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席替え大作戦③
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「さて、どうしたものか」
私は腕組みをしながら、さながら名探偵にでもなった気分で思考を巡らす。
まず倉敷くんならどこを選ぶだろうか、彼の特性から考えていこう。
倉敷くんは私といる時はすごく喋ってくれるけど、本来彼は大人しいタイプのハズ。もし目立つタイプだったら、あの痴漢事件の時から倉敷くんのこと知ってたハズだもんね。……そんな倉敷くんが、あんな満員電車で声を出して助けてくれたなんて、思い返しただけで惚れ直しちゃうキャーーー!
……はっ! ダメダメ今はそんな事を考えている場合じゃない! なんだっけ……、そうだ。倉敷くんは俗に言う『陽キャ』といった部類ではないと思うの。
陽キャとはスクールカーストの高い部類の人たちで、クラス内や学年内、果ては学校内に置いて発言権が強い人たちのこと。クラスの中心人物や中心グループに属してると言われる人たちは、大体この陽キャだと思う。
陽キャの対をなす存在が『陰キャ』と言われる人たち。この人たちはスクールカーストの低い人たちのことで、基本的にクラス内でも物静かで、独自のコミュニティを形成している場合が多い。倉敷くんはどちらかと言うと陰キャの部類だろう。いや悪口ではなくて。
私自身もあまりに派手な人たちや、底抜けに楽しそうな人たち——所為『陽キャ』と言われる人たちと、特別仲が良いわけではない。普通にお話したり、友達になったりはするけど、グループに属したりはしない。私の目つきはカーストトップも狙えると言われるが、それ別の意味だから嬉しくないし……。
だから倉敷くんの様に、物腰が落ち着いている人の方が一緒にいて安心する。穏やかで和やかで、優しい時間を味あわせてくれる。だから私は、倉敷くんにドンドン惹かれていくんだろうな。ハァ……好き……。
「おーい、栞里チャーン」
「——……はっ! また時空に飛んでた……」
「早くしないと、席取られちゃうよ?」
「えっ!?」
周りを見渡すと、先ほどまで頭を悩ませていた一部の女子たちは行動を開始していた。ここでも暗黙の了解として、スクールカーストトップ層の女子グループが先に席を選び始めている。
「あ~。あの子たちは、やっぱり窓際の一番後ろらへんを陣取ったね」
「まぁ、これはある意味予想通りよねぇ」
クラス内の席に置いて、一番人気が高いのは『教室内の上座』と言われる窓際の最後尾である。言い方を悪くすると、不真面目な生徒は後ろの席に行きたがり、そして陽キャと言われる人たちは不真面目な生徒が多い。もちろん、中には真面目な者もいるが、相対的に見て……だ。
だからこそ、あのカーストトップ層の女子グループも、中の良い陽キャ男子たちが窓際の後ろ席を陣取っていると思ったのだろう。しかし、
「お前らは固まると授業中に絶対騒ぐから、いくらかバラけろ」
「えーっ」
これも予想通り。先生があのグループのままを許すハズがない。おそらく男子にもそれを言っているだろう。さっき廊下で待っている時、誰かが先生の声もすると言っていたのはそのためだと思う。
と言うことは、何人かの陽キャ男子は窓際の最後尾席を確保し、他の陽キャ男子は違う列の最後尾周辺にいると思って良いだろう。あの陽キャ女子たちも同じ様に他の列の最後尾を確保しだした。
これで倉敷くんの残る可能性は真ん中から一番前の席のどれか。よし、絞れてきた!
次に動くのはスクールカースト真ん中のグループ……ではない。これはカテゴリ分けが難しいが、あえて言うなら『真面目グループ』だ。この層は授業を如何にちゃんと受けられる環境を整えるかに注力している。先ほど先生が言っていた『不満の声』の正体も彼ら彼女らだろう。
じゃあなんで真面目グループが陽キャの次に動くのか。それは彼らの意思が交わることはないからだ。先に動く——その一点を陽キャに譲りさえすれば、先生にほど近い前方の席を選ぶ者なんて、真面目グループ以外ありえない。
ここまでの予想は調子良いぞ私。しかしここで一つ問題がある、……倉敷くんはどっちだろう! いや、倉敷くんは真面目だよ? でもじゃあ倉敷くんが前の席を選ぶかと言われたら、私はちょっと自信ない……。クソゥ、情報不足だぞ私ぃ!
