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5.ライルside③
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ユーリアの屋敷に行く前に、周辺の教室に顔を出し、騒がせたことを謝罪してまわった。
自分のした発言の撤回と、今後のユーリアのためにも話を広めないよう頼んだ。
「婚約者のためではなく、自分のためではないのか?」
どの教室でも同じようなことを言われた。否定もできなかった。
ユーリアがそばにいるのが当たり前になりすぎて、本人のいないところでお先真っ暗だなんだと暴言を吐くなんて、本当にどうしようもない。自分の失言の数々にため息がでる。大切にしていたつもりだった。そう、つもりでしかなかったんだ。きちんと向き合っていれば、あんな言葉を軽口でも言うことはなかっただろうに。
リード侯爵と初めて婚約前の顔合わせをした際のことを思い出す。値踏みするように見られ、多くの質問をされた日のことを。
『ライル君。ユーリアは、私の大切なたった一人の娘だ。我が家の事業や領地経営に関しては娘が学んでいる。婿にくる人にもある程度は学んでもらわねばならないが、ユーリアは親の欲目でなく優秀だからその点については心配しなくていい。娘とともに領民を守り、時に助け合い、この家を守っていける器をもっているか。その覚悟は持ち合わせているのか、だ。』
正直、10歳にも満たない自分に何を求めてくるんだと思った。けど外面だけは幼いながら繕えたから、真面目に答えて認めてもらえた。父が見つけてくれた良縁を、逃してはならないとも思っていたから。実際、これで成人後も貴族でいられるのだ。いかに自分が甘い考えを持っていたのか。自分より年下の彼女が認められているのに、自分は何をしていたのか。
殴られても、拒絶されても、謝罪し続けよう。
彼女のそばにあり続けるために。
その後、先ほどの騒ぎに気づいた教師も来ていて、改めて経緯を説明することになり時刻も20時を回ろうとしていた。今からユーリアの屋敷に行くのは非常識だとわかっていたが、今すぐ行かなくては。
「ライル様、旦那様より今すぐ自邸に戻るようにとの伝言を預かっております。大切な話があるとのことでした。まずはお戻りください。」
迎えの魔道車に乗り込み、運転手にリード侯爵邸に向かって欲しい旨を伝えると、父上からの呼び出しが入っていた。
ユーリアに早く会いたいこのタイミングで、やめて欲しい。いや、このタイミングであるのは、もしかして・・。
「おかえりなさいませ、ライル様。旦那様より戻り次第、至急第一応接室に来るようにとのことです。お急ぎください。」
「応接室?客人が来ていたのか。わかった、すぐに行く。話が終わり次第、リード家に行きたいんだ。すぐ出られるよう準備だけしておいてくれないか。」
と執事に伝え、急いで応接室へと向かう。
・・コンコンコンッ。
「ライルです。お呼びと伺い参りました。入室の許可をお願いします。」
「はいれ。」
「失礼します。ただ今戻りました・・。」
入室すると、室内には父上だけではなかった。
母上と、そして・・・
「・・リード侯爵。」
ユーリアの父、リード侯爵本人がその場にいたのだった。
自分のした発言の撤回と、今後のユーリアのためにも話を広めないよう頼んだ。
「婚約者のためではなく、自分のためではないのか?」
どの教室でも同じようなことを言われた。否定もできなかった。
ユーリアがそばにいるのが当たり前になりすぎて、本人のいないところでお先真っ暗だなんだと暴言を吐くなんて、本当にどうしようもない。自分の失言の数々にため息がでる。大切にしていたつもりだった。そう、つもりでしかなかったんだ。きちんと向き合っていれば、あんな言葉を軽口でも言うことはなかっただろうに。
リード侯爵と初めて婚約前の顔合わせをした際のことを思い出す。値踏みするように見られ、多くの質問をされた日のことを。
『ライル君。ユーリアは、私の大切なたった一人の娘だ。我が家の事業や領地経営に関しては娘が学んでいる。婿にくる人にもある程度は学んでもらわねばならないが、ユーリアは親の欲目でなく優秀だからその点については心配しなくていい。娘とともに領民を守り、時に助け合い、この家を守っていける器をもっているか。その覚悟は持ち合わせているのか、だ。』
正直、10歳にも満たない自分に何を求めてくるんだと思った。けど外面だけは幼いながら繕えたから、真面目に答えて認めてもらえた。父が見つけてくれた良縁を、逃してはならないとも思っていたから。実際、これで成人後も貴族でいられるのだ。いかに自分が甘い考えを持っていたのか。自分より年下の彼女が認められているのに、自分は何をしていたのか。
殴られても、拒絶されても、謝罪し続けよう。
彼女のそばにあり続けるために。
その後、先ほどの騒ぎに気づいた教師も来ていて、改めて経緯を説明することになり時刻も20時を回ろうとしていた。今からユーリアの屋敷に行くのは非常識だとわかっていたが、今すぐ行かなくては。
「ライル様、旦那様より今すぐ自邸に戻るようにとの伝言を預かっております。大切な話があるとのことでした。まずはお戻りください。」
迎えの魔道車に乗り込み、運転手にリード侯爵邸に向かって欲しい旨を伝えると、父上からの呼び出しが入っていた。
ユーリアに早く会いたいこのタイミングで、やめて欲しい。いや、このタイミングであるのは、もしかして・・。
「おかえりなさいませ、ライル様。旦那様より戻り次第、至急第一応接室に来るようにとのことです。お急ぎください。」
「応接室?客人が来ていたのか。わかった、すぐに行く。話が終わり次第、リード家に行きたいんだ。すぐ出られるよう準備だけしておいてくれないか。」
と執事に伝え、急いで応接室へと向かう。
・・コンコンコンッ。
「ライルです。お呼びと伺い参りました。入室の許可をお願いします。」
「はいれ。」
「失礼します。ただ今戻りました・・。」
入室すると、室内には父上だけではなかった。
母上と、そして・・・
「・・リード侯爵。」
ユーリアの父、リード侯爵本人がその場にいたのだった。
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感想をお寄せくださり、ありがとうございます!励みになります。
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書くスピードは遅いですが、完結はできるよう頑張ります!
ありがとうございました(^ー^)
面白いです!続きが楽しみです!
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