聖女は傭兵と融合して最強唯一の魔法剣士になって好き勝手に生きる

ブレイブ31

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設立編

—第38章:利害の一致

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帰りの途中、腕巻き式通信機が使えなかったが、魔王領を抜けたあたりから復活して使えるようになっていた。リオに確認したところ、確かに街中が聖王国に以前のように魔王軍による侵攻を受けているとの報告を受けた。そして、王命により召集されていることを告げられた。

「さて、どうするか」

ベルフェゴール邸で頂戴した酒を飲みながら、今後の自分たちの身の振り方を考える。

「ねぇ、レオン。メカストリアは聖王国に援軍を出すと思う?」

レオンがこちらを振り返ってくる。

「出すだろうな。メカストリアと聖王国は仲が良いわけではないが、悪魔は人を脅かす、人間の敵だ。前回は唐突な襲撃だったのでこちらの準備が全くできず援軍も送れなかったが、今回はある程度の準備はしているはず。それがしっかりと整い、聖王国の使者からの要請さえあれば、すぐにでも出撃するはずだ」

「ふーん、ならそれに一緒に参加すれば聖王国まで行けるわね」

理由はさておき、久しぶりの聖王国への帰還だ。指名手配にされているが、今はそんなことを言っていられる状況ではないだろう。そこであたしたちの力を見せつけて大きな貸しを作る、これでいけるはず。

しかし不安が残る。世界樹の葉は聖王国の秘中の財宝だ。

援軍の際に大きな魔法を使ってアピールするとはいえ、それだけでこちらの思惑が成功するだろうか。まだ少しインパクトが弱い気がする。しかしこれ以上良い案が思いつかない、とりあえず王に会って命令される内容を聞いてから考えよう。

メカストリアに到着する、そして久しぶりにその入り口の門をくぐる、兵士たちは初めて見る乗り物に目を点にしている。スピードを出して街の中を走るわけにはいかないので、減速して入門する。

明らかに怪しんでいる目をした兵士が素性を問いただすために声をかけようとする。しかし途中で何かに気づき、敬礼をする。

「これはお疲れ様です!」

「え、ああ、お疲れ様?」

急な態度に、なんて言えばいいのかわからず、同じ言葉をそのまま返す。その兵士はあたしとレオンを交互にじろじろと見てくる。なんとなく理解した、あたしの今までの活躍を知っている兵士である事、レオンが大貴族テクノバーグ家に仕えていた親衛騎士長だったということを理解しているのだろう。

「ねぇ、あたしたち王命で召集されてるらしいんだけど、知ってる?」

「はい、もちろんでございます!外出されていたということは機械技師のリオ殿からお伺いしておりました。戻り次第召集せよとのことです!」

リオの言った通りだ。疑っていたわけではないが、ついでに行き方を聞きたかったためだ。

「今回遅れていくわけなんだけど、なんか特別にすることある?」

「いえ、通常と同じで問題ございません。まずは王城まで赴き、城門の兵士にお名前をお伝えください。ただ、お名前をおっしゃられなくても兵士はわかると思いますが」

少し笑顔で兵士がそう答える。その笑顔には、尊敬など別の念が込められている気がした。兵士には名前を言わなくてもわかる、その言い分からあたしの名前がそれだけ知れ渡っていることが伺える。

「ありがとう」

そう言うとアモンがギアカーを出発させて王城に向かう。

王城前につくと、城門の兵士が先ほどの兵士と同じような反応をし、その後すぐに別の兵士に何かを命令して、自分自身はあたしが目の前にくるまで直立不動の姿勢をとっていた。

「ねぇ」

「は、ヴェルヴェット様!お待ちしておりました!」

「あ、え?あ、はい」

またもよくわからない返事を返してしまうが、兵士はそれを意に返さずビシッと敬礼をした後に王城に入るように促す。

仲間たちとの同行は許可されていないようだ。許可されていないというより、元々今回はヴェルヴェットに対しての召集命令とのことだったので素直に応じる。仲間たちには王城の外で待っててもらう。

連れられて王城に入っていき、前回と同じように武器を兵士たちに預ける。最初は武器を預けることにそわそわしたが、前回の王命と報酬受け取りを合わせて3回目だ。そろそろ慣れてきた。

王の間の大きなドアが開かれる。そこには王や騎士、兵士が連なっており、そしてフリードリッヒ・テクノバーグが立っていた。その近くには豪奢な服を着ている男がと女がいた。

これはどういうことだろうか、疑問に思いつつ王の前まで行き、ひざまずく。

「ヴェルヴェットよ、よくぞ来てくれた。忙しいところすまいないな」

「い、いえ。問題ありません」

果たしてこの返しが正しいマナーなのかわからないが、考える間を作るのも失礼と思い即答する。しまった、またマリアに交代してもらうのを忘れていたと少し後悔する。

「外に出ていたとはいえ、兵士や街の者たちから聞いていよう。聖王国が今、魔王軍の大軍に侵攻を受けているのだ。我がメカストリアは聖王国とは仲が良くはない。しかしながら、邪悪なる悪魔と戦っているのに援軍を出さないというわけにはいかない。なぜなら、魔王軍を滅ぼすことが我々人間の安寧をもたらすために必要な事だからだ。

先ほど聖王国の使者も来た、我々は最終準備が出来次第すぐにでも軍を結成して援軍に向かう。そこでだ、ヴェルヴェット、お前を援軍に向かう軍隊の初動の攻撃部隊、つまり突撃部隊の総指揮官に任命する」

衝撃を受けた。総指揮官?この間の調査の時もリーダーにはなったが、結局何もない事を確信してごろごろして、部下からくる報告に適当に相槌を打っていただけだ。

それが今度は他国の援軍の突撃部隊の総指揮官、できる気がしない。

「あの、王様…ちょっとあたしにそういうのは…」

「できないと申すか?いや、できるはずだ。私は前回の調査隊の報告を受けている。

まさに天使のような所業を行ったという事じゃないか。そしてその超絶なる神聖魔法。

開幕の一手としてこれ以上の適任はいない。それに使者は確かに来ているが、現地はおそらく混乱状態になっているだろう。もしかしたら他国が悪魔の侵攻の混乱に乗じて攻めてきたと思われるかもしれん。

もちろんそんなつもりは毛頭ないが、それだけ聖王国は混乱状態になっているだろうという事が予想される。

だからお前なのだ。その超絶なる神聖魔法を開幕の一撃とすれば、悪魔たちはひるむだろう。

そしてその者が突撃部隊の総指揮官として駆けつければ聖王国の騎士や神官、民たちも、さらにはこちらの士気も上がる。そしてその姿を大衆に晒せば聖王国の多くの者たちは間違いなく天使だと、助けに来てくれたものだと信じるだろう。混乱も最小限になるというものだ」

確かに、王の言っている事は全て理にかなっている。

自国の被害の最小化、聖王国の士気の上昇、混乱の沈静化。これ以上ないというくらいの策に感じる。そして思いもよらず自分たちの思惑とも完全に一致していることに気づく。

—ヴェルヴェット、大勢の味方を率いて私たちの姿を眼前の者たちに晒せば聖王国の民たちはきっと私たちのことを神や神の使いだと思うでしょう。民たちの心を完全に掌握できれば神官たちが何をやっても民意を無理やりねじ伏せることは叶わないでしょう。

これは…完璧な作戦だ。心の中でマリアと二人でニヤリと笑い、王に堂々と返事をする。

「わかりました、あたしが突撃部隊の隊長になります」

「いや、総指揮官なのだが…まぁいい。拝命の意として受け取ろう」
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