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白田聖美って誰だよ。
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週明けの学校にも真雪は来ていなかった。
昼休みの廊下でスマホを取り出す。
「既読にすらならない、か」
たぶん連絡を無視するために電源を落としている。
どうするかなぁ。
真雪のクラスの奴に聞いてみるか?
中学まではよく真雪と連るんでいたが、高校に入ってからは同じクラスになったことがない。
たまに帰り道で鉢合わせて一緒に帰るとかはあったが、アイツの交友関係と俺は対して繋がりがないんだよな。
アイツのクラスに知り合いがいない訳ではないから、そいつにでも聞くか?
――あまり期待はできそうにないが。
ゆっくりとした足取りで、真雪のクラスの方へと足を向ける。
「リュウ、どこに行くのー?」
小さな衝撃と、腕にまとわりつく柔らかさ。
左肩の方を見れば、茶色いふわふわの髪が揺れていた。
「……野暮用。付いてくんな」
「やだ、付いてく」
何が良いのか、俺に惚れているらしいこの女・千織はスキンシップの距離がおかしい。
自分の見た目を自覚し、自信のある態度だよな。
普通はもっと慎みがあるだろうが。
ため息をつくが、面倒だからそのままにしておく。
学年でも1、2の美少女と評される千織は、注目を集めやすい。
真雪のクラスの前に行くだけで人が集まってきた。
えーっと、居た居た。
知り合いの顔を見つけて手招きをする。
「珍しいじゃん、相川。どうした?」
チラチラと千織のことを気にしながら目の前の男・西村は話しかけてきた。
まどろっこしいことは抜きにして、単刀直入に問う。
「岩永真雪っていつから学校に来てない?」
「岩永? ……ああ、幼馴染なんだっけ」
関係性を知られているようなので説明不要で助かる。
「1週間くらい前かな」
「マジかよ」
この話は真雪の両親は把握しているのだろうか?
これは思っていたよりも厄介な話なのかもしれない。
「変わった様子とかなかった?」
「……それ担任にも聞かれたんだよ。岩永って行方不明なの?」
こそこそと西村は耳打ちしてきた。
周りに聞こえないようにだろう。
「俺も親から聞いて知ったけど、そうらしい」
「ええ……事件とかじゃないよな?」
「さあ?」
そこはまだなんとも。
情報が少なすぎる。
「相川、落ち着きすぎじゃね?」
「そんなことはない。めちゃくちゃ動揺してる」
嘘だけど。
「で、真雪の様子はどうだった?」
「……特に気になるところは無かったけど、親しいわけでもなかったから何とも言えない。表面上はいつもどおりだったと思う」
「そっか、ありがとう」
初めから期待はしていないので、分かるのはこのくらいだろう。教室に帰ろうとする俺を西村が呼び止める。
「あの噂は関係あるかも」
「噂?」
何のことなのかさっぱり見当がつかない。
西村は頬を掻いた。「全然関係なかったらごめん」と。
「いいよ。教えて」
「岩永って8組の白田聖美と付き合ってるかもって」
いや、誰だよ。
初めて聞く名前だった。
真雪にそんな恋人がいたのか?
「え? 知らない? 中学まで芸能界にいた、綺麗な子。勉学に専念するとかで引退してるけど」
「知らん」
きっぱりと否定する。
記憶をたどっても思い当たらない。
「何年か前に話題になった“不透明な隣人”っていうホラー映画にも出てた」
「映画なんてほとんど見たことがない」
「じゃあ、知らなくて当然かも。テレビより映画で活動してたみたいだから」
「なんでそんなに詳しいんだよ」
その白田とかいう奴のファンなのか?
「相川は知らないだろうけど、俺って映画研究部の部長なんだぜ……」と寂しげに西村は笑った。……すまん。
「ねえ、ねえ、リュウ」と、それまで黙っていた千織が、舌っ足らずな喋り方で口を挟んできた。
「なんだよ」
「ちおりと白田さん、同じクラスだよ」
得意気な顔をしている。俺から聞けと言いたいのか。
仕方がないので聞いてやろう。
「その白田っていうやつは、今なにしてる?」
千織を連れて話を聞きに行くのはありかもな。
なんて思っていたら、予定外のことを聞かされた。
「白田さんね、今日は休んでるんだよ」
……ほう?
「でもね、先週は全然休んでなかったよ。白田さんって黒板の前の席だから、ずっと居たのは間違いないよ」
たまたま欠席という偶然か、因果関係があるのかは不明と言いたいようだ。
「リュウが調べたいなら、ちおりも協力するよ?」
こてんと首を傾げる。
その仕草に、西村が「うわっ、かわいい」と呟いた。
……なんでお前が攻撃を食らってるんだよ。
女子のことは千織に任せる、これは頼もしくて使える手だろう。
「頼むわ」と偉そうに言ったのに、千織は「リュウにお願いされちゃった」とニヤついていた。……なんでだよ。
昼休みの廊下でスマホを取り出す。
「既読にすらならない、か」
たぶん連絡を無視するために電源を落としている。
どうするかなぁ。
真雪のクラスの奴に聞いてみるか?
中学まではよく真雪と連るんでいたが、高校に入ってからは同じクラスになったことがない。
たまに帰り道で鉢合わせて一緒に帰るとかはあったが、アイツの交友関係と俺は対して繋がりがないんだよな。
アイツのクラスに知り合いがいない訳ではないから、そいつにでも聞くか?
――あまり期待はできそうにないが。
ゆっくりとした足取りで、真雪のクラスの方へと足を向ける。
「リュウ、どこに行くのー?」
小さな衝撃と、腕にまとわりつく柔らかさ。
左肩の方を見れば、茶色いふわふわの髪が揺れていた。
「……野暮用。付いてくんな」
「やだ、付いてく」
何が良いのか、俺に惚れているらしいこの女・千織はスキンシップの距離がおかしい。
自分の見た目を自覚し、自信のある態度だよな。
普通はもっと慎みがあるだろうが。
ため息をつくが、面倒だからそのままにしておく。
学年でも1、2の美少女と評される千織は、注目を集めやすい。
真雪のクラスの前に行くだけで人が集まってきた。
えーっと、居た居た。
知り合いの顔を見つけて手招きをする。
「珍しいじゃん、相川。どうした?」
チラチラと千織のことを気にしながら目の前の男・西村は話しかけてきた。
まどろっこしいことは抜きにして、単刀直入に問う。
「岩永真雪っていつから学校に来てない?」
「岩永? ……ああ、幼馴染なんだっけ」
関係性を知られているようなので説明不要で助かる。
「1週間くらい前かな」
「マジかよ」
この話は真雪の両親は把握しているのだろうか?
これは思っていたよりも厄介な話なのかもしれない。
「変わった様子とかなかった?」
「……それ担任にも聞かれたんだよ。岩永って行方不明なの?」
こそこそと西村は耳打ちしてきた。
周りに聞こえないようにだろう。
「俺も親から聞いて知ったけど、そうらしい」
「ええ……事件とかじゃないよな?」
「さあ?」
そこはまだなんとも。
情報が少なすぎる。
「相川、落ち着きすぎじゃね?」
「そんなことはない。めちゃくちゃ動揺してる」
嘘だけど。
「で、真雪の様子はどうだった?」
「……特に気になるところは無かったけど、親しいわけでもなかったから何とも言えない。表面上はいつもどおりだったと思う」
「そっか、ありがとう」
初めから期待はしていないので、分かるのはこのくらいだろう。教室に帰ろうとする俺を西村が呼び止める。
「あの噂は関係あるかも」
「噂?」
何のことなのかさっぱり見当がつかない。
西村は頬を掻いた。「全然関係なかったらごめん」と。
「いいよ。教えて」
「岩永って8組の白田聖美と付き合ってるかもって」
いや、誰だよ。
初めて聞く名前だった。
真雪にそんな恋人がいたのか?
「え? 知らない? 中学まで芸能界にいた、綺麗な子。勉学に専念するとかで引退してるけど」
「知らん」
きっぱりと否定する。
記憶をたどっても思い当たらない。
「何年か前に話題になった“不透明な隣人”っていうホラー映画にも出てた」
「映画なんてほとんど見たことがない」
「じゃあ、知らなくて当然かも。テレビより映画で活動してたみたいだから」
「なんでそんなに詳しいんだよ」
その白田とかいう奴のファンなのか?
「相川は知らないだろうけど、俺って映画研究部の部長なんだぜ……」と寂しげに西村は笑った。……すまん。
「ねえ、ねえ、リュウ」と、それまで黙っていた千織が、舌っ足らずな喋り方で口を挟んできた。
「なんだよ」
「ちおりと白田さん、同じクラスだよ」
得意気な顔をしている。俺から聞けと言いたいのか。
仕方がないので聞いてやろう。
「その白田っていうやつは、今なにしてる?」
千織を連れて話を聞きに行くのはありかもな。
なんて思っていたら、予定外のことを聞かされた。
「白田さんね、今日は休んでるんだよ」
……ほう?
「でもね、先週は全然休んでなかったよ。白田さんって黒板の前の席だから、ずっと居たのは間違いないよ」
たまたま欠席という偶然か、因果関係があるのかは不明と言いたいようだ。
「リュウが調べたいなら、ちおりも協力するよ?」
こてんと首を傾げる。
その仕草に、西村が「うわっ、かわいい」と呟いた。
……なんでお前が攻撃を食らってるんだよ。
女子のことは千織に任せる、これは頼もしくて使える手だろう。
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