3 / 10
2
しおりを挟む
それを聞いてしまったのは、交際が三週間目に入った頃。
まだちゃんとデートとかはしたことがないけど、一緒に下校するだけで楽しかった。宝人くんは受け身みたいだから、私のほうから行動することが多い。
ふいに顔が見たくなって、昼休みを使って会いに行くことにした。彼女が会いに行くなんて何もおかしくない。
教室は3つ隣なので、あっという間にたどり着く。
こっそりと覗いてみると、宝人くんの周りに男子が数人いて、これでは声が掛けづらい。
気心知れたメンバーなのか和気あいあいとした雰囲気だった。せめて姿だけでも目に焼き付けていこうかな。
笑顔の宝人くんをにやにやと見つめていると、「もう付き合ってどれくらい経った?」と言い出す人間が現れた。
あれは私と同じクラスの阿部くんではないか!
なんだか最近、阿部くんから視線を感じることがあるんだよね。私がニヤけている時なんか特に。
「……えっと……」
宝人くんは歯切れが悪かった。
表情も明るいものとは言えず、その違和感に私の胸がざわついた。あれは、照れているとかでは絶対にない。
「三週間くらいかな……」
「もうそんなに経つの?」
なぜか周りの男子たちは笑っている。
あれは笑いでも、嘲笑うやつ。
無意識に唾を飲み込んでしまう。
「山田さんも可哀想だね」と、私の名前を誰かが口にした。可哀想……?
「宝人は罰ゲームで告白しただけなのに」
……は?
視界がぐらぐらする。
罰ゲームって言った? なにそれ……。
「あんなに好意を見せられたら、溜まったもんじゃないよなー」
宝人くんは唇を噛んでいる。
その様子を阿部くんが心配そうに眺めているけど、他のメンバーはゲラゲラと笑って楽しそう。
「……もうやめにしたい」と宝人くんは声を絞り出す。
それには、場の空気が張り詰めた。
「は?」
「まだ期限来てないだろう」
「クリスマスに振れって言ったじゃん」
私たちの交際は期限付きだったようだ。
クリスマスといえば、まだ1ヶ月以上もある。
阿部くんが口を挟む。
「俺が今日の日直の人で、なんて山田さんを適当に選んだけど……。俺もこれ以上続けるのはどうかと思う」だって。
あの視線はそういうことだったんだ。
宝人くんが苦しそうに喋る。
「あの日、山田さんが振ってくれたら良かったのに……。こんなのどう罪滅ぼしすればいいか分からない」
罪悪感は感じてるんだ……。
自分の動悸が速くなるのが分かる。
「今日にでも、別れようと思う」
宝人くんは、はっきりと宣言した。
なにそれ。
そんなの許さない。
ドキンドキンという音を聞きながら、私の表情は崩れていく。
……硝子に映り込んだその顔は、目尻を下げていた。
そう、私は今、高揚している。
ブツブツと呟きが漏れてくるのを抑えられない。
誰も廊下にいないのが救いだった。
「ふふふ、絶対に別れないよ。だって……」
グッと拳を握る。
「合法で、こんな辱めにあえるだなんて……!みんなやってることが、ゲスくてたまらん!」
高笑いしたいのに我慢するのが辛い!
そう、私は精神的にドMだったのである。
まだ話は続いているようだけど、ここにはもう用はない。
見つからないように慎重に教室へと戻る。
宝人くんって、本当に私の世界の色を変えてくれる!
控えめに言っても最高すぎる!
にやにやが止まらない私の姿は、周囲にはいつもと変わらない恋に浮かれた山田涼子に見えていたことだろう。
まだちゃんとデートとかはしたことがないけど、一緒に下校するだけで楽しかった。宝人くんは受け身みたいだから、私のほうから行動することが多い。
ふいに顔が見たくなって、昼休みを使って会いに行くことにした。彼女が会いに行くなんて何もおかしくない。
教室は3つ隣なので、あっという間にたどり着く。
こっそりと覗いてみると、宝人くんの周りに男子が数人いて、これでは声が掛けづらい。
気心知れたメンバーなのか和気あいあいとした雰囲気だった。せめて姿だけでも目に焼き付けていこうかな。
笑顔の宝人くんをにやにやと見つめていると、「もう付き合ってどれくらい経った?」と言い出す人間が現れた。
あれは私と同じクラスの阿部くんではないか!
なんだか最近、阿部くんから視線を感じることがあるんだよね。私がニヤけている時なんか特に。
「……えっと……」
宝人くんは歯切れが悪かった。
表情も明るいものとは言えず、その違和感に私の胸がざわついた。あれは、照れているとかでは絶対にない。
「三週間くらいかな……」
「もうそんなに経つの?」
なぜか周りの男子たちは笑っている。
あれは笑いでも、嘲笑うやつ。
無意識に唾を飲み込んでしまう。
「山田さんも可哀想だね」と、私の名前を誰かが口にした。可哀想……?
「宝人は罰ゲームで告白しただけなのに」
……は?
視界がぐらぐらする。
罰ゲームって言った? なにそれ……。
「あんなに好意を見せられたら、溜まったもんじゃないよなー」
宝人くんは唇を噛んでいる。
その様子を阿部くんが心配そうに眺めているけど、他のメンバーはゲラゲラと笑って楽しそう。
「……もうやめにしたい」と宝人くんは声を絞り出す。
それには、場の空気が張り詰めた。
「は?」
「まだ期限来てないだろう」
「クリスマスに振れって言ったじゃん」
私たちの交際は期限付きだったようだ。
クリスマスといえば、まだ1ヶ月以上もある。
阿部くんが口を挟む。
「俺が今日の日直の人で、なんて山田さんを適当に選んだけど……。俺もこれ以上続けるのはどうかと思う」だって。
あの視線はそういうことだったんだ。
宝人くんが苦しそうに喋る。
「あの日、山田さんが振ってくれたら良かったのに……。こんなのどう罪滅ぼしすればいいか分からない」
罪悪感は感じてるんだ……。
自分の動悸が速くなるのが分かる。
「今日にでも、別れようと思う」
宝人くんは、はっきりと宣言した。
なにそれ。
そんなの許さない。
ドキンドキンという音を聞きながら、私の表情は崩れていく。
……硝子に映り込んだその顔は、目尻を下げていた。
そう、私は今、高揚している。
ブツブツと呟きが漏れてくるのを抑えられない。
誰も廊下にいないのが救いだった。
「ふふふ、絶対に別れないよ。だって……」
グッと拳を握る。
「合法で、こんな辱めにあえるだなんて……!みんなやってることが、ゲスくてたまらん!」
高笑いしたいのに我慢するのが辛い!
そう、私は精神的にドMだったのである。
まだ話は続いているようだけど、ここにはもう用はない。
見つからないように慎重に教室へと戻る。
宝人くんって、本当に私の世界の色を変えてくれる!
控えめに言っても最高すぎる!
にやにやが止まらない私の姿は、周囲にはいつもと変わらない恋に浮かれた山田涼子に見えていたことだろう。
0
あなたにおすすめの小説
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
蛇の噛み痕
ラティ
恋愛
ホストへ行かないかと、誘われた佳代は、しぶしぶながらもついていくことに。そこであった黒金ショウは、美形な男性だった。
会ううちに、どんどん仲良くなっていく。けれど、なんだか、黒金ショウの様子がおかしい……?
ホスト×女子大学生の、お話。
他サイトにも掲載中。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる