21 / 25
21
しおりを挟む今日のホームルームは盛り上がっていた。だって、
「高校初めての文化祭だーー!!」
原田くんの叫びに、ノリの良い男子たちが「オー!!」と拳を突き上げる。
進行役を任されたのは原田くんと舞ちゃん。文化祭の出し物を決めることになっている。
「この学校の文化祭って結構自由だから、ある程度の要望なら通ると思うよー。意見出していってー!」舞ちゃんがチョークを持って指示を出す。
お化け屋敷
脱出ゲーム
チョコバナナ
ボードゲームカフェ
綿あめ
手品
フルーツ飴
どんどん候補が増えていく。
何が選ばれても楽しそうで迷うなぁ。
「メイド喫茶!」
「男の娘カフェ!」
「男装!」
「妹属性!みんな“お兄ちゃん”って呼んでくれ」
「それなら、執事喫茶でしょー! イケメンにご奉仕されたい」
ん?
一部から、欲望にまみれた要望が上がり始める。
普段は真面目な鈴木さんが「文化祭はイケメンを自由に扱えるチャンス………ふふふ」と仄暗い目をして口にしたから静寂が訪れた。
「んー?でもさ、鈴木ちゃんの言うことは一理あるかもー。集客数のランキングでちょっとした景品が出るんだって。だから、どれだけお客さんを呼べるかに振り切るのもありだよー?」と舞ちゃん。
景品という言葉に、ざわめきが起きる。
みんなの目の色が変わったのが分かる。
「それならイケメン押しにする?」
「幸いにもうちのクラスには、佐野くんと長谷部くんがいるわけだし」
近くに座る女子たちの話し声。
――長谷部と、名前を出される凛ちゃん。
凛ちゃんってちょっと怖がられてるけど、かっこいいねって思われてる。確かにお顔は整っているし、雰囲気も他の男の子とは違う。
なんでこんな男の子が、私と友達になってくれたのか分からない。
チラッと後ろを盗み見るつもりが、ばっちりと目が合ってしまった。凛ちゃんは頬杖をつきながら、「ん?」と優しい声で首を傾げた。
「……えっと、凛ちゃんは何がやりたい?」
「……。思いつかないな、莉央がやりたいことがあるなら、それ」
「もう! なんで私に合わせようとするの~」
頬を膨らませる。めんどうくさいのかな?
でも、凛ちゃんって任されれば、ちゃんと仕事をやりきるタイプだと思うんだ。
「じゃあ、凛ちゃんは私と一緒にどんなことをしたい?」
「側にいられるなら何でも」
「凛ちゃん~~!」
全然考える気がないね?
そんなやり取りをしている間も、新たな意見は飛び交っていたようで。「カオスすぎて面白いんだけどー」と舞ちゃんがお腹を抱えて笑っていた。
* * *
「――っていうことがあって。なかなか決まらなかったんだけど、佐野くんが“お客さんたちがみんな楽しめるやつにしよう”って言い出して、射的とスーパーボール掬いになったんだ。小さい子も楽しめるし、大人も懐かしくなるからって。あとね、みんなで浴衣を着ることになったよ!」
すっかり恒例になった凪くんとの通話、小さな画面に凪くんと部屋が映り込んでいる。よくありそうな、男子の生活感があるごちゃっとした部屋じゃなくて、洗練された家具が置かれている。
「莉央ちゃんの浴衣は見てみたいな」
「私のなんて需要がないよ……」
でも、凛ちゃんにヘアアレンジはお願いしたいかな。絶対に可愛いのを作ってくれると思うんだ。
「楽しそうだね?」
「うん、想像してたら楽しみになってきた。凪くんのクラスは何をやるの?」
私の質問に凪くんが気まずそうな表情になった。
乗り気ではないのが伝わってくる。
「……どうしても劇をやりたいという人達がいて、人魚姫をやることになって」
「人魚姫かぁ。それはちょっと悲しい物語だね」
お姫様なのにハッピーエンドにならないやつ。
私が憧れる“シンデレラ”とは違う結末だ。
「凪くんは何をやるの?」
凪くんは左手で頭を抱えながら「……王子様だって」とぽつり。
「そうか、そうだよね! 凪くんといえば王子様だよね」
これ以上の配役はない。他にはいないだろう。
納得しかないよ!
「満場一致で決められて、俺の意見なんて無視だよ?……酷い」
「仕方がないよ、凪くん以上に似合っていてかっこいい人はいないと思うから」
しっくりすぎて、凪くんの王子様が見たいから劇にしたんじゃないかとすら思えてきた。
「まあ、莉央ちゃんが“かっこいい”って思ってくれるなら、頑張ってみるよ」
諦めの色が濃い様子で、本人は納得がいっていないんだなって伝わってくる。気持ちが伴っていないのに、役柄を決められるのは確かに悲しくなっちゃうかも。
「凪くんってえらいね」
「急にどうしたの?」
「いつもみんなの期待に応えていて、すごいなって思ったの」
「……」
急に褒められたからか、面食らったような表情のあと、照れたような笑顔が返ってきた。
「そう言ってくれて、ありがとう、莉央ちゃん」
その言葉には熱がこもっていて、喜んでくれるなら、もっと褒めてあげたいなって思っちゃった。
0
あなたにおすすめの小説
「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない
橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。
そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。
1~2万文字の短編予定→中編に変更します。
いつもながらの溺愛執着ものです。
星屑を紡ぐ令嬢と、色を失った魔法使い
希羽
恋愛
子爵令嬢のルチアは、継母と義姉に虐げられ、屋根裏部屋でひっそりと暮らしていた。彼女には、夜空に輝く星屑を集めて、触れた者の心を癒す不思議な力を持つ「銀色の糸」を紡ぎ出すという、秘密の能力があった。しかし、その力で生み出された美しい刺繍の手柄は、いつも華やかな義姉のものとされていた。
一方、王国には「灰色の魔法使い」と畏れられる英雄、アークライト公爵がいた。彼はかつて国を救った代償として、世界の色彩と感情のすべてを失い、孤独な日々を送っている。
ある夜会で、二人の運命が交差する。義姉が手にしたルチアの刺繍にアークライトが触れた瞬間、彼の灰色だった世界に、一瞬だけ鮮やかな色彩が流れ込むという奇跡が起きた。
その光の本当の作り手を探し出したアークライトは、ルチアを自身の屋敷へと迎え入れる。「私のために刺繍をしろ」──その強引な言葉の裏にある深い孤独を知ったルチアは、戸惑いながらも、初めて自分の力を認められたことに喜びを感じ、彼のために星屑を紡ぎ始める。
彼女の刺繍は、凍てついていた公爵の心を少しずつ溶かし、二人の間には静かな絆が芽生えていく。
しかし、そんな穏やかな日々は長くは続かない。ルチアの持つ力の価値に気づいた過去の人々が、彼女を再び絶望へ引き戻そうと、卑劣な陰謀を企てていた。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
【完結】言いつけ通り、夫となる人を自力で見つけました!
まりぃべる
恋愛
エーファ=バルヒェットは、父から十七歳になったからお見合い話を持ってこようかと提案された。
人に決められた人とより、自分が見定めた人と結婚したい!
そう思ったエーファは考え抜いた結果、引き籠もっていた侯爵領から人の行き交いが多い王都へと出向く事とした。
そして、思わぬ形で友人が出来、様々な人と出会い結婚相手も無事に見つかって新しい生活をしていくエーファのお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ているもの、違うものもあります。
☆現実世界で似たもしくは同じ人名、地名があるかもしれませんが、全く関係ありません。
☆現実世界とは似ているようで違う世界です。常識も現実世界と似ているようで違います。それをご理解いただいた上で、楽しんでいただけると幸いです。
☆この世界でも季節はありますが、現実世界と似ているところと少し違うところもあります。まりぃべるの世界だと思って楽しんでいただけると幸いです。
☆書き上げています。
その途中間違えて投稿してしまいました…すぐ取り下げたのですがお気に入り入れてくれた方、ありがとうございます。ずいぶんとお待たせいたしました。
愛が重いだけじゃ信用できませんか?
歩く魚
恋愛
【ヤンデレと戦えるのは遊び人である】
古庵瑠凪は、大学内における、いわゆる「何でも屋」に相当するサークルに所属している。
生徒を助け、浮かれたように遊び、大学生の青春を謳歌する、そんな毎日。
しかし、ある日「お見舞い」が自宅のドアにかけられていたことを皮切りに、彼の平穏な日々に変化が訪れる。
「好きだからです。世界中の誰よりも好きで好きでたまらないからです」
突然の告白。ストーカーの正体。
過去の一件から恋人を作らないと決意した瑠凪は、さまざまな方向に「重い」ヒロインたちのアプローチから逃れることができるのか?
鏡の中の他人
北大路京介
恋愛
美容師として働くシングルマザー。顧客の一人が、実は自分の元夫を訴えている原告側の弁護士。複雑な立場ながらも、彼の髪を切る親密な時間の中で、プロとしての境界が曖昧になっていく。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる