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魔車
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「あれは魔車と言う魔物です」
「魔車? 魔物?」
「魔車根を知っていますか?」
あれから周辺を探索し倒れていた人を見つけたので薬をかけて回復し話を聞く。
あの時飛び跳ねていた木は魔車根が成長して成獣になった姿だと言う。
魔車根、早く成長する魔物用の餌じゃなくて魔物だったのね…。
便利なのにうちの国では見掛けないなと思ってたら、取り扱いを間違えると大変なことになるから禁止してたのかも知れないな。
この国の西側にある国で大規模災害起こり、穀物がわりに魔車根を植えて食い繋ごうとしたが収穫する前に飢え死にして放置された物が成長したのがあの森らしい。
魔車は魔力や水を求めて移動する習性があり、その時に普通の木を纏って盾に使うのだとか。
そんな危険な物はみんな燃やしてしまえとしか思えないが食えずに餓死することを考えると残しておきたくなるのかも知れない。
森へ行き魔車の成獣じゃないかと思われる何本かを収納した後、砂漠の国の首都に水のワイバーンのまま入り兵士と思われる連中にこのことを話す。
信用されてないみたいだし、なんか捕まえようとする気配が有ったので飛び立った。
その隣の国の首都で城に直接降りて王様から貰った身分を明かす硬貨を見せながら話したら、こちらは一応半分くらい信用してくれた。
現物が有るからと見せたら本気で対策してくれると言うのでどうにかなるかも知れない。
「陛下へ取り次ぎを!」
自国の城に直接降りる。
それなりに通ってるので顔見知りも多く理由も聞かずに走ってくれた。
「何があった? いつになく慌ててるが」
「魔車の成獣が森を作ってこの国に向かってくる」
「本当か?! どこで見た!」
「砂漠の国の首都を越えて進んだ先で王都の5倍くらい有る森を見た」
顔見知りの騎士と話す。
魔車が魔物だと知っているのか。
「魔車根はこの国でも栽培してたりするの?」
「見付かったら捕まるな」
「やはりか」
「この国は何故か他の国よりも魔力が多くてな、数日で成長してしまうから管理が難しいんだよ」
そんな事情があるのか…。
魔力を求める魔車がこちらに向かってるのってそれが原因?
*
お付きの人が迎えに来たので後に着いて王のいる部屋へ入る。
「こんなに早く戻ってくるとはね、緊急かい?」
「魔車の森がこちらに向かって動いています」
「なんと…」
「どの辺りで見たか」
「砂漠の国の首都より西へ飛竜で3時間くらいの場所です」
「砂漠の国には伝えたか?」
「誰に話せばわからなかったので兵士に話しましたが信用されてないと思います。隣の国では城に直接乗り込み魔車の成獣も見せたおかげで一応警戒してくれるそうです」
「そうか」
王の他にも数人居る。
魔物処理に付き合ってくれた騎士団長や魔法師団長とその部下、あとは会ったことない人、大臣だろうか?
「魔車の成獣らしき物を収納してきましたが見ますか?」
「そうだな…。まだ昼だし訓練場で良いか。動き出したら収納しろよ。あとは念の為騎士の用意を」
昼だと何かあるのか?
「魔車を知らないのか?」
「ええ」
「魔車は夜に動く、明るい昼は眠っていて動かないことが多い」
「なら昼のうちに叩けば良いのでしょうか?」
「騒いだら起きるから変わらん、先攻が取れるだけの話だ」
そういや俺に向かって跳んで来たな。
*
魔車の成獣らしき物を横に倒した形で出す。
う~ん、ただの木にしか見えないな。
「間違いないですね」
「かなりの大物だなこれは」
出しただけで騎士団長たちはわかった。
どこで見分けたのか分からん…。
「仕留められるか」
「お任せを、根が見えるので簡単です」
根っこの付け根らしきところに剣を突き刺すと、木が震えて葉が散り動かなくなった。
「魔車は急所を突くことで仕留められるのです」
4階建ての家よりも大きな木を簡単に倒すものだなぁ、流石だ。
「アベル殿が居れば魔車もただの素材ですな」
「気が付かれないよう穴を掘り核を見つけ出す作業はもうしたくないですね」
「動き出したら何も出来ませんしね」
寝かせたから楽だったけど立って走ってる状態で付け根に剣を突き入れるのは無理だろうな。
普通なら前に出ない以外の選択肢がない気がする。
湖への通り道街があったのか街を狙ったのかは知らないけれど、壁も建物も壊されていたのを見ているから恐ろしさはわかる。
「素材として使えるなら何本か有りますし追加で出しましょうか?」
「明日から頼む。今日はこれの切り分けと保存場所を決めておこう」
「そうですか」
なんか魔法使いさんたちがいつになく張り切ってるし、魔法素材なのかな?
