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設立編
—第44章:聖王国の崩壊
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—ヴェルヴェット、やりましょう!
マリアが叫ぶ。
「ええ、全開よ。ありったけをぶち込むわ!」
狙いは王城の外側に大量に飛来している悪魔達、マリアと共に全神経を集中させる。
—その光は、敵の悪を洗い流し、正義の名のもとに、全てを浄化せん。我が心に宿る光をもってこの地に新たな希望をもたらすために
体が徐々に光を放ち始めると、周囲の空気が震え、神聖なオーラが満ちていく。まるで天の意志が具現化するかのように、その羽は初めは小さく、柔らかな光を帯びていたが、瞬く間にそのサイズが増し、輝きは一層増していく。
その羽は優雅に広がり、神秘的な光の粒子を撒き散らしながら、徐々に分かれていく。周囲の景色がその光に照らされ、まるで天国の一端がこの場に降り立ったかのような雰囲気が漂う。次第に、2枚だった羽が壮大な6枚の羽に変化していく様は、まさに神々の降臨を思わせる。
六枚の羽は、体の周囲に大きな半円を描き、天使の神聖さと力強さを象徴するかのように輝く。その羽は光のラインで織り成され、まるで星々が集まり、一つの神聖な存在を形成しているかのようだ。見る者すべてが、その壮麗な姿に心を奪われ、静寂が広がる。
羽が完全に開き切ると、その瞬間、周囲に神聖なエネルギーが満ち、空間が震え、まるで天からの祝福が降り注ぐかのように、その姿は戦う者たちに希望と勇気を与える。
イメージした魔法は一致していた、かつて森の入り口で下位のヘヴンズ・シャワーだと思い放った上位魔法のセラフィム・レイン。それを最大級の力で超位魔法として打ち込む、その名は。
「アポカリプス・レイン!」
—アポカリプス・レイン!
放たれた魔法はまさに雨であった。
いや、正確には光の雨だ。ヴェルヴェットの体から四散した光の雨が城壁にいる悪魔達に降り注ぐ。
降り注いだ雨はそのまま悪魔達を貫通し、さらに下に落ちていく。複数の雨に貫かれた悪魔達はそのまま灰になって消えていく。
そう、この雨はただの水ではない。それは神聖なエネルギーを宿した雨滴であり、触れればたちどころに死に直結する悪魔達にとって猛毒の雨となって降り注ぐ。
しばらくした後、ヴェルヴェットの体から放たれる雨は止み、城壁に蔓延っていた悪魔達は一匹残らず消え失せていた。
その光景を見た聖王国の騎士や神官、民達は驚愕の表情を浮かべていた。
「おお、神よ…我々を救いにきてくださったのですね…」
まず神官が両手を握り締め、その光景を前に膝をつく。続けるように騎士、そして民達が全員ひれ伏す。
それを神々しい姿で見下ろして大きな声を上げる。
「まだ悪魔はいる!皆立ち上がれ!悪魔どもを根絶やしにしろ!」
その声と同時に突撃部隊が城押し寄せる。それを見た聖王国の者達は歓喜に震え、雄叫びをあげる。
しかし、一番驚いたのはヴェルヴェットであった。
「え、なにその格好?」
援軍に来た突撃部隊が背負える天使の羽の機械を装備しているのだ。つまり部隊全員に羽が生えているということだ。こいつらは正気なのか?どこをどうしたらそのようになるのか。
<<僕たちの部隊は突撃部隊だけど、聖王国の人たちが混乱しないようにって話があったと思うから、それについても案を考えておいたよ>>
唐突にリオの言ったことが頭に浮かぶ。
「ああ…!」
そういうことか、これは聖王国の人たちが混乱しないようにする対策なのだ。やっと理解ができた。しかし…
—醜悪ですね…
非常に深い感情のこもった声で、侮蔑の言葉をマリアが発する。
「言いたいことはわかるけど、もうアポカリプス・レインは打たないからな!」
「ぐぬぬ」といったマリアの声が聞こえてくる。感情的にはわかる。非常によくわかる。最初はあたしも馬鹿にされたかと思った装備だし、マリアにいたっては自分が崇拝していた神そのものを侮辱するに等しい行為だ、これは怒る。
しかしこちらの考えとは裏腹に聖王国は神官を含めて感動に涙を流している。一種の興奮状態ということか。この場は突撃部隊に任せてこの流れのまま一気に勝負をつけてしまおう。そう思い、城内に侵入する。
割れたガラスから場内の教皇の間に突入する。
「遅かったか…」
そこには神官と騎士、そして教皇と思われる者が転がっていた。
—そんな…教皇様…
さすがのマリアも声を失っているようだ。周囲を見渡していると見覚えがある顔があった。自分が追い出される元凶となったロキ司祭だ。しかしもうすでに骸となっていた。
他にもただの神官とは違う豪奢な服をきた神官達が皆倒れ伏していた。
「マリア、この神官達は…」
—ええ、皆、位の高い神官達です。教皇様を守るために集まっていたのでしょうか、もしくは…
それ以上は言わなかったが、言わなくてもわかる。
つまり教皇のところに避難していたのだ、他の神官や騎士達が命を賭して戦っていたのに自分達だけが隠れていたのだ。
「教皇さんは気の毒だけど、他の者達は自業自得ね」
もともとマリアからは教皇は高齢でもうずっと寝たきりの状態だと言われていたので仕方ないとも言える。しかしそれ以外のロキ司祭を含む高位の神官達は当然の報いだ。
マリアが叫ぶ。
「ええ、全開よ。ありったけをぶち込むわ!」
狙いは王城の外側に大量に飛来している悪魔達、マリアと共に全神経を集中させる。
—その光は、敵の悪を洗い流し、正義の名のもとに、全てを浄化せん。我が心に宿る光をもってこの地に新たな希望をもたらすために
体が徐々に光を放ち始めると、周囲の空気が震え、神聖なオーラが満ちていく。まるで天の意志が具現化するかのように、その羽は初めは小さく、柔らかな光を帯びていたが、瞬く間にそのサイズが増し、輝きは一層増していく。
その羽は優雅に広がり、神秘的な光の粒子を撒き散らしながら、徐々に分かれていく。周囲の景色がその光に照らされ、まるで天国の一端がこの場に降り立ったかのような雰囲気が漂う。次第に、2枚だった羽が壮大な6枚の羽に変化していく様は、まさに神々の降臨を思わせる。
六枚の羽は、体の周囲に大きな半円を描き、天使の神聖さと力強さを象徴するかのように輝く。その羽は光のラインで織り成され、まるで星々が集まり、一つの神聖な存在を形成しているかのようだ。見る者すべてが、その壮麗な姿に心を奪われ、静寂が広がる。
羽が完全に開き切ると、その瞬間、周囲に神聖なエネルギーが満ち、空間が震え、まるで天からの祝福が降り注ぐかのように、その姿は戦う者たちに希望と勇気を与える。
イメージした魔法は一致していた、かつて森の入り口で下位のヘヴンズ・シャワーだと思い放った上位魔法のセラフィム・レイン。それを最大級の力で超位魔法として打ち込む、その名は。
「アポカリプス・レイン!」
—アポカリプス・レイン!
放たれた魔法はまさに雨であった。
いや、正確には光の雨だ。ヴェルヴェットの体から四散した光の雨が城壁にいる悪魔達に降り注ぐ。
降り注いだ雨はそのまま悪魔達を貫通し、さらに下に落ちていく。複数の雨に貫かれた悪魔達はそのまま灰になって消えていく。
そう、この雨はただの水ではない。それは神聖なエネルギーを宿した雨滴であり、触れればたちどころに死に直結する悪魔達にとって猛毒の雨となって降り注ぐ。
しばらくした後、ヴェルヴェットの体から放たれる雨は止み、城壁に蔓延っていた悪魔達は一匹残らず消え失せていた。
その光景を見た聖王国の騎士や神官、民達は驚愕の表情を浮かべていた。
「おお、神よ…我々を救いにきてくださったのですね…」
まず神官が両手を握り締め、その光景を前に膝をつく。続けるように騎士、そして民達が全員ひれ伏す。
それを神々しい姿で見下ろして大きな声を上げる。
「まだ悪魔はいる!皆立ち上がれ!悪魔どもを根絶やしにしろ!」
その声と同時に突撃部隊が城押し寄せる。それを見た聖王国の者達は歓喜に震え、雄叫びをあげる。
しかし、一番驚いたのはヴェルヴェットであった。
「え、なにその格好?」
援軍に来た突撃部隊が背負える天使の羽の機械を装備しているのだ。つまり部隊全員に羽が生えているということだ。こいつらは正気なのか?どこをどうしたらそのようになるのか。
<<僕たちの部隊は突撃部隊だけど、聖王国の人たちが混乱しないようにって話があったと思うから、それについても案を考えておいたよ>>
唐突にリオの言ったことが頭に浮かぶ。
「ああ…!」
そういうことか、これは聖王国の人たちが混乱しないようにする対策なのだ。やっと理解ができた。しかし…
—醜悪ですね…
非常に深い感情のこもった声で、侮蔑の言葉をマリアが発する。
「言いたいことはわかるけど、もうアポカリプス・レインは打たないからな!」
「ぐぬぬ」といったマリアの声が聞こえてくる。感情的にはわかる。非常によくわかる。最初はあたしも馬鹿にされたかと思った装備だし、マリアにいたっては自分が崇拝していた神そのものを侮辱するに等しい行為だ、これは怒る。
しかしこちらの考えとは裏腹に聖王国は神官を含めて感動に涙を流している。一種の興奮状態ということか。この場は突撃部隊に任せてこの流れのまま一気に勝負をつけてしまおう。そう思い、城内に侵入する。
割れたガラスから場内の教皇の間に突入する。
「遅かったか…」
そこには神官と騎士、そして教皇と思われる者が転がっていた。
—そんな…教皇様…
さすがのマリアも声を失っているようだ。周囲を見渡していると見覚えがある顔があった。自分が追い出される元凶となったロキ司祭だ。しかしもうすでに骸となっていた。
他にもただの神官とは違う豪奢な服をきた神官達が皆倒れ伏していた。
「マリア、この神官達は…」
—ええ、皆、位の高い神官達です。教皇様を守るために集まっていたのでしょうか、もしくは…
それ以上は言わなかったが、言わなくてもわかる。
つまり教皇のところに避難していたのだ、他の神官や騎士達が命を賭して戦っていたのに自分達だけが隠れていたのだ。
「教皇さんは気の毒だけど、他の者達は自業自得ね」
もともとマリアからは教皇は高齢でもうずっと寝たきりの状態だと言われていたので仕方ないとも言える。しかしそれ以外のロキ司祭を含む高位の神官達は当然の報いだ。
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