神様だった人を、好きになってしまった話

音央とお

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放課後になってから、東雲くんの家へと向かった。
これまで訪ねたことはないけど、中学校の近くだから場所は分かっている。

うるさすぎる心臓が飛び出しそう。
でも、逃げない。

「……よし!」

一軒家の門扉に取り付けられたインターフォンを鳴らした。すぐには返事がなかった。

『……吉田さん?』

機械を通して東雲くんの声が聞こえてきた。
それだけで、胸がきゅっと締め付けられそうになる。

「開けてよ、東雲くん」

『……うん。待っていて』

扉から顔を出した東雲くんは、見るからに部屋着だった。

薄っすらと綺麗な顔に隈が出来ていて、虚ろな目をしている。
……限界が来ている人間みたい。

「散らかっていてもいいなら、上がっていく?」

そう聞かれたので、うなずいた。

東雲くんの部屋は玄関を上がってすぐ、中は畳の部屋だった。
使い込んだようなノートやエナジードリンクの缶が転がり、机の上のパソコンは起動したままになっている。

「新作を書いていたの?」

近づかないと内容までは見えないけど、文字がびっしりと並んでいた。

「えっと……うん、そうかも」

歯切れが悪い。落ち着かないのか目を逸らされた。

もっと聞くべきことがあるのに、話題を間違えてしまったかも。

「そっか! 発表される時を楽しみにしてるね」

「……うん」

どうやって切り出せばいいのかな。
ちゃんと全部伝えられるか不安になる。

耳に髪をかけながら言葉を選んでいると、東雲くんの方が先に口を開いた。

「ごめん……」

それは何の謝罪?

東雲くんは顔を手のひらで覆い、震える小さな声を紡いでいく。

「書いていたの……本当は新作なんかじゃない」

「え?」

滑り落ちるように外された手。
東雲くんの目は涙を浮かべていて、瞬きをしたら落ちてしまいそうだった。

「書けなかったんだ……火遊びなんて。ここにあるのは、必死になって恋を忘れようとする男の話」

そう言って、パソコンを見せてくれた。
私はそこに綴られた文字を追った。



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