「お前は…城に部屋を用意するのでそこで安め」
「わかりました」
街に出て留学予定のお姫様に会ったらまずいしね。
*
「城の部屋ってここかぁ…」
「ここなら空いてる部屋はいっぱいありますからなぁ」
城の地下に来ている。
ここは死んだはずの子爵家の者がスキルを魔法にする研究をしている。
侯爵家の方が乗っ取り騒ぎで資料も被験者も無くなったので子爵家の人間を失うわけにも行かなくなった陛下に言われてここに運び込んだんだ。
今思うと十分汚れ仕事ような気もするが、周りに知られないなら問題ないということなのだろうか。
その時々で適当なこと言ってるわけじゃないよな?
「王都に居る隣国の姫と確実に会うことのない部屋ではあるけれどさぁ」
「ささ、収納を見せて見せて」
ここに来ると実験動物のような気がしてくるんだよな…。
陛下は収納庫も含めたスキルの魔法化や魔道具化を周りに知られることなく進めたいらしいんだ。
あと、ここには魔法による攻撃を無効化する方法を研究する部屋も有って、そこで何かしら結果が出るまでは訓練をすれば魔法が使えるようになることを表で広げないと思う。
対処法が見つからないのに魔法使える人増やしたらまずいものね。
せっかく帰ってきたのに、水の精霊に会えないのは少し寂しい。
「魔車? 魔物?」
「魔車根を知っていますか?」
あれから周辺を探索し倒れていた人を見つけたので薬をかけて回復し話を聞く。
あの時飛び跳ねていた木は魔車根が成長して成獣になった姿だと言う。
魔車根、早く成長する魔物用の餌じゃなくて魔物だったのね…。
便利なのにうちの国では見掛けないなと思ってたら、取り扱いを間違えると大変なことになるから禁止してたのかも知れないな。
この国の西側にある国で大規模災害起こり、穀物がわりに魔車根を植えて食い繋ごうとしたが収穫する前に飢え死にして放置された物が成長したのがあの森らしい。
魔車は魔力や水を求めて移動する習性があり、その時に普通の木を纏って盾に使うのだとか。
そんな危険な物はみんな燃やしてしまえとしか思えないが食えずに餓死することを考えると残しておきたくなるのかも知れない。
森へ行き魔車の成獣じゃないかと思われる何本かを収納した後、砂漠の国の首都に水のワイバーンのまま入り兵士と思われる連中にこのことを話す。
信用されてないみたいだし、なんか捕まえようとする気配が有ったので飛び立った。
その隣の国の首都で城に直接降りて王様から貰った身分を明かす硬貨を見せながら話したら、こちらは一応半分くらい信用してくれた。
現物が有るからと見せたら本気で対策してくれると言うのでどうにかなるかも知れない。
「陛下へ取り次ぎを!」
自国の城に直接降りる。
それなりに通ってるので顔見知りも多く理由も聞かずに走ってくれた。
「何があった? いつになく慌ててるが」
「魔車の成獣が森を作ってこの国に向かってくる」
「本当か?! どこで見た!」
「砂漠の国の首都を越えて進んだ先で王都の5倍くらい有る森を見た」
顔見知りの騎士と話す。
魔車が魔物だと知っているのか。
「魔車根はこの国でも栽培してたりするの?」
「見付かったら捕まるな」
「やはりか」
「この国は何故か他の国よりも魔力が多くてな、数日で成長してしまうから管理が難しいんだよ」
そんな事情があるのか…。
魔力を求める魔車がこちらに向かってるのってそれが原因?