「栞里、さっきからブツブツ言ってて怖いよ……」
「佐奈うるさい」
「アッハイ」
その線が情報不足なら、別の線で考えれば良いじゃない。倉敷くんとの思い出をよく振り返って!
初めて会った時は電車内。倉敷くんに助けてもらって、私はそんな彼に恋をしてしまった……好き。
お菓子を渡したこともあったっけ。佐奈に手伝ってもらった不恰好なお菓子を、倉敷くんはそれでも美味しいって言って食べてくれた……好き!
色々質問もした。佐奈からアドバイスを受けた質問で、そこでやっと色々お話できる様になった……好きぃ!!
一緒に帰ったこともあった。突然の雨に傘を忘れて立ち往生している倉敷くんを、私の折り畳み傘へ入れてあげて……大好きぃ!!!
購買でパンを買ってもらったこともあった。私がお弁当を忘れて購買に行ったら、人混みがすご過ぎて諦めかけたその時、倉敷くんが颯爽と現れて……もうもう大ス——、
「これだァァァァァァァアア!!」
「うわビックリした! どうしたの栞里」
「あったの、あったのヒントが!」
そうだ、何で忘れてたんだろう。倉敷くんはいつも購買へ行っているじゃない! しかもあの人混みの中、いつも目当ての物を買って……。これはつまり、昼休み開始のチャイムがなったらすぐに購買へダッシュしている証拠。そう、つまり倉敷くんが今後も購買でパンを買うことを考えれば、出口に一番近い廊下側の列を選ぶという仮説が立てられる。
なら今度は廊下側の列で、どこの席になるのか。男子でも一番後ろは陽キャグループで埋まっているだろう。一番前は、おそらく真面目グループの視力の悪い人たちで埋まっていると思う。倉敷くん視力悪いとか聞いたことないし。そして、できるだけ購買へ行きやすくするため、ドア付近を選びたがるだろう。
つまり前から2番目か、後ろから2番目のどちらか……っ! きた、ここまできたよ倉敷くん!
でもあとがわかんない、どっち!? うぅ、どうしよう……。さすがにもうネタがないよぉ……。
私が頭を抱えどうしようと悩んでいると、佐奈が私の肩を掴む。
「栞里、何を考えているか言ってごらん。整理できるかもしれないし」
「佐奈……、うん実はね……——」
時間がないからものすごい早口での説明になってしまっただろう。それでも理解してくれた佐奈は軽く目を閉じると、もう一度私の肩を掴み。
「ふふふ、私に良い考えがある」
とびきり渋い声で、不敵な笑みを浮かべた佐奈が私に一つ提案をしてくれた。
◇◇◇
結局、私は廊下側の前から2番目を選択した。果たして私は倉敷くんの隣を選べただろうか。緊張して心臓が張り裂けそうだよ。
先生が廊下の男子たちを呼ぶと、ぞろぞろと前方の扉から教室内に入ってくる。陽キャたちは女子が選んだ席の様子に、一喜一憂の雄叫びをあげている。そして、男子たちの最後尾、倉敷くんが教室に入ると、
「あっ……」
一瞬倉敷くんと目が合う。期待に胸が膨らむ。お願い、私の隣に……。
けれども倉敷くんは視線を逸らし、そのまま私の隣を過ぎると後ろから2番目の席へと向かってしまう。
「……やっぱり、か」
私の予想は、最後の最後で外れてしまったらしい。倉敷くん、どう思ってるかな。別に私のことなんか気にしていないかな。そうだったら……ちょっと悲しい。
こうして、ドキドキの席替えは幕を閉じ、ちょうど下校を知らせるチャイムが鳴ったのだった。
◇◇◇
「残念だったね、栞里」
「……うん、でも仕方ないよ。むしろよくここまで的中させたと思わない?」
「ほんとそう思う。ってか普通にキモい」
「え、キモいかな?」
「うん、誇って良いよ。倉敷くんのこと、わかり過ぎ。キモい」
「えへへ、そんなわかってるかなぁ……」
「うわぁ……」
放課後の教室、私と佐奈は席替えの結果を振り返っていた。親友の佐奈に若干引いた目をされるも、ある意味褒め言葉だったので気にしない。
そして、佐奈がため息を大きく一つ吐くと、まるで手のかかる子供を見るように微笑み、
「さってと、それじゃあやりますか」
「佐奈、本当に良いの?」
「うん? そんなの当たり前じゃん。あたしは栞里の親友だよ?」
「佐奈……」
「だから今日もステバの新作、奢ってね」
「——……うん。トッピングもつけて良いからね!」
ニシシと笑う佐奈に腕を組んで、私たちは教室を後にした。
◇◇◇
~翌日の朝~
「くっ倉敷くん、おは……おう……おはみょう……っ!」
「あっ、おはよう神泉さん……って、あれ!?」
倉敷くんが驚いている。そりゃそうだ。だって私は今、倉敷くんの隣の席に座ったのだから。
「え!? 俺の隣って確か中嶋さんじゃ」
「う、うん。そうなんだけどね」
「ごめんねぇ倉敷くん」
私が返答に困っていると、廊下側の前から2番目——昨日私が座った席から、佐奈がやって来て。
「よくよく黒板見てみたら、私の視力じゃ見えなかったから栞里と先生に無理言って代わってもらったの」
「そ、そうだったんだ。それなら仕方ないね」
「栞里じゃ目つき悪くて怖いと思うけど、我慢してね」
「えっ!? いやそんなことは……っ」
あ、意外と信じてくれてる……。やっぱり倉敷くんは良い人だなぁ。心が痛い……。
私が呆けていると、倉敷くんがこちらをチラッと見やり、
「むしろ……その」
私と目があった倉敷くんは、気のせいかほんのり頬を赤らめながら、
「代わってくれたのが神泉さんで、本当によかった。これからよろしくね、神泉さん!」
「~~っ!? う、うん」
ニカっと少年ぽく笑う倉敷くんを直視できず、プイっと反対方向を向いて私は返事をしたのでした。
ここここちらこそよろしくだよ倉敷くんーーーー!!
私は腕組みをしながら、さながら名探偵にでもなった気分で思考を巡らす。
まず倉敷くんならどこを選ぶだろうか、彼の特性から考えていこう。
倉敷くんは私といる時はすごく喋ってくれるけど、本来彼は大人しいタイプのハズ。もし目立つタイプだったら、あの痴漢事件の時から倉敷くんのこと知ってたハズだもんね。……そんな倉敷くんが、あんな満員電車で声を出して助けてくれたなんて、思い返しただけで惚れ直しちゃうキャーーー!
……はっ! ダメダメ今はそんな事を考えている場合じゃない! なんだっけ……、そうだ。倉敷くんは俗に言う『陽キャ』といった部類ではないと思うの。
陽キャとはスクールカーストの高い部類の人たちで、クラス内や学年内、果ては学校内に置いて発言権が強い人たちのこと。クラスの中心人物や中心グループに属してると言われる人たちは、大体この陽キャだと思う。
陽キャの対をなす存在が『陰キャ』と言われる人たち。この人たちはスクールカーストの低い人たちのことで、基本的にクラス内でも物静かで、独自のコミュニティを形成している場合が多い。倉敷くんはどちらかと言うと陰キャの部類だろう。いや悪口ではなくて。
私自身もあまりに派手な人たちや、底抜けに楽しそうな人たち——所為『陽キャ』と言われる人たちと、特別仲が良いわけではない。普通にお話したり、友達になったりはするけど、グループに属したりはしない。私の目つきはカーストトップも狙えると言われるが、それ別の意味だから嬉しくないし……。
だから倉敷くんの様に、物腰が落ち着いている人の方が一緒にいて安心する。穏やかで和やかで、優しい時間を味あわせてくれる。だから私は、倉敷くんにドンドン惹かれていくんだろうな。ハァ……好き……。
「おーい、栞里チャーン」
「——……はっ! また時空に飛んでた……」
「早くしないと、席取られちゃうよ?」
「えっ!?」
周りを見渡すと、先ほどまで頭を悩ませていた一部の女子たちは行動を開始していた。ここでも暗黙の了解として、スクールカーストトップ層の女子グループが先に席を選び始めている。
