寂しいからヒモを飼うことにした

音央とお

文字の大きさ
4 / 6

しおりを挟む
会社から帰宅する足取りが軽い。

家で待っていてくれる人がいるというのは、こんなにも気分が変わるものなんだと驚いた。

今朝は健太郎くんが眠そうで、あまり話が出来なかった。
急に知らない環境に来たんだから無理もないかな?
お昼寝できてたらいいんだけど。

連絡先も交換済みで、今夜はハンバーグだとメッセージが届いている。どんな料理が出てくるか楽しみ。
多少の歪さは可愛いし、たとえ焦げていても頑張ってくれたんだと思うから、何が出てきても驚くつもりはなかった。

「……これ、手作りなの?」

帰宅して炬燵でぬくぬくとしながら待っていたら、どこのレストランかという見た目の煮込みハンバーグが出てきた。
付け合わせの野菜までもがバランスが良すぎる。
使い慣れた食器のはずなのに、乗せられたものだけが「初めまして」と言ってるみたい。

「レシピを検索して作ってみた」

「天才かよ」

ヒモ男なのに、料理が私より上手って……。

「味は自信がないから。春花ちゃんの口に合うといいんだけど」

「では、いただきます!」

お箸を入れると、肉汁が溢れてきた。
これは食べなくても分かる。大正解のやつ!

「……ん~、おいしい~!」

頬がとろけるってこういうことだよ、と教えられているみたい。これは家庭料理のレベルを超えている。

「良かった」

「健太郎くんも早く食べて!」

本人は何でもないような顔をして黙々と食べている。
……もしかして、前の飼い主は料理上手だったのかな?

これは私も練習が必要そう。
でも、健太郎くんよりうまく作れるのかな?

「私はあんまり料理が上手じゃないから。作る時は期待しないでね」

予防線を張っておく。
もうちょっとダメなヒモだと嬉しいんだけどな。
甘やかし計画が遠のいてしまうのは、ちょっと不満である。

食事を終えると、昨日の約束どおり、共同生活のルールを話し合うことにした。
マーカーペンを持ち、大きめの白い紙に書き出していく。

「うーん」

洗濯は下着があるので各自でやる、人を招き入れる時は相談してから……などいくつかの案が出た。

「他に健太郎くんは何か希望はある?」

基本的に私が決めたことにうなずいてばかりなので、ここではっきりと言っておいて欲しかった。

「それじゃあ……」

「うん。何でも言って!」

言いづらそうに健太郎くんは続けた。

「俺も男なんだって、そこは覚えていてほしいかな」

「……ん?」

首を傾げる。
意図が伝わっていないことを察してか、健太郎くんは苦笑いしている。

「春花ちゃんの生活に溶け込めるのはいいけど、あまりに無防備だと俺が目のやり場に困るというか……」

「ふむ。それはお風呂上がりの服装とか、干してある下着を見られないようにするってこと?」

「……まあ、そんな感じで」

そこは男女関係なく、共同生活なら注意が必要かもね。

「分かった」と頷く。
健太郎くんは疑うような目で見てくるので、気をつけよう。

半年間どうなるか分からないけど、今は楽しみが大きくて、健太郎くんのことをもっと知りたかった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

離れて後悔するのは、あなたの方

翠月るるな
恋愛
順風満帆だったはずの凛子の人生。それがいつしか狂い始める──緩やかに、転がるように。 岡本財閥が経営する会社グループのひとつに、 医療に長けた会社があった。その中の遺伝子調査部門でコウノトリプロジェクトが始まる。 財閥の跡取り息子である岡本省吾は、いち早くそのプロジェクトを利用し、もっとも遺伝的に相性の良いとされた日和凛子を妻とした。 だが、その結婚は彼女にとって良い選択ではなかった。 結婚してから粗雑な扱いを受ける凛子。夫の省吾に見え隠れする女の気配……相手が分かっていながら、我慢する日々。 しかしそれは、一つの計画の為だった。 そう。彼女が残した最後の贈り物(プレゼント)、それを知った省吾の後悔とは──とあるプロジェクトに翻弄された人々のストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...