*
お付きの人が迎えに来たので後に着いて王のいる部屋へ入る。
「こんなに早く戻ってくるとはね、緊急かい?」
「魔車の森がこちらに向かって動いています」
「なんと…」
「どの辺りで見たか」
「砂漠の国の首都より西へ飛竜で3時間くらいの場所です」
「砂漠の国には伝えたか?」
「誰に話せばわからなかったので兵士に話しましたが信用されてないと思います。隣の国では城に直接乗り込み魔車の成獣も見せたおかげで一応警戒してくれるそうです」
「そうか」
王の他にも数人居る。
魔物処理に付き合ってくれた騎士団長や魔法師団長とその部下、あとは会ったことない人、大臣だろうか?
「魔車の成獣らしき物を収納してきましたが見ますか?」
「そうだな…。まだ昼だし訓練場で良いか。動き出したら収納しろよ。あとは念の為騎士の用意を」
昼だと何かあるのか?
「魔車を知らないのか?」
「ええ」
「魔車は夜に動く、明るい昼は眠っていて動かないことが多い」
「なら昼のうちに叩けば良いのでしょうか?」
「騒いだら起きるから変わらん、先攻が取れるだけの話だ」
そういや俺に向かって跳んで来たな。
*
魔車の成獣らしき物を横に倒した形で出す。
う~ん、ただの木にしか見えないな。
「間違いないですね」
「かなりの大物だなこれは」
出しただけで騎士団長たちはわかった。
どこで見分けたのか分からん…。
「仕留められるか」
「お任せを、根が見えるので簡単です」
根っこの付け根らしきところに剣を突き刺すと、木が震えて葉が散り動かなくなった。
「魔車は急所を突くことで仕留められるのです」
4階建ての家よりも大きな木を簡単に倒すものだなぁ、流石だ。
「アベル殿が居れば魔車もただの素材ですな」
「気が付かれないよう穴を掘り核を見つけ出す作業はもうしたくないですね」
「動き出したら何も出来ませんしね」
寝かせたから楽だったけど立って走ってる状態で付け根に剣を突き入れるのは無理だろうな。
普通なら前に出ない以外の選択肢がない気がする。
湖への通り道街があったのか街を狙ったのかは知らないけれど、壁も建物も壊されていたのを見ているから恐ろしさはわかる。
「素材として使えるなら何本か有りますし追加で出しましょうか?」
「明日から頼む。今日はこれの切り分けと保存場所を決めておこう」
「そうですか」
なんか魔法使いさんたちがいつになく張り切ってるし、魔法素材なのかな?
「お前は…城に部屋を用意するのでそこで安め」
「わかりました」
街に出て留学予定のお姫様に会ったらまずいしね。
*
「城の部屋ってここかぁ…」
「ここなら空いてる部屋はいっぱいありますからなぁ」
城の地下に来ている。
ここは死んだはずの子爵家の者がスキルを魔法にする研究をしている。
侯爵家の方が乗っ取り騒ぎで資料も被験者も無くなったので子爵家の人間を失うわけにも行かなくなった陛下に言われてここに運び込んだんだ。
今思うと十分汚れ仕事ような気もするが、周りに知られないなら問題ないということなのだろうか。
その時々で適当なこと言ってるわけじゃないよな?
「王都に居る隣国の姫と確実に会うことのない部屋ではあるけれどさぁ」
「ささ、収納を見せて見せて」
ここに来ると実験動物のような気がしてくるんだよな…。
陛下は収納庫も含めたスキルの魔法化や魔道具化を周りに知られることなく進めたいらしいんだ。
あと、ここには魔法による攻撃を無効化する方法を研究する部屋も有って、そこで何かしら結果が出るまでは訓練をすれば魔法が使えるようになることを表で広げないと思う。
対処法が見つからないのに魔法使える人増やしたらまずいものね。
せっかく帰ってきたのに、水の精霊に会えないのは少し寂しい。
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