは目をキラキラと輝かせている。

「ふふ、そうだね。ミラにもいい出会いがあるといいなあ」
「きゃあ。えっと……私は素敵な騎士様と出会いたいです~」
 ミラはポッと顔を赤くしている。

 ふふ、可愛い。

「騎士様かあ、それも素敵ね!」
「お嬢様には公爵様がいらっしゃいますものね」
 ミラは目を輝かせて言う。

「エリック様とはあれきり何もないよ」
 私は少し焦って言う。

「大丈夫です、お嬢様。公爵様はお立場上、王宮に頻繁に出入りされてますから、愛を深める機会はいくらでもありますよ」
「い、いや、そうじゃなくて」
「お嬢様のお役に立てるよう頑張りますね!」
 焦る私に、ミラは「分かっていますから」と相手にしてくれない。

 うーん、なんか誤解されてるような気もするけれど、ま、いいか。
 とにかくこの機会に、小説を平和なハッピーエンドに導こう!

 王宮に着くと、私は速やかに立派な客室に案内された。

 ここは宮殿の隣にある離宮で、王女様やその他のお妃様候補の皆さんが過ごす場所のすぐ下の階にあるらしい。

 私なんかがこんなところに来てしまっていいのだろうか。
 あまりにも煌びやかな王宮の有様に気後れしてしまう。

 私に当てられたこの客室は、扉を入ってすぐ両脇に侍女部屋があり、広い廊下を真っ直ぐ抜けるとリビング、隣にはキッチンやバスルームなどがあり、最奥が寝室、という造りになっていた。

 とても過ごしやすそうで安心だ。

 王宮の人に一通り案内を受けた後、私はリビングのソファに座ってくつろいだ。
 ミラが手早く紅茶を淹れて、カップをテーブルに置きながら言う。

「今日の夜は騎士団の任命式があるそうですよ。先ほど王宮のメイドさんたちが噂してました」
「任命式?」
「ええ、なんでもスコフィールド侯爵家のご長男が王宮騎士団の騎士団長に就任されるとかで」
「へえ、そうな、」

 そこまで言って私は大事なことを思い出した。

 ああ!そうだ!!任命式!!!
 今日だったのね、ちょうど良かった!間に合って!

 私はハッと思いつき、ミラに向き直った。

「ミラ! あなた騎士様と出会いたいって言ってたわね」
 私の必死な形相にミラは驚いている。

「え、ええ。まあ」
「後でそれ、一緒に覗きに行こう!」
「ええ?!」
「任命式は何時から?」
「えーと、確かちょうど18時からだったかと」

 幸い先ほど王宮の人から受けた説明では、この離宮、宮殿ともに比較的自由に歩き回っていいと聞いていた。

 私のような部外者が入ってはいけない場所に関しては、必ず護衛騎士が配置されているのですぐに分かるようになっているらしい。

 それ以外にも、警備は万全に張り巡らされているので、迷ったら近くの騎士に尋ねればいいとのことだった。

 そうして私は心を決めて、18時になるのを待つことにした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。 そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。 そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。 「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」 そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。 かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが… ※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。 ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。 よろしくお願いしますm(__)m

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

【完結】断りに行ったら、お見合い相手がドストライクだったので、やっぱり結婚します!

櫻野くるみ
恋愛
ソフィーは結婚しないと決めていた。 女だからって、家を守るとか冗談じゃないわ。 私は自立して、商会を立ち上げるんだから!! しかし断りきれずに、仕方なく行ったお見合いで、好みど真ん中の男性が現れ・・・? 勢いで、「私と結婚して下さい!」と、逆プロポーズをしてしまったが、どうやらお相手も結婚しない主義らしい。 ソフィーも、この人と結婚はしたいけど、外で仕事をする夢も捨てきれない。 果たして悩める乙女は、いいとこ取りの人生を送ることは出来るのか。 完結しました。

処理中です...