シンデレラになりたい私 × 王子様になりたくないあなた

音央とお

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今日のホームルームは盛り上がっていた。だって、

「高校初めての文化祭だーー!!」

原田くんの叫びに、ノリの良い男子たちが「オー!!」と拳を突き上げる。
進行役を任されたのは原田くんと舞ちゃん。文化祭の出し物を決めることになっている。

「この学校の文化祭って結構自由だから、ある程度の要望なら通ると思うよー。意見出していってー!」舞ちゃんがチョークを持って指示を出す。

お化け屋敷
脱出ゲーム
チョコバナナ
ボードゲームカフェ
綿あめ
手品
フルーツ飴

どんどん候補が増えていく。
何が選ばれても楽しそうで迷うなぁ。

「メイド喫茶!」
「男の娘カフェ!」
「男装!」
「妹属性!みんな“お兄ちゃん”って呼んでくれ」
「それなら、執事喫茶でしょー! イケメンにご奉仕されたい」

ん?

一部から、欲望にまみれた要望が上がり始める。
普段は真面目な鈴木さんが「文化祭はイケメンを自由に扱えるチャンス………ふふふ」と仄暗い目をして口にしたから静寂が訪れた。

「んー?でもさ、鈴木ちゃんの言うことは一理あるかもー。集客数のランキングでちょっとした景品が出るんだって。だから、どれだけお客さんを呼べるかに振り切るのもありだよー?」と舞ちゃん。

景品という言葉に、ざわめきが起きる。
みんなの目の色が変わったのが分かる。

「それならイケメン押しにする?」
「幸いにもうちのクラスには、佐野くんと長谷部くんがいるわけだし」

近くに座る女子たちの話し声。
――長谷部と、名前を出される凛ちゃん。

凛ちゃんってちょっと怖がられてるけど、かっこいいねって思われてる。確かにお顔は整っているし、雰囲気も他の男の子とは違う。
なんでこんな男の子が、私と友達になってくれたのか分からない。

チラッと後ろを盗み見るつもりが、ばっちりと目が合ってしまった。凛ちゃんは頬杖をつきながら、「ん?」と優しい声で首を傾げた。

「……えっと、凛ちゃんは何がやりたい?」
「……。思いつかないな、莉央がやりたいことがあるなら、それ」
「もう! なんで私に合わせようとするの~」

頬を膨らませる。めんどうくさいのかな?
でも、凛ちゃんって任されれば、ちゃんと仕事をやりきるタイプだと思うんだ。

「じゃあ、凛ちゃんは私と一緒にどんなことをしたい?」
「側にいられるなら何でも」
「凛ちゃん~~!」

全然考える気がないね?

そんなやり取りをしている間も、新たな意見は飛び交っていたようで。「カオスすぎて面白いんだけどー」と舞ちゃんがお腹を抱えて笑っていた。


*   *   *


「――っていうことがあって。なかなか決まらなかったんだけど、佐野くんが“お客さんたちがみんな楽しめるやつにしよう”って言い出して、射的とスーパーボール掬いになったんだ。小さい子も楽しめるし、大人も懐かしくなるからって。あとね、みんなで浴衣を着ることになったよ!」

すっかり恒例になった凪くんとの通話、小さな画面に凪くんと部屋が映り込んでいる。よくありそうな、男子の生活感があるごちゃっとした部屋じゃなくて、洗練された家具が置かれている。

「莉央ちゃんの浴衣は見てみたいな」
「私のなんて需要がないよ……」

でも、凛ちゃんにヘアアレンジはお願いしたいかな。絶対に可愛いのを作ってくれると思うんだ。

「楽しそうだね?」
「うん、想像してたら楽しみになってきた。凪くんのクラスは何をやるの?」

私の質問に凪くんが気まずそうな表情になった。
乗り気ではないのが伝わってくる。

「……どうしても劇をやりたいという人達がいて、人魚姫をやることになって」
「人魚姫かぁ。それはちょっと悲しい物語だね」

お姫様なのにハッピーエンドにならないやつ。
私が憧れる“シンデレラ”とは違う結末だ。

「凪くんは何をやるの?」

凪くんは左手で頭を抱えながら「……王子様だって」とぽつり。

「そうか、そうだよね! 凪くんといえば王子様だよね」

これ以上の配役はない。他にはいないだろう。
納得しかないよ!

「満場一致で決められて、俺の意見なんて無視だよ?……酷い」
「仕方がないよ、凪くん以上に似合っていてかっこいい人はいないと思うから」

しっくりすぎて、凪くんの王子様が見たいから劇にしたんじゃないかとすら思えてきた。

「まあ、莉央ちゃんが“かっこいい”って思ってくれるなら、頑張ってみるよ」

諦めの色が濃い様子で、本人は納得がいっていないんだなって伝わってくる。気持ちが伴っていないのに、役柄を決められるのは確かに悲しくなっちゃうかも。

「凪くんってえらいね」
「急にどうしたの?」
「いつもみんなの期待に応えていて、すごいなって思ったの」
「……」

急に褒められたからか、面食らったような表情のあと、照れたような笑顔が返ってきた。

「そう言ってくれて、ありがとう、莉央ちゃん」

その言葉には熱がこもっていて、喜んでくれるなら、もっと褒めてあげたいなって思っちゃった。

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