「あ~。あの子たちは、やっぱり窓際の一番後ろらへんを陣取ったね」
「まぁ、これはある意味予想通りよねぇ」
クラス内の席に置いて、一番人気が高いのは『教室内の上座』と言われる窓際の最後尾である。言い方を悪くすると、不真面目な生徒は後ろの席に行きたがり、そして陽キャと言われる人たちは不真面目な生徒が多い。もちろん、中には真面目な者もいるが、相対的に見て……だ。
だからこそ、あのカーストトップ層の女子グループも、中の良い陽キャ男子たちが窓際の後ろ席を陣取っていると思ったのだろう。しかし、
「お前らは固まると授業中に絶対騒ぐから、いくらかバラけろ」
「えーっ」
これも予想通り。先生があのグループのままを許すハズがない。おそらく男子にもそれを言っているだろう。さっき廊下で待っている時、誰かが先生の声もすると言っていたのはそのためだと思う。
と言うことは、何人かの陽キャ男子は窓際の最後尾席を確保し、他の陽キャ男子は違う列の最後尾周辺にいると思って良いだろう。あの陽キャ女子たちも同じ様に他の列の最後尾を確保しだした。
これで倉敷くんの残る可能性は真ん中から一番前の席のどれか。よし、絞れてきた!
次に動くのはスクールカースト真ん中のグループ……ではない。これはカテゴリ分けが難しいが、あえて言うなら『真面目グループ』だ。この層は授業を如何にちゃんと受けられる環境を整えるかに注力している。先ほど先生が言っていた『不満の声』の正体も彼ら彼女らだろう。
じゃあなんで真面目グループが陽キャの次に動くのか。それは彼らの意思が交わることはないからだ。先に動く——その一点を陽キャに譲りさえすれば、先生にほど近い前方の席を選ぶ者なんて、真面目グループ以外ありえない。
ここまでの予想は調子良いぞ私。しかしここで一つ問題がある、……倉敷くんはどっちだろう! いや、倉敷くんは真面目だよ? でもじゃあ倉敷くんが前の席を選ぶかと言われたら、私はちょっと自信ない……。クソゥ、情報不足だぞ私ぃ!
「栞里、さっきからブツブツ言ってて怖いよ……」
「佐奈うるさい」
「アッハイ」
その線が情報不足なら、別の線で考えれば良いじゃない。倉敷くんとの思い出をよく振り返って!
初めて会った時は電車内。倉敷くんに助けてもらって、私はそんな彼に恋をしてしまった……好き。
お菓子を渡したこともあったっけ。佐奈に手伝ってもらった不恰好なお菓子を、倉敷くんはそれでも美味しいって言って食べてくれた……好き!
色々質問もした。佐奈からアドバイスを受けた質問で、そこでやっと色々お話できる様になった……好きぃ!!
一緒に帰ったこともあった。突然の雨に傘を忘れて立ち往生している倉敷くんを、私の折り畳み傘へ入れてあげて……大好きぃ!!!
購買でパンを買ってもらったこともあった。私がお弁当を忘れて購買に行ったら、人混みがすご過ぎて諦めかけたその時、倉敷くんが颯爽と現れて……もうもう大ス——、
「これだァァァァァァァアア!!」
「うわビックリした! どうしたの栞里」
「あったの、あったのヒントが!」
そうだ、何で忘れてたんだろう。倉敷くんはいつも購買へ行っているじゃない! しかもあの人混みの中、いつも目当ての物を買って……。これはつまり、昼休み開始のチャイムがなったらすぐに購買へダッシュしている証拠。そう、つまり倉敷くんが今後も購買でパンを買うことを考えれば、出口に一番近い廊下側の列を選ぶという仮説が立てられる。
なら今度は廊下側の列で、どこの席になるのか。男子でも一番後ろは陽キャグループで埋まっているだろう。一番前は、おそらく真面目グループの視力の悪い人たちで埋まっていると思う。倉敷くん視力悪いとか聞いたことないし。そして、できるだけ購買へ行きやすくするため、ドア付近を選びたがるだろう。
つまり前から2番目か、後ろから2番目のどちらか……っ! きた、ここまできたよ倉敷くん!
