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第十章 掌中の珠
Ⅱ
しおりを挟む「酒を飲ませたのか?」
従者は入ってきたと思ったら、酒の瓶と熱っぽい様子のサディアスを見て、間髪入れず聞いてくる。
近づいてくる従者の顔はいつもにも増して不機嫌そうで、それを見ると気分が良くなる。よく聞こえたようだ。ズボンを膨らましてないことには感心さえ覚えるが。
「接触禁止とか辞めてね。全部サディアスがいいって言ったんだから」
酔いが回ってふらふらしているサディアスの体を抱き寄せながら言うとカガリは押し黙る。
「…次からは呑ませる前に言え。弱い酒を準備する」
「はーい」
それじゃ、つまんないんだけどな。そう思いながらも、返事だけはしておいた。
*
とりあえずロウエルを帰らせ、真っ赤に躰を染めたサディアスを寝室に運んだ。聖女は意識はあるが呼びかけても呂律が回っていない。
この状態の彼女はまずい。病も毒も癒やす神聖力だが酒の酔いはぬけない。
「カガリ」
さっきから甘えた声で呼びかけてくる。
「カガリ?一緒に寝よう?」
「寝ません」
きっぱりと断る。聖女の体を布で拭こうと近づくと子供のように転がって逃げる。
「お風呂に入れて」
駄々っ子の様に言われると、どうしても甘やかしてやりたくなる。
「……これ以上お酒が回ると困るので、ぬるいお湯にしてすぐあげますよ?」
「ありがとう」
聖女は寝転がったまま、顔をほころばせた。
*
白宮のサディアスの為に用意された浴場は白い石造りの部屋に浴槽が掘られている。
お湯を温めに調整してからサディアスに入るように促すと、彼女は大人しくお湯に浸かった。
「カガリも入ろうよ」
「わたしが風邪を引きます」
聖女がお気に入りの香りがする泡をつくりながら応える。
「神聖力をあげるから大丈夫だよ」
サディアスは湯船の中で両手を広げ、見上げてくる。
「誘うのはやめなさい」
その手を掴み、腕を泡でこする。それをまた掴まれる。
「カガリの目はそう言ってない」
カガリは思わず目を逸らす。サディアスはその隙を逃さず、従者の口に素早くキスをした。
「ほら、かわそうと思えばかわせたのに」
そう言いながら、お湯をかけてシャツを濡らしてくる。
「何をする」
たじろぐが、聖女は立ち上がりカガリの張り付いたシャツに浮き出る胸の突起を指でひっかく。体が反応してしまう。
「ここは2人だけだよ?カガリ」
耳元で声を潜めて告げる。そして、優しく口づけられるとカガリも自分の衝動を抑えることが出来なくなって、眼鏡を外した。
*
カガリは服が濡れるのも構わず浴槽に入り、聖女と躰を密着させて激しく口づけをする。
いつも触れ合えない分を埋めるようにお互いを求めてしまう。シャツを脱ごうとするカガリの手を聖女がとめた。
「着たまましよう?なんだか、懐かしいね」
彼の浮き上がった乳首を両手で刺激すると、すぐに声を漏らして反応を見せる。それが浴室に反響して、従者は自分の口を塞ぐ。
「誰もいないから……。私も酔ってる。明日には忘れてるよ」
恥ずかしがり屋の従者の耳元で諭す。そして服の上から胸の先端を吸いながら、水中でそそり立つ陰茎を握りしめ上下に刷り込む。
「気持ちいい?」
「あぁ、気持ちいい」
こういうときのカガリは素直だ。口づけして唇をはみながら、自分の秘部にカガリを迎え入れた。
先程までロウエルに広げられていた穴はやすやすとカガリを受け入れる。中が熱い。その熱が自分のものかカガリのものかは分からなかった。
カガリは聖女の躰にロウエルが残していった赤い痣を見つけると上から唇をつけ強く吸い付く。上書きするようなその仕草にカガリの本心がにじみ出ている。
カガリはサディアスを浴槽の縁に上げ、陰茎を飲み込む秘部を見ながら挿入する。膣内に残っていたロウエルの欲望が泡立って出てくる。
今まで優しかった動きが急に激しくなった。カガリはサディアスの膣内に残るものを全て掻き出すように出し入れし、内壁にこすりつけられる刺激に聖女は睫毛を震わせている。
「昔、みたいに、呼んで」
振り絞るようにねだると、カガリは体を密着させて耳元に口を寄せた。サディアスしか聞こえない声で、もう誰も呼んでくれなくなった愛称を囁いてくれる。
聖女はカガリを全身で強く抱きしめる。体の中心はより引き締まり、カガリに絡みつき体に取り込もうとした。カガリももっと奥を目指すように律動する。
カガリは吐息混じりの声で何度でも愛称を囁く。サディアスはたまらない多幸感に包まれる。2人の呼吸と甘い声がひときわ高まり、同時に深い快感の中に落ちて果てた。
*
「いつも扉の前で抑えてる?」
髪を乾かしてくれているカガリに問いかける。
「……あぁ。そうだな」
そう言われると嬉しくなる。
「じゃあ、もっと嫉妬させちゃおうかな」
「それは困るな」
苦笑するカガリに抱きついて、その体に耳を押しあて鼓動を感じる。
「カガリも私がいないと生きられない体にしたい…」
秘密を打ち明けるようにそっと口にしてみる。そしたらもっと触れあえるかな。と思う。
「必要ない」
こうすると体の中で低く響いて聞こえるカガリの声がとても好きだったことを思い出す。
「もうなってる」
カガリはサディアスの体を離し、その手を両手で包んだ。
「もしお前が先に死んだら、私もすぐに後を追う」
サディアスだけが知る、彼の優しい瞳でそっと打ち明けた。
「死んでも一緒だね」
そうなれたらどんなにいいだろう。聖女は涙声になりながら従者に笑いかける。
「ずっと一緒にいるよ」
カガリはそう言って優しく口づけをしてくれた。
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