理想とは違うけど魔法の収納庫は稼げるから良しとします

水野(仮)

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予定外

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その日は領都にある自分の家に泊まる。
領主様から竜騎士さんへの手紙を受け取ったのが夕方だったのでそのまま向かっては夜になってしまうから、一泊して早朝に出ることにした。
緊急の用事以外で夜に訪ねるわけにもいかないしね。

「討伐に出て不在ですか」

竜騎士さんは不在だった。
なんでも領地に大規模なオークの巣が見つかったらしく、領軍や傭兵を率いて討伐しに向かったらしい。
自領の村からは離れているが他領との境に近く、そちらにオークの集団が向かったりしては問題になるから早めの討伐が必要だったのだとか。
3日前に出たと言うので今から向かってもあまり役には立てなそうだし、兄弟になったとは言え他領の人間が参加するのもあまり良いとは言えない。円滑な領地運営には領主の力を見せるのが有効だと言われているし、そこに部外者が混ざるのはよろしくないと思う。

うちの領主様に書いてもらった手紙を竜騎士さんの奥さんに渡し、使用人に置き場所の用意をして貰っている間に学校のこととかを話す。
校内で会えば話すものの教室が違うので従姉妹となった彼女の生活についてはそんなに詳しくないので学校行事や教師の話になる。
竜騎士さんの奥さんが通っていた当時と今では変わったこと、その当時から居た教師の話などそれなりに話題は有った。

自宅だけでなく領軍が使用してる倉庫なども空けてもらえ、魔車も含めて素材を全て出すことが出来た。
あとは商会に売っても余りそうなくらいある肉とか海の魚を出した。
この地は他領から王都へ行くときに通る人たちが多く昔から領主一族で保存食を作っているそうで、海の魚での保存食作りに興味が有るのだとか。魚の干物を見せたら迷うことなく味見した奥さんを見て竜騎士さんの選んだ人らしいなと思った。

昼に海の魚を使った料理を食べ、竜騎士さんに軽く手紙を書いてから王都へ帰る。
海の魚を使った保存食が出来た頃にまた来よう。



家に入ると俺に来客があると言う。
誰かが訪ねてくる予定は無いし、何より不在中に家へ入らせて待たせるなんてことをこの家の人たちがするだろうかと疑問に思ったら、相手は精霊らしい。
家に来たことを伝える精霊も居るのかとちょっと驚いてしまう。

「お前、人間を辞めた自覚はあるか?」
「…は?」

離れの庭に居た燃えるような髪色をした青年は俺を見てそう言った。

「水の精霊から何も聞いてい……ないよな、アレは水のくせに風より気紛れだからなぁ」

水の精霊から?

「えと、貴方は?」
「俺は火の精霊、お前の不安を取り除きに来た」

そう言って、火の精霊は目の前から消えた。

「どういっ、ぐっ?!」

そう言うことかよ…。
火の精霊が収納庫の中に入ったのがわかる。

「俺に馴染めば他の精霊に怯えることは無くなるから安心しろ」

それはどう言う…。

「俺よりでかいのはこの星に居ないからな」

身体が力に馴染むってやつか…。

「正確には違うんだがな」

せめて、土に穴を掘るスキルだけは残し…

「起きたら大地の精霊でも入れとけ」



「ここは、俺の部屋か」

火の精霊が収納庫の中に入って来たのは覚えているがそれからどうなった?
花の精霊を収納庫に入れたら数ヶ月くらい寝込むみたいなことを水の精霊が言っていた気がするし、やはりそれくらい寝ていたのか?
花の精霊と比べて火の精霊がどれくらい強いのかは知らないがあの時この星で1番とか言っていた気がするし、同じかそれよりは長く寝込んでいた可能性が有るか。
見た感じ手や身体が痩せたと言うこともないし、実は数時間くらいしか経ってないのではなないか?

…そんなことはないな。

おそらくなんらかの力が働いて食事をしなくても栄養が取れていたのだろう。
それと収納庫は空っぽになっているのが気になる。

「肉と魚はどうしたんだろうな」

結構な量があったはずだ、商会に売っても大量に余るくらいは有った。
それにしてもあの時竜騎士さんのところに魔物素材を置けたのは良かった。
あれが残っていたら離れや庭が大変なことになってたな。

「あ…」

夏季休暇終わってるだろ…。
参ったな、街を作る約束をしてたのに。
どうしたものか。
まだ在学中だったら良いが3年を終了してたら色々と面倒なことになるな。



色々考えていたらドアが開く音がしたのでそちらを見る。同じ歳くらいの女の子が俺の服らしきものを持って入って来たようだ。

「着替えしに来たよ、アベル…様?」

衣装的に使用人ではないよな、誰だ?

「起きてる! 起きた! アベル様起きた!」

起きている俺を見て驚き、持っていた服をその場に落として慌てて出て行った。

それからしばらくして義母が来た。

「おはよう」
「あ、はい。おはようございます」
「体調はどう?」
「特に痛みとかは有りません」
「そう、良かった」

先程の彼女の慌てぶりから実は結構な期間寝ていたのではと考えたりもしたが、義母の様子を見るとそこまで長い期間ではなさそうだな。

「あの、聞いても?」
「何かしら?」
「私は何ヶ月くらい眠っていたのですか?」
「5年半ね」

……なんだそれ。
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