でもあとがわかんない、どっち!? うぅ、どうしよう……。さすがにもうネタがないよぉ……。
私が頭を抱えどうしようと悩んでいると、佐奈が私の肩を掴む。
「栞里、何を考えているか言ってごらん。整理できるかもしれないし」
「佐奈……、うん実はね……——」
時間がないからものすごい早口での説明になってしまっただろう。それでも理解してくれた佐奈は軽く目を閉じると、もう一度私の肩を掴み。
「ふふふ、私に良い考えがある」
とびきり渋い声で、不敵な笑みを浮かべた佐奈が私に一つ提案をしてくれた。
◇◇◇
結局、私は廊下側の前から2番目を選択した。果たして私は倉敷くんの隣を選べただろうか。緊張して心臓が張り裂けそうだよ。
先生が廊下の男子たちを呼ぶと、ぞろぞろと前方の扉から教室内に入ってくる。陽キャたちは女子が選んだ席の様子に、一喜一憂の雄叫びをあげている。そして、男子たちの最後尾、倉敷くんが教室に入ると、
「あっ……」
一瞬倉敷くんと目が合う。期待に胸が膨らむ。お願い、私の隣に……。
けれども倉敷くんは視線を逸らし、そのまま私の隣を過ぎると後ろから2番目の席へと向かってしまう。
「……やっぱり、か」
私の予想は、最後の最後で外れてしまったらしい。倉敷くん、どう思ってるかな。別に私のことなんか気にしていないかな。そうだったら……ちょっと悲しい。
こうして、ドキドキの席替えは幕を閉じ、ちょうど下校を知らせるチャイムが鳴ったのだった。
◇◇◇
「残念だったね、栞里」
「……うん、でも仕方ないよ。むしろよくここまで的中させたと思わない?」
「ほんとそう思う。ってか普通にキモい」
「え、キモいかな?」
「うん、誇って良いよ。倉敷くんのこと、わかり過ぎ。キモい」
「えへへ、そんなわかってるかなぁ……」
「うわぁ……」
放課後の教室、私と佐奈は席替えの結果を振り返っていた。親友の佐奈に若干引いた目をされるも、ある意味褒め言葉だったので気にしない。
そして、佐奈がため息を大きく一つ吐くと、まるで手のかかる子供を見るように微笑み、
「さってと、それじゃあやりますか」
「佐奈、本当に良いの?」
「うん? そんなの当たり前じゃん。あたしは栞里の親友だよ?」
「佐奈……」
「だから今日もステバの新作、奢ってね」
「——……うん。トッピングもつけて良いからね!」
ニシシと笑う佐奈に腕を組んで、私たちは教室を後にした。
◇◇◇
~翌日の朝~
「くっ倉敷くん、おは……おう……おはみょう……っ!」
「あっ、おはよう神泉さん……って、あれ!?」
倉敷くんが驚いている。そりゃそうだ。だって私は今、倉敷くんの隣の席に座ったのだから。
「え!? 俺の隣って確か中嶋さんじゃ」
「う、うん。そうなんだけどね」
「ごめんねぇ倉敷くん」
私が返答に困っていると、廊下側の前から2番目——昨日私が座った席から、佐奈がやって来て。
「よくよく黒板見てみたら、私の視力じゃ見えなかったから栞里と先生に無理言って代わってもらったの」
「そ、そうだったんだ。それなら仕方ないね」
「栞里じゃ目つき悪くて怖いと思うけど、我慢してね」
「えっ!? いやそんなことは……っ」
あ、意外と信じてくれてる……。やっぱり倉敷くんは良い人だなぁ。心が痛い……。
私が呆けていると、倉敷くんがこちらをチラッと見やり、
「むしろ……その」
私と目があった倉敷くんは、気のせいかほんのり頬を赤らめながら、
「代わってくれたのが神泉さんで、本当によかった。これからよろしくね、神泉さん!」
「~~っ!? う、うん」
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ここここちらこそよろしくだよ倉敷くんーーーー!!
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