一般人の関ヶ原〜すぐに知ったかぶりする俺が西軍を勝たせようと決心した結果どうなるかというお話〜

とんぼ

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江戸潜入!

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追分に着く。
ここは中山道と北国街道の別れ道にあたる宿場町だ。

ここで前田さんの娘さんと待ち合わせをしている。

「こちらの方が少し早かったようですね」
紫乃さんが辺りを見渡す。

「腹減ったー!何か食おうぜ」
小次郎が先に立って歩き出す。

「…」
すずは辺りを窺っている。

「どうした?すず?」
俺が声をかけてもすずは険しい顔のままだ。

「敵意を感じる…」
すずが呟く。

「敵意って…」

「おーい!何してるんだよ?置いてくぞ!」
小次郎が大声で呼ばわる。

「すず。とにかく行こう」

「はい…」
すずは辺りを気にしながらも渋々ついてきた。

4人でご飯を食べていても相変わらずすずは落ち着かない様子だ。

「俺は何も感じねぇなぁ」
小次郎は口一杯に飯を頬張って辺りを見渡す。

「ええ。私も…」
紫乃さんはお茶を啜りながら小次郎に同意する。

「気のせいじゃないのか?」
俺が言ってもすずは首を左右に振る。

何だかもやもやした気持ちでご飯を食べ終わり町をぶらぶらしていると、いつの間にか人気のないところに来ていた。町外れなのだろう。

「戻ろうか」
俺が言った瞬間だった。
すずが俺に突進して来る。

すずに押し倒されるように俺は地面に転がる。

「すず!?どうした?…あっ!」
先ほどまで俺が立っていた場所にクナイが刺さっている。

すずはすぐに小太刀を抜いて姿勢を低くする。

小次郎と紫乃さんもすでに武器を構えていた。

「こら!才蔵!」
建物の影から2人現れる。

「あ!信繁さん?…と才蔵!」
そう。そこにいたのは真田信繁さんとくノ一才蔵だった。

「いやぁ。ごめんごめん!一瞬目を離した隙に見失って」
信繁さんは才蔵のポニーテールに結った髪の毛を掴んでぶら下げるように持っている。
才蔵は恨めしげに俺とすずを睨んでいる。

…何でこいつはこんなに俺とすずを目の敵にしてるんだ?

「それで信繁さん。何でこんなところに?」

「あれ?聞いてない?義父から頼まれて才蔵を連れてきたんだけど…」
信繁さんはおや?という顔をする。

「ちちって?昌幸さん?」

「いやいや。うちの嫁さんのお父さん。大谷刑部のことだよ」
信繁さんは笑顔で言う。

「ええ!?大谷さんと信繁さんて親戚なんですか?」

「そうだよー!大坂城にいた頃に知り合って。よくしてもらったんだ。その義父が太助に才蔵を貸してやってくれってさ。何でも江戸に潜入するんだって?楽しそうだねぇ。行きたいなぁ」

信繁さんはやたら楽しそうだ。
ぶら下げられた才蔵は相変わらずこちらを睨んでいる。

「じゃあ、これ貸すね!返すのはいつでもいいから」
そう言うと信繁さんは掴んでいた才蔵の髪の毛をぱっと離す。
才蔵はストンと地面に降り立った。

「じゃあ、才蔵?私は帰るけど、くれぐれも太助の言う事を良く聞くんだよ?そうしないともう上田には入れないからね」
信繁さんの言葉に才蔵はうんともすんとも言わない。

「い い ね ?」
信繁さんが再度確認すると才蔵は渋々頷いた。

信繁さんはそんな才蔵に一つ頷くと俺達に手を振って走り去って行った。

「すずが殺気を感じていたのはこれだったのか」
小次郎は才蔵を親指で指す。

「でもなんで私と小次郎ちゃんにはわからなかったのかしら…」
紫乃さんが首を傾げる。

「恐らく、才蔵が殺気を放つのが私とお兄ちゃんに対してだけだったからです」
すずが才蔵を睨みながら言う。

「ふん。いつか殺す」
才蔵もすずを睨みつけて言う。

「ま、まぁ、とにかく信繁さんの好意だからさ。みんな仲良くやろうよ!よろしくね!才蔵!」
俺が手を出すと才蔵はその手をじっと見てから顔を逸らした。

「別に貴様と仲良くしろとは言われておらん。馴れ馴れしくするな…用があったら呼べ」
才蔵はそう言うとどこかに行ってしまった。

「変な奴だなぁ」
小次郎は鼻を穿りながら言った。

…でも、顔はめちゃくちゃ可愛いんだよな。

「何か言った?お兄ちゃん…」
すずにジロリと見られて俺は慌てて首を横に振った。



夕方に無事前田さん家の娘さんと合流できた。
10歳くらいの女の子で、よくまぁこんな幼い娘をこんな危険な旅に。と思ってよく聞いたら家臣の娘を自分の娘に仕立てて江戸入りの手引きをするということであった。

…前田さん目的のためには手段を選ばないタイプですか…サイコパスすぎません?

俺はその話を聞いてこの娘だけは命に変えても守らなければならないと思った。

前田家の娘がお祖母様である芳春院に会いに行くということで何の問題も無く江戸に入れた。 
見た目の怪しい才蔵は列には加わらなかったが宿場に着くとどこからか現れて飯を手にするとまたどこかに消えていった。

江戸の芳春院さんの宿舎はお寺だった。
芳春院さんは孫娘を一目見て何か裏事情があると悟った。
それはそうだ。見も知らぬ娘が孫娘だと言って訪れたのだ、只事ではない。

「何が目的じゃ?」
芳春院さんは自称孫娘を部屋に戻らせた後に話を切り出した。

「はい。芳春院様を江戸から逃がすために参りました、この件は前田様も了承しています」
俺が頭を下げて言うと芳春院さんは
「江戸は出ぬ」
と即答する。

「いや、しかし。芳春院様が江戸にいる限り前田様は徳川に頭があがりません」
「だからです。内府殿に逆らうべきではありません」
俺の言葉に芳春院さんは即座に反論する。

「家が大事だからですか?」
「当たり前です。利家様が字のごとく血を流して築き上げた100万石です。一時の感情で失うのは愚の骨頂です」
芳春院さんの言葉には淀みがない。

「確かにその通りです…しかし…前田様の気持ちはどうなりますか?戦国に生まれた男として。家を守るために自分を殺し母を差し出す屈辱…」
「そ…それは…家を守るため…」
芳春院さんが言い淀む。

「利家様はどうでしたか?常に得する方を選びましたか?時には危険な方に立ち向かい、その結果が今の100万石なのではありませんか?」
俺の言葉に芳春院さんは目を閉じる。

「確かに。利家様は無鉄砲で、信長公にも楯突いて。柴田様からも何度も叱られ。太閤殿下には追い越され。それでも何度でも立ち上がり直して今の前田家を作られた…」
芳春院さんはそこで息をひとつ吐く。

「いけませんね。家だなんだと言って結局息子が可愛いのです。でも、貴方の言う通りかもしれない。もしここで間違えて全てを失ってもまたやり直せばいい。利家様のように…」
芳春院さんは顔を上げる。

「江戸を出ます。手伝いなさい」
芳春院さんは笑顔でそう言った。
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