「サヨナラ、マタネ。」

音央とお

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今日はここまで。

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昼休みの別れ際に、
「ちおりのことを考えて、放課後まで待ちたまえ」と高らかに言い放ってきたので、迎えに行ってやることにする。

すぐ隣なので、移動はなんてことはない。
ほんの数秒でたどり着いた教室内は生徒が数人残っているだけだった。

「……アイツ、いねぇじゃん」

ため息をつくと、よその教室に我が物顔で足を踏み入れた。
一瞬こちらを向いた生徒もいるが、別に罪を犯した訳でもないのだから堂々としていればいいのだ。

黒板の前で足を止める。
……ここか?

千織から聞いた情報を頼りに、白田聖美の机を探し当てた。
顔も知らない相手なのでどんな人物か想像もできない。

……映画に出ていたと言っていたな。
西村が口にしたタイトルは忘れたので、名前で検索をしてみる。

「……へえ」と思わず感嘆の声が漏れた。
透明感というのは、こういう人間のためにある言葉なのだろうと思った。
現実感が薄くて、美人で目を引くのに儚さがある。
これは数年前の写真のようだが、イメージはおそらく変わらないだろう。

スマホを見つめていると、背中に何か柔らかいものがぶつかった。
首を動かせば、千織が抱きついて笑っていた。

「お待たせー」

「なんで毎回密着するんだよ」

「大好きだからですけど?」

……いちいち伝え方が軽いんだよ。

気持ちがこもっていないとは思わないが、深刻に受け止める気にもなれない。

「では、リュウのために調べてきたことを報告するね」

小さなメモ帳を取り出したかと思えば、いろいろと書き込んでいた。
意外と几帳面な字をしている。

「えっとぉ、真雪くんと白田さんが付き合っていたのはほぼ間違いないと思う! ……二人でいるところの目撃情報が多いもん」

「たとえば?」

「クラスは違うけど一緒に帰っていたり、休日に見かけたって子もいたよ」

親密な関係であることは、周囲にも明白というわけか。

「あと、二人は昨年の文化祭の実行委員で一緒だったみたい」

「へえ」

「たぶん、そこで知り合ったのかな? 真雪くんと白田さんって雰囲気が似てるから、意気投合とか?」

それは推測の域を出ないな。
きっかけくらいには、なったかもな。

「千織から見た“白田聖美”はどんな奴?」
「うーん。白田さんってね、控えめな感じの子なんだ。あんなに美人なのに普段は全然目立たない。それは敢えてそうしていたのかもしれないけど」

「……敢えて?」

「女子からのやっかみはあったと思う、正直。優しい子ばかりじゃないから……」

そう語る表情が曇る。
身に覚えがあるのだろう。見た目だけなら、千織だって白田に負けず劣らずだろうからな。

「一歩引いた感じの子だから、普通に話はするけど、特別仲の良い子はいないかも? みんなに話を聞いて回ったけど、そんな印象だったよ」

この短時間でそこまで調べて、情報を整理したのか。
少し感心してしまった。

「あとね、先生にも聞いてみたの。今日の欠席は風邪ってことになってた」

「風邪、ね」

「お家の場所は分からないから、確かめられないや」

眉が八の字に下がっているが、俺たちがそこまでする必要はない。

「これからどうしようか?」と千織が腕を組みながら唸った。

「……とりあえず様子見。白田が学校に来たら教えて」

今日はここまでだ。
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